現役高校生が心を奪われた日米アーティストのアルバムTOP5【黒田の音楽定期便 #2】

黒田

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こんにちは、黒田です。おかげさまで初回の記事は、掲載後たくさんの感想やお褒めの言葉などいただいて、にやけてしまうほど嬉しかったです。ありがとうございます。来年から受験生ということもあり、これからは執筆頻度が下がってしまうかと思いますが、積極的に書いていこうと思うのでよろしくお願いします。

さて、2021年はどのような年でしたか? コロナ禍で生活が不自由になり、思い通りに過ごせない日々が続いたのではないかと思います。私の学生生活も大きく制限され、皆がマスクをしていることで未だに顔がわからないクラスメイトがいたり、なんてこともあります。

そんなこんなでおうち時間が増えたので、昨年の春から新譜を積極的に聴き始めてみました。そうなると、聴くアルバムの枚数が単純に増えたり、アーティストをディグするというよりはアルバムを聴いて良かったアーティストを掘っていくという聴き方に変わり、音楽に対する見方の多様性が増した1年となりました。

ということで、2021年における私のお気に入りのアルバムを5枚、日本とアメリカのアーティストから紹介したいと思います。


作曲センスが光る期待のバンド

『The Natural Diet』
cesco

2018年に大阪で結成されたバンド、cesco(チェスコ)の1stアルバム。ギターポップを軸にオルタナティブ、シティポップ、さらにはAORまで幅を広げ、ジャンルの垣根を越えて様々な色を兼ね備えた一枚。メンバーの一人ひとりが音楽のアイデンティティを確立していて、それがそのままアルバムとして成っていることで、いい意味でカオスな内容となっている。

M2の「AOR」という楽曲はそのままジャンル名が曲名になっていて、積極的にAORサウンドを取り入れていることがわかる。最近の邦楽シーンでは類を見ない面白い試みではないだろうか。

作曲メンバーは3人だが、それぞれの楽曲によって様々なメンバーが入れ替わりで参加しているそうで、現代ミニマムファンクの金字塔ともいえるVulfpeck(ヴォルフペック)のスタイルとも似ている。これからどのような音楽を作っていくのかをリアルタイムで目の当たりにできると思うので要チェック。

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2021年のチェンバーフォークの大名盤

『The Beginner’s Mind』
Sufjan Stevens & Angelo De Augustine

ニューヨークのSSWであるSufjan Stevens(スフィアン・スティーヴンス)と、ロサンゼルスのSSWであるAngelo De Augustine(アンジェロ・デ・オーガスティン)がコラボした一枚。これまでSufjan Stevensは9枚のアルバムをリリースしており、どのアルバムもフォークという一ジャンルの中で壮大な世界を築いている。他には、『君の名前で僕を呼んで』という映画の挿入歌を担当し、好評を博した。

今回のアルバムは、ポピュラー映画からインスパイアされてできたらしく、彼自身も宗教的な一面を持っていて、映画で得た感情や考え方をそのまま楽曲に投影したというものだ。それ故、楽園のような情景描写がされているように思える。アコースティックな音色とハイトーンボイスの包み込むようなサウンド、そしてキラキラとした電子音で桃源郷のような世界を演出していて、これこそがチェンバーフォークかと思わせる一枚。

個人的にこのアルバムに出会ってからというもの、聴くジャンルが幅広くなったと感じるし、フォークにあまり馴染みのない私でさえ聴き入ってしまう。ノンストレスで楽しめるので是非。

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Vulfpeckのキーボード奏者の広大な自然を感じる一枚

『Rainbow Beach』
Woody Goss

Woody Goss(ウッディー・ゴス)は、LAのファンクバンド、Vulfpeckでキーボード担当として活動している。Vulfpeckは、ミニマムファンクというひとつのサウンドを確立した偉大なバンドとして広く知られている。先ほどのcescoのパートで触れたように、メンバーは4人だがサブメンバー的な位置づけの3人がいたりととても面白い構成で活動している。レーベルには一切属さないにもかかわらず、2020年の夏にはMadison Square Gardenというニューヨークのアリーナを完売させたことでも称賛された。

そんなVulfpeckのキーボード、Woodyのソロ名義で初のアルバムは、芝生の上で寝転がりたくなるような仕上がりになっている。収録曲はすべてインストゥルメンタルとなっており、余計な要素は含まれていない。Woody独特の伸びの良いキーボードの音色と環境音が織り交ぜられ、ゆったりとしたハピネスなトラックで、自然がいっぱいな公園にいるような安心感をもたらしてくれる一枚。

このアルバムはあまり話題になっていないが、個人的に大好きなアルバム。今度大好きなVulfpeckの紹介も詳しくすることにしよう。

20歳のSSWが作り出すlo-fi空間

『Summer’s Over』
Jordana & TV Girl

メリーランド出身のSSWであるJordana(ジョーダナ)と、サンディエゴを拠点に活動するローファイポップグループのTV Girl(ティーヴィー・ガール)がコラボしたEP。全体を通して、TV Girlのレトロっぽさを感じさせる音像のはっきりしたローファイトラックに、Jordanaの持つシルクのような高純度で表現力のある歌声がパズルのピースのように組み合わさっていて、非常にアットホーム感のあるベッドルームポップとなっている。特にS3の「Jump the Turnstile」では、TV Girlの持ち味が前面に押し出されている。リバーブがかかったダルっぽいビートが完全に癖になり、自然と首を振ってしまう、そんな一曲。

Jordana自身が20歳ということもあり、どのような音楽を聴いていたのか気になるところだが、Arctic Monkeys、Vampire Weekend、The Strokesなどのインディーロックを聴くことが多かったそう。インプットする音楽とアウトプットする音楽が違うことはよくあることであり、異なるジャンルで学べることも多くあるので、これからキャリアを重ねていくにあたって枠にとらわれずに自分のやりたい音楽をそのまま表現していってほしいと思う。

“NEOかわいい“をキャッチコピーにするガールズバンド

『WINK』
CHAI

日本の4ピースガールズバンド、CHAI(チャイ)。メンバー全員がコンプレックスを持っていて、そのコンプレックスすら自分の武器にする“NEOかわいい”というユニークなキャッチコピーのもとに活動している。結成から約5年でアメリカのフェスに参加するなど、国内外で多くの注目を浴びている。

今回のアルバムはNirvarnaを輩出したSub Popという超有名レーベルからリリースされていて、そのことからRic Wilson、YMCK、Mndsgnの3組の海外アーティストが参加していたりと、かなり豪華な内容となった。これまでの2枚のアルバムはパンクロックバンドとしての印象が強かったが、今回のアルバムはシンセポップやR&Bなどのジャンルからのルーツを感じる楽曲が多く、薄いベールに包まれた雰囲気を感じ取ることができる。特にS11の「Wish Upon a Star」という楽曲は、夜に一人きりで不安になるときに寄り添えるように作られたそう。個人的にも、このアルバムを初聴したときにCHAIというバンドの印象が大きく変わったことを覚えている。

前作、前々作とテクノ系に通ずる片鱗は見せていたが、ここまで完成度の高いものを見せられるとは思っていなかったのでかなり驚いた。みなさんもCHAIからエネルギーをもらってほしい。

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今回は5組のアーティストを紹介させていただきました。お気に入りのアルバムは見つかりましたか? これを機に、普段聴くことが少ないジャンルの楽曲も好きになっていただけると幸いです。

2022年はどのような素晴らしいアルバムが出てくるのでしょうか。皆さんもおすすめのアルバムがありましたら、InstagramやTwitterのDMで送っていただければと思います。待ってます♡

(文・黒田)