ニューアコ2020はどう変わった? New (Lifestyle) Acoustic Camp 2020レポート

三橋 温子

三橋 温子

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「未来がどうなるかはわからない。このフェスを開催したことが正解かもわからない。だったら一緒に新しい世界を、物語を、つくっていきましょう」

オーガナイザーのTOSHI-LOWは、OAUのステージでこう言った。先の見えない不安を抱えて生きるわたしたちがいま、誰かにいちばん言ってほしかった言葉。

2020年9月19日・20日に群馬県の水上高原リゾート200でおこなわれたNew (Lifestyle) Acoustic Camp 2020は、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、新しいスタイルを取り入れて開催された。2010年から続いている人気キャンプフェスは、コロナ時代にどう変化したのか。

cover photo ©︎New (Lifestyle) Acoustic Camp 2020


参加者を4分の1に縮小、密のない空間へ

昨年は1日1万人以上を集客したNew Acoustic Camp(ニューアコースティックキャンプ/NAC)。今年は密を避けるべく、出演者やスタッフを含めて1日2,500人以内に限定して開催。NAC参加経験者、または参加経験者を含むグループのみが参加対象となった。

元来、TOSHI-LOWはNACを「フェス」ではなく「キャンプ」と称してきた。自分のことは自分で責任をもち、まわりの人たちや自然に優しくできる人だけが歓迎されるイベント。セキュリティースタッフもバリケードも存在せず、一人ひとりの思いやりとマナーで存続してきた。今回開催を実現できたのは、その歴史があったからこそ。

例年より高倍率のチケットに当選した幸運な参加者には、事前に「あたらしいニューアコの、9個の約束」が発表され、参加者登録が義務づけられた。エントランスでは検温やアルコール消毒、新型コロナウイルス接触確認アプリ『COCOA』のインストール確認などが徹底されていた。

会場内ではマスクを着用し、ソーシャルディスタンスを確保。消毒液と体温計を携帯し、37.5度以上の熱が出たら退場。コロナ禍に陥って早数か月、これらの行為はすでに日常となっている。そのせいか意外と窮屈さは感じなかった。

今年の会場は、例年のNIMBUS AND CAMP AREAがなくなってぎゅっとコンパクトに。それでも参加人数が大幅に減っているため、テント同士の間隔はかなり広い。

ステージも5か所から「HERE」「VIA」の2か所のみに変更。いつもは1日目の午前中からの開演だったが、今年は8時開場、16時開演のゆったりスタートとなった。

2日とも出演するOAUをはじめ、1日目は真心ブラザーズ、渡辺俊美、ハナレグミ、Salyu、EGO-WRAPPIN’、TICA。2日目は松本大(LAMP IN TERREN)、G-FREAK FACTORY、片平里菜、MONOEYES、LOW IQ 01がステージを飾った。

大歓声がなくても、心にまっすぐ届いた音楽たち

©︎New (Lifestyle) Acoustic Camp 2020

OAUが出演したHEREステージは、人数制限のある前方エリアと、レジャーシートやアウトドアチェアで自由に参加できる後方エリアに区切られていた。前方エリアには間隔をあけて目印がつけられており、その上にひとりずつ立つ、もしくは座るスタイルだ。

©︎New (Lifestyle) Acoustic Camp 2020

個人的に、このNACがコロナ以来初のライブ(フェス)。歓声をあげたり一緒に歌ったり、まわりの人たちと踊ったり、そういうことはもちろんできない。ひとりで体を揺らして、熱い思いは拍手に代える。それだけで果たして満足できるのか、正直不安だった。

しかしライブが始まった瞬間、それは杞憂だと気づいた。ステージで奏でられる音楽は、これまでとなにも変わることなく心を純粋に揺さぶる。むしろ、自分ひとりだけにまっすぐ届けられているような錯覚さえした。

1日目のOAUの『こころの花』では、「マスクしてるんだから小声なら。一緒に歌ってほしい」というTOSHI-LOWの計らいで、〈歌って〉を合唱。ラストに演奏された『朝焼けの歌』では、〈今はまだ何も無い〉の数小節の静寂を彩るように、子どもたちの笑い声が聞こえてきた。

たとえスタイルが変わろうとも、制限があろうとも、生の音楽はいつだってわたしたちの心を震わせ潤してくれる。

夜のHEREステージは、CANDLEJUNE氏の演出が幻想的。このなかで聴いたアコースティック編成のEGO-WRAPPIN’は格別だった。

混雑なし、行列なしのストレスフリー空間

VIAステージも、例年にはない密度の低さ。子どもがじゃれ合っていたり、犬がまどろんでいたり、みんな思い思いのスタイルでのんびり過ごしていた。

芝生に設えられたステージはあくまでもナチュラルで、ピクニックをしているそばで音楽が演奏されているような心地よさが漂う。まさに〈山とキャンプと音楽が“同じくそこにある”キャンプイベント〉だ。

NACのマスコット、NACMAN(ナックマン)もマスク着用で対策万全!

周辺にはワークショップやフードブースが点在。いずれも行列はほとんどなし。「百麺」「誠屋」×MAKOTOの『小澤誠屋』と、「ソラノイロ」×RONZIの『ソラノイロンヂ』の2店がタッグを組んだスペシャルラーメン店でさえ、並んだのは10分くらいだった(めちゃくちゃおいしかった)。

お手洗いもほぼ並んでいないし、こんなフェスははじめて。「こんなに快適なニューアコないでしょ、大赤字ですよ」とTOSHI-LOWは笑いながら言っていたが、採算と環境のバランスをいかにとるかは今後のフェス界の課題となりそうだ。

今年は終演後〜3日目午前までのオーバーステイが可能に。参加者の約半数がオーバーステイを選択し、帰宅客による大渋滞が大幅に緩和された。

2日目の17時ごろ、OAUのアンコール曲『Making Time』で晴れやかに終演すると、参加者たちは徐々に自身のテントサイトへ戻っていき、夕食や団らんをゆっくりと楽しんでいた。

NACを愛する来場者のみなさんのインスタ&メッセージ

もうひとつ、特筆すべきことがある。雨に降られなかったことだ。開催前日まで天気予報から雨マークが消えず、心のなかでてるてる坊主を何度もつくったものだが、当日朝に雨マークが曇りマークへ変化。2日目にいたっては日中に太陽が顔をのぞかせた。ポンチョも長靴も一度も使わなかった。

スピリチュアルを信じるたちではないが、このときだけは、開催を待ち望むみなさんの思いが天に届いたのだと思わざるを得なかった。

というわけで最後に、参加されたみなさんの素敵なInstagram投稿とNACへのコメントをご紹介。


本当に開催してくれたことに感謝です。例年よりも空間、スケジュールに余裕があって、子どもとゆっくり楽しむことができました。(@takahiro.kommyさん)


大好きなニューアコのためにテントを新調! 今年は人数制限され、いつも以上にゆったり穏やかフェスでした。音楽と自然を心から楽しめる最高な2日間(オーバーステイしたから実質3日間)、すっごく楽しかった!(@millmixerrさん)


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. 2020.09.19-20 13本目 「NEW ACOUSTIC CAMP 2020」 . 今年唯一にして、一番好きなフェス。 多幸がすぎて本当ニューアコ大好き。 . 参加した中で過去2番目に良い、過去最高の曇天(良い意味で)。ヒロミヤの肉を食べ、宝焼酎緑茶割のアンバサダー(非公式)としての役割も果たし、久しぶりのキャンプ。 . ジーフリではダディダーリンで号泣、MONOEYESでは笑い、01さんでは歌い、OAUでは万感。バンドも皆楽しそうだったのが印象的だったな。 . OAUの曲繋ぎは天才的。Banana split→Making timeのラストは踊らざるを得ない流れ(BRAHMANでいう際の賽の河原→BASISの流れ的な)。New taleも久しぶりに聞いたな。 . また来年も、そのまた次も行きたいなニューアコ。 その時はhereとviaとyonderとnimbusでどこに行くか、地図を見ながら楽しく迷うんだ。 今年、開催してくれてありがとうOAU/tactics records。 . #newacousticcamp #newlifestyleacousticcamp2020 #tacticsrecords #camp #outdoor #oau #overgroundacousticunderground #monoeyes #gfreakfactory #lowiq01 #egowrappin #salyu #tica #真心ブラザーズ #片平里菜 #ハナレグミ #宝焼酎 #ヒロミヤ #俺たちのニューアコ

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フェスなんだけど、キャンプなんだけど、なんというかお客さん、アーティストから溢れ出る空気感と愛がニューアコでしか感じられないものという特別感を実感した2020年のニューアコでした。皆が悲願だった今年のニューアコ開催、本当にありがとうございました! 来年は息子をデビューさせるんだ!(@yuichi1226さん)


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* ニューアコの思い出シリーズ① 参加7回目にして初めて先頭入場した我ら 今年はお揃いの麦わらとんがり帽子と共に ハナレグミが被っているとんがり帽子に憧れて買ったこの帽子 目立つ、見つけやすい、見つかりやすい、の三拍子(?)が揃った優れものだった ハナレグミのライブでは最前の端っこに居たけど、ご本人に気付いていただけただろうか…?🤔気付いてくれてたらいいなあ。。 #NewLifeStyleAcousticCamp2020 #俺たちのニューアコ #ハナレグミ #麦わら帽子コーデ #キャンプ #テンマクデザイン #サーカスtcdx #newacousticcamp #camp

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お揃いのとんがり麦わら帽子をかぶって、今年もいつものメンバーで。心配していた雨もほぼ降らず! 今年も素敵な音楽を聴きながらのんびりゆったりと過ごせました! 毎年行列で諦めているアコ飯もたくさん食べられて満足! また来年も楽しみ~!(@yum_yum_yumikoさん)


1回目から欠かさず参加しているニューアコ。 2人、3人、4人と家族が増えて、こどもの成長に合わせて遊び方も変化してきました。今年は料理を一緒に作ったりお散歩したりと、無理のないよい時間を過ごすことができました。ニューアコは我が家になくてはならないイベントです。 こんな状況でもフェスはできる! 素敵な時間をありがとうございました!(@ayashi_nu.needleworksさん)


今後、コロナ禍が収束しても、すべてが元どおりにはならないだろう。従来のフェスやライブが再びできるかどうかもわからない。

だが、それは悲観すべきことではない。生きている限り世の中は変化し続けていくし、そこに適応していく術を人間はもっている。新たな体験を楽しむ力も、より楽しめるように思考をめぐらせる力も、そして、そのなかでも変わることのない大切な真理に気づく力も。そう思わせてくれたのはNew (Lifestyle) Acoustic Camp 2020だった。

また来年、この地で音楽と大自然に包まれる日を、〈心の技術〉を磨きながら待ちわびたい。

(取材/文/撮影・三橋温子)


『Re:New Acoustic Life』
OAU

結成15周年を迎えたOAUのオールタイムベスト盤! OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND時代の名曲から、今年のNACで披露された新曲「Change」、井上陽水「最後のニュース」のカバーまで、人気ナンバーを【Re:New】(再レコーディング)にてお届け。

発売日:2020年12月9日(水)※予約受付中

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