コロナに立ち向かうライブハウス新代田Feverで開催された、BBの有観客ライブ

五辺 宏明

五辺 宏明

「コロナに立ち向かうライブハウス新代田Feverで開催された、BBの有観客ライブ」のアイキャッチ画像

新型コロナウイルス感染拡大の影響により、多くのイベントが延期や中止に追い込まれた2020年。4月に政府から発令された一度目の緊急事態宣言は7週間ほどで解除されたものの、対応策などまるでないまま第2波、第3波を迎えてしまったことはご存じの通り。

先が見えず、閉塞感に苛まれたまま師走に突入する直前の2020年11月24日、BBが12月21に有観客+配信でワンマンライブを開催するというニュースが飛び込んできた。会場は新代田Fever。コロナの感染者数が激増していたので迷ったものの、チケットを予約。不安がなかったと言えば嘘になるし、配信で観ることもできたが、10ヶ月ぶりに観客の前に現れるBBのパフォーマンスを、この目で見届けたいという気持ちが勝った。

チケットを確保してから、FeverのスタッフでもあるBBの駒村将也にインタビューを打診。「有観客ライブの終演後に取材可能」という返事をいただいた。

cover photo by RiNAKiM


WRENCH、MINOR LEAGUE、元COCOBAT のメンバーで構成されたスーパーバンド

1982年に結成されたDISARRAYからキャリアをスタートし、COCOBAT、BACKBONE、DESSERTのヴォーカリストとしてハードコアやオルタナティヴロック・シーンで活動を続けるRYUJIを中心に結成されたBB。ギタリストはWRENCHの坂元東。リズム隊はMINOR LEAGUEの駒村将也(b)と広野与一(ds)。

ラウドミュージック界の猛者が集結したBBは、活動の初期から注目を集めていた。彼等がライブ活動を始める何年も前から、「COCOBAT初代ヴォーカリストのRYUJIとWRENCHの坂元がスタジオに入っているらしい」という噂を、周囲のバンドマン達が口にしていた記憶がある。

2010年に駒村と広野が加わり、現在の布陣に。

初ライブは、2012年8月に新代田Feverで開催された『Noise Slaughter vol.1』。2017年11月にREDSHEERとのスプリットシングル『In The Beginning Of Noise Slaughter』、2019年3月には待望の1stアルバム『BLACK BABEL』をリリース。新大久保Earthdomで行われたレコ発ライブやツアーも盛況のうちに終わり、以降も精力的に活動を続けていた。

2020年のBB

個人的な2020年の初ライブは、BBのメンバーが在籍するWRENCHとMINOR LEAGUEが出演した『東京STREET2020』だった(1月4日 @新宿Loft)。その翌週は、BBが出演したEVIL UNDER THE SUNの企画イベントへ(1月11日 @新宿Fate)。出番を終えた坂元とビールを飲み交わしながら「新年早々、楽しいイベントが続いたので、今年も良いライブに恵まれそうだ」などと、のんきに考えていたことが遠い昔のように思える。

2月17日にBBが出演した下北沢Club Queのイベントは観に行けず、4月のライブを楽しみにしていた。当時はまだ楽観していたのだろう。既に新型コロナウイルスについて連日報道されていたというのに…。

緊急事態宣言発令の直前に2日連続でゲスト出演するはずだったGERONIMO(4月4日 @新大久保Earthdom)とHELMS ALEE(4月5日 @新代田Fever)の来日公演や、令和元年台風19号の影響で延期されたSTUBBORN FATHER主催イベントの振替公演(5月16日 @国分寺Morgana)が、他の娯楽イベントと同様に中止を余儀なくされた。

新大久保Earthdomの支援を目的としたデジタルコンピレーションアルバム『2020, the Battle Continues』に「Wish (DEMO-2017)」を提供したBBは、自主企画の『Noise Slaughter』を無観客配信ライブとして6ヶ月連続で開催(vol.15~20)。12月6日には、Daymare Recordings主催のオンラインイベント『leave them all behind extra “on-line matinee”』にも出演している(会場は全て新代田Fever)。

2020年12月21日 『Noise Slaughter vol.21』

久々の新代田Fever。前回訪れたのは2月29日。envyの鬼気迫るパフォーマンスに身震いしたことを思い出した。

ロビーの入り口で、検温と手指の消毒。質問票に氏名と住所、連絡先を記入してから物販スペースを覗くと、2種類のTシャツが飾られていた。

新作の白Tシャツは、9月からスタートしたFeverの物販制作部門「LUCKY merch & print」の商品。縁深いアーティストのTシャツを、Feverがプリント、制作、販売を行う企画で、受注期間は1週間。BBの新作も、この日から受注が開始された(2020年12月27日受付終了)。

受付でチケット代とドリンク代を支払い、質問票を提出して入場。フロア前方には、ステージから2メートル離れた位置に柵が設置され、床には1メートル間隔で観客の立ち位置を示すマークが並んでいた。

ドリンクカウンター付近でビールをちびちび飲んでいると、WRENCHのMASATO(ds)に遭遇。コロナ以降、知人に会えることが嬉しくて仕方がない。MASATOとビールを飲み交わしながら、ライブハウスが社交の場として機能していたことを改めて実感した。

定刻を少し過ぎたあたりで坂元、駒村、広野が現れ、演奏開始。そして遅れて登場したRYUJI の第一声に震えた。文字通り、鳥肌が立つくらいに。黒ずくめの3人の前で揺らめく白装束のRYUJIから目が離せない。

だが、続いた「SHADOWY」の冒頭のギターで我に返る。これまでBBとWRENCHのライブで何度、坂元のギターを聴いたことだろう。WRENCHの前身バンドを初めて観たのが1993年。四半世紀以上、坂元のギターに魅了されている。

駒村と広野の繰り出すリズムが、1月に観たFateでのライブよりも身体に響いたのは、BBの本拠地ともいえるFeverならでは(「RISE」のベースとドラムのカッコ良さといったら!)。

1stアルバム『BLACK BABEL』収録曲を中心に構成されセットリストのラストは新曲。10ヶ月ぶりの有観客ライブの締めに、まだタイトルの無い新曲を選ぶところが彼等らしい。コロナ禍の閉塞感を打破し、前に進もうとする意思表示のように思えた。

Noise Slaughter vol.21
2020年12月21日 @新代田Fever

1. INTRO
2. SHADOWY
3. RISE
4. DOWN
5. SCARS
6. DISENGAGE
7. FEEL
8. 新曲

BB bass / 新代田Fever スタッフ
駒村将也 インタビュー
——9月から、FeverとバンドのコラボTシャツ企画をやってますよね。BBの新しいTシャツも今日から受注が始まって(2020年12月27日受付終了)。

駒村: はい。とりあえずもう、来年(2021年)も状況が変わらないだろうと思っているところがあって。今までみたいにライブでお店の収益を得るってことが、ほぼ期待できないだろうっていう…。ライブじゃないところでお金を生まなければ。例えばウチだったら隣の飲食スペースとか。

——そうですよね。

駒村: Tシャツの印刷は、実は前からやろうという話があって。

——コロナの前からってことですか?

駒村: そう。コロナに関係なく。需要があるんじゃないかなって。でも、コロナになって、それどころじゃなくなって。最初は「コロナも4月か5月くらいには落ち着くんじゃないか」なんて思ってたけど…。

——まさか、ここまで長引くとは。

駒村: 甘かったんですよね。

——2月の後半ぐらいから延期や中止になる公演が出てきましたよね。それ以降になると…。

駒村: 4月に決まっていたイベントは全部飛びましたね。ウチはたぶん、他のライブハウスよりも営業を止めたのが早かったんですよね。1週間程度ですけど。

——早かった印象があります。

駒村: あの時は、ライブハウスでクラスター発生とか、そういうことが頻発してきた時期で。それまでは「そんなに?」と思ってたけど、自分達も危ないんじゃないかって。近い場所でも感染者が出たってニュースを聞いて、「もう他人事じゃないな」って。で、3月29日かな? 翌日からのイベントは中止にさせてもらって。

——3月末で営業が止まったんですね。

駒村: とは言え、3月中に行ったのは10公演もなかったと思いますね。で、配信を6月から再開して。とてもじゃないけど、有観客のライブをできる状況じゃなかったから。それでもBBは毎月必ず配信をやってました。

——少し前から徐々に有観客のライブも開催されるようになってきましたが、先のことは全くわからないですよね。

駒村: エンターテインメントというか、イベントの在り方が変わるんじゃないかなぁ。夏場は盛り上がるけど「冬場はインフルエンザとか感染病が多いから、イベント事は控えましょう」みたいな。

——今だって感染者が激増してますもんね。

駒村: あと、お客さんがライブに行かないことに慣れちゃったと思って。

——あぁ。「配信で観ればいいか」みたいな。

駒村: そう。ライブハウスに行かないことに慣れ、配信に慣れ。

——そうかも知れないですね。でも、そうは言っても実際に今日、めちゃくちゃ楽しかったんですけどね。爆音が身体に響いて。

駒村: あぁ、そうですか! ありがとうございます。やってるこちらも楽しかったです。


取材後に4人のショットを撮影させていただいてから乾杯。1年を締めくくる有観客ワンマンを終えた彼等は皆、充実した表情を浮かべていた。

L→R:Yoichi Hirono (ds)、Azuma Sakamoto (g)、Masaya Komamura (b)、Ryuji (vo) 

(取材/文/撮影・五辺宏明)
(カバー撮影・RiNAKiM)


RELEASE
『BLACK BABEL』
BB

1. INTRO
2. SHADOWY
3. SCARS
4. DOWN
5. GREED
6. DISENGAGE
7. FEEL

定価:2,400円+税
品番:DYMC-318
レーベル:Daymare Recordings
フォーマット:CD

「SCARS」 
official music video
youtube動画
HP / SNS

公式Twitter @BB_officialinfo