眠れない夜に聴きたい! 暗闇に明かりを灯す音楽を作る新人アーティスト5選

望月 柚花

望月 柚花

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「眠らなければ」と思えば思うほど眠れず、何度も寝返りを打ち、ときどきスマホで時刻を確かめる。SNSのタイムラインにもあまり人がいなく、静まり返ったこの世界でちゃんと眠れていないのは自分だけのような気持ちになってしまう。

今回は、そんな眠れない夜、深い孤独を感じる夜に、遠くに光る誰かの家の窓のような心強さを与えてくれるアーティストを紹介したい。


心地よいグルーヴ感で夜をすりぬける

chilldspot(チルズポット)

chilldspotは、比喩根(Vo./Gt.)、玲山(Gt.)、小崎(Ba.)、ジャスティン(Dr.)からなる4人組のバンド。2019年12月結成。

メンバーは全員2002年生まれで、高校在学中2020年に1stEP『the youth night』を発表し、早熟なセンスと高い完成度の楽曲で話題を呼んだ。2021年9月には初のアルバム『ingredients』をリリースしている。

「Groovynight」

終電の時間が過ぎても、都会の夜というものはイメージするよりずっと明るい。すれ違うのは顔も名前も全く知らない人たち。どの人もこの先決して交わらないはずなのに、どこか親密な感じで、友達みたいで、共犯めいた意識を感じる。真夜中の明るい街を歩きながら聴きたい1曲。

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眠れない時はあってもいい

sucola(スコラ)

sucolaは、オキツ(Vo.)、yopeco(Gt.)からなる、2019年結成、名古屋出身の音楽ユニット。オキツとyopecoはひとまわり違いの寅年で「ニュー感覚歳の差ユニット」と自身たちを言い表している。

2020年には各配信サービスで11曲をリリースするなど精力的に活動し、2021年4月には初のEPとなる『roomoon』を、さらに同年8月には2nd EP『胸熱前線』を発表。しっとりと心に残る、どこか懐かしくもあるキャッチーな楽曲が印象的なアーティストだ。

「memento mori」

誰かの言ってた約束、明日の予定、自分がいつまで生きるのか。この世界中の何もかもは不確かで、確かなものなどひとつもないけれど、今ここにあるこの歌は確かだと思える。落ち着く歌声とメロディー、不安な気持ちなどなくなるような1曲。

違う世界に逃げこんで、いくつもの夜を超えていく

パブリックインベーダー

パブリックインベーダーは、メインボーカルyuri、作詞作曲を担当する上田の二人からなる。SUPER BEAVER、マカロニえんぴつらが所属するインディーズレーベルのmurffin discsが主催する『murffin discs Audition 2020』でグランプリを獲得し、2021年にシングル『404号線』でデビューした。物語を感じるエモーショナルな歌詞、歌声、音使いで、聴く人をするりとその世界に引きこむ。

「404号線」

近視の人がコンタクトレンズやメガネを外したら、世界はどう見えるだろう。不安になるかもしれないし、何かにつまずいて危ないかもしれない。怖いかもしれない。あるいは、それとは全く逆で、輪郭をなくしたものや光がとても美しく目に映るかもしれない。ワクワクするかもしれない。

この楽曲を聴くとそんなふうに、日常と非日常の境界線は簡単に飛び越えられるものだと感じる。

孤独を抱えて朝を待つ日に

seasunsalt(シーサンソルト)

seasunsaltは、ふじたまゆ(Vo./Gt./Songwriting)、釜瀬雄也(Gt./Cho.)からなるプロジェクト。2019年1月から本格的に活動を開始。2019年3月に1st EP『ecr』を、同年6月に2nd EP『“Into the Sleepless Night”』をリリースし、2020年2月リリースのシングル『AM4 / ComeOver』はApple Music内の公式プレイリスト「wasabi」に選出される。2021年5月、初のアルバム『Half dreaming, morning rays.』をリリース。

美しく柔らかなトラックと透き通る歌声、独特の湿度が漂う楽曲は、数多く存在する若手新人アーティストの中でも唯一無二のものとしてseasunsaltの世界を構築している。

「かもしれない」

雨の降る夜は、空気にみずみずしい甘みのようなものがまじる。そんな天気の夜は、傘をさしてちょっとそこまで行ってみたくなってしまう。外に出て、ビニール傘を開いて、空気を吸う。雨の匂いと、湿度と、少しだけ漂う甘さを感じる。この楽曲は、そういうことをずっと忘れずにいられるような、一生持っていられるお守りのような1曲だ。

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眠れない夜にやわらかくふりそそぐ音楽

Ratrium(ラトリウム)

Ratriumは、Shigeとmoriからなる音楽ユニット。2020年3月に以前のアーティスト名から現在のRatriumに改名し、改名後初となる楽曲『ココダケノハナシ』をリリースした。アーティスト名の由来は、夜を表す「Ratri(ラートリー)」と一時停止や猶予期間を表す「moratorium(モラトリアム)」をかけ合わせた造語であるそうだ。

「ココダケノハナシ」

目を閉じると瞼の裏に光が残っていて、不思議な模様が見える。目を開けてスマホを見て、また目を閉じて模様を確かめる。この寂しさは誰とも共有できないもので、そうであることをわかっているから余計に寂しい。この曲からは、強ばって固まった心を少しずつほぐしていくようなやわらかさを感じる。



生きていれば誰にだって眠れない夜はあるはずで、今、自分一人が眠れないわけではない。頭ではそう分かっているのに、どうして世界でひとりきりになってしまったような気持ちになるのだろう。

今回、「眠れない夜に聴きたい」というテーマで、5組のアーティスト、そして各アーティストのおすすめの楽曲をひとつずつ紹介した。この記事の中に、誰かが夜を超える気力になったり、安心できたりする音楽があったらいいなと感じる。

どうか、あなたの眠れない夜にも寄り添うものでありますように。

(文・望月柚花)