誰がなんと言おうと! マイ名盤10選 − ライター・きゆかの場合

きゆか

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音楽好きなら誰しも、世間的な名盤とは別にきわめて個人的な「マイ名盤」を心に秘めているものだ。音楽の趣味も世代も異なるヂラフライターたちのマイ名盤とは? 気になる感性の持ち主を見つけたら、そのライターのほかの記事もぜひチェックしてみてほしい。新しい音楽との出会いが待っているかも。


CDの楽しみ方を教えてくれた

『GO!』(2008年)
CHERRYBLOSSOM

CDの原点でもあり、音楽好きの原点となったアルバムが『GO!』だ。小学生の頃、家族が買ってくれたこのアルバムをあたかも自分が買ったかのように愛でた記憶がある。音楽を聴くだけでなく、歌詞カードを何度もめくって歌ったり、ジャケ写のイラストをなぞって遊んだり、さまざまなCDの楽しみ方を発掘していた。

今の小学生たちはもうきっと、CDショップを走り回ることもしないのだろうか。YouTubeやサブスクリプションで音楽を気軽に知れる時代に、「音楽を聴く以外」の楽しみ方を自ら発掘していたあの頃は、案外幸せだったのかもしれない。

絶望的で最高な、メロコアジャンルのスタート地点

『Calling』(2012年)
SHANK

「結局のところ、日本詞の曲が最高だよね」という偏見を大きく覆したバンドがSHANKだった。1曲目の「Keep on Walking」を聴いた瞬間の衝撃が、今の私を作ってくれたといっても過言ではない。

哀愁と情景をキレイに混ぜたような歌声は、たとえ何を言っているか分からない詞でも心に響くんだと実感し、知らないロックの世界を知った。ロックが好きだと公言していた自分が恥ずかしくて絶望したけれど、それと同時にこんなにも素晴らしい音楽に出会えたことが、私の人生にとって最高の出来事だったんじゃないかと思う。

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ストレートに響く数々の失恋ソング

『blues』(2012年)
back number

失恋を経験した万人に向けて、丁寧な描写ながら、心の奥底まで刺すように歌うバンドはback number以外知らない。何も起きない出来事と、何もできない自分が、悔しいほどくっきり映し出されるアルバムがこの一枚だ。

数ある切ない曲をリリースしてきたback numberの中でも、特に印象深い曲が「恋」だ。歌詞がストーレートすぎて切ない。切ないけれど、ノートに写経してしまうくらい好きだった。ストレートに並べられた歌詞だからこそ、切なくても聴き入ってしまうのだろう。

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謎の先にあった、感性ゆたかな音楽

『DOPPEL』(2013年)
KANA-BOON

MVが気になったり、ナニコレ?と曲についてツッコみたくなる箇所がいくつかあった。何をやっているんだろう。どんな意図があるのだろう。とにかく謎を埋めたくなるようなKANA-BOONの音楽に、私は注目せざるを得なかった。

2013年9月にメジャーデビューを果たしたKANA-BOONが軽快にこのフルアルバムを出した。なぜか歌詞内に平家物語が綴られている「盛者必衰の理、お断り」から、エモーショナルさ全開の、私のお気に入り曲でもある「羽虫と自販機」など、とにかくKANA-BOONの出す幅広い感性に夢中になったアルバムだ。

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ドスケベながら、爽やかな表情で届ける

『Are You Coming?』(2015年)
WANIMA

ライブ中に「TANIMAでーす!」なんて、もう言わないのだろうか。

WANIMAとの出会いはYouTubeだったが、繰り返し曲を聴いているうちにこのアルバムのツアーに足を運ぶ機会を得た。しかし、初めてWANIMAのライブを見たときは衝撃だった。ただのエネルギッシュな兄ちゃんというイメージだけではなかった。めちゃくちゃドスケベだった。けれどそんな「汚(けが)れ」さの中に、「爽やかでアツい」音楽を操っていた。

ライブハウスではPIZZA OF DEATHのTシャツを掲げた、いわゆるハイスタ世代の大人たちがWANIMAのライブに熱中していたのも、高校生だった自分から見てとても印象的だった。どんなに歳を重ねても、あの会場にいた大人たちのように、いつまでもフレッシュなバンドを聴いていたい。そしていつまでも、ライブハウスを大好きでいたいとも思えた瞬間だった。

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真剣にディスれば、共感を呼ぶ

『ウィーアーインディーズバンド!!』(2013年)
キュウソネコカミ

「スマホはもはや俺の臓器」というキャッチーなフレーズには、思わず笑い転げてしまった。高校時代、カラオケに行った際に友人が歌っていた「ファントムヴァイブレーション」が頭に残り、自分も歌ってみたいと繰り返し聴いているうちに、いつの間にかこのアルバムもたくさん聴いていた。

身近な腹立たしいことを真剣にディスって曲にし、ハイパフォーマンスに仕上げる、斬新でワイルドなキュウソネコカミ。こんなおもしろいバンドにハマったことが今までなかった。自分の聴く音楽の趣味が変わったのか?と思ったが、どうやらキュウソネコカミが特殊だったようだ。

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いつまでも若くいたい、いつまでもアツくいたい

『Where The Light Remains』(2014年)
HAWAIIAN6

HAWAIIAN6といえば、magicが入った『ACROSS THE ENDING』だったり、PIZZA OF DEATHからリリースされた、Hi-STANDARD・横山健プロデュースの『SOULS』が思い浮かぶかもしれない。もちろん『ACROSS THE ENDING』も『SOULS』も大好きなアルバムではあるが、私はこの『Where The Light Remains』でHAWAIIAN6にどハマりした。

メンバーチェンジ、活動休止を経て、約5年振りとなる4th FULL ALBUMで、過去最大の15曲が収録されている傑作だ。特に私は、4曲目の「Forever Young」が、HAWAIIAN6にハマる起爆剤となった。哀愁から滲むアツい魂、メッセージにかける熱量、それらを見て私はパンクロックの虜になった。勝負をかけたい大事な日や、自分の悔しさや無力さに向き合った日、とにかく自分を奮い立たせたいときに味方になってくれるのは、いつだってHAWAIIAN6が届けてくれる音楽なのだ。

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学生時代で一番辛かった夏休みに出会った1枚

『生きる』(2016年)
THE FOREVER YOUNG

二度と味わいたくない夏休みが来るなんて、あの頃は知らなかった。高校3年生の夏休みだ。うっとうしい真夏の太陽のもと、山積みの課題と、就職試験に向けて学校に向かう通学路。何もかもが忙しくて、逃げ出したい日々が続いていたが、そんな中、SHANKが地元にライブに来た。THE FOREVER YOUNGのツアーで対バンとして来ていたのだ。SHANK目当てでライブに行った私はあまりTHE FOREVER YOUNGのことを知らなかったが、はじめて見た瞬間に涙が溢れた。

THE FOREVER YOUNGのライブを見ていなかったら、あの夏は乗り越えられなかったかもしれない。翌日にタワレコへ走ってこのアルバムを買ったことは、今でも鮮明に覚えている。CDを手に取ったときのジリジリとした衝撃が、あの頃の原動力となった。

夏に光る、忘れられない思い出

『Oath and Night War』(2007年)
OVER ARM THROW

OVER ARM THROWの音楽に出会ったのは、ある夏フェスがきっかけだった。真夏の太陽のもと、見たいバンドに向けて待機するためステージ近くにいた私は、見たかったバンドの前に演奏していたバンド、OVER ARM THROWが目に入った。

とにかく熱狂した。暑苦しさと爽やさ、純粋なメロコア好きにハマるメロディが心地よく刺さった。なんて夏の光に似合うバンドなんだろうと、まぶしかった汗の反射すらも美しく見えた。ビールを飲める年齢に出会っていたら、きっと浴びるように飲んでいたはずだ。あれだけ楽しみにしていた次のバンドに対するエネルギーが奪われるほど、OVER ARM THROWに夢中になった。あの日を境に『Oath and Night War』をリピートしまくり、あの夏の1日は私にとって特別な思い出となった。

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配信限定の最高傑作

『THE LOOKLIKE』(2020年)
LOOKLIKE

贅沢すぎるLOOKLIKEのベストアルバムを、配信限定で聴くことができる。私の好きな曲はもちろん、テンションが上がるライブ定番曲「Wake up!!」「Coloring everyday」や、LOOKLIKEに出会ったきっかけの曲である「ダンデライオン」、さらに期間限定で試聴のみ行なっていた「cherry blossum」まで、とにかく私にとってはたまらない曲がギュッと詰まっている。

このベストアルバムを聴いていると、初めてLOOKLIKEを観た日を思い出す。まだまだ残暑が厳しいある日の放課後、制服姿で走ってライブハウスに向かった。今ではもう閉店してしまったが、ステージとの距離の近さに思わず照れてしまうほどの小さいライブハウスだった。ここで見たLOOKLIKEがカッコ良かったことはもちろん、狭いライブハウスに夢中になったことも鮮明に思い出すことができ、ライブハウスってすばらしい!と声を大にして叫びたくなる。

(文・きゆか)
(カバー撮影・髙田みづほ)

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