【Climate Live Japan レポート】私たちの未来を守るために。音楽やトークを通して気候変動問題を知るイベント

望月 柚花

望月 柚花

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気候変動問題によって夏の最高気温は新記録を塗り替え続け、異常気象や熱波での森林火災なども深刻な問題になっている。

Climate Live(クライメイトライブ)は、そんな気候変動問題への危機感や、気候変動問題へ取り込んでいくことへの希望、気候変動問題とそれに関連する様々な知識などを伝えていく音楽イベントだ。世界40ヵ国以上の学生が主体となり活動し、日本でも2021年4月24日に『Climate Live Japan』が開催されるはこびとなった。

出演アーティストはKan Sano、ローホー(RowHooMan)、ermhoi、一青窈、Anly。そして様々なジャンルのゲストが気候変動問題について語り合うトークも含めた、盛りだくさんのイベントがスタートした。


『Climate Live Japan』とは

photo by Mari Onoda

Climate Live Japanは「#ウチらの声で世界は変えられる」というキャッチコピーを掲げ、気候変動問題を訴える学生が主催する音楽イベント。アーティストによるライブ、環境問題に取り組んでいるゲストによるトークセッションなどを通し、気候変動問題への関心を持ってほしいという想いが込められている。

4月24日のClimate Live Japanは新型コロナウイルスの影響を踏まえて無観客での開催が決定。その様子は新宿LOFTからYouTubeでライブ配信され、年齢、性別、考え方、好きな音楽、それぞれが全く異なる多くの人たちが、違う場所から同じ問題について考えることができるイベントとなった。

それぞれの想いを音にする、豪華出演アーティスト

イベントには気候変動問題に関心を持ってもらうため、気候変動問題に対して声を上げるClimate Live Japanの趣旨に賛同したアーティスト5名が出演した。

Kan Sano

ライブのトップバッターはキーボーディスト・トラックメイカーのKan Sano。バークリー音大ピアノ専攻ジャズ作曲科卒という経歴を持ち、自身の活動だけではなくプロデュースや楽曲提供なども行う実力派アーティストだ。

イベント出演に際し「音楽を通じて国境越えた人々の思いを共有し、これからの世界のために一人一人ができることを改めて考え、行動するひとつのきっかけになればと思います」とコメントを寄せ、ライブではそれを体現するように繊細かつ重厚な音を鳴らし、美しい世界を紡いでいったのが印象的だった。

ローホー(RowHooMan)

大阪アメリカ村からやってきたローホー(RowHooMan)。ルーパーなどを使わずギターのボディを叩いてビートを作り歌うスタイルが特徴のアーティストだ。「タイム感がわからなくなるので、終了5分前になったらストロボで教えてください」と前置いて始まった怒涛の演奏は、閉じた道を切り開くような力強さを感じるものだった。

ギター1本と自らの歌声。音を出すものはそれだけという非常にシンプルなライブパフォーマンスなのに、テクニックと情熱が光る。ギターを叩いて弾き真正面から歌う姿は、ステージで圧倒的な熱量を放っていた。

ermhoi

続いて登場したのは、日本とアイルランドにルーツを持つトラックメイカー・シンガーのermhoi(エルムホイ)。2018年に小林うてな、julia shorteedとblack boboiを結成。2019年にはMillennium Paradeにも参加するなど、独自のセンスで表現をし幅広く活動するアーティストだ。

ライブでは身体のしんから共鳴するような重く響く音と幻想的な歌声をみせ、一気に会場が彼女の世界にひきずりこまれた。ただそこから動かず音を聴いているだけなのに、目の前に色々な世界が現れては消えていく。

それはもちろんアーティストとしての腕前でもあるのだろうが、「音楽の力を知っている人というのは、こんなふうに人や場所を瞬時にひきこむことができるのだ」と強く感じた瞬間だった。

一青窈

photo by Mari Onoda

応援ゲストアーティストとして参加した一青窈(With Gt 長井ちえ)。自らも生活に太陽光発電を取り入れているというMCから始まり、ライブでは名曲『ハナミズキ』を披露。曲の間奏ではermhoiのパフォーマンスを見ながらその場で書いたという詩の朗読をし、それを受けてClimate Live Japan実行委員メンバーが涙を流す姿もあった。

Anly

photo by Mari Onoda

ライブの最後を飾ったのは、ルーパーを使って音を重ねていく演奏スタイルが特徴の沖縄出身シンガーソングライターのAnly。ループして美しくつらなり重なっていく音と澄んだ力強い歌声を聴いて、この音と歌にのせる想いはどこまでも届きそうだと感じた。風のようにかろやかなのに、心に強く響く。

曲間のMCでは故郷である沖縄・伊江島の美しい空や海のこと、それを忘れかけていたことを語り、最後に演奏した曲『Venus』ではそんな彼女の愛する美しい故郷の風景が見えた気がした。

環境問題を学んで考える、トークにも注目!

アーティストのライブの合間に行われる2回のトークセッションでは、モデル、専門家、企業人、環境活動家と様々なジャンルで活動するゲストを迎え、気候変動問題・環境問題について学び、その上で自分がにどんなアクションができるのかを考えることのできる貴重な機会となった。

気候変動のウソ・ホント

登壇者:神澤清(環境活動家)、江守正多(気象学者)、前田雄大(エナシフTV)

「気候変動のウソ・ホント」は環境活動家や気候変動問題に関わる専門家を迎え、視聴者が気候変動問題への正しい知識を身につけることを目的としたトークセッションで、気候変動問題への様々な噂について専門家からその真偽を教えてもらい、視聴者が一緒に学んでいく。

自然エネルギーでの発電コストは世界的に低減化しつつあることなど、「今まで知らなかった!」という発見がいくつもあったことが新鮮で、とても興味深い内容のトークだった。

これからの社会をつくるウチらができること~衣食住~

登壇者:長谷川ミラ(モデル)、未来リナ(モデル・ライフスタイルクリエイター)、酒井祥樹(積水ハウス株式会社)

衣・食に関心があり、発信・行動しているモデル、住宅の事業に取り組んでいる企業人を迎え、身近なトピックである衣食住を通して「ウチら」がどのようなアクションを起こすことが大切かを伝えるトークセッション。

どんな社会を目指していくのか、いま自分たちにできることはどういったことかを考えるきっかけになり、さらには「エコバッグを持つ」「ビニール袋を何度も使う」「マイボトル(水筒)を持つ」「古着を利用する」「今持っているものを大切にする」など、身近な「できること」のヒントがつまったトークセッションとなった。

小さな一歩が、やがて世界を変えていく

気候変動問題に対して「日々の生活に関係ないから」「まだ大丈夫でしょう」「自分ひとりが何かをしたところで何も変わらない」と思っている人は少なくはないと思う。実際これらはすべて、恥ずかしながら私自身が気候変動問題に対してこれまで思っていたことだった。

今回、共同代表へのインタビューからイベント当日の取材を経験し、Climate Live Japanに携わる人たちの真摯な瞳とその想いに触れて少しだけ自分の生活が変わった。マイボトルを買い、折りたたみできるエコバッグを持ち歩くようになり、すぐに壊れるビニール傘をやめて折りたたみ傘を使うようになったのだ。

気候変動問題に対して個人ができることは限られているし、ひとりの力で世界を大きく変えることなど不可能だろう。でもそこで「だからやらない」となるのではなく「できることってなんだろう」と考え、行動する。その小さな一歩が何よりも重要であることを、私はClimate Live Japanを通して学んだ。

私やあなたや世界の誰かのほんのわずかな一歩が、集まって、繋がって、大きくなっていけば、ここから見える道の先にも、きっと明るい未来が待っているはずだ。

(取材/文・望月柚花)
(撮影・小野田麻里)


Climate Live Japan

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Climate Live Japan 共同代表インタビュー