「自分らしい生き方」をすべての人に。国際女性デー音楽祭|HAPPY WOMAN MUSIC FESTA 2021 レポート

曽我美 なつめ

曽我美 なつめ

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皆さんは「国際女性デー」という日をご存知だろうか。毎年3月8日に制定されているこの記念日には、世界中で女性の地位向上やジェンダー・フェミニズムに関する問題提起が行われている。

日本でもこの認知を高めるべく活動している人々は大勢おり、そのうちの1つが今回ご紹介するプロジェクト・HAPPY WOMANだ。

そのプロジェクトの一環として、2021年3月27日に沖縄で開催された『国際女性デー音楽祭|HAPPY WOMAN MUSIC FESTA 2021』。今回はこのイベントのレポートを通して、音楽と絡めたジェンダー課題についても考えてみようと思う。


女性が心の底から笑える世界を作る!
HAPPY WOMANとは?

HAPPY WOMANは、「すべての人が個性と能力を発揮でき、豊かで幸せな人生を送れる社会の実現」「女性の力による経済社会の活性化」を目的に活動するプロジェクト。

中でも、未だ世界中に根強く残る職業・生活の中における女性差別。それらを払拭し、真の意味での男女平等社会を目指すべく、日々様々な活動を行っているそう。オンラインセミナーやSNSによる情報発信、イベント開催など活動は多岐にわたり、これまで多種多様なスタイルでジェンダー論や性差別に関する問題提起を行ってきた。

音楽と共にジェンダーを考える
HAPPY WOMAN MUSIC FESTA

©︎HAPPY WOMAN 実行委員会

そんなHAPPY WOMANによって、今回開催された音楽イベント『国際女性デー音楽祭|HAPPY WOMAN MUSIC FESTA 2021』。これは「女性のエンパワーメント推進と社会活性化」および「女性の力によるSDGs(=国際社会共通の持続可能目標)推進」を目的として開催されている。

本来ならば2020年の開催予定だったが、新型コロナウイルスによる影響で2度の開催延期。苦境を乗り越え、今回ようやく開催へと至っている。

このコロナ禍での開催ということもあり、イベントはリアル会場とオンライン配信の2つのスタイルを活用。リアル会場となったのはSDGs未来都市のうちの1つでもある、沖縄県恩納村だ。現地では当然、万全の新型コロナ対策を施行。アフターコロナの新しい社会環境のビジョンも見せつつ、本イベントは大好評の内に終了した。

記念すべきイベントを彩った華やかな女性アーティスト陣はこちら!

今回は本イベントにてステージに登壇した、以下の6組の女性アーティストのパフォーマンスをご紹介。

  • Chuning Candy
  • いーどぅし
  • Anly
  • 木村カエラ
  • 島袋寛⼦
  • Chara

イベント当日の様子と共に、彼女たちが日頃どのような思いを抱えながら音楽活動を行っているか、ということについても触れておきたい。当日の様子をレポートしつつ、1組ずつその詳細を語っていこう。

Chuning Candy

©︎HAPPY WOMAN 実行委員会

オープニングを飾ったのは、地元沖縄を拠点として活動するガールズユニット・Chuning Candy。2021年4月に発売の新曲『MOVING ON !!』や代表曲『ダイナミック琉球』を始めとした4曲を、溌剌としたパワフルなダンスで披露していく。

明るくイキイキとした女性像を発信する本イベントに相応しい、華やかなパフォーマンス。エネルギーに満ち溢れたそれらを冒頭から披露し、会場からは彼女たちの楽曲に合わせて暖かな手拍子も送られていた。

「キャンディーのようにいろいろな個性を持つメンバーが、一体となり音楽を紡ぎ出す」をコンセプトとして結成されたChuning Candy。従来のアイドルのように、可愛らしさだけを是とする画一的な「女性らしさ」の枠には囚われない。グループが軸として掲げるそのテーマは、まさにこのイベントに相応しいものであったかのように思う。

いーどぅし

©︎HAPPY WOMAN 実行委員会

続いて楽曲を披露してくれたのは、アコースティックギターと沖縄三線のガールズデュオ・いーどぅし。琉球語で「親友」を意味するユニット名を冠する彼女たちもまた、この土地ならではの良さを音楽を通して発信し続けているアーティストである。

どんな場所に居ようとも、一瞬で私たちを沖縄の景色へと連れて行ってくれる三線の音色。それに合わせ、この地独特のゆったりとした時間の流れを感じさせるギターの音と2人の声。それらが絶妙に緩やかに絡み合って響き、会場全体のムードを彼女らだけの色に見事に染め上げていった。

生まれ育った場所に強い誇りと大きな愛を持って、音楽を奏でるいーどぅしの2人。自分たちが置かれた環境に愛を持って、自分たちがなすべきこと、やりたいことを発信し続ける。それはまさに、しなやかにそして美しく生きる現代の女性の理想の姿の1つなのかもしれない。

Anly

©︎HAPPY WOMAN 実行委員会

開催地である沖縄の⽟城デニー県知事の挨拶を挟み、続いてのパフォーマンスはシンガーソングライター・Anly。彼女もまた沖縄で生まれ育ち、音楽を愛し続ける女性アーティストの一人である。

彼女の音楽の最大の魅力は、たった1人の奏者で声や楽器を何重にも重ねた演奏を実現する機材「ルーパー」を巧みに使うプレイだ。音楽的センスが大いに問われるこの手法によって、彼女は独自のスタイルを確立した女性シンガーとして現在注目されている。

そんなAnlyの真価が発揮されるのは、断然リアルライブパフォーマンス。この日も彼女は器用なルーパー使いと力強いハスキーボイスで代表曲を次々披露。あっという間に、会場の空気を自分のものへと塗り変えていった。

文字通りオンリーワンのスタイルを確立するAnlyの歌う姿は、シンガーとしても、そして女性としても凛として力強く美しい。また本イベントのみに限らず、様々な社会問題を提起するイベントにも定期的に出演する彼女。どこまでも自分の芯を貫くスタイルが、その活動姿勢からも滲み出ているように思う。

木村カエラ

©︎HAPPY WOMAN 実行委員会

4組目となるアーティストはシンガー・木村カエラ。数々のヒット曲を生み出した彼女もまた「自分らしさを貫く女性」のアイコン的存在として、男女を問わず大勢から長年熱い支持を受けている。

実は木村カエラと今回のイベントには大きな縁がある。2019年発売の彼女のアルバム『いちご』。本作に収録の楽曲『ミモザ』は、ミモザの花を象徴とする国際女性デーが曲の着想の1つともなっているのだ。

またさらにこの『ミモザ』は、同日のイベントに出演していたCharaによって作られた曲である。「2人の共作曲を今日ここで歌えることに大きな意味を感じる」、そう前置いて彼女はこの曲をとても大事そうに、そして丁寧に歌い上げていた。

木村カエラの最たる魅力は、彼女自身が放つどこまでもポジティブで明るいムードにある。多くの女性にとってネガティブになりがちな、年を重ねることや環境が変わること。それらもすべて自身のエネルギーとし、ともすればそんな変化を楽しみながら生きている。

自分の変化を一切恐れていない、という旨の話を、彼女は度々口にしている。そんな強さと自由さを兼ね備えるからこそ、こうして音楽を通して大勢の人々に元気とパワーを与え続けられているのだろう。

島袋寛子

©︎HAPPY WOMAN 実行委員会

関係者からの挨拶を挟み、いよいよライブも後半戦。ここで登場したのは、沖縄出身で元SPEEDのメンバーとしても知られる島袋寛子だ。ソロシンガーやSPEEDとしての復活など、形を変えながらも長年にわたり音楽活動を続ける彼女。

この日は沖縄の鮮やかな海を彷彿とさせるような青のワンピースと、HAPPY WOMANのシンボルカラーであるイエローのネックレスを纏って登場。『ハロ』『私のオキナワ』『童神』など、自身のルーツ・沖縄をコンセプトとしたアルバム『私のオキナワ』収録曲を中心とした7曲を、伸びやかな声で歌い上げていた。

SPEEDのhiroとして求められる葛藤を乗り越え、ダンサーやポップアーティストだけでなく、ジャズシンガーや女優としても活躍するアーティスト・島袋寛子へ。彼女もまたこれまでに様々な苦楽を乗り越えながらも、自分の心に素直に歩み続けるミュージシャンの一人である。

見た目やスタイルだけでなく、生き方からも垣間見える彼女の女性としての美しさ。それもまた、今もなお大勢を魅了し続けるチャームポイントの1つなのだろう。

Chara

©︎HAPPY WOMAN 実行委員会

そしてこの日ステージのラストを飾ったのはChara。本年2021年にデビューから30周年というアニバーサリーイヤーを迎える彼女は、その年月の長さに違わぬCharaワールドを説得力のあるパフォーマンスで展開していく。

この日は『やさしい気持ち』や『タイムマシーン』などの代表曲を始めとした9曲を演奏。ピアノでの弾き語りやハンドマイクでの歌唱など、彼女らしさが随所で光るのびのびとした自由なステージングを見せてくれた。

独創的で個性的な世界観を持つシンガーである一方で、2人の子の母としての顔も持つChara。彼女もまた様々な役割を社会や他人から与えられながらも、自身の軸をブレさせることなく歩んできた女性の1人だろう。

己が良しとしないことに関してはすぐに戦うし、そうやってこれまで数十年生きてきた、と彼女は語る。自分は頑固だから、と笑うCharaだが、一見しなやかで繊細に見える彼女のその芯の強さこそ、明るく強い今後の時代の女性に何より必要な要素なのかもしれない。

「女性らしくていい」ってなに?

女性の社会進出や、男女が真の意味で平等になる世界を目指すための啓蒙イベントとなった『国際女性デー音楽祭|HAPPY WOMAN MUSIC FESTA 2021』。今回出演した6組のアーティストをはじめ、今でこそ多くの女性が音楽家、ミュージシャンとして活躍している。

かく言う私も仕事の傍ら、休日にはアマチュアバンドマンとして活動している女性ミュージシャンの一人だ。そんな私がこれまでに数多くのライブハウスで、スタジオで、同じミュージシャンやスタッフにかけられてきた言葉。それが「女性らしい音でいいね!」というセリフである。

わかっている。この言葉は多分、私を最大限に褒めようとしてくれている好意100%の言葉だ。

男性にはない華やかさ、丁寧さ、軽やかさ、繊細さ、タイトさ。そういった要素をどうにかこうにかして伝えようとして、その結果出てきた言葉だということは十分に理解している。確かに、男性では表現し難い音楽的魅力が女性ミュージシャンには大いにある。それらは私たちにとって、大きなアドバンテージであることもまた事実だ。

けれどそれでも「女性らしい」という冠言葉がついただけで、その誉め言葉は私という一プレイヤーに向けられたものではなくなってしまう。その魅力は私だけのものじゃない。私が女性だから与えられた言葉だ。そんなもやもやとした気持ちに、どうしても苛まれてしまう自分がいた。

女性ミュージシャンが1人の人間になるまで

それでも私が楽器に向き合い始めた10年前に比べると、今はずいぶん女性バンドマンは特異な存在ではなくなった。それと同時に、私が「女性らしくていいね」と言われることもかなり減った。

私はきちんと、一個人のミュージシャンとして評価されるようになった。けれど一方で、私が女性だから、数多くいる男性プレイヤーの中で「特異な存在」だから評価されるということも確かに減っている。

ある意味目立ってなんぼのクリエイティブな世界で、自分が目立てる要素が失われること。その恐怖はきっと、同じく何かを創り出す人ならきっと理解してくれると思う。それと同時に、男性と同じ土俵で立つことを求めながらも、自分が無意識の内にどこかで女性性に甘えていたことにも気付かされた。

楽器を10年以上続けながらも、私の本当のプレイヤーとしての戦いはここからなのだ。

自分の本当の実力が今さら突き付けられるのは恐ろしい。けれど、決して嫌なことではない。だって他の皆と本当の意味で同じ土俵で戦えるようになることは、私が楽器を始めた頃から、ずっと夢見ていたことなのだから。

男女平等の社会になることは、確かに私達女性にとっては非常に喜ばしい世界だ。けれど一方で、私たちが女性だからこそあったアドバンテージも確かにあって。中にはそれに無意識に甘えていた自分に気付かされる人もいるだろうし、そのアドバンテージがなくなるのって実はかなり辛いのでは?と思う人もいるかもしれない。でもその状態こそが、疑いようもない本当の自分自身の姿なのだ。

女性であることが前提の自分ではなく、1人の人間としての自分を見てもらえる。それによっての否定や評価のなさに傷付くかもしれない。けれど自分を正しく評価してもらえて、認めてもらえて、時には褒めてもらえる。それって、とても嬉しいことなんじゃないだろうか。

いつか真の平等社会が訪れ、このようなイベントが開催されなくなった暁には。そんな喜びを私達女性が感じられることが、当たり前の世界になっているといいな、と思う。

(取材/文・曽我美なつめ)


国際女性デー音楽祭|HAPPY WOMAN MUSIC FESTA 2021

日時:2021年3月27日(土) 12:00会場 13:00開演~18:00終演
場所:沖縄県恩納村「ゆうなホール」
  (国頭郡恩納村恩納5973 恩納村ふれあい体験学習センター)
出演者:Chara/木村カエラ/島袋寛子/Anly/いーどぅし/Chuning Candy

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