初めて聴く音楽がくれる高揚感はいつ何度味わっても素敵なものだ。
2020年も始まってすでに3ヶ月が過ぎ、2019年(もしくはそれ以前)から個人的に注目していたアーティストが着実に活躍の場を広げていると感じている。
そこで今回は令和の時代にブレイクするであろう10組のアーティストを予想し、その略歴とおすすめの楽曲を1曲挙げて紹介する。
日本編
MO MOMA
トップバッターはMO MOMA。2018年にバンド・LILI LIMITが解散したのち、メンバーの土器大洋(ギター)、黒瀬莉世(ベース)、志水美日(キーボード)が再び集い、新たにドラマー・トラックメイカーである高橋尚吾を迎えてスタートを切った。
キャッチーで力強いシンセの音づかいと凛々しい女性ボーカルが魅力的で、楽曲『Outside-In / Inside-Out』はエッジのきいた美しいトラックと耳にやわらかく残る歌メロが強く印象に残る良曲。
Ryu Matsuyama
Ryu(ピアノ、ボーカル)、Tsuru(ベース)、Jackson(ドラムス)からなるギターレス・スリーピースバンド。Ryu Matsuyamaの音楽には日本人離れした雄大なスケール感がある。
EP『back & forth – EP』に収録されている『Sane Pure Eyes』は美しく繊細。それでいて鳴っている音のひとつひとつが雄弁で、聴くと広大な景色が浮かぶようだ。
太田ひな
1996年生まれのシンガーソングライター・太田ひな。2015年からライブ活動を開始し、現在も精力的にライブを行っている。2019年に初のフルアルバム『Between The Sheets』を、そして同年12月にEP『Alphaville』をリリース。しっかりと芯の通った低く艶のある歌声が魅力的。
2016年にオリジナル楽曲のピアノ弾き語り動画をSNSにアップしていたのを偶然見つけて、当時から情感あふれる声のひとだなと思っていた。
楽曲『elephant in the room』は均整がとれていてなんの過不足もないのに、聴いているとざわりとする。見てはいけないのにどうしても見たくなるような気持ちに近い。タイトルの「elephant in the room」は「見てみぬふり」という英語の慣用句。
the engy
関西発のフォーピースバンド。2019年にミニアルバム『Talking about a Talk』でメジャーデビュー。Suchmosの後を継ぐロック×R&Bの新鋭として注目を浴びる。
アルバム『Talking about a Talk』のリード曲である『Sick enough to dance』は細部まで繊細に作り込まれた楽曲で、特にイヤホンで聴いた時の衝撃が忘れられない。湿度のある音の粒ひとつひとつがリズミカルにはじけ、天気雨が乾いた土に染み込むようだった。
羊文学
塩塚モエカ(ギター、ボーカル)、ゆりか(ベース)、福田ひろ(ドラムス)によるスリーピースロックバンド。2018年にファーストアルバム『若者たちへ』がリリースされ、その時メンバー全員が現役大学生の「若者」だったという。
『人間だった』はこれまでの羊文学の世界観からさらに深いところへ一歩踏み込んだ作品で、現在社会に生きる人間の無意識の傲りに対する警鐘と、これから終末に向かっていくであろう人類へのメッセージが込められている。
キトリ
姉・Monaと妹・Hinaの姉妹による、ピアノ連弾ボーカルユニット。2015年から京都を拠点に音楽活動を開始し、2019年日本コロムビアよりファーストEP『Primo』でメジャーデビュー。同年7月にはセカンドEP『Secondo』をリリースしている。
キトリは「ピアノ連弾ボーカルユニット」と銘打っているが、ただそれだけに収まっていない。代表曲『羅針鳥』はピアノ連弾にシンセサウンドを取り入れ、クラシックのみに依存しないポップスフォーマットの楽曲になっている。
Dos Monos
Dos Monosは、荘子it、TAITAN MAN、没からなるヒップホップユニット。メンバー全員が1993年生まれ。三人とも中高一貫の同じ学校で十代を過ごし、荘子itの呼びかけにより2015年に結成。2018年、日本人アーティストとして初めてLAのレーベル・Deathbomb Arcとの契約を結ぶという快挙で話題をよんだ。
2019年にリリースされたファーストアルバム『Dos City』はヒップホップのメインストリームの外側で強烈に光るDos Monosらしさを凝縮したアルバムで、無数のサウンドコラージュからなる複雑怪奇なトラックと、崩れる寸前のビートとトラックのバランスが絶妙なグルーヴ感を放つ。
これはDos Monosの作る音楽全体に言えることでもあるのだが、特にアルバム『Dos City』に収録されている楽曲『バッカス』では、上記のDos Monosらしさに加え、ウィットに富んだ歌詞からは哲学や世界各地の神話・文化への深い造詣があることが読み取れる。
maco marets
maco maretsは1995年生まれのヒップホップMC。美しい低音で日常を歌う。
大学在学中の2016年にファーストアルバム『Orang.Pendek』をリリース。その後自主レーベルWoodlands Circleを設立し、2018年に二作目となる『KINŌ』、翌年2019年に三作目『Circles』をリリースした。
二作目『KINŌ』に収録されている『Hum!』では、世の中や生きていることへの諦観の中にある微かな安らぎを歌う。日曜日の朝にぴったりな楽曲。
海外編
YUNGBLUD
2018年にアルバム『21st Century Liability』でデビューした1997年イギリス生まれの若きロックスター。パンクロックとヒップホップを掛け合わせ、それを更に増幅させたような楽曲が特徴。
デビューアルバムに収録されている楽曲『Machine Gun (F**k the NRA)』は洋楽ロックを日常的に聴かない人でも理解できる格好良さがあり、個人的に推したい一曲。
No Rome
No Romeは、イギリスのロックバンドTHE 1975のマシュー・ヒーリー(ギター、ボーカル)とジョージ・ダニエル(ドラムス)が共同プロデュースするマニラ出身の新人シンガー。現在はロンドンを拠点に活動している。おすすめの楽曲は『Seventeen』。
新しい音楽を見つけることは宝探しに似ていて、そこで見つけた宝物は人生を彩る大切なものになるはずだ。この記事が、あなたの宝探しのちょっとした助力になれば幸いである。
(文・望月柚花)
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