鹿児島の野外フェスをレポート! WALK INN FES! 2020 NEO国分 FUZZROCK

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2020年11月14、15日。鹿児島県霧島市の国分キャンプ海水浴場で、WALK INN FES! 2020 NEO国分 FUZZROCKが開催された。

まず、『WALK INN FES!』とは何か。簡単にいうと、2014年から毎年桜島で開催されている野外音楽フェスだ。しかし、ただ良い音楽を集めたフェスではなく、出演者も地元が7割、ゲスト3割。飲食店やワークショップも全て地元のもの。鹿児島で、鹿児島と、鹿児島を考えるきっかけになる。そんなフェスだと言い切らせていただきたい。

WALK INN FES!は毎年5月に開催されている。今年も5月に霧島市で初開催される予定だったが、新型コロナウイルスの影響により見送りとなった。それから半年が経ち開催されたのが、WALK INN STUDIO!と開催地国分のFUZZ ROCK CAFEが中心となって主催した、今回のWALK INN FES! 2020 NEO国分 FUZZROCKである。


「ソーシャルディスタンスを美しくデザインする」

14日には、東京からSAKKAKU(空間ビジュアルアートユニット)、鹿児島のGLARE SOUNDS PROJECTION、ぢゃんシーラカンス、わかまつごう、THE HONEST、そして霧島市のアーティストとして一花、THE LITTLE BITCH、Sally the Husky、The Theater Roomが出演。

15日には、ゲストにフラワーカンパニーズ、UKULELE GYPSY(キヨサク from MONGOL800)を迎え、鹿児島のARTS、BACKSKiD、人性補欠、テイパーの見た夢、OHANA楽団、Sit On the Fence、ヨカナカ、そして霧島市からはJAM MONKEY、大和&翔平が出演した。

また、飲食店やワークショップも、これまでWALK INN FES!に出店してきた仲間の店舗に加え、今回から地元霧島市の店舗もいくつか出店した。

今回のテーマは「ソーシャルディスタンスを美しくデザインする」。コロナ禍でわざわざフェスをやる意味。このテーマ抜きでは今回のWALK INN FES!は成り立たなかった。運営側だけではなく、お客さんも、会場も、街も。みんなで今を考え、動きを考え、動こう。そんな意図が込められている。

日々の体調管理はもちろん、スタッフの毎日の検温、入場時のお客さんの検温、場内至るところにある手指消毒スポットの設置、マスクの着用、持ち込み物のゴミの持ち帰り、ステージ前に1.5m間隔でライブを見るディスタンスゾーンの設置など、イベント側によるコロナ対策はもちろん徹底。さらに、とても広い会場に対してお客さん300人という人数制限。恐らく意識せずともソーシャルディスタンスを保てるのでは、と思うくらいに、お客さんそれぞれがゆったりとフェスを楽しむには十分なスペースがあった。

桜島に見守られながら1日目がスタート

1日目、WALK INN FES!には珍しい快晴。開場の12時になり、主催のWALK INN STUDIO!代表の野間太一が開場宣言をするも、その時お客さんはまだほとんどいなかった。入場ゲートに行くと、そこでお客さんが列を作り、検温や推奨しているコロナアプリのチェックを受けながらゆっくりと入場していた。そこにしっかりと時間をかけるために、今回は開場からライブスタートまでの時間を2時間設けたようだ。

The Theater Room

そして、海辺のWALK INN STAGEにて、国分オーディションを勝ち抜いた国分の大学生バンドThe Theater Roomからライブがスタートした。今回、国分の出演者のほとんどがフェス初出演だったため、自分達のライブを見るお客さんの多さに圧倒されつつも、自分の街でライブができる喜びを噛みしめていることがひしひしと伝わってきた。そんなライブは観ているこちらまでもを笑顔にした。

主催のFUZZ ROCK代表、通称ぶーやんがトロンボーンをつとめるスカパンクバンドTHE LITTLE BITCHは、国分の先輩バンドとして堂々としたライブを観せた。が、ここでハプニングが。ぶーやんが1曲目の序盤でステップを踏もうとしたところ、足をくじいてしまい、痛めたのだ。本人は相当痛そうだったが、これもライブだなぁと、生のライブの面白さを思い出させてくれた。

SAKKAKU

東京から来た空間ビジュアルアートユニットSAKKAKUは、ACOUSTIC STAGEのある緑が生い茂るチルスペースを、多数の円形スクリーンと色鮮やかで複合的なプロジェクションで演出。生活感すらあるゆったりとした会場の夜を特別な異空間に創り上げた。

GLARE SOUNDS PROJECTION

1日目、WALK INN STAGEのトリを飾ったのは、2018年のFUJI ROCK FESTIVALにも参加した鹿児島のGLARE SOUNDS PROJECTION(以下:グレア)。コロナ渦でのライブ配信や10月に開催された鹿児島のGOOD NEIGHBORS JAMBOREEへの出演、ライブハウスでのワンマンライブ開催など、様々な動きから着実にパワーアップしたグレアのステージには、ライブが進むと同時に人が続々と集まった。

そして、グレアのライブ終了直後にはWALK INN FES!初の花火が上がった。スタッフも一部のみしか知らないサプライズ花火に、会場全体が感動に包まれた。

ぢゃんシーラカンス

1日目、ACOUSTIC STAGEで全体のトリを飾ったのは、WALK INN FES!に毎年出演しているぢゃんシーラカンスだ。辺りも暗くなり、ACOUSTIC STAGEだけが稼働している会場で、ぢゃんシーラカンスの太く強く優しい歌声がWALK INN STAGEまで響いた。

キャンプもメインイベントとなっている今回は、お客さんも夜通しで友達や恋人、家族と火を囲んで語り合っていた。海辺では、お客さんとして来ていた鹿児島のアーティスト達がギター1本で弾き語りライブをしたり、夜空の星を眺めたり、国分キャンプ海水浴場の夜を満喫していた。

大人から子供まで、皆の笑顔があふれた2日目

ですです隊

2日目。前日以上の快晴。朝一、フェス公式サポーターチームのですです隊が場内のテントをまわり、お客さんの検温を行った。

ヨカナカ

ACOUSTIC STAGEで2日目のトップバッターを飾ったのは、市内オーディションを勝ち抜いた小学生バンドのヨカナカだ。親や先生も見守る中での一生懸命で堂々としたライブ。そして、自分で歌詞を書き、メロディは先生達に作ってもらったというオリジナルソングには、「音楽で思いを人に伝える」ということに年齢が関係ないことを改めて感じさせられた。

DRI-V

ヨカナカ終了後、そのままチルスペースで行われたのは、元Dragon AshのDRI-Vによるダンス体操のワークショップだ。外で体を動かし遊ぶことが少なくなってきた最近の子供達に、音楽の可能性や動く楽しさ、動ける喜びをもっと感じて欲しいから、そのためにWALK INN FES!を利用させて欲しい。そんなDRI-Vの熱い気持ちを受け取った野間太一は、フェス1週間前に急遽DRI-Vの参加を決めたのだ。

ワークショップは3回に分けて行われ、沢山の子供達が一緒に体を動かし、会場は笑顔であふれた。出店ワークショップの中には子供達が運営する『子ども射的屋さん』などもあり、子供達だけで遊べる居場所が毎回確保されている点もまた、このフェスの良いところである。

JAM MONKEY

WALK INN STAGEの2組目、国分のJAM MONKEYは、地元の先輩・後輩バンド、友達や家族、そして国分という街への感謝や愛を感じる最高のライブをみせた。

OHANA楽団

その後、キャンプサイトから楽器を演奏し、練り歩きながらACOUSTIC STAGEに登場したのは、OHANA楽団だ。紙芝居の読み聞かせをしながら物語の情景を様々な楽器の音で表現するライブには、子供達はもちろん、大人までもが釘付けになる。その光景はまるで絵本のようだった。

BACKSKiD

「1歩も動かないで。動かないで1番目立った奴が勝ち!」とBa.カンが場内を盛り上げつつ始まったのは、毎年出演しているBACKSKiDのステージ。初めて訪れた国分への、そして新しい仲間たちへの「初めまして」と「これから宜しく!」というメッセージを込めたパフォーマンスで会場を沸かせる。グレア同様、コロナ禍でのレコーディングや配信ライブ、ワンマンライブなどの活動を経て説得力を増した力強いライブは、今の状況を理解し、認めながらライブを楽しむということを教えてくれた。

WALK INN FES!ではお馴染みのゲストバンド、フラワーカンパニーズ。海に向かうステージからはちょうど落ち始めた陽が見え、ライブをするには眩し過ぎる程に輝いていた。セットリストの最後の曲『サヨナラBABY』中にVo.鈴木が言った、「またいろんなことがあると思うけど、作り直せばいいから、全部」という言葉。そして愛と優しさが詰まったこの日のライブ。何が正解で何が悪いのか誰もわからない今、考えて動くことを選んだ今回のWALK INN FES!を応援してくれていること、WALK INN FES!の開催を心から喜んでくれていることがひしひしと伝わってきた。誰かが一歩を踏み出すきっかけになる、そんな勇気の出るライブだった。

人性補欠

ACOUSTIC STAGEのトリを飾ったのは、鹿児島のロックバンド人性補欠。真っ直ぐでパワフルなライブでお客さんを巻き込み、一緒にその空間を作っていくことが特徴のバンドにもかかわらず、まさかのアコースティックである。今回のフェスの注目ポイントのひとつでもあった彼らの初のアコースティックステージは、鍵盤ハーモニカを使うなど普段の人性補欠とはガラッと違うはずなのに、真っ直ぐさや純粋さはまったく変わらない。演奏しながらバンドへの愛が溢れ出してしまっているような様子に、ライブハウスでの光景が脳裏に浮かんできてグッときた。

UKULELE GYPSY(キヨサク from MONGOL800)

2日間の大トリをWALK INN STAGEで飾ったのは、UKULELE GYPSY(キヨサク from MONGOL800)。会場が国分キャンプ海水浴場に決まり、5月に開催を予定していた時から、野間太一にはずっと見えていた。フェスの最後には国分の海に落ちる夕日と共に、皆で『小さな恋のうた』を歌う画が。

5月開催の予定が11月に移って季節も変わり、日没時間が早くなってしまったため、UKULELE GYPSYの時には太陽の姿はほとんど見えなかったが、皆でマスクの下で控えめに歌った『小さな恋のうた』は、より一層エモーショナルな気持ちにさせた。アンコールでは、ですです隊としてフェスをサポートしていた元GO!GO!7188のBa.アッコをステージに呼び、ベースを渡して一緒に『デイ・ドリーム・ビリーバー』を歌った。

ライブが終わってキヨサクが野間太一を呼び込み、WALK INN FES! 2020 NEO国分 FUZZROCK閉幕の挨拶をすると、bloodthirsty butchersの『7月』が流れ、空に打上花火が上がった。

今、鹿児島から発信すべきこと、動くべきこと

冒頭でも話したが、WALK INN FES!は鹿児島で、鹿児島と、鹿児島を考えるきっかけになるフェスである。それと同時に、今回は「ソーシャルディスタンスを美しくデザインする」というテーマのもと、「コロナと共にどう生きるか」を皆で考えるミーティングのようなものでもあったかもしれない。

少しの不安を抱えながら会場に集まり、感染症対策を意識的に行い、実際に目を見て言葉を交わして過ごした2日間。その経験は、来場者一人ひとりにとって非常に大きい出来事だったに違いない。目に見えない不安にかられ、ひとりで悩み落ち込みながら、この状況が終わるのをただただ待つのではなく、こんな時だからこそ今できることは何なのかを皆で考えるべきだと、誰もが思ったのではないだろうか。そんな皆の意志を、自分自身の目でしっかりと見ることのできた2日間だった。

最後になるが、この記事を書いている私は20歳で、ようやく大人になったような、まだまだ子供のような、そんな大人とも子供とも言いにくい年頃だ。2017年のWALK INN FES!に初めて参加し、キラキラして楽しそうな大人達を見て衝撃を受け、現在はこの業界に足を踏み入れて絶賛いろんなことに触れさせてもらっている。

今回、初めて本格的にWALK INN FES!のスタッフとしてフェスに参加した。新型コロナウイルスの影響でライブハウスをはじめとする音楽業界、そしてほとんど全ての職種の人達が大変な思いで日々を過ごしている。元気がなくなってしまった人も沢山見てきた。辞めていく人も見てきた。いなくなってしまった人もいる。全てがコロナウイルスのせいかはわからないにしても。

今、世界中の人が元気のない中で、今の状況を「自由」だと捉え、地元バンドのライブ配信やワンマンライブ、フェスの開催など、「今、鹿児島から発信すべきこと、動くべきこと」を考えて行動し続けているバンドマンや大人達。きっと、この人達にとっては毎日がWALK INN FES!で、フェスであるWALK INN FES!は日々の延長に過ぎない。そう気づいた。

やはり私はWALK INN FES!が大好きで、このフェスの存在を、鹿児島ローカルの動きを、少しでも多くの人に知ってもらいたくて、今回この記事を書かせてもらった。WALK INN FES!に来なくたっていい。ただ、この世界のどこかにはいつだって、ワクワクしているものやキラキラしているものがあるのだということを、特に私のような若い世代の人達には知って欲しい。そんなことを強く思った今回のWALK INN FES!だった。

また、みんなと元気にWALK INN FES!で会えますように。

(取材/文・よちお)
(撮影・Kamada Miki、Tanaka Naoko、MUTTCHA)

WALK INN FES! 2020 スタッフ

この記事を書いた人

よちお

よちお

北海道美瑛町出身、中学1年の時に鹿児島県に引っ越し、現在は鹿児島県の専門学校に通っている。高校2年の春に「バンド知ってたらかっこいいよな」という軽い気持ちで鹿児島のWALK INN FES! 2017に遊びに行き、衝撃を受け、高校に通いながら毎週末ライブハウスに行く日々が始まった。将来は日本一のライブハウスをつくり、店長になりたいという夢ができ、高校3年の夏休みに地元バンドを集めた初の主催ライブ『PLAY GROUND』を行った。今は学校に通いながらWALK INN STUDIO!で働き、ライブハウスで照明や制作の仕事をしている。

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