【Climate Live Japan vol.2 レポート】七尾旅人・MONO NO AWARE・アジカン後藤正文らが伝えた「気候変動問題」への想い

望月 柚花

望月 柚花

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Climate Live(クライメイトライブ)は世界40カ国以上の学生が音楽の力を借り、気候変動問題をより多くの人に知ってもらうことを目的にした音楽イベントだ。

日本での開催Climate Live Japan(クライメイトライブジャパン)の第1回目は2021年4月24日にオンライン配信で行われ、10月16日に2度目の開催となったClimate Live Japanも、前回と同様にYouTube配信という形で開催された。

音楽を通し気候変動問題について知る・考えることができる貴重なイベントとして配信前から多くの注目を集め、ライブにはTAMTAM、Rose One、Moment Joon、七尾旅人、MONO NO AWAREが出演し、気候変動問題や政治について豪華ゲストを招いたトークセッションも行われた。

今回はその様子をライブレポートとして紹介していきたい。

▼ vol.1のレポートはこちら
【Climate Live Japan レポート】私たちの未来を守るために。音楽やトークを通して気候変動問題を知るイベント


Climate Live Japanって何?

Climate Live(クライメイトライブ)は気候変動問題を音楽の力を通して多くの人へ伝えていくことを目的とし、イギリスの高校生がスタートさせた取り組みだ。世界40カ国以上の学生が主体となり活動しており、日本でもClimate Live Japanとして2021年4月24日に第1回目が開催されている。

10月16日に開催した第2回目となる今回のClimate Live Japanでは、舞台装飾にロスフラワー(規格外などの理由から廃棄される予定の花)が使用されるなど、サステナブルアクションも取り入れ、よりパワーアップしたイベントとなった。

©Climate Live Japan

何かを願い、誰かに伝えるために音を奏でる。
5組のライブ出演アーティスト

配信のメインとなるライブにはClimate Live Japanの趣旨に賛同した5組のアーティストが出演し、イベントへの思いや気候変動問題への考えなどトークを挟みながら巧みなパフォーマンスを披露する。

TAMTAM

©Climate Live Japan

最初にステージに登場したのは東京を中心に活動するバンド・TAMTAM(タムタム)。からりとした風通しの良さを感じさせつつも瑞々しい音と歌で、楽曲『Summer Ghost』『Beautiful Bad Dream』など数曲を披露した。

今回のClimate Live Japanではドリンクをタンブラーで提供しており、ボーカルのKuroが曲間のMCでそれについての自らの気づきを述べ「小さいことだけれど、改めて考えるきっかけになった」と語っていたのも印象に残った。

Rose One

©Climate Live Japan

次のアーティストはミステリアスなイメージを持つシンガーソングライターのRose One(ローズワン)。楽曲『嫌いな奴』『君は正しい。』など、心に強く迫るパワフルな歌声と歌詞、演奏に圧倒されつつも、どこかで限りなく近くに寄り添ってくれるような優しさも感じた。

それぞれ正解は違うから難しいけれど、誰かの気持ちになること、痛みを忘れないでいたら変わるのではないかということ、それにはまず自分を変えていくこと。曲の合間にそんな話をする姿が眩しく記憶に残った。

Moment Joon

©Climate Live Japan

韓国をルーツに持つ移民系ラッパーのMoment Joon (モーメントジューン)。「生きる道を探し、たどり着いた日本で感じたことを音楽にしています」という自己紹から『KIX/Limo』、実際の自身の住所をリリックにした『IGUCHIDOU』、『Apocalypse』などを歌い、MCではこのイベントによせて書いたリリックを披露した。

最後の『TENOHIRA』ではMoment Joonが「一緒に歌ってください」とだけ言い、ライブ中にコメント欄がたくさんの手のひらのマークの絵文字で溢れる場面があった。

私たちは同じ人間ではないから、思考も思想も行動も違う。でも同じではなくても、こうして何かを少し共有することができる。そんな光のようなものを、その時微かではあるが確かに感じた。

七尾旅人

1998年のデビューから現在まで、唯一無二のパフォーマンスで多くのリスナーを魅了しつづけているシンガーソングライターの七尾旅人(ななおたびと)は、この日のために作った楽曲などを演奏した。

毛布のようにやわらかく包み込む彼の歌声は、あたたかいのにどこか乾いた寂しさや孤独を感じさせる。ネガティブな意味ではない孤独の気配というものを、私は今回の七尾旅人のライブパフォーマンスを見て初めて知った気がする。

MONO NO AWARE

©Climate Live Japan

トリを飾ったのは4人組バンド・MONO NO AWARE(モノノアワレ)。彼らはステージに上がる前、今回のClimate Live Japanトークゲストであり、国際環境NGO 350.org日本支部フィールド・オーガナイザーの荒尾日南子さんから気候変動問題や環境問題についてのレクチャーを受けてからライブに臨んだ。

日常生活と環境問題の乖離に苦悩しつつも「それも含めて、知ることができてよかった」と語る姿に共感し、思わず何度も頷いてしまった。環境問題と日々の暮らしをいきなり結びつけるのは難しい。でも知らないことには何も変わらないし、良い方向へは動かないのだ。

MONO NO AWAREがライブで最後に演奏したのは『東京』という楽曲。深い悲しみや絶望の中で身動きがとれなくても、それでもほんの少しの希望を抱いて新しい朝を迎えることができるような、この日のイベントの最後を飾るのにふさわしいものとなった。

あのアーティストからのサプライズメッセージも!

2度目のClimate Live Japanの開催へ寄せ、ライブの合間には二人のサプライズゲストからの応援メッセージが届いた。

応援メッセージとして登場したのは、第1回目のClimate Live Japanにも出演したシンガーソングライターのAnly、そして社会問題などに対して積極的な取り組みを見せるASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤正文(Gotch)の二人だ。

二人がそれぞれこのイベントの大きなテーマである気候変動問題、そして様々な社会問題についての想いを語る中で、後藤正文が最後に「自分の中に矛盾や葛藤があるのはあなただけではないから、そういったこともシェアしていく。それもひとつのアクションだと思う」と述べているのが強く心に残った。

音楽と気候変動、政治や発信することを考える注目のトーク

©Climate Live Japan

トークゲストには文学者・翻訳家の阿部賢一、国際環境NGO 350.org日本支部フィールド・オーガナイザーの荒尾日南子、前回のClimate Live Japanの出演アーティストであるermhoiを迎え、前編と後編の2回に分けて音楽、気候変動問題、環境問題、政治、発信することについてのトークセッションが行われた。

前編の「音楽と気候変動と政治」では、コロナ禍でのフェス参加の意向、アーティスト自身の政治批判について、そして一般の人でも社会問題や政治についてカジュアルに話すことがなかなか難しい現状についてトークゲストの3人が語り合い、コメント欄には共感の意見が多く寄せられた。

後編の「発信すること、アクションについて」というテーマでは、パワーシフトやダイベストメントなど、環境問題へのアクションのヒントになる話題が上がる。

国際環境NGO 350.org日本支部フィールド・オーガナイザーの荒尾日南子は、一般の人ができるアクションの最も代表的なものとして選挙を挙げ、こちらの話題にも共感する視聴者が多く見られた。

また、アーティストとして多方面で活動するermhoiは自らの発信についての話題で、自分の意見に対して反対の意見やきつめの意見がTwitterのリプライやDMで送られてきたことと、そういった意見を持つ人たちと議論してみたらコミュニケーションをとることができた経験を語る。

日常生活であまり意見交換することがないテーマについて「自分もそう思う!」という共感の声をコメント欄で見つけることができたり、様々な分野で活動するトークゲスト3人が普段どのように考え、行動しているのかも知ることができる貴重な時間となった。

気候変動問題は遠くにあるものではない

今回のClimate Live Japanでは、気候変動問題をはじめ、多くの環境問題や社会問題、それらが自分たちの日常と切り離せないものであることをより深く知る機会となった。

例えば洋服について、私はこれまで「安いから」という理由でファストファッションを購入してはダメにしたり、気に入らなくなって捨てることがかなり多かった。

でもこの日のClimate Live Japanで流れた気候変動問題へのショートフィルムで、ファッション産業は製造に使用されるエネルギー量やサイクルの短さから環境負荷が大きく、国際的に大きな課題になっていることを初めて知ったのだ。

それからは、習慣として定着したエコバックやマイボトルの使用に加え、持っている服を長く着るために洋服ブラシを買ってケアすること、古着屋を巡ってお気に入りの1着を見つけることや、不要になった服をフリマアプリに出品するなどの新しい小さな行動を日々の中に取り入れてみている。

Climate Live Japanを通して得たものは、素晴らしい音楽や豊かな知識や情報だけではない。小さく見える一歩がいつか大きな光になること、厳しい状況の先に明るい未来があると信じて行動している人たちがいること。その存在や意志に触れることのできた、貴重な機会であったと感じている。

(取材/文・望月柚花)


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