
秋田県秋田市発ロックバンド・月刊少年アイロニーが6月25日に2nd EP『こんな日々に夜が下りるだけ』を配信リリースする。併せて6月27日には渋谷CRAWLにてレコ発を開催、8月には全国7カ所を回るリリースツアーも行う。
7月26日には地元秋田のロックフェス・男鹿ナマハゲロックフェス2025にも出演が決定し、10代からのバンド活動が1つずつ実を結び始めている。そんな彼女達にインタビューを実施。秋田から上京して大学などと並行しながら精力的にバンド活動をしている姿と、その情景が詰まった楽曲は、この春から新生活を始めた人にも刺さるはずだ。
INTERVIEW
上京してからの日々や思いを詰め込んだEP


まず結成の経緯からお聞きしてもよろしいですか?

中学3年生の時にばも(Dr./Cho.)と出会って、バンドをやりたいねという話をしていたんです。それぞれ軽音楽部が強い別の高校に行ったんですけど、1年生の時に一緒にバンド活動を始めました。
ベースは元々別の人でしたが、その子は抜けて高校3年生の時に鈴音(Ba./Cho.)にサポートベースに入ってもらって、上京のタイミングで正式加入してもらいました。

私は新人発掘もしていて、日々全国各地のバンドをディグっているから気になっていたんですけど、東北の高校生バンドシーンで仙台の次に元気なのが秋田という印象があります。
秋田のその高校の軽音事情というのは、どういうものなんですかね?

高校生に限ると、K-studioのKさんという方が運営している「秋田学生バンド革命!」という団体が、高校生が出るためのライブを1〜2ヶ月に1回企画してくれています。そこで経験を重ねて自分達でもライブハウスで企画をやったりして、本格的に動き始めるバンドが多いので、そこの影響は大きいかなと思います。

年代で言うとnoxic(「はなれるはなれる」MV再生回数100万回超え)や、イチブンノヨン(閃光ライオット2023ライブ審査進出)も、そこの出身だったりするんですかね?

そうですね。noxicもその繋がりでしたし、イチブンノヨンとは一緒にやってました。高校生のシーンが結構すごいと思います。

K-studioには結構いろんな高校から集まっていたのですか?

県内で軽音楽部が強い高校は、私とばもがいた2校くらいになっちゃうんですけど、それとは別に有志でバンドやりたい人が秋田市外からも集まる感じでしたね。その有志も含めて皆で切磋琢磨していました。

鈴音さんとの出会いもそこなんですかね?

そうです。私は市外の高校から秋田市に通ってバンドをしていて、高1のときに田川とコピバンを組んでいた縁でサポートをやらないかと声をかけてもらい、バンド好きの父親にも勧められて、このバンドに入りました。

そういった出会いやエッセンスがあって、今の月ロニがあるんですね。
現在上京3年目、ばもさんは1年遅れだったので3人としては2年目となりました。今回のEPからは、その東京での生活が色濃く出ていると感じましたが、実際の東京生活はどうですか?

いやぁ面白いです。ただやっと慣れてきたくらいで、しんどくて苦しいのがちょっとあって、そこが曲にも出ているかなと思います。

どういった部分が大変でした?

新しい環境で初めて一人暮らしをして、いきなり自立しなきゃいけなかったのが皆苦しかったと思うし、駅に行くと「こんな人混みに毎日行かなきゃいけないんだ」と精神的にも疲れちゃって…。実家も遠いし、一人だしというのが苦しかったですね。
でもバンドメンバーはいるし、東京で会いたい人もいるし、一人暮らしも段々慣れてきて悪くないなと思えてきた頃なので、自分の心が大人になっていく期間というか、生活がまとまってきたなと思っています。

収録されている「September」からも、一人暮らしの部屋での情景がすごく浮かんできました。

この曲のことについて話すと、去年、夏の暑さはもちろん、バンドの予定も学校の予定も詰めまくって、すごく追い込まれてしんどくて、全て投げ出したいなという気持ちになってて。
ただ、夏が明けて少し涼しくなった9月に好きなバンドのライブを見た時に「今の状況を飲み込んで頑張らなきゃ」と思う瞬間があって。夏しんどかったのが明けて前向きになれる瞬間みたいなものを曲にできていたらと思っているので、今しんどい人とか、しんどい時期に聴いてほしいです。

ちなみに何のバンドを見たんですか?

soyouth(noxicのメンバーが解散後やっているバンド)です。

同じ東京で頑張っている同郷のバンドマンから力を得たんですね。今回そういった4曲が届いてきて、お二人はどうでしたか?

田川が作った曲を聴いて改めて「こういう時期にこういうこと考えてたのか」と知るので、それをどうやって田川が思うように伝えるか。そして田川からの思いも大切にしつつ、自分なりの表現をどうやってするか。今作は一緒に東京で頑張ってきたということもあるので、よく考えてベースラインを作り、演奏しました。

鈴音さんは東京で大変だったことは何かありますか?

田川と同じように電車が大変でしたね。あと、今まで中高で出会う人は環境も近いから価値観が似ている人が多くて、過ごしやすかったと思うんですよ。ただ東京だといろんな価値観の人がいて。でも良い意味で刺激を受けていて、人付き合いが楽しいなと思います。

私もコンビニのない田舎から、東京ほどではないとは言え都会の神戸に来たから、そのカルチャーショックは分かります…。

田川の書く曲って、誰もが抱える、経験したことがある孤独を繊細に書いていて、歌詞1つとっても、一人称をひらがなで書いたり漢字で書いたりと、細かいところで変化がある。「ここはしっかり表したいんだろうな」というのがよく見ると分かるのが、良い特徴だと思っています。
今回のEPでは、そこを細かいフィルインとかで表現して気付く人には気付くようにして、細かい世界観を作るようにしました。
東京で得たものと、ずっと変わらないもの


ちなみに東京のライブハウスで活躍するバンドの中で、皆さんが上京して衝撃を受けたバンドっていますか?

上京して初のライブでCAT ATE HOTDOGSを見て、3人のキャラが楽器も人柄もすごい立っていて、それが合わさってできた時の力が本当にすごいなと思って。この前も見たんですけど、いつもカッコよくて曲からもスキルからも刺激を受けますね。

私はHwylです。上京してきた初期の頃に刺さる曲ばっかりだったので、衝撃を受けて今も大好きなバンドです。

Hwylのボーカルも同じ東北の青森出身ですし、シンパシーがあるかもしれませんね。

私は横浜のyubioriですね。さよならポエジーが好きで上京してからよく見に行ってるんですけど、その対バンで見た時に、ファンも一体で歌うのが気持ちよくて衝撃で、空間全体を包み込んでいる感じのライブが、自分にもできたらいいなと思いました。

そこは曲作りに活きたりしましたか?

たしかにそうかも。今までは青春ロック寄りだったんですけど、いつまでも高校生バンドの時の気持ちではいられないなと思ってて、対象年齢を1〜3才上げるようなイメージで作りましたね。

3人とも芯が強くて硬いロックバンドを挙げられたなと思いましたが、たしかに月ロニの音源を聴くと納得な部分もありますね。
私は今回のEPでは「正体」という曲が好きで、東京で得たものと、歌詞にもあった17才の時から変わらないところが合わさっているように感じました。月ロニには「17才」という曲もありますが、そことの繋がりも感じました。

ありがとうございます。「正体」は20才になったから書こうと思って、過去の繋がりなども思いながら、今の自分を記録した曲です。

秋田時代から「ここは変えないでおこう」みたいなところはありますか?

当然歌いたくないことは歌いたくないですし、子供っぽく見られるのもあまり自分は好きじゃないので、そういうところに気を付けるようにはしています。
あとまぁ、あまり自分が東京に染まっている実感はないです(笑)。

お二人から見てもそうですか?

秋田に帰りたそうに見える時はある。

秋田LOVE、田舎LOVEなので(笑)。今も東京とは言え、閑静なところに住んでいるので、もっと都心部だと荒んでいたかもしれない。

ばもさんは東京楽しんでますか?

私は埼玉なのであまり変わらないかもです(笑)。鈴が一番楽しめてる気がします。

そうですねぇ♪

(笑)
「初めて」づくしの全国ツアーに向けて

これからEPのレコ発や全国ツアーが開催されますが、自分達のライブでの魅力や「ここを見てほしい」というポイントはありますか?

ライブでのこだわりは、音源では伝えきれなかった歌詞の内容とか感じを伝えられるように歌っているところです。語りかけるように歌ってみたり、お客さんと1対1の気持ちで毎回ライブをしています。


それですと先日のフロアライブ(4月22日に下北沢CLUB251で開催)は楽しかったんじゃないですか?

楽しかったです! いつもフロアライブがいいかも(笑)。同じ目線で歌えるのが楽しかったですね。

私はPAも勉強しているんですけど、それで音のことを考えるようになって。
スリーピースって音数も少なくてバランスが難しいんですけど、私たちのライブは緩急を結構大事にしていて、落ち着くところは落ち着いて、うるさいところはうるさくしたいので、音の足し引きは考えるようになっています。自分達が表現したいニュアンスをどこまで追い求められるかがこだわりですね。


私はドラムを叩くにあたって、“強く優しく丁寧に”というのはずっと大事にしています。
ライブの時は視覚的に訴えかけるパフォーマンスを重視していて、ライブで音源と同じことをするっていうのは自分の中では違うなと思っています。田川も言ってたんですけど、音源では伝えきれない世界観を表現できるようにしていますね。カッコよく見えるフレーズや、ライブ映えする動きは結構意識しています。


今回のレコ発はどのような意図で組まれましたか?

アオギリはライブハウス側からも良いんじゃない?と言ってもらえましたし、去年から対バンしていて、カッコよくなっていく過程も見ていたので、このレコ発でと思いました。
紫苑は仲良いだけじゃなく、音楽も本当に好きで、尊敬するところもあるので呼んでいます。
やびさん(CiEL)は今回は弾き語りですけど、バンドとは上京した頃から対バンしていて、すごく曲も良いし、やびさんの音楽に真っ直ぐで全力な姿勢に憧れるし、尊敬できる先輩だと思っています。
仲が良いだけでなく尊敬できる3組をお呼びしました。

そして8月からのツアーは初めて行く場所も多いです。

神戸や名古屋は初めてですし、大阪や千葉も出演するライブハウスは初めて。仙台は上京後初、名古屋は人生初です。大阪を始め、良い対バンが揃っていますし楽しみです。

対バン含め、初めましてが多いですから、先程おっしゃったこだわりをしっかり見せていかれると思います。
ちなみに何か食べたいものとかありますか?

ひつまぶし食べたい!

仙台なら牛タンだよね。大阪でも今まで食べたことがないのを食べたい。

大阪なら、かすうどんとかありますね。

じゃ、かすうどん食べます!

神戸は、焼肉丼の『十番』は毎回バンドマンが食べてますね。太陽と虎からも近いので是非。
そして、ツアーの前には男鹿ロック(男鹿ナマハゲロックフェスティバル)にも出演します! 秋田のバンドとしては絶対出たい場所と言われてましたが、改めてどんな気持ちですか?

嬉しいけど、まだ実感できてなくて…。
高校生の頃からずっと「男鹿フェスに出ないと始まらない!」と目標にしていました。秋田のバンドとして世に知っていただける機会になるんじゃないかなと思うので、頑張りたいと思っています。

父の影響もあって、よく聴くタイプのアーティストと共演できるのが本当に嬉しいです。父も喜んでいました。マンウィズにお会いしたいですね。

こんな大きなステージでやれるなんて、私もまだ実感ないんですけど、15分という時間でできることをしっかりとやりたいと思います。

ありがとうございます! 最後に読者の皆さんへメッセージをお願いします!

全員20才になって初めての企画だし、人生初のツアーだし、初めてのことだらけなんですけど、今までの自分達と全く違うってくらい進化したものを見せられるように準備しますので、皆さん是非来てください!
(取材/文・遊津場)
RELEASE
月刊少年アイロニー
2nd EP
『こんな日々に夜が下りるだけ』

収録楽曲
1. September
2. おやすみ公園
3. 今更な話
4. 正体
作詞/作曲 : 田川
編曲 : 月刊少年アイロニー
配信開始日
2025年6月25日(水) 0時予定
事前予約はこちら
LIVE
月刊少年アイロニー pre.
2nd EP『こんな日々に夜が下りるだけ』
レコ発ライブ

DATE
2025年6月27日(金)
open 18:00 / start 18:30
PLACE
渋谷 CLUB CRAWL
TICKET
¥2,400 +1d
予約はこちら
ACT
月刊少年アイロニー
アオギリ
紫苑
やび(CiEL)
月刊少年アイロニー
2nd EP Release
『Good night my sweet memory tour』

初・全国7ヶ所リリースツアー開催!
・8月7日(木) 秋田 LOUD AFFECTION(秋田)
・8月8日(金) 仙台 ROCKATERIA(宮城)
・8月12日(火) 志津 Sound Stream sakura(千葉)
・8月21日(木) 福島 LIVE HOUSE 2nd LINE(大阪)
・8月22日(金) 神戸 Music Zoo 太陽と虎(兵庫)
・8月25日(月) 新栄 RAD SEVEN(愛知)
・8月28日(木) 渋谷 CLUB CRAWL(東京)
※全公演対バンアーティストあり・後日解禁
PROFILE

月刊少年アイロニー
秋田県秋田市発ロックバンド。2020年6月9日結成(当時高校1年生)。忘れられない、忘れたくない思い出を歌いたい。けれども、素直にはなれないから自身のバンド名に由来している「Irony:皮肉」を込めた、ひねくれた言葉が魅力のロックバンド。リスナーのそういった部分を代弁すると共に、熱いライブパフォーマンスとバンドの世界観を等身大で表現することで注目を集める。