【Hue’s】日常と自然、普遍的なテーマを通して描き出される新世代ロックバンドの世界観

竹内 将真

竹内 将真

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音楽を好きになる理由は様々だと思う。共感できる歌詞、好みのメロディーライン、真似したくなるような楽器のプレイなど、聴き手によって様々な理由が考えられる。

その数多くある理由の中で、私は楽曲に込められた「世界観」や「テーマ」に心が惹かれる。世界観やテーマを知ると、その作品に対する愛情がもっと深まり、アーティストという遠く離れた存在をより身近に感じられるからだ。

だから私はもっと多くの人に、歌詞やサウンド、アーティストから語られる言葉を通して、これらを感じ取ってほしいと思っている。

今回、私が大好きなバンドの1つであるHue’s(ヒューズ)にお話を伺う機会をいただいた。彼らから語られる言葉を通して、Hue’sが描く作品の世界観やテーマを感じ取ってほしい。初めて彼らの楽曲に触れる人も、すでに触れている人も、Hue’sの紡ぎ出す世界により深く潜り込むことができるだろう。


Hue’sが与える「懐かしさ」の源泉

Hue’sは、2016年にライブハウスで知り合った仲間で結成されたロックバンド。2022年3月に待望のフルアルバム『Hz-adopt』をリリースし、現在も精力的に全国のライブハウスでライブを行っている。

そんな彼らの楽曲は「懐かしい」「ノスタルジック」と評されることが多く、私も聴いていると、どこか懐かしいと思う時が何度もあるから不思議だ。故郷に似た場所を訪れた時に感じる、「何故か知っている」という感覚に近いものを感じるのだ。

過去の経験や出来事を元に楽曲制作することが多いので、それがノスタルジックなものとして聴く側に届いてたりするのかもしれません。あと個人的に、僕は小さい頃からテレビで流れる歌謡曲やJ-POPを聴いて育ってきたので、どうしても歌メロが懐メロっぽくなりがちです

そう語ったのはVo./Gt.の中嶋龍之介。Hue’sが我々リスナーに与える「懐かしい」という感情は、おそらく「中嶋龍之介」というフィルターを通して描き出された過去が源泉となっているようだ。

またHue’sの歌詞を改めて眺めてみると、生活を描いたものが多いことに気づく。私達が気にも止めず、過ぎ去っていった日々。そのような生活のリアリティも、リスナーの楽曲に対する親しみや共感を誘い、懐かしさに繋がっているのではないだろうか。

歌詞の着想については、「電車での移動中や公園のベンチ、コインランドリーなんかで考えることが多いです。ファンタジーっぽい歌詞だねと言われることが多いですが、実は生活的な場面から着想を得ていることが多いです」と答えてくれた。

『ベランダ』
Hue’s
youtube動画
「自然」という、Hue’sを流れる共通項

歌詞は主観的な色が濃く出る。だから、その人が持つ色でしか描けない。だが一方で、サウンドは、絵の具を混ぜて新しい色をつくるように、個々のルーツや価値観を混ぜて生み出される。Hue’sのメンバーは、Gt.大島旭以外はロキノン系をルーツとしているが、影響を受けたアーティストは全く異なる。

Vo./Gt.中嶋はトム・ヨークや藤原基央、Gt.大島はTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTやアベフトシ、Ba.水谷将也はASIAN KUNG-FU GENERATIONやDr. DOWNER、Dr.根來真嗣はPolarisや星野源に影響を受けている。

楽曲は中嶋がコードとメロディーを考え、構成やテンポ感をリズム隊と相談し、アレンジやサウンドディレクションは大島と相談して決めていくという、古典的なスタイル。だが、彼らの面白いところは、「うちはリファレンスの出し方が少し独特で、ここはもっと水っぽくとか、光っぽくとか、そういう表現で話し合ったりします」と中嶋が語るように、リファレンスに抽象的な表現を使っていることだろう。このようなリファレンスは、彼らのインスピレーションの源泉に「自然」という共通点があるからだと思う。

人と人の間にある憂いやなんとも言えないやるせなさ、それらが耐え切れず爆発する瞬間を余すことなく生々しく具現化したいと常々思っています。最近の楽曲は、 “冷え切った静かな森の中でやる焚き火”や“ジリジリと焼け焦げつく陽の下で浸かる海の温度”みたいな、自然の中にあるものを音楽にしてやりたいと考えてつくっています

サウンドディレクションを担当するGt.大島の語りからも、彼らは自然の感覚を音楽として描き出したいと考えているのだとわかる。例えば、「umi e umi e」という楽曲は、朝焼けから徐々に昼へと向かう海のイメージを楽曲全体から受ける。波のような軽快かつ広がりのあるギターサウンドと小気味良く芯のあるリズム、そしておおらかで温かみのあるメロディーライン。各楽器の奏でる音が、とても自然らしく調和しているなと感じる。

それぞれの音楽のルーツが色だとすれば、「自然」はHue’sの根底に流れるテーマのようなものだろう。自然というテーマの上に何層もの色を重ねて、生み出されたもの。それがHue’sの楽曲なのである。

これからのHue’sの航海が向かう先

それを考えながら次作を制作してます

Vo./Gt.中嶋の答えには期待しか感じられない。これからのHue’sの航海の行き先を考える余白をリスナーに提示してくれているからだ。一体、どこへ向かっていくのだろうか、そんなことを考えると期待に胸が高鳴る。

また、Gt.大島が語るように「ボーダーレスに狂うオーディエンス、ステージで音を鳴らすHue’s」でいつまでもあリ続けてほしいと思っている。そんな彼らが大好きだからだ。

さて、今回はHue’sのメンバーが語った言葉から、彼らの楽曲が持つ世界観やテーマを汲み取ってみた。「日常」や「自然」のような普遍的なテーマを楽曲に落とし込み、彼らにしか出せない世界観に昇華させている。今後、彼らの音楽はどのような世界観にたどり着くのだろうか。彼らの次回作、そして今後の活動を楽しみに彼らの音楽に浸り続けたいと思う。

(文・竹内将真)


PROFILE

Hue’s(ヒューズ)

大阪を拠点に精力的にライブ活動を行う4ピースロックバンド。洋楽オルタナティブシーンに強く影響を受けたサウンドで身体を揺らし、どこか懐かしさや優しさを感じるメロディーと伸びやかな歌声で心を掴む。大胆かつ繊細な表現が心に響く、202X年型ロックバンド。

メンバー

中嶋龍之介(Vocal / Guitar)
大島旭(Guitar / Chorus)
水谷将也(Bass / Chorus)
根來真嗣(Drums / Chorus)

活動開始

2016年

主な活動拠点

大阪府

HP / SNS

Official Website
Twitter @hues_band
Instagram @hues_official
YouTube @hues_band

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