【ライブレポート】Mellow Youthが魅せた新世界、「ライブハウスこそが僕らの居場所」

三橋 温子

三橋 温子

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水中のようなブルーの照明に包まれた5人を見て、一瞬、現実と夢の境目がわからなくなった。「ようやくこのステージに立てた」という彼らの想いと、「ようやく5人の生の音を聴けた」というオーディエンスの想いが、化学反応を起こしてライブハウスを非現実色に染めていく。

2020年10月15日に渋谷のduo MUSIC EXCHANGEで開催された『Mellow Youth presents “Play back”』は、本来ならば6月におこなわれるはずだったレコ発ツアーの振替ワンマンライブ。コロナ禍でライブができない期間、曲づくりやSNS配信に精力的に取り組んできたMellow Youthが、それまで溜め続けてきたエネルギーを一気に放出する注目のステージ。

当日の映像は後日1週間限定で配信され、生ライブと配信でそれぞれ内容を変えるなど工夫が凝らされた。バンドキャリア2回目のワンマンにかける想いを、5人はどんなパフォーマンスへと昇華させたのか。


笑顔をのぞかせながら、和やかなムードでスタート

オールスタンディングでキャパ700〜800名ほどのduo MUSIC EXCHANGE。当日は全席指定で、入り口でのアルコール消毒や検温など万全の対策のなか開催された。客層はメンバーと同世代の20歳前後を中心に、わたしのような30代や、それ以降と思しきかたもちらほら。個人的には、多くのバンドを観てきた“ライブ玄人”みたいなかたにもぜひ推したい実力派バンドなので、客層の幅広さは嬉しい限り。

Mellow Youthは2017年結成の5人組バンド。声質の異なるツインヴォーカルとテクニカルな演奏、ロック・AOR・シティポップなどさまざまな音楽性をミックスした色気ある楽曲でリスナーを惹きつける若手バンドだ。

全員着席、マスク着用という慣れない状況のなか、アメリカのヒップホップバンドArtOfficialのジャジーなナンバー『Can’t Keep Running In Place (feat. Wrekonize & DJ Fuse)』をSEにメンバーが登場。Vo./Gt.伊佐奨がギターではなくキーボードに向かい、繊細な鍵盤の音色を響かせる。ブルーの照明とGt.木立伎人の浮遊感あるギター、まるで海の奥深くに沈んでいくような感覚のなかで1曲目『Bed time』が始まった。

印象的だったのは、メンバー同士が笑顔で何度もアイコンタクトを取り合っていたこと。こうしてステージに立てたことが嬉しくてしかたない、とでもいうような笑みに、こちらの心も和む。

「Mellow Youthです、よろしく!」という軽快な挨拶とともに、Vo.石森龍乃介がジェスチャーでオーディエンスに立つよう促した。そこから間髪を容れず、1st EP『One Room』収録曲の『Fog fiction』がスタート。Ba.肥田野剛士が操る5弦ベースのゴツめなアウトロが次曲へとシームレスに続き、音源よりやや早いテンポで『Run』が始まる。以前インタビューでDr.阿部優樹が語っていた、ラスサビ直前の静寂に響く伊佐のハイトーンボイスと阿部のドラムのクールさに気分が一気に高揚した。

そして4曲目『APEX』。イントロが始まった瞬間、思わず「フゥ〜〜!!!」と叫びそうになったが、もちろん歓声は厳禁なのでグッと堪える。この曲の中毒性は凄まじい。わたしは昭和の終わりに生まれた、昭和と平成、アナログとデジタルのハイブリッド世代なのだが、子どものころ親が車で流していた80’sシティポップのような懐かしさと、洗練された新しいバンドサウンドが絶妙に混じり合っているのだ。

Dr.阿部の鋭いドラムから始まり、Gt.木立のくせになるギターリフ、Ba.肥田野の華麗なスラップベース、Vo.石森の色気と渋みをはらむ声と、Vo./Gt.伊佐が歌う甘やかなBメロ、全員の魅力を体感しやすい1曲でもある。この日はラスサビをアレンジするなど新鮮さもプラスされていた。

僕らの場所を、みんなと共有できるように

「めちゃくちゃお久しぶりなんです!」と嬉しそうに口にしたVo.石森から本日発売の新グッズについて紹介されたのち、『Mood』『Flash Night』とスローナンバーが続けて披露される。まだ音源としてリリースはされていないが、今年に入ってからライブで少しずつ演奏されてきた曲だ。このメロウな心地よさはMellow Youthの真骨頂でもある。

ゆったりと流れる時間に浸りながら、すぐ目の前でGt.木立が駆使するエフェクターの数々を眺めていた。中学時代、The Beatlesをきっかけにギターを始めたという木立少年は、緻密でセクシーなギターソロを奏でる目の前の彼を経て、今後どんなギタリストへと成長していくのか。

Vo.石森は、コロナ禍で感じた率直な想いを語った。「『みんながいるのは当たり前じゃない』とか言う奴、本当は嫌いなんだけど、でもいまは『当たり前じゃないな』と思う。僕らの居場所はライブハウスしかない。僕らの場所をみんなと共有できる環境をつくることが、いまの命題だと思っています」

そしてラスト曲として演奏されたのが、今年6月にリリースされた初の全国流通シングルのタイトルトラック『Neon sign』。今後間違いなく彼らの代表作となるであろうこの曲がもつ、きらびやかで少し物憂げな世界観に、オーディエンスはうっとりとした様子で身を委ねていた。

会場限定で届けられた珠玉の4曲

「7曲で終わり?」「いや、でもきっと、感染対策を考えるとしかたないんだろうな…」と勝手に悶々としていたところに、マイクをもったDr.阿部を筆頭に5人が再びステージに登場。「ワンマンで7曲だけって、そんなわけないでしょ」といたずらっぽく笑うメンバー。ここから先のライブは配信されず、代わりに配信限定で演奏する曲もあるのだと、ここでようやく種明かしされた。

後半戦1曲目は、夏にYouTubeで公開されたカバー3曲のなかから小田和正の『ラブ・ストーリーは突然に』。このカバーが秀逸なのは、全パートがさりげなくMellow Youth節にアップデートされている点だ。とくに〈時は流れて〉の〈が〉、〈あの場所で〉の〈ば〉などを半音下げて歌うVo.石森のセンスにはグッとくる。

続いて未リリース曲『Howling』、最初の数小節で心をつかまれる名曲『Fuse』が演奏され、いよいよ本当のラスト曲『Rouge & Memory』へ。それまでずっと緊張の表情をのぞかせていたVo./Gt.伊佐が、アウトロで満面の笑みを見せた瞬間が印象的だった。重厚にたたみかけるDr.阿部とBa.肥田野、Gt.木立のギターソロ、そして石森の鬼気迫るロングトーンが絡み合い、わたしたちの心を沸かせたままステージは終了した。

オーディエンスの反応が見えにくい、言ってしまえば異様な状況下での2回目のワンマンは、メンバーにとって試練でもあっただろう。しかしそれを挑戦と捉え、なによりも「ライブができて嬉しい」という素直な想いを表現しながらステージに立った5人のパフォーマンスは、実に堂々としていたし輝いていた。

次回のライブは2021年1月9日に渋谷WWWで開催予定であることも、この日発表された。「僕たちがみんなに会える日を、またつくります」。MCで力強く宣言した石森の言葉が実現するその日を、わたしたちは宝もののように信じて待ちわびている。

(撮影・吉岡直哉)
(取材/文・三橋温子)

MESSAGE

久々に僕らだけのLIVEだったので構想から何から考え込んだし、僕らは早くライブがしたくてたまらなかったです。そんな事もあり焦ったり爆裂緊張したりしてましたが、本場中下手なMCで伝えたことが今回そしてこれからの僕らの気持ちだったと思います。

1月9日には企画した2MAN LIVEが渋谷WWWであるのですが、今はそこに向かってまっすぐ進みたいです。遊びに来てね。

Vo. 石森龍乃介

Mellow Youth presents “Play back”
SET LIST

[duo MUSIC EXCHANGE]
1. Bed time
2. Fog fiction
3. Run
4. APEX
5. Mood
6. Flash Night
7. Neon sign
8. ラブ・ストーリーは突然に
9. Howling
10. FUSE
11. Rouge & Memory

[配信]
1. Peace
2. 風の匂い、忘れた街
3. Bed time
4. Fog fiction
5. Run
6. APEX
7. Mood
8. Flash Night
9. Neon sign