【ALPACAS】剥き出しの人間を魅せる轟音オルタナティブ、結成十余年を経ていざ高知土佐より全国へ

曽我美 なつめ

曽我美 なつめ

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四国は高知を拠点とし、かれこれ十数年以上にわたり焦燥感溢れる轟音を響かせ続ける、ソリッドないぶし銀のバンドがいる。

汗と埃とアルコールの歴史を粛々と積み重ねる、薄暗い小さなライブハウス。文字通り脈々と世代を超えその血を受け継ぐ地方オルタナシーンで今なお熱い支持を受ける、その名をALPACAS(アルパカス)という。

決して時代のメインストリームを張る煌びやかなポップエレクトロでもなければ、過酷な社会を生き抜く人々を癒すチルソングでもない。それでも彼らが十云年の活動を経て、この地方都市・高知に腰を据えたまま、昨年2022年にかのSPACE SHOWER MUSICからシングル『マヲウメルソッカ』をリリースするという一報を聞いて私はこう思ったのだ。

「ああ、やっと彼らが然るべき人に見つかる時が来た」と。


聴くものに郷愁と興奮を、そして時に緊迫を纏う厳かな情動を

彼らの真価は圧倒的にライブハウスでこそ発揮されると言っていい。バンドはシンプルな3ピース編成。しかしその様相からは一見想像もつかないほど膨大な音圧の塊で、彼らは狭く密閉された空間をたった一撃の音で制す。

じりじりとした硝煙の匂いを纏うギターに、人間の生々しい心拍を彷彿とさせるベースとドラムの脈動。確固たるサウンドの地盤の上に乗るのは、郷愁を漂わせながらもからりとした音を孕むVo./Gt.里見岳哉の声だ。

叙情的な旋律を奏でつつも、ふいに楽曲の中で鳴り渡る独特の緊迫感に満ちたメロディ。

“ALPACAS節”とも呼ぶべき他に類を見ないこの響きを耳にすると、さながら朗々とした圧のある読経の声を浴びるような、どこか重苦しくも厳かな気持ちにすらなることがある。

彼らの音を聴くと、興奮と同時にどこかそういった神仏を前にし、その道の教えに触れるような——そんな心持ちになるのは、その音が人の血肉に密接し、人間の根幹に近い所で鳴っていることの証左でもあるのかもしれない。

『朦朧』
ALPACAS
youtube動画
断絶を経た世界で鳴り響く、バンドの“意義”たる人間の音

世界的な感染症の蔓延によって、人間が営む社会や文化のあちこちに発生した大きな断絶。密環境が常態化していた音楽の世界も、その影響を多分に受けたことは周知の通りである。

それでも、人間が音楽を作ることを辞めることはなかった。

対面作業の代替措置として広がり始めた、機械と共に音楽を作る行為。だがその環境が数年続けば、いつしかそれが新しい時代ではスタンダードとなる。楽器を弾けなくてもPC1台あれば、あるいは楽器を弾けたとしても、家の中で1人音楽を作ることが今や当たり前となった。

むしろその方が簡単かつ効率的に音楽を作れる今、それでも人と人とが音楽を作る意味とは。楽器を持ち合い、狭い防音室の中で顔を突き合わせながら曲を書く意義とは。

“人間にしかできない音楽を作る”ことに尽きるのではないかと、私は考えている。

『アリノスサビ』
ALPACAS
youtube動画


宗教とは、人間の人間による人間の為の価値観だ。

その概念を孕むALPACASの音は泥臭くも美しい人間らしさに満ちており、だからこそ“今の時代にバンドという個体が鳴らす音”として、ひとつの最適解に近いもののようにも感じてしまう。

剝き出しの人間の、生身の触感や情感を想起させる音。それもまた、地方の土着的な風土で育まれた、彼らの魅力を形づくる大きな要素のひとつなのかもしれない。

反響する耳鳴りに沸々と湧く郷愁と興奮。神仏への畏怖と敬意を思い起こさせる情動。音を浴びる観客の中にそれらを呼び起こすALPACASの音は、紛うことなく、人間が不格好な手で、俗物めいた価値観で、歪に紡ぎ出したバンドという個体の号哭だ。

その煌めきを、格好良さを、今の時代だからこそ人間らしさに満ちた音楽を求める全国津々浦々の人々へ——。華々しく全国デビューを果たし、勢いに乗ろうとする今、一人でも多くのリスナーに届くことを願っている。

(文・曽我美なつめ)


PROFILE
ALPACAS

ALPACAS(アルパカス)

ハードコア/グラインド/オルタナ/パンク/オールディーズを匠に融合させるハイブリッドロックバンド。

メンバー

L→R
コッピー(Bass)
里見岳哉(Vocal / Guitar)
セキパカス(Drums)

活動開始

不明

主な活動拠点

高知県

HP / SNS

Twitter @ALPACAS_BAND
Instagram @alpacas_band
TikTok @alpacas__band
YouTube

MESSAGE

土佐は高知のALPACASです。

美しき旋律は土佐の太平洋より。轟音は土佐の大海原より。山々よりも美しき旋律。

完璧なREC環境、完璧なプロモーション、高橋健人監督による完璧な楽曲映像。にもかかわらず全くたっすい(土佐弁でヌルい感じ)結果しか出ていない、異例のバンド。

しかし我々は土佐バンドキッズの夢と希望を背負い、今日も軽バンに乗り全国のライブハウスを回っている。

高知道はトンネルが多すぎる。今22個目中の4個目だ。

ライブはどうかというと、LOSTAGEの五味さんには、「お前らからは文化の匂いがしない、汗の匂いしかしない」と言われるほどだ。ex-NUMBER GIRLの中尾健太郎さんにも「最高」と言わしめるほどである。

嘘だと思うなら、ライブハウスに是非来てみてください。
あなたの街にも行きますよ。たくさんのトンネルを越えてね…

ALPACAS

RELEASE
2023.04.26 Release
4th Single

『#111』(ナンバーイチイチイチ)
ALPACAS

短く端的な歌詞とリフレインを多用するのが特徴のALPACASが、生きていく中での儚さや憂いを高い熱量で表現した2分39秒。

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