ライブハウスへの恩返しプロジェクト「ライブハウスネバーダイ」 似てない屋・樋口ヒデヨシさんインタビュー

「ライブハウスへの恩返しプロジェクト「ライブハウスネバーダイ」 似てない屋・樋口ヒデヨシさんインタビュー」のアイキャッチ画像

新型コロナウイルスの影響でライブハウスが危機的状況にあることを受け、「ライブハウスネバーダイ」というプロジェクトが立ち上がった。発起人は、TOYOTA ROCK FESTIVALなどを企画運営するイベント企画ユニット「似てない屋」の樋口ヒデヨシさんと、さまざまな音楽フェスでライブペイントなどを手がけるスドウPユウジさんの二人。

「支援」「救済」ではなく「恩返し」だというこのプロジェクトには、全国60軒近くのライブハウス(4月現在)が参加しており、今や大手企業が援助するほどのインパクトのあるプロジェクトに成長しつつある。その内容や立ち上げのストーリーについて、樋口さんにお話を伺った。

※4月25日に発表された第2弾プロジェクトの概要を追記。詳しくはこちらから。


ステッカーを無料で配り、売上は全額ライブハウスへ
橋の下世界音楽祭

愛知県在住の樋口さんと和歌山県在住のスドウさん。樋口さんが運営に携わる橋の下世界音楽祭で、スドウさんが会場の看板デザインや装飾を手がけて以来の付き合いだという。今回のプロジェクトを始めたきっかけは、スドウさんがSNSにアップした画像だった。

「蔵王の『音茶屋』というカフェでやっていた無観客ライブ配信に感化された(スドウ)Pくんが、『ライブハウスネバーダイ』と書いたロゴデザインをアップしていたんです。いいデザインだったのですぐに電話したら、これを使って何かできないか…という話になって。そこから、ステッカーをつくってライブハウスやクラブに配って、音楽好きのみなさんに買ってもらうというプロジェクトを思いつきました。

知り合いのライブハウスからは悲惨な現状をよく聞いていたし、僕自身も主催のライブイベントが3つくらい飛んで途方に暮れていたときだったので、できることは何でもやろうという気持ちですぐに活動を始めました。詳細を詰めてSNSで発表するまで1日もかからなかったです」

樋口ヒデヨシさん(左)とスドウPユウジさん(右)

最初は自腹を切るつもりだった。ところが仲間内を中心に協力者が次々と現れ、集まったお金は約20万円。その資金でステッカー5000枚を印刷し、付き合いのあるライブハウスや音楽仲間にさっそく連絡してまわった。

無料でステッカーを配布し、1枚あたり1,000円の売上は全額ライブハウスに進呈する。当初はその取り組みに半信半疑のライブハウスも少なくなかったという。

「でも実際に配り始めたら、そこのライブハウスの常連さんたちが買いにいってくれて、『本当に売れるんだ!』となって。感謝のメールをたくさんいただきました。配布初日に完売したところもあって、予想以上の反響に驚いています。『ライブハウスネバーダイ』というフレーズのキャッチーさ、Pくんのデザインのよさ、あとはステッカーというのもよかったんだと思います。形に残る嬉しさがあるし、貼ればメッセージにもなるので」

キーホルダーにTシャツ、無観客ライブのラジオ生放送も
スドウPユウジオリジナルステッカー全6種(60mm×60mm/1枚1,000円)

ステッカーから始まった「ライブハウスネバーダイ」プロジェクトは、その後思わぬ展開を見せる。

「まず、橋の下世界音楽祭の仲間の鍛冶屋グループ『鍛鉄組』から連絡があって、オリジナルキーホルダーを厚意で500個つくってくれることに。これがすごく人気で、1個3,000円なんですが現在はほとんど完売しています」

プロジェクトは日経新聞や毎日新聞のWebでも紹介され、なんと名古屋の大手企業・ブラザー販売からも支援の申し入れが。Tシャツ500枚の製作と提供を請け負ってくれることになったそうだ。

「ウイルスの蔓延という風評被害でライブハウスにはよくないイメージがついてしまっているので、ご迷惑をおかけしないか心配だったんですが、『そんなことは関係ない、支援する』と言ってくださって。デザインは僕たちの自由にさせていただけるとのことで、本当に感謝しています。GW明け頃をめどに配布できたらと思っています」

さらに、地元のラジオ・エフエムとよた(RADIO LOVEAT)で音楽番組を14年担当している樋口さんは、ライブハウスでの無観客ライブをラジオで生放送する企画も考えている。ドネーションや放送音源のCD化などで資金を集め、ライブハウスやアーティストには賃料・出演料をきちんと支払う。解説者を入れたライブ実況など、ラジオならではのユニークなアイデアも取り入れていきたいという。

自分を救い育ててくれた、ライブハウスへの恩返し

実は、樋口さんの本業はクラシックカーの修理販売業。イベント企画ユニット「似てない屋」の活動は、商売としてよりも趣味の延長として続けている、いわばライフワークだ。

「僕はもともとパンク少年で、バンドもやっていたけど才能がなかった。そんな中でFUJI ROCKに感化されて、出演者ではなく運営者として音楽に関わる方法があるじゃないかと思い立ったんです。その頃、豊田スタジアムのまわりの広場を使わせてくれるという話がたまたま来ていて、しかもそこの職員の中にちょうどロック好きがいて。いろんな偶然が重なって『一緒に音楽フェスをやろう』という話になり、2007年にトヨタロックフェスティバルを立ち上げました」

トヨタロックフェスティバル、通称トヨロックは、入場無料の野外音楽フェス。フリースタイル・モトクロスをはじめとするアトラクション、キャンプなども楽しめるフェスで、来場者は3万人にのぼる。

「台風で中止になって大赤字を出して、クラウドファンディングでみなさんに助けていただいたこともありましたが、毎年本当にいい経験になっています。トヨロック立ち上げ以降は、音楽フェスやライブイベント、クラシックカーイベントやフリーマーケットなどいろんなイベントを企画・運営するようになり、仲間もノウハウも増えていきました。その積み重ねがあったからこそ、今回の『ライブハウスネバーダイ』も発表後すぐに仲間が50人くらい集まってくれて、ここまで拡大できたんだと思います」

イベントをつくる際のポリシーは、「カッコつけずに、おもしろいことを素直にやる」。今回のプロジェクトに関しても、内容はできるだけシンプルにし、かかった費用なども含めてすべて公表することで、世の中にストレートに響いたのだと樋口さんは推測する。

「ライブハウスネバーダイ」では、「支援」「救済」という言葉は一切使っていない。それは樋口さん・スドウさん二人の決めごとであり、ライブハウスへの感謝の表れでもある。

「自分たちが『助ける』なんておこがましい。ライブハウスで出会う音楽に救われ、育てられてきた人生だから、今度は僕らから『恩返し』をしたいんです。だからみなさんにも恩返しのつもりで、最寄りの好きなライブハウスからステッカーを買ってほしい。この状況が収束して、当たり前のようにライブやフェスができる日々が戻ってきたら、世の中の音楽好きな人の『音楽が好き!』という気持ちの純度は前よりもっと上がるような気がしています」

(取材/文・三橋温子)



ライブハウスネバーダイ第2弾スタート!

第1弾のステッカー&キーホルダーは、全国69か所のライブハウスやクラブにお渡しを完了、絶賛販売中(一部完売あり)。第2弾は企業や協力者のサポートを得て、下記グッズを販売予定。

  • スドウPユウジデザインTシャツ(ブラザー販売株式会社)
  • 永山愛樹デザインステッカー(タートルアイランド・橋の下世界音楽祭 永山愛樹)
  • 限定コラボピーナッツバター(苺と落花生の生産農家 美岳小屋)
  • オリジナル手ぬぐい(アルニゴインディゴ)※製作中


スドウPユウジデザインTシャツ

永山愛樹デザインステッカー