【MUSIC DRUNKS #4】「I can’t live without LIVE!!」発起人・yori / たったひとりで、いち早く、ライブハウス支援に乗り出した原動力とは

三橋 温子

三橋 温子

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現在多くのライブハウス支援企画がスタートしているが、3月末の早い時期に、たったひとりでプロジェクトを立ち上げた女性がいる。東京在住のパンクロック/アイドルフリーク、yoriさんだ。

yoriさんが始めたクラウドファンディング企画は、全国のライブハウスから無観客ライブを配信するというもの。目標支援金額は600万円。個人で目指す額としては正直かなりハードルが高い。しかし、「そうでなければ意味がない」と話す彼女の真意はどこにあるのか。プロジェクトにかける思いとその原動力に迫った。

【CAMPFIRE】ライブハウスを守ろう『I can’t live without LIVE!!』
募集終了:2020年5月17日(日)
支援金額:1,000円から
プロジェクトページ:こちら


救済が行き届かないライブハウスの支援を目指して
——普段はなんのお仕事をされているのですか?

音楽とは全然関係ないんですが、百貨店で販売をしています。百貨店業界はコロナの影響を受けたのがわりと早くて、2月下旬頃から海外のお客さまが激減して、売上も大幅ダウン。今も時短営業をしている状況です。

——では音楽は趣味で?

はい。ライブハウスには大学時代からよく行っていました。大学が演劇専攻だったので、イチから舞台を立ち上げたり、卒業後に映画やCMの制作のお手伝いをしたりというエンターテイメント関係の経験はあるのですが、音楽業界においてはまったくの素人です。

——そこからおひとりで今回のプロジェクトをスタートされたと。すごく行動力のいることだと思うのですが、思い立った経緯を教えていただけますか?

3月に入って、大阪のライブハウスでの集団感染のニュースが連日報道されるようになりましたよね。それで多くのライブが立て続けに中止になったのを見て、「ライブハウスや音楽業界はしばらく活動できなさそうだけど大丈夫かな」と個人的に心配していたんです。

寄付の募集があったら支援したいと思っていましたが、そのときはまだそういうライブハウス支援の企画が全然なくて、ないなら自分で始めようと思い立ったのが3月中旬頃。そこから準備して3月末にCAMPFIREでプロジェクトをスタートしました。

——クラウドファンディングという形を選んだのはなぜですか?

支援者として何度かCAMPFIREを使ったことがあったので、なじみがあったからです。本当はダイレクトに支援ができる寄付金型にしたかったのですが、これだと思えるシステムがなかなか見つからなくて。それでCAMPFIREの担当の方にいろいろご相談して、クラウドファンディングにマッチするようなプランを練っていきました。

——全国のライブハウスからの無観客ライブ配信を目指していらっしゃいますが、企画を考えるうえでこだわった点などがあれば教えてください。

いちばんは、支援先のライブハウスを限定しなかったこと。こういう企画って、知名度や人気のあるライブハウスは支援してもらいやすいですが、地方の小さなライブハウスにまではなかなか支援が行き届きません。私も友人のバンドを観に小さなライブハウスによく行きましたし、これから音楽を志す人はそうした場所で経験を積んでいくもの。絶対になくしちゃいけないと思うんです。

だから現時点ではライブハウスを限定せず、今後出演アーティストが決まってきたらその地元のライブハウスや、支援を受けられていないライブハウスを中心に配信ライブを行なっていきたいと考えています。感染や緊急事態宣言の状況を見ながらの活動にはなりますが、移動ができるだけ発生しないようにアーティストやスタッフは各地域で完結して、配信は各ライブハウスのYouTubeチャンネルを主に活用する予定です。

外出自粛が求められる中、家にいながら生ライブを楽しめる機会を増やすことで、ライブハウスやアーティストだけでなくみなさんにも元気をお届けしたいという思いもあります。

「無理だよ」とも言われた。でも、やらなきゃ意味がない
——目標支援金額の600万円はどのように決めたのですか?

資金はライブハウスの使用料やアーティストの出演料にあてたいと思っているので、それぞれの相場を調べました。配信ライブをするには、諸経費も含めて安くても1回100万円はかかる。全国のライブハウス支援を謳うなら1〜2回の開催では少ないので、本当は1000万円を目標にしたかったんですけど、担当の方に「難しい」と言われて600万円に落ち着きました。

達成が簡単ではないことはわかっています。信じて応援してくれる友人もいれば、「そんなの無理だよ」と言う友人もいます。でも、ここでがんばらなきゃ意味がないんです。

——実際にスタートしてみて支援者の方からの反響はいかがですか?

知人以外の方からのご支援もとても多くて感謝しています。学生さんでも参加しやすいように、支援金額を1,000円からに設定したのもよかったのかもしれません。そのほかにも、配信ライブに使うカメラ機材を貸してくださるという方や、企画にアドバイスをくださった音楽関係者の方など、いろいろな方から反響をいただいています。

ただ、目標金額が高いだけに達成率はまだまだ。今はとにかくたくさんの方にプロジェクトの存在を知ってほしいので、まずは拡散にご協力いただけたらとても嬉しいです。

——現在はさまざまなライブハウス支援企画が出てきていますが、ほかの企画で注目しているものはありますか?

昨日(4月29日現在)スタートしたタワーレコードの「LIVE FORCE, LIVE HOUSE.」は、私がやりたいと思っていたことにすごく近いです。全国350店のライブハウスを対象としていて今後も増えていくようなので、注目しています。

「音楽」が私の背中を押してくれた
——パンクロックとアイドルがお好きとのことですが、好きなアーティストは?

バンドだとELLEGARDEN、アイドルだとももいろクローバーZが大好きです。

——音楽はいつ頃からお好きなのでしょうか。

小さい頃からヴァイオリンを習っていたので、音楽自体は物心ついた頃から身近にありました。家が厳しくてテレビをあまり見せてもらえなかったのですが、アニメはいくつか見せてもらえて、アニメの歌やサントラをよく聴いていました。『ふしぎの海のナディア』をはじめ、『ルパン三世』のリミックスにもハマりましたね。

あとはラジオの音楽番組も好きで。そこからTHE YELLOW MONKEYや椎名林檎、ニューオリンズ・ブラスバンドのBLACK BOTTOM BRASS BANDなどにハマっていきました。

——パンクに目覚めたきっかけは?

大学で上京してからですね。近所に安いレンタルCD店があって試聴やレンタルをよくしていたんですけど、そのお店限定のオムニバスアルバムに、ブレイク前のマキシマム ザ ホルモンなどパンクロック系の曲を集めたCDがあって。そこからELLEGARDENやHi-STANDARD、THE OFFSPRINGなどに夢中になりました。

——思い入れのあるライブハウスはありますか?

大学時代はバンドをやっている友人がたくさんいたので、ライブハウスにはよく行きました。下北沢のCLUB251にはいちばん通ったかもしれない。友人がResponseというバンドをやっていて、今もCLUB251をホームに活動しているんです。あとはF.A.D yokohamaも雰囲気が好きですね。

大きめのところだとTSUTAYA O-EASTやO-WEST、渋谷WWW、新木場STUDIO COASTも好き。コーストでのELLEGARDENの復活ライブのとき、私はチケットが取れなくて外にいたんですが、1曲目の『Supernova』を音漏れで聴けた瞬間の感動は忘れられません。細美さんの声、演奏、曲調、アレンジ、ハモリ、全部が大好きなバンドです。

——アイドルに関してはいかがですか? どのタイミングで好きになったのでしょうか。

これも上京してからですが、カラオケでみんな知っている曲を歌わなきゃと思って聴き始めたのが最初(笑)。ガチで好きになったのは、ももクロがきっかけです。

ももクロの魅力は、全力で楽しみながらライブをしている姿。あと、前向きになれる曲や背中を押してもらえる曲など、メッセージ性の強い曲が多いんです。モノノフにパンク好きが多いのも頷けます。

——これから活躍しそうな注目アイドルはいますか?

ももクロと同じスターダストプロモーション所属で、私立恵比寿中学の妹分的なアイドルグループ・ukka(ウッカ/旧名は桜エビ〜ず)でしょうか。アイドル楽曲大賞2019では3部門で1位に輝いています。

BiSHが所属するWACKとavexの共同プロジェクト・EMPiRE(エンパイア)、『水曜日のダウンタウン』のアイドルオーディション企画から生まれたアイドルグループ・豆柴の大群にも注目しています!

——ありがとうございます。今回の「I can’t live without LIVE!!」の立ち上げは、音楽やライブが好きという純粋な情熱が突き動かしたものだと思います。yoriさんが感じる「音楽の力」とはなにか、最後にぜひ教えてください。

私がももクロのファンになったのは売れ始めくらいの頃ですが、そこからトントン拍子で女性グループ初の国立競技場でのワンマンを実現。「夢は叶う」「やってやれないことはない」ということを、私はももクロから教わりました。また、3.11のときにはAIR JAMが復活するなど、音楽がもたらす団結力にも感銘を受けました。

今回のプロジェクトは音楽を守るためのものですが、私が立ち上がる際に背中を押してくれたのは間違いなく音楽の存在。とにかく走り続けてさえいれば、同じように音楽に支えられている方々がきっと賛同や協力をしてくださる。そう信じて最後まで諦めずにがんばりたいです。

(取材/文・三橋温子)


5 PRECIOUS SONGS

『万能戦艦N・ノーチラス号』
ふしぎの海のナディア オリジナル・サウンドトラック Vol.3


PROFILE

yori

京都出身、東京在住。ももいろクローバーZとELLEGARDEN をこよなく愛する。CAMPFIREでのクラウドファンディング企画「ライブハウスを守ろう『I can’t live without LIVE!!』」のプロジェクトオーナー。

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