あたらしいニューアコが教えてくれた、新時代のキャンプフェスの楽しみかた|New Acoustic Camp 2021 レポート

三橋 温子

三橋 温子

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緊急事態宣言が延長され、“密フェス”クラスターが問題となり、さらには台風まで接近していた2021年9月。イベントを開催するにはこのうえなく険しい状況下で、感染対策と天候に最大限の配慮をしつつ敢行されたのが、OAUがオーガナイズするキャンプイベント『New Acoustic Camp 2021』だ。

12年目を迎えた今年は初の3日間開催。昨年のNew (Lifestyle) Acoustic Camp 2020に引き続き、ウィズコロナ時代のニュースタイルでの開催となった。参加マナーをまとめた〈大切なやくそく〉に加え、会場のある群馬県の緊急事態宣言延長を受けて、飲酒全面禁止やコンテンツの21時終了を追加発表。自治体と慎重に協議したうえで開催にいたっている。

「今回、酒がなくなってわかった。俺にとっては酒よりも音楽の優先順位のほうが高い」

酒豪で知られるTOSHI-LOWがOAUのステージで放った言葉に、深く共感した来場者はわたしだけではないはずだ。フェスに欠かせないビールがなくても、マスク着用でも、歓声をあげられなくても、音楽と自然さえあれば十分笑顔になれる(もちろん、200%ではないけれど)。そんなことを教えてくれた今年のニューアコを、来場者スナップを交えながらレポートする。


ニューアコ2021の会場をぐるっとレポート!

会場は群馬県の水上高原リゾート200。普段はゴルフ場やスキー場として利用されている広大な高原だ。1日目は小雨が降ったりやんだりしていたが荒天にはならず、2〜3日目は雲ひとつない秋晴れが広がった。

例年は1日1万人以上が来場するニューアコだが、昨年は出演者やスタッフを含めて1日2,500人以内に大幅縮小。今年は1日5,000人まで拡大されたものの、昨年廃止となったNIMBUS AND CAMP AREAが復活し、ゆったりと過ごせる環境は維持された。ステージは今年も2か所のみに。会場中心に位置するstage YONDERと、昨年も設置されたstage HEREで、全29組のアーティストがアコースティックライブを披露した。

メインエントランス

場内駐車場EAST、バス、水上高原ホテル200の利用者が通るメインエントランス。今年も参加ガイドラインの掲示をはじめ、来場者登録フォームの事前申請のチェック、検温、アルコール消毒などが徹底されていた。〈大切なやくそく〉には、TOSHI-LOW扮する鬼とニューアコマスコットのNACMAN(ナックマン)が登場。

ここから会場内へは急な坂道を下っていくが、会場中心のstage YONDERまでは10分もかからず便利。エントランス近くには、希望テント区画が選べるPermil Villageと、設営済みテントに泊まれるコールマンファミリーキャンプサイトがある。

場内駐車場WEST側エントランス

場内駐車場WESTから会場内への道。ところどころに設置されたオブジェやデコレーションが気分を盛りあげてくれる。ここから坂道を上っていくと、道沿いにWEST CAMP AREAが広がっている。駐車場に近いエリアを選んでもよし、がんばって坂道を上ってステージに近いエリアを確保するもよし(10分以上はかかるのでキャリーワゴン推奨)。

利便性重視ならCAMP SITE 7がおすすめ。YONDER・HERE両ステージの音がほんのり聴こえ、フードやワークショップエリアも近い。人気サイトなので、場所をとるタープを張る場合は早めの会場入りを。

YONDER AREA

stage YONDERを中心にショップやフードブースも建ち並ぶ、広々としたYONDER AREA。最近のフェスでは当たり前になりつつあるキャッシュレス決済も可能で、感染対策としてはもちろん、財布をもたず身軽に楽しめるのが嬉しい。ちなみに”yonder”とは「あそこ」「向こう」を意味する。

今年復活したstage YONDER。ステージ周辺エリアは水分補給以外の飲食禁止。前方エリアには間隔をあけて目印が設置されており、ソーシャルディスタンスを保てる形に。

出演アーティストは、1日目は四星球を皮切りに、PUFFY、ACIDMAN、OAU、the LOW-ATUS。2日目は谷本賢一郎、dustbox、安藤裕子、TAKUMA、SHISHAMO、MONOEYES、the band apart (naked)。3日目はJOHNSONS MOTORCAR、矢井田瞳、CHAI、そして大トリをニューアコ2021特別編成のLOW IQ 01 & New Acoustic Blendersが務めた。

山の夜の潤んだ空気のなかで始まったOAUのステージには、穏やかな笑みを交わしながら音を奏でる6人の姿が。

©︎New Acoustic Camp 2021

MARTINは「なにが起きても世界がどうなっても、ニューアコは続きます」とまっすぐに言い放ち、TOSHI-LOWは「協力してくれてありがとう。俺たちが救われてます」「今年は来れなかったけどニューアコを応援してくれてる人と、来てくれた人のために、来年も開催します」と宣言。『Again』『Midnight Sun』『Making Time』『帰り道』などの名曲たちが霞がかった月夜に響いた。

©︎New Acoustic Camp 2021

HERE AREA

山の谷間に設えられた、自然と同化したようなstage HERE。1日目は地元群馬のG-FREAK FACTORYに始まり、石崎ひゅーい、清春、片平里菜。2日目はゆうらん船、NakamuraEmi、小野リサ、中納良恵、LOVE PSYCHEDELICO、菅原卓郎×内澤崇仁。3日目はdaisuke katayama、牧達弥、GLIM SPANKYが登場した。

会場全体のフィールドデザインは今年もCANDLE JUNE氏が担当。日が暮れるにつれ幻想的になるHERE AREAは、ニューアコの象徴のひとつだ。会場内のサインやオブジェも多数手がけており、あちこちで目にした矢印サインは思わずシャッターを押してしまう可愛さ。

VIA AND ACO CHiLL AREA

ファミリーで賑わうVIA AND ACO CHiLL AREA。キッズも楽しめるワークショップや、授乳・おむつ交換ブースも完備されている。

奥には池があり、SUPやラフトボート体験が楽しめる。サウナトラックやテントサウナも出店しており、池のほとりのチェアでくつろぐサウナーの姿も。

NIMBUS AND CAMP AREA

山の上のほうに位置するNIMBUS AND CAMP AREAは、オートキャンプやゆったりテントを張りたいキャンパー向けの広大なエリア。コロナ前はステージも配置されていた。記念撮影に最適なこちらのスポットもまた、CANDLE JUN氏が手がけたもの。カラフルなガーランドが青空によく映える。

来場者のみなさんの「ニューアコの楽しみかた」を覗いてみた

大人も子どももワンちゃんも、常連もビギナーも、ニューアコ村の住人たちはみんな豊かな顔をしている。マナーのよさはコロナ禍に限ったことではなく、フェスでは当たり前のバリケードやセキュリティスタッフもここではコロナ前から存在しない。唯一のセキュリティスタッフである鬼(TOSHI-LOW)が会場を見まわるくらいだ。

来場者のみなさんは、このあたらしいニューアコをどんなふうに過ごしているのだろうか。テントサイトにおじゃましてお話を聞いてみた。

※ソーシャルディスタンスを保ったうえで取材撮影を実施しています。

ニューアコ初参戦!
キャンプ&ACIDMAN好きファミリー

NIMBUS AND CAMP AREAで広々とオートキャンプを楽しんでいたのは、めいぱぱさんファミリー。以前ヂラフマガジンでもインタビューさせていただいた佐藤タイジ(シアターブルック)が主催する中津川 THE SOLAR BUDOKANの常連で、ニューアコは初参戦とのこと。

「ACIDMANが大好きで中津川によく行ってたんですけど、ニューアコにもずっと行きたいと思っていて、今年ようやく来れました。家族でゆっくり過ごせる環境が整っていて、とても楽しいです! ACIDMANは『灰色の街』に感動しました」と奥さん。お嬢さんのめいちゃんは『FREE STAR』がお気に入りだそう。

山梨でよくキャンプをするというご家族。テントサイトの傍に停められた存在感抜群のハイエースは、車中泊用に今年買ったばかりだとか。ウッディな天井がとてもお洒落。

「コロナ禍に開催してくれてありがとうございます。来年もまた来ます」と、めいぱぱさんからオーガナイザーのOAUへメッセージ。これぞ、一度参加するとすっかりファンになってしまうニューアコの魔法!

デイキャンプ参戦!
フェスビギナー&ベテランの仲良しグループ

デイキャンプを楽しむ4人グループをキャッチ。ニューアコ常連で野外フェスが大好きなこいけさん(左)と、10年来のお友だちというゆみたんさん、Cタンさん、のんたんさん。

「ニューアコは4〜5回目で、ロッキン(ROCK IN JAPAN)やラブシャ(SWEET LOVE SHOWER)、沖縄のWhat a Wonderful World!!も好きです。わたしはTOSHI-LOWさんと同じ茨城出身で、BRAHMANも大好き。今年もニューアコを開催してくれて、TOSHI-LOWさんに感謝してます」とこいけさん。

オレンジのLOGOSテントやガーランド、デコレーションライトなど、見ているだけで心が踊るカラフルなテントサイト。テントには可愛いガーランドのお手製ペイントも。

フェスビギナーのゆみたんさんにニューアコの印象を聞いてみると、「こんなにいい天気になると思わなかったので嬉しい。きれいな風景と遠くから聴こえてくる音楽だけで、もう最高です! コロナ前はもっと違う楽しみかたがあったのかもしれないけど、わたしには今年の穏やかな過ごしかたのほうが合ってる。いいタイミングでデビューできたなって思ってます」と語ってくれた。

最後はみんなでNAC(New Acoustic Camp)ポーズ!

ひさびさのニューアコ!
月1でキャンプに出かけるアウトドアファミリー

無駄のないスマートなテントサイトが目を引く、オオサワさんファミリー。家族でニューアコに参加するのはコロナ前以来2回目だそう。1歳10か月の息子くんは、生後半年でキャンプデビューしたという強者!

「息子もニューアコを楽しんでいるみたい。音楽を聴いて拍手したりしていますよ。子連れだと荷物が多くなるし時間もとれないので凝った料理はなかなかできませんが、お米だけ炊くとか、できあいのものを持参するとかして、無理なく楽しんでます」と奥さん。

旦那さんからはOAUに感謝のメッセージ。「コロナ禍で、しかも台風も接近していたなか、開催してくれてありがとうございます。静かなニューアコもいいですね」

最近のお気に入りのキャンプギアは、Colemanのクーラーボックス。なかを覗くとTHERMOSのソフトクーラー2個がシンデレラフィット! しかもソフトクーラーの内ポケットには保冷剤がシンデレラフィットするという奇跡のアイテムだそう。

キャンプには月1回のペースで出かけるというオオサワさんファミリー。よく行くのは群馬県片品村のHOTAKANE BASE。廃校になった小学校の跡地にある、校庭にテントを張って楽しめるキャンプ場だ。トイレなどの設備は校舎内に揃っており、密にならず快適に過ごせるそうなので、子連れキャンプデビューしたいかたはぜひ。

山とキャンプと音楽が“同じくそこにある”キャンプイベント

ニューアコは、2000年代のフェス戦国時代を経てあたらしい価値観のもと誕生した〈山とキャンプと音楽が“同じくそこにある”キャンプイベント〉だ。一人ひとりが自分の行動に責任をもち、自然とともに音楽を体感する。そのスタンスは2010年の初回開催時からなにも変わっていない。むしろ、コロナ禍において一層研ぎ澄まされたとさえ感じる。

歓声がない代わりに、アーティストの紡ぎ出す一音一音が鮮明に聴こえた。曲と曲のあいだの静寂に、子どもの笑い声や鳥のさえずりや風のざわめきが聴こえた。ステージ上の光景も、少し湿った緑のにおいも、キャンプ飯の味もよく憶えている。フェスのある日常を当たり前だと思っていた以前よりも、戸惑いながらもいまを楽しむことに努めた昨年よりも、今年は何倍も〈山とキャンプと音楽〉をナチュラルかつディープに体感できた気がする。

来年、世の中がどうなっていて、ニューアコ2022がどんなスタイルで開催されるかはわからないが、変わることが必ずしも悪ではないことをわたしたちは知りつつある。ニューアコはウィズコロナ時代も愛されながら生き残っていくフェスであると、確信した3日間だった。

(取材/文/撮影・三橋温子)


New (Lifestyle) Acoustic Camp 2020 レポート
New Acoustic Camp オフィシャルサイト