一寸先闇バンド、新EP『ルーズ』リリース!多彩な音と感情が渦巻く全3曲を紹介

三橋 温子

三橋 温子

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2019年結成の一寸先闇バンドが、7月13日(水)に初の全国流通EP『ルーズ』をリリースした。昨年、初めてライブを観て、都会的なスタイリッシュさとある種の泥くささが同居する世界観に魅了された4人組バンドである。

圧倒的歌唱力のおーたけ@じぇーむず(Vo./Gt.)と、彼女の歌を確かな技術とセンスで支える大山拓哉(Dr./Cho.)、かくれみの(Pf./Cho.)、竜生(Syn./Cho.)。いまの4人が詰まった、個性の異なる全3曲が収録されている。楽曲が気に入ったかたは、ぜひ生のライブで彼女たちの生命力あふれる音を浴びてほしい。


M1「ルーズ」
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「おーたけ@じぇーむず史上いちばんオシャレな曲」と称された表題曲。イントロの、大山のドラムにおーたけの息を吸う音が混じるたった1拍だけで、一寸先闇バンドらしさが直感的に伝わってくるのが不思議だ。自然と体が揺れる軽やかなリズムの上を、かくれみのと竜生のツイン鍵盤の音色が遊ぶように転がる。

ただし、この曲を「オシャレ」だけで片づけてはいけない。おーたけが綴る歌詞にはいつも、現代を生きる人たちの生きづらさや弱さや侘しさが描かれている。その一方で、どこか他人事のような諦観や開き直り、セルフ・エフィカシー的な芯の強さも見え隠れする。それがすごく「いまっぽい」気がするのだ。サビの〈めんどくせえだなんて言うなよ〉で突如現れるおーたけの情感も然り。この有機質と無機質のバランスのよさが、聴いていてとても心地いい。

M2「意外と静かな街」

もう長いこと東京で暮らしているが、東京という街がどんな街なのか、いまだによくわからない。1,400万人いれば1,400万通りの生きかたを許容してくれているようにも感じるし、でもあるとき突然、なんの前触れもなく突き放されて途方に暮れる瞬間もある。温かくて冷たい、寛容で無責任な街。

地方出身者が描き出す東京は、感じかたがそれぞれ違っていて興味深い。この楽曲は東京の表参道をイメージして書かれたらしいが、華やかで洗練された街・表参道は、岡山県出身のおーたけにとっては「意外と静かな街」なのだ。エッジーなギターから始まり、軽快なメロと力強いサビ、エレクトロな鍵盤音で終わる構成からは、この街がもつ多面的な表情が垣間見える気がする。

M3「ここがどこかになっていく」
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谷川俊太郎の詩『ここ』の最後のフレーズを思い起こさせる「ここがどこかになっていく」。フォークの香りがする歌メロを洗練されたアレンジで仕上げた、一寸先闇バンドらしさが際立つ1曲。アカペラで語るように始まり、徐々に音数が増えて感情が膨れあがっていく、そのストーリーに引き込まれる。

わたしたちはなぜか、何者かにならねばならないという思い込みに縛られて生きている。何者にもなれない自分に気づき、黯然銷魂し、苛立ちながらも、その思い込みから逃れることができない。でも〈悪いことは/終わるはずさ たぶん〉と自分に(誰かに?)言い聞かせるおーたけの声を聴いていたら、今日はおとなしく立ち止まっていようと思える。〈ここがどこかになっていく〉のだと、思うことができる。

(文・三橋温子)


RELEASE
『ルーズ』
一寸先闇バンド

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発売日:2022年7月13日(水)
価格:税込1,500円
1. ルーズ
2. 意外と静かな街
3. ここがどこかになっていく

配信・ダウンロードサイト一覧へ

EVENT

2022年7月16日(土)
AVOCADO BOYS×一寸先闇バンド
@名古屋・鶴舞KDハポン

2022年8月6日(土)
一寸先闇バンド インストアイベント(アコースティック編成)
@ULTRA SHIBUYA

PROFILE

一寸先闇バンド
(いっすんさきやみばんど)

シンガーソングライターとして活動をしているおーたけ@じぇーむずを中心に2019年に結成。ジャンルに囚われない自由度の高いサウンドでありながら、ブレることのない歌詞の世界観と、感情的に訴えかけてくるおーたけ@じぇーむずの声によって、独自の音を奏でている。

Official Website
Twitter @isunsakiyamibnd
Instagram @isunsakiyamibnd