人類が最初に作り出した楽器は打楽器だろうと言われている。その打楽器が時代とともに進化し、形になったドラムセット。バンドの隠れた花形であり、派手なモーションは人の目を惹きつける。そんなドラムを始めたいと思う方も多いのではないだろうか。
そこで、過去にロックバンドでドラムを叩いていた筆者、倉田が初心者向けにドラマーのアレコレを解説してみようと思う。そんな連載第1回目は、全くゼロからの初心者が最初にするべきこととスティックの選び方を紹介していく。筆者が重要だと考えるのは「ドラムを楽しむこと」なので、その観点で解説する。
実際にドラムセットを触って叩いて感触をつかんでみよう
「ドラマーになりたい!」と思ったキッカケはどのようなものだっただろう。テレビを観ていて「なにこの人かっこいい! この楽器やりたい!」と思ったり、音楽を聴いていて「ドラムの音かっこいい…」と感動したり、といったところではないだろうか。
吹奏楽部に入部して、右も左も分からないまま生のドラムセットを実際に叩いて「うわ、これなに!? 楽しい!」と思った人は少数派だと思う。
そうなると、実際の感覚を全く掴んでいない状態ということなので、とりあえず叩けなくてもいいから、まずは生のドラムセットを叩いてみてほしい。
ギターやベースと違って、とりあえず両手で適当に叩けばそれっぽく演奏できるのがドラムの魅力なので、とにかく叩いてみること。そうすれば、シンバルの華やかな音や、タイトに響くスネアの音、身体の芯に響くバスドラの音を「体感」できるのだ。
繰り返していうが、叩けなくていい。この「体感」が後々、音をイメージする際にとても重要になってくると筆者は考える。
ドラムセットは、練習スタジオや楽器屋に行けば叩くことができる。周りにバンドをしている友人がいれば、練習スタジオや楽器屋に一緒に行ってもらうこともできるだろう。もしそういう友人がいないのであれば、楽器屋に行って店員さんに「ドラムを始めたい。でも叩いたことがないので、一度ドラムセットを叩いてみたい」と言えば、叩かせてくれる上、色々と教えてくれるのでオススメ。
恥ずかしがって何も行動を起こさないのは、非常にもったいない。名だたるミュージシャンも、初めは初心者だったのだ。楽器屋の店員さんはとてもフレンドリーな方が多いので、堂々と相談すれば答えてくれるだろう。
ドラムセットを揃えるのは容易ではないので、まずは自宅で練習できる環境を作る
ドラムの「体感」できたら、実際に練習を行う準備をしていこう。
本当は、ドラムセットを買って自宅に設置し、叩くのが一番いい。しかし、ドラムセットと一口に言っても高価なものだし、何より音が大きすぎて普通の自宅では叩くことが難しいと思う。
そこで、机や椅子を並べ、その上に読まなくなった週刊誌や雑誌をドラムセットの配置っぽく並べて簡易ドラムを作って練習するところから始めてみよう。ドラムスティックだけを購入して来て、その簡易ドラムを叩いてみる。(ドラムスティックの選び方については後述する)
ただ本を叩いているだけなので、当然パタパタとした音しか鳴らないが、ここで役立つのが先程ご紹介した「生ドラムの感覚」である。「どこを叩けばどんな音が鳴るのか」というイメージさえあれば、実際に音が鳴らなくてもイメージはできるのだ。
あとは、コピーしたい曲を流してその曲を聴きながら、ドラムの音のイメージと紐付けながら真似していく。これだけでも練習になるし、自宅に簡易ドラムセットが完成するのだ。まずはこれで数日練習を続けてみて、感覚をつかんでほしい。
最近では、どこでもドラム練習ができるスウェーデン発の最新ガジェット『Freedrum』など画期的な商品も生まれているので、そうしたアイテムを使うのもいいだろう。
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ドラムの機材を買う前に、まずはドラムスティックを買おう
簡易ドラムを叩くにしても、必ず必要になってくるドラムスティック。スティックとは、ドラムを叩くときに使うスティック。木の棒。つまりバチのことである。
実際、楽器屋のスティック売り場を見るとわかると思うが、ドラムスティックにも様々な長さ、太さ、重さ、色があり、先端の形状も異なっているため、選ぶのに苦労するかもしれない。
もし好きなドラマーがいて、そのドラマーモデルのスティックが売っていればそれでもいいと思う。楽器を始めた当初は、まず自分のテンションが上がるものを使うのが一番重要だからだ。
しかし何がいいか迷ったら、手に馴染むものであまり重くないものを選ぶといい。迷うようなら、ヒッコリーという木材でできていて、先端が丸いものを選ぶといいだろう。
例えば、Pearlというメーカーのドラムスティック「110HC」などは使いやすくておすすめである。
ただ、注意して欲しいのが、1本ずつバラ売りされている場合。適当に2本選べばいいと思いがちだが、同じ「重さ」のスティックを選んで欲しい。スティックは木で出来ているため、重さに微妙な個体差がある。そのため、適当に2本持って重さを比べるとわかるが、同じ種類のスティックでも重さが異なっているのだ。
楽器屋によっては、重さを測るためのデジタルスケールが置いてあるところもあるが、もしなかったら感覚でもいい。「同じ重さっぽい」と思ったセットを購入するようにしよう。
まずは「ドラム」を楽しいと思うこと。深く考えるのはそのあとで
厳密には、スティックの材質や先端(チップ)の形状によって、音も感覚も変わる。しかし最初はそこまで考えなくていいと思っているので、説明は割愛した。
何よりまず、ドラムを楽しむことが大切だと筆者は考える。好きなドラマーがいて、その人に近づきたいと思っているなら、そのイメージに近づけるためにたくさんその人の曲を聴くだろうし、何回もマネすると思う。こういう自発的な行動の原点が「楽しい」なのだ。
だから、まずは細かいことを気にせず、とにかく叩いてみて、体感すること。これが楽器上達の第一歩だと思う。
(文・倉田航仁郎)