注目のZ世代バンド、um-hum / downt / KADOMACHI / センチメンタルリリーの魅力に迫る|『HEYDAY!』出演者紹介#1

三橋 温子

三橋 温子

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新型コロナの5類移行でようやくウィズ・コロナのフェーズに入り、規制のないライブを楽しめる日常が3年ぶりに戻ってきた。

8月8日(火)に新宿MARZ / Marbleで開催される『HEYDAY! (ヘイデイ)』は、20歳前後の若いバンドやアーティストが集う新しいライブイベント。コロナ禍に活動を開始した出演者も多く、これまで持て余していたエネルギーを思いきりぶちまけ合う熱い1日となりそうだ。

現在発表されている出演者は、um-hum / KADOMACHI / スズキケント / センチメンタルリリー / downt / 穂ノ佳 / RINNEEE(吉田凜音)の7組。これからの音楽界を盛りあげていく、ジャンルレスな新世代アーティストたちが集結する。今回はこのうちバンド4組にフィーチャーし、それぞれの魅力に迫った。


um-hum(ウンウン)

アングラでポップ、その矛盾こそが“um-humイズム”
『meme』
um-hum
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最初に耳にしたum-humの楽曲は、2021年リリースの「meme (ミーム)」だった。ファミコンBGMのようにチープなサウンドメイクなのに、やけに耳にずしんと残るリフ。不穏なのに洗練されたコード進行。語感優先かと思いきや意味深な歌詞。3DアニメーターのReally3Dが手がけたポップでシュールなMV。いくつもの矛盾に戸惑いながらも、最終的には「どうでもいいや!」と思考放棄して踊り出したくなるような、不思議な魅力を備えた1曲だ。

グラミー賞を彷彿とさせる“プログレッシブR&B”を自称する4人組バンド、um-hum。もともとジャズをプレイしていた楽器隊3人、ろんれのん(Gt./Key.)、たけひろ(Ba.)、Nishiken!!(Dr./Samp.)に、バンド未経験の小田乃愛(Vo.)が加わって2019年に結成された。

結成1年未満で関西最大級の音楽コンテスト『eo Music Try 19/20』でグランプリを獲得。その後も楽曲リリースやライブをコンスタントに続け、今年5月からは6か月連続シングルリリースに挑んでいる。

メンバーの音楽ルーツは、ジャズ、ファンク、ロック、クラシック、J-POPやK-POPに至るまで多様。それらがミックスされたジャンルレスで複雑な音楽性は、楽曲ごとにだけでなく、1曲のなかにも凝縮されている。最近では、um-humらしいアングラ感は残しつつも、小田(Vo.)の歌声を活かしたキャッチーな歌メロなどポップさに磨きをかけた楽曲も増えた。

彗星のごとく音楽界に現れ、中毒者を着実に増やしているum-hum。今まさに進化の過程にある彼らは、当日どんなステージを魅せてくれるだろうか。


um-hum

結成約2年の平均年齢21歳、大阪発プログレッシブR&Bバンド。1st Mini Album『[2O2O]』が、全国のタワーレコードスタッフが話題になる前の新人をお勧めする「タワレコメン」に選出。そして、収録曲「Ungra(2O2Over.)」がJ-WAVE「SONAR TRAX」に選出され、TOKIO HOT 100にもランクインするなど、注目を集める。

全楽曲の作曲を手掛ける、ろんれのん(Gt.)は、ビートルズ、ジャミロクワイ、ロバート・ グラスパー、川谷絵音などを筆頭に様々な音楽から影響を受けるも、その作風は一聴してもルーツが分からないオリジナリティ溢れる作品を作っている。そして、ジャズ研育ちによる楽器パート3人全員による卓越した演奏と、ジャケットのイラストを全て手掛け、作詞の一部も行い、ライブパフォーマンス時にはイスを持ち込んで座りながらも、観る者の眼を捕らえて離さない魅力的なステージングを繰り広げる小田乃愛(Vo.)が一体となって、20年代の音楽を鳴り響かせる!

downt(ダウント)

3人の音の絶妙なバランスが、詩的な風景を描き出す
『minamisenju』
downt
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FUJI ROCK FESTIVAL ’22で、新人アーティストの登竜門ステージである『ROOKIE A GO-GO』に出演し話題となったdownt。バンドをやりたくて上京したという富樫ユイ(Vo./Gt.)と、彼女がWebにアップしたデモをきっかけに集まった河合崇晶(Ba.)とTener Ken Robert(Dr.)とで結成されたスリーピースバンドである。

パワフルなエンジンで水面を進む船のようなリズム隊と、その上を気ままに吹き抜ける海風のようなギター、そこに儚くも鋭い水光のようなピュアなボーカルが乗る。そんな詩的な風景をありありとイメージできるほどに、downtの奏でる音楽は聴く者の感性を刺激する。

FUJI ROCK FESTIVAL ’22でも披露された楽曲「minamisenju」は、2022年リリースの『SAKANA e.p.』収録曲。Aメロのあと、歌声との境目が一瞬わからなくなるくらいにメロディアスなギターソロを挟む構成がユニークだ。これは富樫(Vo./Gt.)が「絶対にこのフレーズを弾きたい」とこだわって入れたものだという。

印象的なギターフレーズが全体を通してフックとなっている楽曲だが、ベースとドラムの存在感も同じくらい耳に残る。3人それぞれの音の主張が絶妙なバランスで成り立っている、バンド内の関係性そのものを表したかのような1曲だと感じる。

彼女たちが音を鳴らせば、ライブハウスはたちまち美しい風と光で満たされるだろう。その瞬間が待ち遠しい。


downt

2021年結成。富樫ユイ(Gt.&Vo.)、河合崇晶(Ba.)、Tener Ken Robert(Dr.)の3人編成。 東京をベースに活動。緊迫感のある繊細且つ大胆な演奏に、秀逸なメロディセンスと情緒的な言葉で綴られ、優しく爽やかな風のようで時に鋭く熱を帯びた歌声にて表現される世界観は、風通しよくジャンルの境界線を越えて拡がりはじめている。

同年10月1st『downt』をリリース(CD/CT共に完売)。一躍ライブシーンを中心にその存在は瞬く間に知られることとなる。昨年6月22日に新作EP『SAKANAe.p.』をリリース、そして7月21日より東・名・阪のリリースツアーを開催し全公演SOLD OUTに。7月22日には1stとEPの編集盤レコード『Anthology』をリリース(即完)。

昨年夏は、初の野外フェスとしてFUJI ROCK FESTIVAL ’22 “ROOKIE A GO-GO”のステージをはじめ各所の野外フェスへも出演し、大勢の初見のオーディエンスを前に、強く印象づけるライブパフォーマンスにてそれぞれの会場を沸かし虜にさせた。

KADOMACHI(カドマチ)

最高にハッピーでクセのあるポップ・ミュージック
『むだごと』
KADOMACHI
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SUPER BEAVERやマカロニえんぴつが所属するレーベル・マネージメント主催の『murffin AUDITION 2021-2022』で、準グランプリを獲得した実績をもつKADOMACHI。

J-POPで育ったという4人の音楽ルーツもあってか、先の2バンドと比べてポップス度高め。友だちのような距離感で聴ける親しみやすさが魅力だ。ただし、じっくり聴けば聴くほど、一筋縄ではいかない音楽性に面食らう。遊び心のある転調や変拍子、ブラックミュージックを感じさせる曲調など、至るところにオリジナリティが散りばめられていて病みつきに。

2021年リリースの「むだごと」も、序盤のメロウなムードからテンポチェンジを経て、疾走感あふれるロックサウンドへとシフトする楽曲。細川尚弥(Vo./Gt.)、石濱優(Gt./Cho.)、小栗翔(Ba./Cho.)、石黒瑞穂(Dr./Cho.)、4人の軽快なアンサンブルに、TRICERATOPSの和田唱を思わせるような細川の甘く洒落たボーカルが絡む。

そのほか、2022年リリースのシングル『カド・マル・サンカク』に収録されている「いつかのいつも」「サプライズ」は、裏拍でクラップしたくなる曲をテーマに、細川(Vo./Gt.)と石濱(Gt./Cho.)がそれぞれ作詞作曲。近しいテンポ感ながら異なる世界観の2曲に仕上がっている。

たとえ曲を知らなくとも自然と体が動き出すKADOMACHIのライブ。バンドとオーディエンスの一体感も楽しみながら、多幸感あふれるサウンドに身を委ねよう。


KADOMACHI

“ニッチでポップなバンド”を掲げている。ハサミで切って開ける CD や透明なディスクの CD をはじめ、その日の音源をその日に CD として持ち帰れるイベントなど、ユニークな活動を行う。楽曲はユニゾンフレーズをはじめとするアンサンブルを中心に構成しており、メンバー個々のサウンドが光る。

センチメンタルリリー

Z世代リスナーの心を鷲掴みにする王道ギターロック
『国道25号線』
センチメンタルリリー
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美女の笑顔が眩しいMVは数多あれど、『国道25号線』のMVの主人公は浮かない顔だ。追い討ちをかけるように切ないギターイントロが流れ、見ているこっちの胸がキュッと痛くなる。国道25号線を知らなかったので調べたら、三重と大阪を結ぶ国道とのこと。関西の人にはおなじみのドライブルートなのかもしれない。

バンド名のとおりセンチメンタルな楽曲を得意とするセンチメンタルリリーは、関西で活動するギターポップロックバンド。同じ大学の軽音サークルに所属していた山本大翔(Vo./Gt.)、二宮大蔵(Gt.)、今年7月11日に惜しくも脱退した寺町竜輝(Ba.)、田中皓成(Dr.)の4人で、2022年に結成された。

十代才能発掘プロジェクト『十代白書2023』で準グランプリに輝き、6月の『ツタロック DIG LIVE vol.11 -OSAKA-』ではオーディションを勝ち抜きオープニングアクトを務めた、今もっとも勢いに乗る新星バンドのひとつである。

甘酸っぱい恋愛ソングが中心だが、別れを歌った楽曲であっても必要以上に悲観的なムードは感じない。『国道25号線』も、〈前を向いて 前を向いて〉というフレーズと未来をまっすぐに見据えるような伸びやかなアウトロで終わる、後味の爽やかな楽曲だ。

胸がキュッと痛くなる。誰かを想ってどうしようもなく恋しくなる。でも、いつまでも俯いてはいられないし、未来を諦めたわけじゃない。そんな、脆いけれど強い生き様をリアルに描き出すセンチメンタルリリーの音楽は、ものすごく今っぽい気がする。


センチメンタルリリー

京都、大阪中心に活動中。2022年8月、京都衣笠で結成。キャッチーなメロディとサウンドが特徴の若手ギターポップロックバンド!


(文・三橋温子)

INFORMATION

HEYDAY!

【日時】
2023年8月8日(火)
OPEN 15:00 / START 15:30

【会場】
新宿MARZ(Official Website
新宿Marble(Official Website

【料金】
一般:前売3,800円、当日4,300円(いずれも税込/ドリンク代別途必要)
学割:前売2,800円、当日3,300円(いずれも税込/ドリンク代別途必要/学生証提示)

【チケット】
イープラス(購入はこちら
※2023年7月10日(月)12:00 販売開始

【出演
um-hum / KADOMACHI / スズキケント / センチメンタルリリー / downt / バイリンジボーイ / 穂ノ佳 / RIP DISHONOR / RINNEEE(吉田凜音)

【主催】
HEYDAY! 制作委員会

【協力】
Eggs / 東放学園音響専門学校 / ヂラフマガジン

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