北海道出身の女性アーティスト、ヒトミィクがプロデュースし、Replicaのボーカリストとしても知られる浜崎なおこが歌う楽曲「INORI」が2022年3月9日にリリースとなる。
Han-naのボーカリストとしても活躍したヒトミィクこと倉本ひとみは、余命宣告を受けてから2020年に音楽活動を再開。アルバム2枚分の楽曲を遺し、2021年5月19日に急逝した。「INORI」を託されたソウルメイトである浜崎なおこは、Replica時代より独自のハイトーンボイスを持ち、多数の音楽業界人から愛されるボーカリストだ。そんな彼女の、澄んでいながらもさらに深みを増した声には驚かされるばかり。
生前のヒトミィクと交流があり、Replica時代より浜崎なおこの歌に触れてきた筆者が、今回リリースされる2曲入りシングル『INORI』とライブ情報をご紹介。レジェンド級ボーカリストの実力にぜひ触れてほしい。
シングル『INORI』誕生の経緯
浜崎なおこがボーカルを務めていたバンドReplicaは1988年メジャーデビュー。ヒトミィクこと倉本ひとみがボーカルを務めていたバンドHan-naは1989年メジャーデビュー。TVのパーソナリティを担当した縁で出会った二人は、紅一点のボーカリスト同士ということもあり意気投合、悩みや喜びを共有する盟友となった。
Replica解散後の1997年、頭も心も真空になっていた浜崎に「とにかく歌ってみたら、何か見える」と、倉本は自身の地元札幌のライブに招き入れた。その時の言葉は今でも浜崎の支えになっている。
2019年秋、浜崎のもとに倉本から一本の電話が。10年にわたる介護生活を終え、現在は自らも闘病中で余命宣告されたことを電話口で伝えた彼女は、こう続けた。「死ぬのは怖くないんだ。ただ、もう一度音楽を創りたい。自信を持って世に出せるモノを。だけど、途中で歌えなくなってしまったら、と思うと踏み出せない。もし歌えなくなったら、なおこが代わりに歌ってくれないかい?」
浜崎は「チカラになれるなら、どんなことでもしたい。バックコーラスでも何でもやる! 大丈夫、私がついてるから!」と即答したという。
その後、倉本は1年半で実に20曲以上を制作。Replica時代に浜崎が書いた楽曲「バレリーナ」をヒトミィクとしてプロデュースし、情熱的な表情の「Ballerina」として生まれ変わらせた。さらに2020年11月には「なおこに歌ってほしい曲ができたんだ」と、浜崎のもとに「INORI」のデモ音源が届く。「聴いた途端、心が震え、涙が溢れた。そして、とても大切な大きなものを託された、と武者震いした」と浜崎は当時の心境を語っている。
今回リリースされるシングル『INORI』には、この「INORI」と「Ballerina」が収録されている。
【浜崎なおこ コメントより抜粋】
2021年4月、東京での最後のスタジオワーク。“INORI”のレコーディングを私は一生忘れないだろう。スタジオの分厚いガラスとヘッドホンに隔てられても、すごく静かに深く、私たちは繋がっていた。水が流れ込むように、それぞれのイメージが溶け合って、同じ世界を観ていた。あれは、とても不思議で穏やかな、特別な感覚。思い返すと、私はいつも彼女の「大丈夫だよ!」に背中を押されていた。そして、私も「最後まで歌えないかもしれない…」という彼女に、何度も「大丈夫だよ!」と繰り返していた。少しは支えることが、できていたかな。そうだったら、嬉しいな。今も“INORI”を歌うたび、彼女はどこか近くに居て、深いところで繋がっている気がする。
音楽と世界への“祈り”
「なおこに歌ってほしい曲ができたんだ」と、ヒトミィクから託された「INORI」。なぜヒトミィクは浜崎なおこにこの楽曲を託したのだろうか。
この世に遺される悲しみをよく知っているヒトミィク。彼女はその気持ちに寄り添いながら、これから自身が遺していく全ての者たちに向けて、音楽と世界への“祈り”を紡いだのだろう。そして浜崎ならその想いを皆に広く届けられると信じて託したのだ。
「INORI」のレコーディングには、ヒトミィクもバックコーラスで参加した。サウンドプロデューサーとして多数のアーティストを手掛けてきたホリエアキラ氏による美しいピアノと二胡のアレンジは、〈豊かな四季の国〉を越えた大地からの大きな愛で包まれているような安心感がある。
浜崎なおこの歌は“祈り”そのものだ。〈あなたは大丈夫〉と優しく包む声を聴くとそう感じるはずだ。今まで何度も道に迷い、数えきれないほど涙を流してきたが、そんな日々を一歩ずつ乗り越えてきたのだから、今のこの悲しみもいずれ“大丈夫”になるだろう。このように勇気づけられたのは、きっと歌に込められた祈りの力が届いたからだ。
2022年1月12日、札幌。「INORI」を初めてライブで披露する瞬間に立ち会った。浜崎はまるで会場にヒトミィクがいるのを確かめるかのように、フロア奥の上方に目を向けて歌った。その時の表情からうかがえたのは、ヒトミィクがここにいてほしいという「希望」や「哀愁」の色ではない。ただ彼女がそこに「いる」ことを確認している、そんなふうに見えたのだ。輪廻転生を信じている筆者には、その確認作業とも言える目線がとても自然に感じられた。
面倒見がよく姉御肌のヒトミィクには、筆者もお世話になった。だからこそ彼女の死を受け入れられず、彼女の楽曲を積極的に聴く気分にはどうしてもなれなかった。しかし、浜崎の目線を通してヒトミィクの魂を感じられたことで、彼女の肉体がこの世からなくなったことをやっと受け入れられた気がした。
〈ほら あなたは大丈夫〉。ヒトミィクが込めた想いが、浜崎なおこの想いと重なり響きだす。あなたも浜崎の“祈り”に触れ、温かさを感じ取ってみてはいかがだろうか。
2曲目には「Ballerina」が収録。Replica時代に浜崎が書いた名曲「バレリーナ」を、「新しい魅力を引き出したい」という想いからヒトミィクがプロデュース。情熱を感じさせるスパニッシュなアレンジで、新しく生まれ変わっている。原曲は阪神淡路大震災が起こった年に制作された。〈唇に微笑み どんな悲しい夜も まっすぐな瞳で 誇り高きバレリーナ〉という歌詞は、コロナ禍を生きる私たちの胸にも響く。「INORI」とは別のベクトルで励まされるはずだ。
2022.3.9 Release Single
『INORI』
定価¥1,100(税抜価格 ¥1,000)
レーベル:OpitTa Records
製品番号:OPT1002
お問い合せ:WakKa Music.inc
mail:info@wakka-music.jp
▼店頭購入
玉光堂・バンダレコード・ライオン堂(HP)
ミュージックショップ音楽処(HP)
▼通販購入
Felista玉光堂楽天市場店
Felista玉光堂PayPayモール店(購入はこちら)
ミュージックショップ音楽処ネットショッピング(購入はこちら)
▼配信サービス
浜崎なおこ『INORI』他、各種配信サイトにて配信中
LIVE INFORMATION
浜崎なおこ『INORI』リリース記念 インストアイベント
【日時】2022年3月9日(水) 19:30〜
【内容】ミニライブ&特典会
【料金】入場フリー
【会場】ミュージックショップ音楽処
(札幌市中央区南3条西3丁目11-2 狸小路3丁目 N・MesseビルB1F)
【問い合わせ】011-221-0106
【特典内容】音楽処・玉光堂にてCDシングル『INORI』をご購入いただき、当日ご持参いただいた方のCDジャケットにサインをいたします!
MoonTrack vol.18 〜佐木伸誘×浜崎なおこ〜
浜崎なおこのアコースティックセットでのソロライブが決定している。ライブを見れば彼女の歌と言葉の繋がりの奥深さに魅了されるはずだ。
【日時】2022年3月30日(水) OPEN18:30 / START19:00
【出演】浜崎なおこ(Guest support : Key.広本葉子)、佐木伸誘
【会場】三軒茶屋 GrapeFruitMoon(HP)
【料金】
■入場チケット
前売り¥3,500(+DRINK)、当日¥4,000(+DRINK)
予約はこちら(TIGET)
■配信チケット
¥2,500
購入はこちら(ツイキャスプレミア)
※本公演は、限定人数の有観客ライブと有料生配信を予定しています。
※本配信のアーカイブは1週間後(4月6日)までの公開となります。ご購入の方は3月30日の本番日終了後も視聴可能です。
PROFILE
浜崎なおこ(はまさきなおこ)
広島県出身。6月7日生まれ、B型。彼女のときに切なく、優しく包み込む歌声には、燠火のような熱が宿る。
活動歴
1984年、バンドReplicaのボーカリストとして広島で活動開始。
1988年、日本コロムビアTRIADレーベルよりメジャーデビュー。11枚のアルバム(後のベスト盤を含む)を発表し、1996年解散。
1997年、Naoco & The Infections(後にThe Infectionsと改名)結成。リバプールでのレコーディング作品を含む4枚のアルバムリリースを行う。
2016年、田中一郎(甲斐バンド、ex.ARB)とのアコースティックユニット、なおこと一郎。を結成。
2018年、Replicaがデビュー30周年を記念して、東名阪で再結成ツアーを開催。
2019年、なおこと一郎。名義で『FUJI ROCK FESTIVAL’19』に出演。
2020年、ソロ活動を開始。ヒトミィクプロジェクトに参加。
HP / SNS
浜崎なおこ Twitter
ヒトミィク 公式サイト
Replica Facebook
(文・池田小百合)