「フジロックは憧れるけどハードル高すぎ」 そう感じているフェス初心者のみなさんに、初めてでも気軽に参加できるフェスを紹介したい。
各地で邦楽ロック系のフェスが乱立した2000年代、いわゆるフェス戦国時代を経て、近年は都市型フェスや音楽以外の要素を組み合わせたフェスが人気となっている。これらの「とっつきやすい」フェスを足がかりに、老舗大型フェスや地方フェスへ参戦する人も多いだろう。
今回紹介するのは、「車がなくてもアクセスしやすい」「規模が大きすぎない」「普段着でも行ける(行こうと思えばフジも行けるけど…)」の3点をクリアするおすすめフェス。すべてわたしが実際にリピート参戦しているフェスなので、楽しむためのポイントや注意点もあわせてお伝えする。
※東京在住のため首都圏目線のセレクトとなっていることをご了承ください。
邦楽ロックが好きなら
TOKYO METROPOLITAN ROCK FESTIVAL(東京)
時期 | 毎年5月 |
日数 | 2日間(前週に大阪で2日間開催) |
場所 | 東京都江東区 若洲公園 |
アクセス | 東京メトロ有楽町線 新木場駅よりシャトルバス |
チケット先行発売 | 前年12月頃〜 |
出演アーティスト | 邦楽ロックが中心 |
ステージ数 | 4(2024年) |
2013年スタートの都市型フェス、通称メトロック。2016年以降は東京・大阪の2会場で開催されている。東京会場の若洲公園へは、東京メトロ有楽町線・新木場駅からシャトルバス。東京近郊にお住まいなら気軽に足を運べる距離感だ。
アクセスのしやすさもさることながら、5月ならではの暑すぎない気候も魅力。大きな風車がシンボルマークのメインステージエリアは、一面芝生で木陰もあり。ほかにステージが複数あるが、いずれもメインステージエリアの出口から歩いて5〜10分で行けるコンパクトな会場となっている。フードエリアには広めのテントとベンチがあり、休憩時や雨天時に重宝。
邦楽ロックシーンを盛り上げている人気バンドを中心に、2017年には関ジャニ∞(SUPER EIGHT)、2019年にはあいみょん(大阪のみ)など話題性のある顔ぶれにも毎年注目が集まっている。
ひとつだけ注意が必要なのは、新木場駅発着のシャトルバス。開演前・終演後はかなり並ぶ(とくに終演後は1時間以上並ぶこともある)ので、可能な限り時間をずらすことをおすすめする。
往路は東西線・東陽町駅から若洲キャンプ場前行きの路線バスで行くという裏技もあるが、住民のかたのご迷惑にならないように注意。当日は新木場駅前・若洲公園前どちらにもタクシーがけっこういるので、大人の力を行使するのもアリ(片道1500〜2000円程度だったと思う)。余力があれば徒歩でもいいが、1時間ほどかかるので気をつけて。途中のコンビニで缶ビールを買い、飲みながら帰ったことがあるが、予想以上に遠くて最後のほうは全員無言になった記憶がある。
それさえクリアすれば、全体的にはとても快適なフェス。毎年12月にはチケット先行販売が始まるのでお見逃しなく。
GWの小旅行を兼ねるなら
JAPAN JAM(千葉)
時期 | 毎年5月 |
日数 | 5日間(2024年) |
場所 | 千葉県千葉市 蘇我スポーツ公園 |
アクセス | JR京葉線・外房線・内房線 蘇我駅より徒歩8分 |
チケット先行発売 | 前年11月頃〜 |
出演アーティスト | 邦楽ロックが中心 |
ステージ数 | 4(2024年) |
rockin’onが主催する野外フェス。2010年のスタートから何度か場所を変え、2017年より蘇我スポーツ公園で開催されるようになった。
2015〜2016年の幕張海浜公園での開催(名称はJAPAN JAM BEACH)もよかったが、個人的には現在のロケーションが好きだ。初年度の2017年は、周囲がまったく見えなくなるほどの砂ぼこりが発生して心が折れかけたが、翌年には芝生が整備され、非常に快適になった(この対応の早さにも大変好感が持てる)。
2019年の総動員数は2017年の2倍にもなる11万人(1日3〜4万人)だったが、敷地の広さのせいか混雑している印象はなく、むしろ開放感がある。3つあるステージは規模がほぼ同じで、隣接しているため行き来しやすい。また、フェス中は敷地内のフクダ電子アリーナが開放されており、休憩時や雨天時に困らない点も嬉しい。
2024年は、若手・新人アーティストをピックアップするステージが2つ設けられた。同じくrockin’onが主催する大型夏フェス・ROCK IN JAPANもこの会場で開催されるようになり、2つのフェスの差別化が気になっていたところだったので、JAPAN JAMが次世代アーティストによりフィーチャーするようになったのは嬉しい進化。
以前はフェス名の“JAM”のとおり、出演アーティストらによるその日限りのセッションが見どころのひとつだったが、近年はあまり実施されない。その再開にもぜひ期待したいところ。
帰りの東京方面の電車が混雑するのはつらいが、GWの小旅行を兼ねるなら、蘇我駅や千葉駅のビジネスホテルに宿泊してもいい。わたしは蘇我駅から内房線をくだって君津駅に泊まり、翌日に内房線で浜金谷駅まで行って、金谷港→久里浜港の東京湾フェリーで帰路についたことがある。大人片道800円で40分のクルージングが楽しめるので、旅行気分を盛り上げたいかたはぜひお試しあれ。
都心でスカダンスするなら
SKAViLLE JAPAN(東京)
時期 | 毎年9〜10月 |
日数 | 1日間 |
場所 | 東京都千代田区 日比谷野外音楽堂 |
アクセス | 東京メトロ丸ノ内線 霞ヶ関駅より徒歩3分 ほか |
チケット先行発売 | 5月頃〜 |
出演アーティスト | 邦楽・洋楽スカが中心 |
ステージ数 | 1 |
日比谷野音という東京ど真ん中の会場でありながら、都心であることを忘れるくらい開放的でピースフルなフェス、通称スカヴィル。1997年にスタートし、日本のベテランスカバンドであるOi-SKALL MATESやTHE SKA FLAMESをはじめ国内外のアーティストが出演。過去には東京スカパラダイスオーケストラやKEMURIが登場したこともある。
コロナ禍を経て2023年はCLUB CITTA川崎で開催されるなど、野音以外が会場になることもあるが、スカヴィルといえばやっぱり野音!というスカファンは多いのでは。
スカヴィルの魅力は、なんといってもアーティスト&オーディエンスの一体感。ステージと客席の距離が近く、いちおう全席指定なのだが開演後はみんな思い思いの場所で踊りながらステージを楽しむという暗黙のスタイルが浸透している(前方エリアのみ、自分の座席番号のチケット半券がないと入れない)。
持ち込み可のため、周辺のコンビニでお酒やおつまみを買って参加する人が大半。足りなくなったら会場内の売店でも買うことができる。みんなほろ酔いなので、いつの間にか知らない人同士で踊っているといった光景も茶飯事。ただし終演後にはみんなでゴミ拾いをするなど、マナーも忘れていないところが素晴らしい。
落ち着いてライブを楽しみたいかたには向かないかもしれないが、賑やかに盛り上がりたいタイプにはぴったり。都心なので帰りも楽々だ。ライブ情報の公開が遅めで、過去には当日までタイムテーブルが発表されなかったこともあるので、あまり気にせず気長に待つのが吉。
天候に左右されず楽しむなら
山人音楽祭(群馬)
時期 | 毎年9月 |
日数 | 2日間 |
場所 | 群馬県前橋市 ヤマダグリーンドーム前橋 |
アクセス | JR各線・上越新幹線・北陸新幹線 高崎駅、JR各線 新前橋駅よりシャトルバス |
チケット先行発売 | 2月頃〜 |
出演アーティスト | 邦楽ロックが中心 |
ステージ数 | 2(2023年) |
新幹線・高崎駅からシャトルバスで行ける山人音楽祭は、群馬出身のG-FREAK FACTORYが主催するロックフェス。前身は2012年スタートのGUNMA ROCK FESTIVALで、2016年に現在の名称に改名した。
メインステージはヤマダグリーンドーム前橋のアリーナ内。スタンディングエリアで楽しむのもいいし、お酒やフードを片手にスタンド席から大人見するのもいい。地下1階のサブイベントエリアには別ステージがあり、この2ステージは完全屋内。コロナ禍を経てステージ数が毎年変化しているが、ドーム外の芝生エリアに3つ目のステージができることも。フードエリアも屋外にあり、ちょっとした野外フェス感を味わえる。
以前はステージ間の動線があまりよくなく、かなり余裕を持って移動しなければ見たいアーティストに間に合わない点がネックだったが、現在では大幅に改善されており快適。ただ、サブイベントエリアのステージに行くには狭い階段を通らなければならず、ステージエリア自体も小さめなので、入場規制がかかる場合も。アーティストによっては早めの移動を心がけたい。
初めての地方フェスなら
RUSH BALL(大阪)
時期 | 毎年8〜9月 |
日数 | 3日間(2023年) |
場所 | 大阪府泉大津市 泉大津フェニックス |
アクセス | 南海本線 泉大津駅よりシャトルバス |
チケット先行発売 | 3月頃〜 |
出演アーティスト | 邦楽ロックが中心 |
ステージ数 | 2 |
首都圏以外のフェスに行くなら、RUSH BALLはいかがだろうか。1999年にスタートし、2005年から現在の会場で開催されている。
おすすめする最大の理由は、関西国際空港から近いこと。南海本線急行に乗って20分ほどで最寄駅まで着いてしまう。関空はLCC路線が充実しているので、LCCを使えば旅費も意外とかからない。
会場の泉大津フェニックスは広大な埋立地で、フェス時には多目的緑地に野外ステージや各種設備が設置される。メインステージともうひとつのステージは同じ緑地内にあり、交互にライブが始まるため多くのアーティストを楽しむことができる。人気邦楽ロックバンドに加え、ヒップホップや若手など幅広いアーティストが出演する点も特徴。
会場内には日陰がほとんどなく、海風も強いので、熱中症や防風対策はくれぐれも忘れずに。泉大津駅周辺のホテルは限られていて価格も高めなので、予約がとれなければ関空周辺や、南海本線沿線にある岸和田駅や堺駅で探してみるといいと思う。
行ってみたいフェスを見つけたら、あとはチケットをゲットするのみ。例年11月頃から先行販売がスタートするフェスもあるので、公式サイトをこまめにチェックして情報公開を待ちたい。
開放感抜群のロケーションで音楽に身をゆだねる心地よさ、多くのかたに味わっていただけますように!
(文・三橋温子)