お宝MUSIC発掘#5 − Mellow Youth / Absolute area

三橋 温子

三橋 温子

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先日、2021年1月に自主企画ツーマンライブ『Mellow Youth presents “Apple jam #1”』を開催することを発表したMellow Youthだが、ついに対バンが発表された。東京のスリーピースバンド、Absolute area。Mellow Youthと同世代、20代前半の若きバンドだ。

早耳リスナーのみなさんには怒られてしまうかもしれないが、バンド名こそ存じ上げていたものの楽曲は聴いたことがなかった。いい機会なのでイッキ聴きしてみたら、なるほど、素敵じゃないか。演奏クオリティもセンスも抜群でありながら、友だちのとなりに寄り添って話に耳を傾けているような、等身大のリリックが心を穏やかにする。

本日12月9日に先行デジタル配信されたてホヤホヤのMellow Youthの新曲「Actor’s」とともに、Absolute areaからとくに気になった2曲をピックアップ。


「Actor’s」
Mellow Youth

Mellow Youthはイントロの1音目からリスナーの心を掴むのが本当にうまい。ムーディーなライトと甘ったるい香りが漂うどこかの夜に、瞬時にトリップしてしまう。重厚なドラムとベースラインにジャジーなピアノが控えめに乗り、ギターソロが大胆に誘惑する。なぜこんなに成熟した曲を書けるのか、毎度のことながら感心せざるを得ない。

この曲は、ツインヴォーカルのMellow YouthにはめずらしくVo.石森龍乃介がひとりで歌う。令和の山下達郎(わたしが勝手に命名)がもつ天性の声は、曲の大人びた雰囲気にこのうえなくマッチしている。

ちなみに、1月リリースのシングル『Actor’s / Odor』のもうひとつのタイトルトラック「Odor」もめちゃくちゃカッコいいので、リリースされたらぜひとも聴いてほしい。

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「introduction」
Absolute area

今年11月にリリースされた配信限定 2nd Single『introduction』のタイトルトラック。

作詞作曲を手がけるVo./Gt.山口諒也の、夢を追う苦しみと覚悟を綴った日記のようなリリック、ピアノやストリングスを交えた壮大なサウンド、そしてラスサビの転調に秘められた強い意志に泣きそうになってしまった。YouTubeに「絶対諦めないで、あなたたちの夢は叶うよ」と書き込まれたファンのコメントも温かい。

ある曲が思い浮かんだ。敬愛するTHE BACK HORNの2019年のアルバム曲「I believe」だ。大切な人やものを捨てて自分の夢だけを追い続けてきた主人公の曲で、「introduction」とはバックボーンが少し違うが、曲から滲み出す孤独感や葛藤、光に手を伸ばそうとする意志に共感し涙するリスナーはどちらも数多く存在するだろう。

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「ビニール傘」
Absolute area

ポップでストレートなギターロックが多いAbsolute areaのなかでは異色の曲だが、クセのあるマイナー調ロックが好きなわたしの心にクリーンヒット。2017年に会場限定で発売された『帰り道e.p.』の収録曲で、Vo./Gt.山口のクリアな歌声がこんなにもアダルトに聴こえるのかと驚いた。

全体的には、Ba.萩原知也の巧みなベースラインが導くシンプルなサウンドなのだが、それがまた潔くてカッコいい。Bメロを1フレーズだけ歌うDr.高橋響の美声にもびっくり。コーラスが上手であることはほかの曲でも気づいていたが、予想外のアクセントに心が沸いた。ぜひご一聴あれ。

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(文・三橋温子)
(カバー撮影・髙田みづほ)

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