【pluck.独占インタビュー】「普通」にとらわれない、新しいアプローチのプロジェクトバンドとは

望月 柚花

望月 柚花

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パンタレイ(万物流転)という言葉を知っているだろうか。「この世のすべては絶え間なく変化しつづける」という意味の言葉だ。

この言葉を聞いて思い浮かぶのは、変わることをいとわず形を保つことにも執着しない彼らのこと。どこまでも柔軟で自由に、音楽を心から愉しんでいる。pluck.はそんなバンドである。

今回は2019年より新体制となって初のシングル『pale』のリリースの機会ということもあり、メンバー全員にリモートで話を伺うことができた。


アーティストプロフィール

pluck. (ぷらっく)
Yoshitake(Dr.)、Yuya Ishii(Ba.)、くわはらさん(Gt.)、Shohei Yasuda(Vo.)。2018年、配信限定コンピレーション・アルバム『mona SUITE SPOT 〜to the next stage〜』に当時のメンバーで演奏した即興のインストが採用されたことをきっかけに、配信サービスでのリリースを開始。同時にバンド名を『pluck』から『pluck.』に変更し、2019年より現在の4人編成となる。オルタナティブロックやエレクトロ等、各々のルーツに基づいた多岐なジャンルの楽曲を制作。(pluck. HPより引用)

Yoshitake
リーダー・プロデューサー兼ドラムを担当しています。 懐かしくて綺麗なものが好きで、toeや写真家の岩倉しおりさんが創る作品に憧れを抱いて、バンド活動を始めました。とある親友から言われた言葉ですが、僕を一言で言い表すと「多様性の塊」だそうです。

Yuya Ishii
ベース・作曲、デザイン周り担当。趣味は毎日の新譜リリースのチェック、スケボー。最近はイラストを勉強中。

くわはらさん
ギター・作曲・ミックス・マスタリングを担当しています。ryo(supercell)とEGOISTの音楽を好みます。趣味は料理とコーヒーを入れること。あと、お寿司。

Shohei Yasuda
ボーカル担当。LINEスタンプ(自分ツッコミくま / ちいかわ)とハンターハンター、ヒカルの碁、東京喰種をこよなく愛しています。独学でプログラミングを勉強しながら歌ってます。

「普通の」バンド活動をしなくても
——pluck.は、いわゆる「普通の」バンドとは少し違った形で活動しているそうですね。具体的にはどのように活動されているのでしょうか。

Yoshitake: 現在の編成になったのは、自分が2019年の初めに都内に越してきてから。当初は普通のバンドを目指して一緒にやってくれる方にメンバーとして入ってもらいましたが、現在はテレワークに近い形で活動を継続しています。 具体的には、月に1回のオンラインミーティングとグループLINEでのやり取りのみをルーティンとして行い、各自の空いた時間で創作・制作活動をしています。バンドでの役割や制作スケジュールは4人で話して決めて、オンラインミーティングの際に都度見直しています。

メンバー同士スタジオに集まって、音を合わせて作曲して、ファミレスで喋ってレコーディングしたりライブしたり…っていういわゆるバンド活動は、メンバーの居住地が離れていることと、各自の家庭や仕事を第一に優先していることから、コロナ禍に入る前からほとんど実施していません。 

——対面での活動をやめる上で、オンラインのみでのコミュニケーションやリモートでの楽曲制作に不安などはありませんでしたか?

Yuya: 初めはスタジオワークやライブ活動をやめることへの不安はありましたが、日頃の些細な連絡や定期ミーティング、進捗報告をこまめに行うことでバンド活動は十分成り立つことが分かりました。自分は出不精なせいもあり、スタジオ通いを必要とは感じつつも負担に感じていたところもあるので、結果的に今はストレスなくやれてます。

——オンラインミーティングやグループLINEで、メンバーの皆さんがどのようにやりとりされているのか気になります。

Yoshitake: オンラインミーティングでは、Pre-Reading(事前資料)を事前に配布して、共有したいこと・確認したいこと・決めたいことに分けて話をしています。グループLINEはその逆で、最近聴いている曲や気になった動画を送り合ったりと日常的なやりとりに使っています。リリース直前は全体での確認事項が多いので、グループLINEで各自制作レビューをしたりしています。

——想像していたバンドのミーティングと全く違って驚きました!

Yoshitake: わりと仕事ライクなやり方だと思います。近況報告と称した5分間スピーチから始まりますし(笑)

——Instagramでのイラストを添えたコラムの連載も印象的でした。

Yoshitake: あの企画は今年の9月からスタートしました。現在は、楽曲の面ではタイトに進捗報告をする制作もないので、“we will do what we like continuously.(好きなことを続けていく)”をテーマに各週ごとにメンバーがローテーションでコラムの投稿を継続しています。

Yuya: 我々に興味を持ってもらうための取っ掛かりは別に音楽だけでなくても良いと思っていて。各々の人柄や趣味、ルーツなどを知ることで「この人たちの作る音楽を聴いてみたい」と感じてもらえたら嬉しいなと思ってます。そういった意図もあるゆえ、コラムには実写の本人像以上に人柄や雰囲気が伝わるような親しみやすさのあるデフォルメイラストを描き添えています。

スタートから現在に至るまで
——pluck.の始まりはどんなものだったのでしょうか。結成のいきさつについてお聞きしたいです。

Yoshitake: 2015年の末ぐらいに山口県のメンバー募集掲示板で見つけたバンドに加入したのがpluckの始まりです。 最初の顔合わせで集まり、もつ鍋を食べながら初合わせの課題曲とバンド名を皆で考えた際に、「もつ」を英語にしたら?と提案して、満場一致でpluckに決まりました。

——バンド名の由来がもつ鍋の「もつ」だったのはびっくりです…! スタイリッシュなバンド名だなと思っていたので…。

Yoshitake: 後付けではあるのですが、pluckには「弦をかき鳴らす」という音楽的な意味や、「勇気」というポジティブな意味もあることを知りました。バンド名としては今でも気に入っています。

——そこから趣味ではなく本格的にバンドとして活動するようになったきっかけを教えてください。

Yoshitake: 趣味の社会人バンドでも十分楽しかったのですが、toeのlive DVD(CUT DVD)に収録されている「グッドバイ」をある時思い出したように深夜に観たら、toeの高い演奏力と歌っているように聴こえる柏倉さんのドラムに涙を流すぐらい感動して。それを機に彼らについて調べると、toeのメンバーの皆さんはインテリアデザイナーやエンジニア、アパレルデザイナーなどそれぞれ別の仕事を持ちつつ活動していることを知り、これは自分が理想とするバンドの活動スタイルだと感じました。そこがきっかけですね。

実際に趣味の枠を少しずつ越え出したのは、2017年の終わり頃にmona recordsのオーディションに当時のメンバーに内緒で応募したぐらいからだと思います。といっても当時はレコーディング音源もまだなく最新のライブ映像のリンクを送っただけで、それも最新とは言いつつ2年間でたった3回しか人前で演奏していないので、いま思えば攻めた応募ですね(笑)

——活動初期はどのような構想を抱いていたのでしょうか。

Yoshitake: 僕自身はドラマーではありますが、その他にはプランを考えたり、取りまとめをしたりといったスキルしか持ち合わせていません。なのでpluck.を作り変えた当初は、バンドに関わることはその道のプロや長く続けている人にお願いしようと考えていました。作曲やボーカル、HP・ジャケット・MV制作、スチール・ムービー撮影、モデル、スタイリストなどですね。ざっくり言うと、作品ごとに人を集めるプロジェクトバンドをイメージしていました。

餅は餅屋、ということわざに肖って…というか、昨今のビジネスの主流となっている考え方をバンドに当てはめてみたら、プロジェクトバンドっぽい感じになった。それだけですね。 

——2019年からは現在のメンバーで活動されていますが、互いの印象やエピソードなど、皆さんの出会いについてのお話を伺いたいです。

くわはらさん: 同僚ではありましたがあまり関わりがなかったYoshitakeさんに、ある日の昼食中に声をかけられたのがきっかけです。話を聞いてみると、Yoshitakeさんが組んでいたバンドのギター担当が東京に引っ越すからギターを探しているという話で、それからゆるい関係が続きメンバー再編の時期から本格的に制作に参加しました。

そこでグループLINEに招待された際に、“師匠”(Yuya Ishii)の存在を知りました。直接会ったわけではないですが、的確に意見するところや、ベースやら写真やらイラストやらなんでもできる感じでなんかすんごい人がいるぞ、東京ってのはやっぱすごい人がいるもんだという第一印象でした。

Yuya: めちゃくちゃ恥ずかしいな(笑)。自分は知人からの紹介でpluck.のMV撮影の依頼を受けたことからYoshitakeさんと知り合いました。それ以降アートワークの制作と並行してサポートベーシストとして楽曲へ参加するようになり、現メンバーが揃う頃に正式に参画しました。

Shohei: 僕は社会人になるタイミングで『sing』というカラオケアプリを始めまして、そこでカバーの投稿を続けていたらアプリのユーザー間でライブに出ないかと声を掛けていただきまして。そのライブで人前で歌う楽しみを覚えて、「こういう活動をもっとやってみたい」と思ってバンド募集掲示板に自分のボーカルを載せたら、それを見たYoshitakeさんから声を掛けていただきました。バンドの概要を聞き、「ネット発」と聞いて最初は構えたけど、会った時のギャップは大きかったですね。彼が千葉に引っ越してきたタイミングで初めて会い、ゆるっと加入が決まりました。

——振り返ってみて、バンドとしてのターニングポイントはどこだったのでしょうか。

Yoshitake: わりと最近ですが、「pale」の次にリリースを予定している曲のデモに歌詞ありのボーカルが乗った時だと思います。その仮歌を聴いた瞬間、全員が勇気をもらったような気がしました。

ちなみにその曲は、最初僕から全編英詞のリリック案をShoheiくんに共有して試しに歌ってもらい、歌いづらい歌詞を修正していったのですが、その作業の中でリリックに自分自身を重ねることが多かったというのもあります。現在の4人が一致して感じている、バンドとしてのターニングポイントはそこだと思います。 

4th single『pale』、オンラインでの楽曲制作
youtube動画

pale – pluck. Lyric Video(©︎2020 Photo by 岩倉しおり)

——新曲「pale」についてですが、こちらの楽曲はどのような経緯で制作されたのでしょうか。

Yoshitake: 8月の初め頃に、かねてよりファンだった写真家・岩倉しおりさんの写真集『さよならは青色』に収録されている夏~秋の写真をイメージして、夏の終わりを連想させる楽曲を制作したいと師匠に提案したら、フルバンドのデモを作ってくれて。 

Yuya: 岩倉さんの写真作品から、瞬く間に過ぎ去ってしまう晩夏の儚さや日差しのきらめきのイメージが浮かんだんです。そこで、生鳴り感のあるキラキラしたクランチギターとベースとのアルペジオの掛け合いをメインに展開し、サビ1回で駆け抜けるシンプルな構成の楽曲にしました。

——今回の「pale」も含め、オンラインでの楽曲制作はどのような形で行っていますか?

Yuya: 基本的に、くわはらさんと僕がそれぞれ原形となるデモを起こします。自分の担当パート以外はガイド程度の仮フレーズを乗せ、各自にアレンジを依頼する際はディテールの解説と2〜3曲のリファレンス楽曲を添付することでなるべく詳細にイメージを共有するようにしています。各担当楽器のアレンジが大まかに見えたところでボーカルの仮メロを入れてもらい、歌メロに寄り添う形でアレンジを調整していきます。

各々の仕事や生活に配慮したスローペースな活動スタイルなので、通常は、長期にわたりひとつの制作を続けていくために緩やかにモチベーションを維持していくことになりますが、今回の「pale」については敢えて制作期間を短く設定しました。そうして取り組んだことで熱量がそのままパッケージできたところもあり、これを経て制作サイクルのギアが1段増えた気がしています。

——ちなみにShoheiさんはそれまで作曲経験がなかったと伺いましたが、制作に参加していく上でどのようにしてハウツーを学んでいったのでしょうか。

Shohei: 初めの頃は、歌詞はゼロからの作詞入門みたいな本を読んで勉強しながら試行錯誤していました。現在は頭の中でMVのイメージを浮かべながら、映像から着想する言葉を考えていくことが多いです。「pale」は師匠のデモや岩倉さんの写真から、自分の夏休みの思い出などを思い返しながら歌詞を練っていきました。

コーラスに関しては、『sing』というアプリが基本デュエット形式となっているために必然的に片方がハモリに回るので、そこでの経験から重ね方を学んだのかもしれないです。

——活動を続けていくために必要なこと、バンドとしてこだわっていることや大切にしていることなどはありますか?

Yoshitake: 僕らが楽しいと感じられる好きなことを、末長く続けられるやり方を模索した結果が現在の活動スタイルなんだと思います。バンドでの役割や制作スケジュールは皆で話して決めて、オンラインミーティングの際に都度見直す。やりたいことなら何でもチャレンジはするけど、やりたくないことはしなくていいし、無謀なスケジュールは設定しない。強制じゃないからこそ、各自でやってみて徐々にできることの幅が広がり、色んなことが4人のやり取りだけで完結する、みたいな。 

あとは、前提として自分ができないことを皆で分担しているからこそ、各自の役割に対してリスペクトの気持ちを持つこと、納得できるまでやり切ること、その時間を楽しむことを大事にしています。

Yuya: 楽曲制作に関しても、進捗の提出期限を設定した上で制作フローをタイトに進めつつ、こまめにスケジュールを見直すことで、お互いの本業や生活をまず優先できるように努めています。そうすることが、pluck.を続けていく上でとても大事なんじゃないかと思います。ちなみに、くわはらさんは割と多忙なうえに家庭の時間も大事にしてるほうだと思うけど、その辺りの折り合いはどうつけてるの?

くわはらさん: 我が家は嫁も趣味が充実しているタイプなので、お互いに自由に楽しんでいるほうだと思います。

果てしなく続く道の先を見つめて
——今後のpluck.の活動に対する目標やビジョンなどはありますか?

Yoshitake: 個人的には、性格的に無理はすると思います。ただ、バンドは一人ではなくチームなので、色々な意味で無謀なことはしません。リーダーとしてメンバーに言わせてもらうと、仕事や家庭が大変な時は休憩していいしペースを落とせばいいから、pluck.を辞めないで欲しい、です(笑)

Yuya: ワークライフバランスの均衡を保てるペースの中で、やれるだけのことにトライしたい。さらにその過程で、バンドに参画してくれる人や資本が自然な形で増えていったら嬉しいです。ひとつのバンドを人生単位で続けていくことは簡単じゃないと思っているので、仕事や生活、音楽のすべてを大事に守りながら、ヨボヨボになるまで活動を続けていくことが一番の目標です。

(取材/文・望月柚花)
(撮影・Yuya Ishii)


PROFILE

pluck. (ぷらっく)

Yoshitake(Dr.)、Yuya Ishii(Ba.)、くわはらさん(Gt.)、Shohei Yasuda(Vo.)。2018年、配信限定コンピレーション・アルバム『mona SUITE SPOT 〜to the next stage〜』に当時のメンバーで演奏した即興のインストが採用されたことをきっかけに、配信サービスでのリリースを開始。同時にバンド名を『pluck』から『pluck.』に変更し、2019年より現在の4人編成となる。オルタナティブロックやエレクトロ等、各々のルーツに基づいた多岐なジャンルの楽曲を制作。(pluck. HPより引用)

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