【インタビュー】Mellow Youth、初の全国流通盤リリース。メロウな感性でリスナーを虜にする5人の素顔

三橋 温子

三橋 温子

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琴線にふれる音楽に出会った瞬間の感動は、いつまでも鮮明に覚えているものである。最近でいえば2017年結成の5人組ツインヴォーカルバンド、Mellow Youth(メロウユース)を耳にしたときだ。ロックともAORともシティポップとも形容できそうな、どこかアンニュイなムードを漂わせる独特の音楽は、20代前半の感性とは思えないほど色めいている。

そんな彼らが2020年6月10日、初の全国流通シングル『Neon sign』をTOWER RECORDS限定でリリース。昨年にライブハウスとオンラインショップ限定で発売された1stシングル『Neon sign』をはじめ、新曲を含む全3曲が収録された1coin(¥500+tax)CDだ。

このシングルに関するお話から、バンドとしてのビジョンやそれぞれの音楽ルーツにいたるまで、5人全員にインタビューを敢行。初のロングインタビューとのことで、等身大のフレッシュな素顔が垣間見えた取材となった。

カバー写真:左から 阿部優樹(Yuki Abe – Dr.)、伊佐奨(Sho Isa – Vo./Gt.)、石森龍乃介(Ryunosuke Ishimori – Vo.)、肥田野剛士(Tsuyoshi Hidano – Ba.)、木立伎人(Kure Kidachi – Gt.)


きらびやかな街並みが目に浮かぶ表題曲『Neon sign』
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——『Neon sign』『Peace』、そして新曲の『Run』が収録された今回のシングルですが、選曲にはどんな思いが込められているのでしょうか。

伊佐奨(Vo./Gt.): 『Neon sign』は僕らを知ってもらうきっかけになった曲なので、もっといろんな人に聴いてほしいという思いがありました。そこにYouTubeやサブスクでいい感触を得られた『Peace』と、まだ音源になっていなかった新曲『Run』をプラスして、ワンコインながらもボリューム感を出せるようにとみんなで話し合って決めた感じです。

——まず『Neon sign』(作詞:石森、作曲:伊佐)ですが、これはどんな思いで作った曲ですか?

石森龍乃介(Vo.): お風呂に入っていたときにサビのメロディだけ急に思い浮かんだんです。それをイサショウ(伊佐)に投げて作りあげてもらいました。上海とかのきらびやかな街並みをなんとなく想像しながら作った曲なので、みなさんにもいろんな場所でそういうイメージを膨らませながら聴いてもらえたらと思っています。

伊佐(Vo./Gt.): それまでは僕が原曲を持っていくことがほとんどで、石森発信の曲は『Neon sign』が初めて。サビの「Life is beautiful!!」のようにきらびやかな言葉が今まであまりなかったから、バンドとしてもターニングポイントの曲になるだろうと思って気合いを入れて作りました。

石森(Vo.): なんか恥ずかしいね(笑)。持っていった曲の感想をくわしく聞くことってなかなかないから。

——(笑)。加藤マニさん(多くのMVを手がける映像ディレクター)が監督されたMVも雰囲気がぴったりです。先日YouTubeで5万回再生を突破しましたね。

石森(Vo.): 僕らが思い描いていた楽曲のカラーをマニさんに伝えたら、「曲を聴いて浮かんだイメージと合致する」と言ってくれて。そんなにディスカッションしなくてもあの形まで一気に作りあげてくださいました。曲とMVがひとつになって色がついた作品だと思っているので、これからも多くの人に観てもらって輝いていくといいなと思います。

——イントロのキャッチーなギターリフや、間奏のギターソロにも引き込まれます。

木立伎人(Gt.): 今回は3曲ともギターソロがあるのでぜひ聴いてほしいです。伊佐もギターがうまくていいリフを持ってくることもあるので、いつも負けないように作っています(笑)

肥田野剛士(Ba.):『Neon sign』はイントロからギターがバン!と入ってきて、僕はベーシストですけどこれは「ギターの曲」だと思っているくらいカッコいい曲。ロックテイストではないですがライブではめちゃくちゃ盛りあがるので、ぜひライブハウスで聴いてほしいですね。

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——ゆったりとしたミドルナンバーの『Peace』(作詞:伊佐・石森、作曲:伊佐)は、伊佐さんの地元の石垣島で撮影された開放感あふれるMVも素敵です。

伊佐(Vo./Gt.): 僕が高校生のときに出演した地元のイベントが『REVERB FEST』という野外フェスとして昨年リスタートして、Mellow Youthも出演させてもらったんですが、そのときに撮影したMVです。自分が島から離れたときの感情を書いた歌詞だったので、MVもマッチしていい感じになりました。

石森(Vo.): 沖縄の7月だったから、信じられないくらい暑かったよね。

阿部優樹(Dr.): 空港を出た瞬間、ミストサウナみたいだった(笑)

——みなさんすごく爽やかで自然体なので、そんななか撮影したとは気づきませんでした(笑)。曲についてはいかがですか?

阿部(Dr.): Mellow Youthの曲は跳ねるリズムと跳ねないリズムの中間みたいな、教科書に載らないようなリズムが多いんですけど、『Peace』はその独特のハネやノリを感じやすい曲だと思います。ほかのバンドのドラマーの方に「あの曲叩いてみたけどロック調になっちゃう」と言われることもあったりして。ギターのカッティングとベースとドラムの兼ね合いがどう計算されているかとか、気にして聴いてみると発見があっておもしろいかもしれません。

——新曲『Run』(作詞:石森・伊佐、作曲:伊佐)は、ほかの2曲とはガラッと雰囲気が変わりますね。

石森(Vo.): タイトルどおり疾走感のある、ちょっといかつくて渋めの曲。曲を作ったときよりも遅いテンポでレコーディングしたので、聴いたことがあるようなないような不思議な感覚の曲になっています。

伊佐(Vo./Gt.): 艶っぽくなっているよね。石森と曲を作るときに出てきたのが「宇宙飛行士」とか「火星を旅する」というワードで、歌詞にある「荒野」は火星の赤い荒野を彷彿とさせるように組み立てていきました。

肥田野(Ba.): この曲はロックテイストだけどテンポがそこまで速くなくて、ベースもめちゃくちゃ難しい。でもそれが「聴いたことがあるようなないような」独特の世界観を生んでいると思います。

阿部(Dr.): ドラムに関していえば、途中で打ち込みの電子ドラムが入るところがあって、いつものアコースティック感と電子音の融合がおもしろいと思います。今後の音作りの可能性が広がりました。あと、大サビに入るときのドラムと伊佐の歌がカッコいい。そこだけ3回ループできます(笑)

ツインヴォーカルは戦略ではなく偶然だった
——Mellow Youthというバンド名の由来を教えていただけますか?

木立(Gt.): Mellow(成熟した、芳醇な)が意味する「大人」な部分と、Youth(青春、若さ)が意味する「若い」部分、その両面を持ちあわせたバンドというようなイメージから来ています。結成当時はみんな未成年だったので、「未熟な自分たちが大人に憧れている」みたいな感覚で名づけました。

阿部(Dr.): いつか『Mellow』と『Youth』で曲を分けてアルバムを出せたらおもしろいよね。僕らって、ロックバンドの中にいると「おしゃれバンド」に映ったり、逆におしゃれ系のバンドと対バンすると「ロックバンド」に映ったり、際どいところにいるのがいいと思っていて。ジャンルにあえてとらわれない、Mellow Youthという路線を作っていけたらいいなと思います。

——梅酒というよりチョーヤ、みたいな?

一同:(笑)

——Mellow Youthといえば、渋くてセクシーな声の石森さんと、甘いハイトーンの伊佐さんのツインヴォーカルも魅力。声質の違う2人をヴォーカルにしたのは戦略ですか?

阿部(Dr.): 実は違うんですよ。僕ら5人は同じ学校出身なんですけど、もともと僕と木立と肥田野でバンドをやっていて、石森と伊佐がそれぞれ別のバンドをやっていて。その3バンドが同時期に解散することになったので、僕が石森を、木立が伊佐を誘ったんですが、いざ集まってみたらヴォーカルが2人いるという事態に…(笑)。でもそこで肥田野が「2人とも歌えばいいじゃん」と提案して、ツインヴォーカルになりました。伊佐は作曲もできるし、結果的に最強だったなと後ろでドラムを叩きながら思っています(笑)

——まさかの偶然だったんですね! 曲を聴いていると、それぞれの声の魅力が引き立つように計算された構成だなと感じます。

石森(Vo.): 最初は「ツインヴォーカルでバンド?」としっくりこなかったんですが、やってみたら意外とハマって。今はツインヴォーカルをうまく活かせていると思っています。

——石森さんの声はバンドのMellowな部分を際立たせていると感じますが、ご自身の声が特徴的だと自覚したのはいつ頃でしたか?

石森(Vo.): 俺、そんなに特徴的ですかね?

伊佐(Vo./Gt.): まだ気づいてない(笑)

石森(Vo.): 「色っぽいね」とよく言っていただくんですけど、自覚はなくて…。でもこれからはもっと意識していこうと思います(笑)。みんながプレイする姿も大人びているので、それも相まってMellowな雰囲気を出せているんじゃないかなと思っています。

東京事変をはじめ、影響を受けたミュージシャンたち
——5人それぞれの音楽的なルーツについてお聞きしたいと思います。まずは作曲を担当されている伊佐さんから。

伊佐(Vo./Gt.): 僕はJ-POPの影響がわりと強いです。最初に聴き始めたのは兄が聴いていたAqua Timezで、その後は東京事変、RADWIMPS、MONGOL800など…。ギターを始めたのも、兄が家で弾いていたギターを奪い取って弾いたのが最初でした。

——曲の端々に和製AORというか、昭和っぽい香りを感じることがあります。

伊佐(Vo./Gt.): 自分ではあまり意識していないんですが、あるとしたら母の影響かも? 徳永英明やユーミン(松任谷由実)をよく聴いていました。

——なるほど。では、Mellow Youthサウンドを彩る木立さんのリードギターにはどんな音楽ルーツがありますか?

木立(Gt.): 僕は中学時代に親の影響でThe Beatlesに夢中になり、ギターを始めました。高校に入ってからは東京事変をきっかけにAORや歌謡曲ジャンルを好きになり、東京事変の長岡亮介さんやPARACHUTEの松原正樹さんなどおしゃれなギターにハマった感じです。

——木立さんも東京事変がルーツにあるんですね。

木立(Gt.): メンバー全員が通ってきた共通のバンドが東京事変なんです。上京したらそういう感じのバンドをやりたいと思っていたら伊佐と出会って、Mellow Youthが生まれたので、ずっとやりたかったことが今できていて超楽しいです!

——5弦ベースも弾きこなす肥田野さんはいかがでしょうか。

肥田野(Ba.): 僕は中学時代ずっと合唱部で、発声方法が違うからとカラオケを禁止されていたり、なんなら流行りの音楽も聴いちゃダメと言われていました。だから音楽をほとんど知らなかったんですが、中学を卒業する頃に3.11があり、GLAYが復興ライブで地元の福島に来てくれて。母に連れられて行ったら、ライブ中にベースのJIROが投げてくれたピックが偶然僕の手もとに…(ピックを見せてくれる)

——それですか!? すごい!

肥田野(Ba.): 興奮して帰宅したら、10歳上の兄が弾いていたベースがたまたまJIROモデルだったことに気づいて、その日から「JIROになろう!」と決意しました(笑)。最初にベースを教えてくれた知り合いがポップスを聴かない人だったので、Dream TheaterやMr.Bigなどプログレやハードロックから入ったんですが、高校に入ってから東京事変やJamiroquaiを聴くようになりました。

——楽曲『APEX』ではスラップを披露するシーンもありますが、ベーシストとしてはどんな方向性を目指していますか?

肥田野(Ba.): 以前は派手なテクニックが好きでしたが、このバンドを始めてからは考えが180度変わって、支えられるベーシストになりたいと今は思っています。テクニックもカッコいいけど、Mellow Youthがもっとよくなるプレイはほかにあるんじゃないかと。

——肥田野さんとともにバンドを支える阿部さんの音楽ルーツは?

阿部(Dr.): みんなと同じく僕も親の影響でEXILEやスピッツを聴いていたんですが、高校に入る前くらいにONE OK ROCKを聴いてからはずっとワンオクが好きです。だからドラムのプレイスタイルはもともとロックが強いですね。中高時代は吹奏楽部でドラムを担当していたのでクラシックも好き。あと最近はVaundyをよく聴いています。

——阿部さんはZildjian(ジルジャン/約400年の歴史をもつシンバルメーカー)とエンドース契約を結ばれていますね。

阿部(Dr.): 国内外のいろんな先輩ドラマーがエンドーサーを務めているので、僕も誇らしい気持ちです。ゆくゆくはBenny Grebやカースケ(河村智康)さんのような、8ビートと背中でドラムを語れる人間になりたいです。

——では最後に石森さんのルーツを教えてください。

石森(Vo.): 僕は中高時代6年間ドラムをやっていて、ロックバンドが大好き。作詞するにあたっては、意識しているわけじゃないけどASIAN KUNG-FU GENERATIONやBUMP OF CHICKENが僕の根本にあると思います。

——ドラマーだったんですね! ヴォーカリストにシフトした理由は?

石森(Vo.): 高校のときに横浜スタジアムでONE OK ROCKを観て、Takaさんに感動したんです。ステージ上のTakaさんはすごく大きく輝いて見えて、こんなヴォーカリストになりたいなと。今も憧れています。

インスタライブでの曲作りなど、今だからこそできる挑戦を
——新型コロナの影響でライブがなかなかできない状況ですが、最近はどんな思いで過ごしていましたか?

伊佐(Vo./Gt.): ライブができなくなったのは悔しいし申し訳ないですが、曲を書いて出すという工程自体は変わっていないので、あとはやり方を工夫していけたらと思っています。僕が新曲のオケを作って、インスライブでお客さんに見てもらいながら歌詞やフレーズを作っていくという、今だからこその曲作りにもチャレンジしています。オンラインミーティングにも慣れたし、音楽業界にとっても新しいやり方を模索するいい機会かもしれません。

石森(Vo.): 僕もライブができなくて寂しいですが、「やれることはやろう」という気持ちです。昨年の渋谷WWWでの初ワンマンライブのYouTube配信も、急に発案してやらせてもらったり。

木立(Gt.): 世の中が大きな打撃を受けたときは、新しいカルチャーが生まれるタイミングでもあります。それを自分たちで作っていけるように、また、コロナが収束したあとも新しい流れを作り出すパワーを持続できるように、みんなで考えて発信していきたいです。

肥田野(Ba.): 最近は、ライブハウスやフェスの支援企画にアーティストが参加したり、音楽雑誌『GiGS』の「#みんなでギグトレ」企画ではいろんなアーティストが演奏方法を解説していたり、素敵なプロジェクトが続々と生まれていますよね。僕たちもそういう音楽業界を盛り上げる輪を一緒に広げていけたらと思います。

阿部(Dr.): この数週間で、リモート制作の進め方がバンド内でだいぶ確立されてきました。家でできることを増やせたのは自分の中で大きな挑戦でしたね。ライブ活動は止まっていますが制作は進んでいるので、ライブを再開できる日が待ち遠しいです。

——みなさん前向きに取り組んでいて素晴らしいです。最後に、今後の目標をおひとりずつお願いできますか?

伊佐(Vo./Gt.): バンドのキャパ感を上げていきたいです。僕は小さい島に生まれたので、大きい会場でライブをすることに憧れがあって。あと、実家の家族や島の人たちに活躍を伝えるには『ミュージックステーション』への出演しかないと思ってます(笑)

石森(Vo.): 僕の地元は山梨で、山梨の大型フェスといえばSWEET LOVE SHOWER。小さい頃から行っていたフェスなので、あのでかいステージで僕らの音楽をやりたいです。

——今、みなさんがあのステージに立っている映像が浮かびました。

石森(Vo.): ありがとうございます。ちなみに僕は4年前から浮かんでます(笑)

木立(Gt.): 僕は青森出身で、北海道に祖父母が住んでいるので、遠方まで届くような活躍をしたいです。RISING SUN ROCK FESTIVALは夢ですね。

肥田野(Ba.): 僕らは全員地方出身なので、僕の夢もみんなと似ていて、やっぱり親に活躍を実感してほしいです。だから、みんなの夢が叶うことが僕の夢。そのためにがんばりたいです。

阿部(Dr.): 僕もみんなと同じですが、自分ならではの夢をいうなら、東京ドームの花道をメンバーが歩いていく背中を後ろから眺めたい。ドラマーの僕にしか見られない、憧れの景色です。

(取材/文・三橋温子)


PROFILE

Mellow Youth(メロウユース)

2017年結成、ツインヴォーカル、ツインギター、ベース、ドラムの5人組バンド。石垣島出身のVo./Gt.の伊佐奨を中心に作る楽曲は、さまざまなジャンルの音楽の要素を折り込むミクスチャー的側面を持ちながら、一本筋の通ったポップさを兼ね備えている。サウンドプロデュースはひろせひろせ(フレンズ)が担当。

公式サイト
公式Twitter @MellowYouth
公式Instagram mellwyouth.official

TOWER RECORDS限定
1coin single『Neon sign』

TOWER RECORDS 公式サイトへ

2020年6月10日発売(¥500+tax)
1.Neon sign
2.Peace
3.Run