再生ボタンを押した時、カーテンが揺れて本のページが捲れた。雲の形が変わり伸ばしかけの髪がなびいた。
その風は晴れた日の屋上に吹いているような強風の時もあるし、明け方に星を探しながら歩いている時に感じるやわらかな風のような時もある。それがどんなものであろうが、吹き抜ける風にはいつだって心揺さぶられる。
自分が生まれるよりもずっと昔、顔も名前も知らない誰かもこの風に吹かれていたのだろうか。
バイオグラフィー
cadode(かどで)は、koshi(Vocal)、eba(Music Producer)、谷原亮(General Manager)からなる、虚無感と情動をテーマにポップミュージックを作る廃墟系ポップユニット。廃墟の持つ時の流れの歪さ、寂寥感、美しさ、わびさび、を「虚無感と情動」として表現している。
2016年、koshiとebaが友人を介して知り合う。2人は廃墟散策など趣味の合うただの友人であったが、作曲家として発注を受けて制作する音楽ではなく、自分の作りたい音楽への憧憬のあったebaがkoshiをボーカルとして勧誘。理由はeba曰く「カラオケに行ったら声が良かったので」。
2017年、音楽マネジメント業を行う株式会社F.M.Fのマネージャーであった谷原亮を「メンバーに入れてしまえば本気でやらざるを得なくなるから」とメンバーに勧誘。
cadodeのメンバーは全員が会社勤めを経験したことがあったが、結成にあたりebaは工場勤務から作家へ、koshiは会社員をやめて歌手に、谷原亮は所属作家との出会いをきっかけに音楽業界へ転身し、一年発起で新しい世界へのスタートを切った。
2018年4月18日に初の音源『Unique』を配信し活動開始。以降、音源の配信を中心に精力的に活動し続けている。
なお、cadodeという名前は新しい音楽の門出、誰かの新しい発見や体験の門出になって欲しいという思いから名付けられている。
どこでもないこの場所から過去や未来を想うこと
『暁、星に』『カオサン通り』そして『たらちね』
『暁、星に』
明け方にベランダで星を探すのが日課になった。スマホの画面はずっと割れていて、くだらないスタンプには既読がつかないままになっている。
生きている限りは失うことばかりだ。別れはいつだって悲しく、大切なものを根こそぎ奪っていく。それを死ぬまで繰り返す。喪失には慣れることはない。だがこの曲を聴いていると、失ったものの存在は消えることのない星として自分の中にあり続けるのだと思える。
『カオサン通り』
焦燥感と何かに対する諦めを抱き、少しだけ投げやりになっている大きなリュックを背負った若者の後ろ姿が見える。タイ・バンコクに実在する「カオサン通り」をモチーフにした楽曲。
カオサン通りはバックパッカーの聖地と謳われており、koshi(Vo.)がバックパッカーだったことからカオサン通りを楽曲のモチーフとしたと考えられる。
『たらちね』
誰かがこの世界からいなくなったとしても新しい朝はくる。それに気づいた時の背筋が寒くなるような感覚が忘れられない。数年前に祖父が鬼籍に入った日のことで、よく晴れた秋の空がとても美しかったことを憶えている。
あの感覚の正体が「生きている・生かされている」ことへの畏れだと気づいたのは、この楽曲を聴いている最中だった。
(文・望月柚花)
【cadode 独占インタビュー】目に見えるすべてと生き、目に見えないすべてを想う。廃墟系ポップユニット・cadode
誰かを失うと、絶対に忘れないと思っていたはずの笑顔や泣き顔、繋いだ手の温かさ、他の誰とも似ていない声、そういった大切なものが少しずつ薄れていってしまう。あなたがどんなふうに喋って、どんなふうに笑ってい...
PROFILE
cadode(かどで)
日本の音楽プロダクト。名前は“新しい音楽の門出、誰かの新しい発見や体験の門出になって欲しい”という思いから命名。“廃墟系ポップユニット”のコンセプトの下、ジャンルの概念を撤廃した曲作りが特色。2018年に初EP『0』を発表。その後、配信シングル『タイムマシンに乗るから』がFMラジオ局や配信チャートにランクインして注目され、好評価を獲得。以降、精力的に配信作品などを手掛ける。2020年に1stミニ・アルバム『2070』をデジタル・リリース。(TOWER RECORDS ONLINEより抜粋)
メンバー
koshi(Vocal)
eba(Music Producer)
谷原亮(General Manager)
活動開始
2018年
主な活動拠点
東京都
HP / SNS
公式サイト
公式Twitter @cadode_
公式Instagram cadode_
公式YouTubeチャンネル
RELEASE
1st Mini Album
『2070』