世界中にはたくさんのギタリストがいます。ロックバンド、ジャズ、ブルース、アコースティックなどさまざまなジャンルのギタリストがいるので、プレイの特徴もそれぞれで変わってきます。ギターソロが抜群にうまい人、キレのあるカッティングが得意な人、テクニックはそこまでないが何かグッとくるプレイをする人など、いろいろなカラーがあります。
その中でも、人の記憶に残りインパクトを与えるギタリストの特徴は「感情に訴えかけるプレイ」をする人ではないでしょうか? 実際に人気のギタリストの中には、テクニックがずば抜けているわけではないものの聴衆を魅了しているプレイヤーがたくさんいます。
そこで今回は、ギターを弾く方も、プレイヤーではないけれど音楽好きな方も、ぜひ知っておくべきギタリストと必聴アルバムをご紹介します。
ジミ・ヘンドリックス(Jimi Hendrix)
ジミ・ヘンドリックスはアメリカ生まれのロックギタリスト。10年にも満たない短い期間でありながら、さまざまなギタリストに影響を与えた偉大なミュージシャンです。ブルースを基本としたプレイに、エフェクターを多用し、多彩な音色を聴くことができます。歯でギターを弾くパフォーマンスや派手なファッションなどでも注目され、カリスマ性の高さも魅力です。
ベトナム戦争が開戦したばかりの時期に陸軍に入隊した経験があるジミ・ヘンドリックスのギターの音は、世の中の不条理に対する怒りが内在し、聴く人の心に訴えかけます。自分が経験した不条理、不公平などの消化しきれない思いをギターの音で表現し、誰かに理解してほしいという不器用で繊細な心を感じます。
亡くなってから40年近くたっても人々の記憶から消えないのは、それだけ圧倒的な演奏をしていた証拠でしょう。
- 必聴アルバム
ザ・ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンス 『アー・ユー・エクスペリエンスト?』
カルロス・サンタナ(Carlos Santana)
カルロス・サンタナはメキシコ生まれの世界で指折りのギタリストです。このギタリストが所属するバンド『サンタナ』は、ラテンとロック音楽が融合した独自なサウンドで人気を呼び世界的なバンドになりました。ブルースを基本にラテンやジャズの要素も取り入れたプレイが得意なギタリストです。美しいトーンが特徴で、因われない自由な心が音に反映されています。
カルロス・サンタナは宗教に傾倒している期間があり、この時期からギターのトーンが変わりました。ジミ・ヘンドリックスとは対象的に、「俺が俺が」という我が一切なく、心の自然な動きをそのまま音で表現したような豊かなトーンになっています。
カルロス・サンタナと同じように宗教に傾倒したジョン・コルトレーンのトーンにも同じようなものが感じられ、宗教の影響で音楽性や音の深さが変わるミュージシャンはたくさんいます。
- 必聴アルバム
サンタナ 『キャラバンサライ』
ジョン・フルシアンテ(John Frusciante)
ジョン・フルシアンテは『レッド・ホット・チリ・ペッパーズ』に在籍していたギタリスト。ブルース、ファンク、ロックなどの要素を取り入れたギタープレイは、レッチリに欠かせないサウンドになっており多くのファンがいました。泣き叫ぶようなギターソロやエフェクターを多用した幻想的なサウンドなどが特徴です。ライブでは物凄い迫力のギターソロを聴かせることから、現代のジミ・ヘンドリックスと評価されることも多いです。
バンドへの期待による不安やドラッグなどにより精神を病んでしまい、バンドを途中で脱退したジョン・フルシアンテ。脱退している時期に精神が混乱している状態がはっきりわかる『Niandra Lades & Usually Just a T-Shirt』というアルバムを発売します。
復帰後はポジティブエネルギーを音から感じる反面、世界の残酷さに絶望するネガティブな側面も残っており、その両面が生み出す美しさがジョン・フルシアンテのギターの魅力です。
- 必聴アルバム
レッド・ホット・チリ・ペッパーズ 『ライヴ・イン・ハイド・パーク』
※ライブアルバム
ジョニー・グリーンウッド(Jonny Greenwood)
ジョニー・グリーンウッドはイギリスのバンド『レディオヘッド』のギタリスト。ギター以外にもシンセサイザー、ストリングス、ヴァイオリンなども演奏するマルチプレイヤーです。内気な性格ですがライブになると憑依したようにギターを演奏し、ノイジーなロックのバッキングを聴かせてくれます。美しく繊細なアルペジオや、エフェクターを使った効果音など多彩なプレイができ、アルバムを出すごとに驚きを与えてくれるギタリストです。
ジョニー・グリーンウッドは、幼少期からさまざまな楽器を習い、音楽的素養を身に付けてきました。そのためか、ギタリストらしいフレーズを弾くことが少なく、常識外のプレイをすることが多いプレイヤーです。
また、テクニックやギターソロで競うことに興味がなく、ギターに対してもあまり執着がないめずらしいミュージシャン。ライブではギターが必要なかった場合、ほかの楽器を担当することがありさまざまな顔を見せてくれます。
- 必聴アルバム
レディオヘッド 『イン・レインボウズ』
上記で挙げた4人は、テクニック的にはそこまで秀でていないかもしれませんが、感情を揺り動かしてくれる素晴らしいプレイをするギタリストです。それぞれでトーンやプレイスタイルなど特徴が違って面白いので、ぜひ聴いてみてください!
(文・佐合良太)