誰がなんと言おうと! マイ名盤10選 − ライター・倉田航仁郎の場合

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音楽好きなら誰しも、世間的な名盤とは別にきわめて個人的な「マイ名盤」を心に秘めているものだ。音楽の趣味も世代も異なるヂラフライターたちのマイ名盤とは? 気になる感性の持ち主を見つけたら、そのライターのほかの記事もぜひチェックしてみてほしい。新しい音楽との出会いが待っているかも。


生まれて初めて「バンド」の魅力を気付かせてくれた1枚

『BELOVED』(1996年)
GLAY

意識せずに歌番組を観て過ごした幼少期から「バンド」という存在を明確に意識するキッカケとなった、まさに筆者の原点とも言えるアルバムがこの『BELOVED』だ。このあとご紹介していくヴィジュアル系バンドに傾倒する以前、「カッコいいお兄さんたちがカッコいい歌を歌っている!」という衝撃は今でも鮮明に残っている。

シングル曲でタイトルトラックの「BELOVED」や「a Boy〜ずっと忘れない〜」といった、聴きやすく優しいメロディーの楽曲の中にも力強さや勢いを感じることができる作品だ。他のアルバムと違う点としては、ロックでいて明確なメッセージを持って寄り添ってくれるような些細さを併せ持ったGLAYの魅力を、ギターサウンドを軸として構成されている点が挙げられる。

2002年に発売された『UNITY ROOTS & FAMILY,AWAY』も『BELOVED』に似た優しさを感じさせてくれるアルバムではあるが、こちらは打ち込みやシンセサイザーなどが多用されている印象を受けるため、純粋にロックバンドとしての「優しさと繊細さ」という点では異なるというのが筆者のイメージだ。

髪を染めて逆立て、頭を振りながら激しい音をかき鳴らすことが一般的だった時代に、誰にも聴きやすいミディアムテンポで繊細なロックへの布石となったアルバム。それがこの『BELOVED』と言えるだろう。

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La’cryma Christiの個性が詰まった名盤中の名盤

『Sculpture of Time』(1997年)
La’cryma Christi

90年代、ヴィジュアル系ブーム全盛の中で発売された『Sculpture of Time』。La’cryma Christiがまだ「ヴィジュアル四天王」に名を連ねる前、記念すべきメジャー第1弾としてリリースされたアルバムである。

当時、L’Arc〜en〜CielやMALICE MIZERをはじめとした西洋風の雰囲気をまとうバンドたちが世の中を席巻する中、ミステリアスな雰囲気はそのままにオリエンタルでアジアンテイストなエッセンスがふんだんに散りばめられた異国情緒あふれる楽曲の上で舞う、ボーカルTAKAのハイトーンボイスは個人的に大きな衝撃だった。

キーボードや打ち込みに頼らず、可能な限りボーカル、ギター、ベース、ドラムという編成でこうした世界観を表現しようとしているところもまた魅力といえる。

そんな彼らの個性がこれでもかというくらい盛り込まれているのが、このアルバムである。

シングルとして発売されたキャッチーな「Ivory trees」「The Scent」「南国」だけでなく、「Sanskrit Shower」「偏西風」など綿密に計算された構成とコード進行、そして変拍子で変則的な楽曲が収められており、1枚を通して聴くとまるで旅行をしているような気分にさせてくれる。

サブスクが主流となった今、アルバムを1曲目から最後まで順番通りに聴くことはなくなってしまったが、この『Sculpture of Time』はぜひ全曲通して聴いてもらいたい。曲順も構成も含めて秀逸で、筆者も今だに聴き続けている名盤である。

唯一無二の存在感を世に示したMALICE MIZERの代表作

『merveilles』(1998年)
MALICE MIZER

「後にも先にも、彼らのような存在は出てこないだろう」と、筆者は今でもそう思っている。それほど唯一無二の存在感で音楽シーンに君臨していたMALICE MIZERがメジャー1作目として発表したアルバム『merveilles』。このアルバムにも収録されている「月下の夜想曲」で大ヒットを収め、世間に広く認知されてから発売されたことで彼らの地位を確固たるものにした作品だ。

アルバムを最初から最後まで通して再生すると、まるでひとつの映画を見ているような感覚にさせてくれる仕掛けが随所に散りばめられている。また、打ち込みや電子音で構成されている「ILLUMINATI」や「S-CONSCIOUS」のような曲がある一方で、「ヴェル・エール 〜空白の瞬間の中で〜」や「au revoir」など、ギターの奏でるメロディーがその骨格を形作っている曲がある点も非常に興味深い。

ただ奇抜な格好と設定で目立ったイロモノバンドでは決してなく、類まれな歌唱力とバンドの雰囲気にピッタリとハマる容姿を持つボーカルはもとより、巧妙に練られた楽曲や卓越した技法、表現力などが融合して形成されているバンド。それがMALICE MIZERなのである。

オリジナルアルバムとしては、GACKTをボーカルとした第二期メンバーで最後の作品ではあるものの、この1枚だけで日本のみならず世界に「ヴィジュアル系」を浸透させるには十二分なインパクトを残したのは間違いない。

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ダーク+ミステリアス+サイケデリックなエレクトロサウンド

『麝〜ジャコウ〜香』(1998年)
Laputa

忘れもしない。当時ヴィジュアル系というジャンルが勢いを増し、世に広く浸透し始めていた時代。親からは「そんな気持ち悪い音楽聴くな」と言われながらも「好きなものは好きなんだ」と言い返してCDショップに足繁く通っては、「ヴィジュアル系」にカテゴライズされていた名前も知らないバンドのCDをなけなしのお小遣いで買い漁っていた。

そんなとき出会ったのが、このアルバム『麝〜ジャコウ〜香』である。

今みたいにYouTubeやサブスクで自由に音楽が聴ける時代ではなかったためジャケ買いが当たり前だった中、期待と不安が半分半分で再生するのが楽しみだった。そうして再生した1曲目、タイトルトラックの「麝香〜jakou(musk)〜」。静かな中からオリエンタルな鈴のような音がフェードインして楽器隊が合流してくるときに一気に引き込まれた。ギターサウンドを軸にしながらもエレクトロが混ざったような不思議な音色に、特徴的なボーカルは筆者的にはかなりのインパクトで、音楽の新しいカタチを見たような感覚に陥ったのだ。

ヴィジュアル系独特のダークな雰囲気はそのままに、サイケデリックな要素を含んだ独自性を感じることができた。Laputaの音楽性もこの作品を境にエレクトロにシフトしていった、その転機となるものだったように思う。

「ミートアゲイン~meet again~」や「揺れながら…~Swing Sway Away~」といったシングル曲や「ロゼ~rose~」をはじめとした、彼らの持ち味を生かしつつもキャッチーな楽曲たち。それらを包含しながら、先ほどご紹介した「麝香〜jakou(musk)〜」のようにダークな気配の曲や、しっとり聴かせる「カナリア〜canary〜」、疾走感のある「ケミカルリアクション~Chemical Reaction~」、アウトロから1曲目のイントロに繋がるように設計された「クラッシュボウイ~Crash Boy~」など、Laputaのポテンシャルの高さを感じることができる1枚となっている。

転換点で生まれた過去と未来の融合作

『ray』(1999年)
L’Arc〜en〜Ciel

メンバーチェンジを経て、正式に現在のメンバーがクレジットされて制作されたアルバム『ray』。『ark』との2枚同時発売が話題になった作品ではあるが、筆者としてはこちらを名盤として挙げさせていただいた。

その理由は、インディーズ時代から前作『HEART』までL’Arc〜en〜Cielが持っていたダークでミステリアスな部分をそのまま昇華させたかのような雰囲気に、キャッチーさを見事に融合させている点が印象的だからだ。

曲順も秀逸で、ギターが冴え渡る「死の灰」「It’s the end」「HONEY」3曲の流れでロックバンドとしての側面をまざまざと見せつけたかと思えば、「Sell my soul」でオシャレに寄せ、キャッチーな「snow drop」で疾走した流れからインスト「L’heure」でクールダウンし、ミステリアスへと舵を切って「花葬」「浸食〜lose control〜」へと繋ぎ、「trick」「いばらの涙」でロックを響かせた後、「the silver shining」でしっとりクローズさせる。

4曲ものシングルを含みながら1つのアルバムとして成立させている点にも脱帽だけれど、それぞれの曲がアルバム曲としておくには惜しいほどの完成度である点も興味深い。特に10曲目の「いばらの涙」は、個人的にL’Arc〜en〜Cielの中でもTOP5に入る名曲だと思っている。イントロの印象的なギターアルペジオでしっとり始まりつつも、サビや間奏で爆発的に熱くなる部分など、聴いているだけでテンションが上がりっぱなしの展開と演出なのだ。

初期から現在のL’Arc〜en〜Cielへと移り変わる、まさにその中間地点に位置し、彼らの持つ個性や特徴、独創性などを高い次元でパッケージした作品と言える。このアルバムもまた例に漏れず、筆者が擦り切れるまで聴き込んだ作品だ。

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メロディアスで叙情的なDIR EN GREYワールド

『GAUZE』(1999年)
DIR EN GREY

DIR EN GREYのメジャー1stアルバム『GAUZE』。現在の彼らのイメージからは少し遠いところにあるように思える作品であるが、インディーズ時代からの流れをうまく汲みながら、現在のメタルやハードコアへの布石を感じることができる。このアルバムを境に独自の世界観を色濃くしていくことから、大衆ウケという点で言えばDIR EN GREYの好き嫌いが分かれる転換点とも言えるだろう。

ではなぜ『GAUZE』を名盤として挙げたか。それは歌詞に出てくる登場人物の物語性やその人格が多種多様であるという、彼らの歌詞の世界観を感じやすいからである。それぞれの楽曲に物語があり、それらを紡ぐように語られる点、しかも聴きやすい曲調と言葉で語られている点が非常に興味深い。こうした世界観は現在のDIR EN GREYにも引き継がれている部分であり、彼らのコアとなる部分だろう。

ただカッコいい曲に響きのいい言葉を並べるわけではなく、しっかりとしたバックボーンを持って、それぞれの音に理由を感じさせてくれる彼らは、メタルやハードコアといった大衆ウケとは少し違う音楽性へ移行してもそのカリスマ性を失うことはない。激しい音の中にも切なさや儚さを包含し、聴き手の心を惹きつける魅力を持つ。そうした彼らの魅力を感じられるこの作品は、DIR EN GREYの入門編として最適だと考える。

大衆への迎合を最優先にせず、自分たちの信じる音楽を追求し続けて世界中で大成功を収めているDIR EN GREYは、これからも進化し続けることだろう。

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ヒップホップへの新たな扉を開いてくれた作品

『ウワサの真相』(2001年)
RHYMESTER

基本的にバンドサウンドを好んで聴いてきたため、ヒップホップというジャンルをそこまでガッツリ通ってこなかった筆者としては珍しく、かなり真剣に聴き込んだのがこのアルバム『ウワサの真相』である。

当時CDショップでジャケットに惹かれて手に取り、「RHYMESTER」という名前がカッコいいなというインスピレーションだけで購入したため、音楽性もどういう人たちなのかもわかっていなかった。聴くまで「RHYMESTER=ロックバンド」という認識ですらいたほどだ。

そのため、CDを再生したときは衝撃的だったのを今も覚えている。なにせ、メロディックで聴きやすいヒップホップがあふれていた時代だったこともあって、筆者も「カラオケで歌うため」という理由で流行りをおさえてはいたが、それらとは明らかに違っていたのだ。自然と身体が揺らされるような心地よいビートや、切れ味のいいMCが新鮮でとてもカッコいい。感覚的には「初めて本格的なヒップホップにふれた」という印象だった。筆者にとっては、このジャンルへの新たな扉を開いてくれた、思い出の1枚である。

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新しいジャズの可能性を感じられるオールジャンルなアルバム

『九月の空-KUGATSU NO SORA-』(2002年)
PE’Z

吹奏楽部に属していた筆者は、ホーンセクションを有する楽曲を好んで聴いていた時期があった。その中でもPE’Zは、単一のジャンルにハマらない自由なプレイスタイルで群を抜いていた。

客観的にはジャズを基調とした構成だが、実際はさまざまな音楽ジャンルを包含しており、「人が夢を見るといふ事 〜Black Skyline〜」などのゆったりした楽曲があったかと思えば「Akatsuki」をはじめとする攻撃的な楽曲もあり、当時学生だった筆者としてはかなり惹きつけられる作品だった。インストに馴染みがない人にとっても十分聴きやすく、カフェで流れるようなBGMという扱いではなく、しっかりと向き合って聴き込みたくなるアルバムといえる。

個々人の演奏スキルが高いことは言うまでもないが、特に鍵盤を担当するヒイズミマサユ機の遊び心が全開。「踊るような鍵盤」という表現がピッタリなのではないだろうか。筆者としては、PE’Zを聴いて初めて「ピアノがカッコいい」と思ったほどだ。そうした鍵盤にも耳を傾けつつ、PE’Zワールドに身を委ねてみてほしい。

個性と個性のぶつかり合いによって生まれる強烈な化学反応

『教育』(2004年)
東京事変

「椎名林檎がついにバンドを結成した」というニュースは個人的にもセンセーショナルだった。そうしてリリースされたアルバム『教育』は、椎名林檎のイメージはそのままに「やりたかったことを存分にぶちまけました」と言わんばかりの勢いと遊び心を感じる1枚となっている。

当人たちが言っていた「おもちゃ箱をひっくり返したような、と言ってもらえるようなアルバムを作りたかった」という目的通りで、まさにそれを体現しつつも「東京事変」としての統一感を持ってまとめ上げられた見事な作品だ。

個々人が持つソロプレイヤーとしての技量の高さが惜しげもなく発揮され、ぶつかり合いながら融合した楽曲が揃っているため、全曲通して42分という再生時間すらも短く感じるほどの充実感を覚える。

個人的には、東京事変の中ではこのアルバムがいい意味でもっともバンドとしてのまとまりがなく、だからこそそれぞれのセンスが際立っていると感じている。それが名盤に挙げさせていただいた理由だ。キーボードよりもピアノをメインで使用した鍵盤が踊り、攻撃的なギターに暴れるドラム、うねるベース。その上で自由に飛び回るボーカル。それぞれが自由に振る舞いながらも同じ舞台の中で作品としての集約を魅せる様は、まさに芸術といっても過言ではないだろう。

現在の東京事変ももちろんカッコいいが、それとは全く違った魅力が詰まったアルバム。それがこの『教育』である。

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キャッチーなクラブジャズで魅せるインストゥルメンタル

『REVENGE OF THE SPACE MONSTER』(2009年)
JABBERLOOP

某雑貨屋でレコメンドされており、店内で繰り返し再生されていたのがこのアルバム『REVENGE OF THE SPACE MONSTER』である。JABBERLOOPという存在は知らないまま、耳に残る心地よいリズムとインストならではの爽快感に心を掴まれ、即購入した。筆者が初めて触れた「クラブジャズ」は、このJABBERLOOPだったと思う。

攻め立てるようなリズムはあれど、どこか優しさを感じさせる展開や音色が心地よく、どんな気分のときでも包み込んでくれる感覚が印象的だ。当時からよくドライブ中に聴いていたほど、テンションを上げてくれる仕掛けが満載で、それでいてオシャレであるという新鮮な驚きに満ちている。

このアルバムに出会うまでは「鍵盤=ピアノ」というイメージが強かったためキーボードの電子音にそこまで耳が反応していなかったのだが、これ以降、キーボードの音色の心地よさや重要性を強く意識するようになる。それほど、電子楽器の存在感が遺憾なく発揮された作品だ。

(文・倉田航仁郎)
(カバー撮影・髙田みづほ)

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