【MUSIC DRUNKS #3】人材コンサルタント・青木裕一 / パンクは精神性。怒りも悲しみも優しさも、全部詰まっている

三橋 温子

三橋 温子

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普段はグローバル人材紹介会社で事業部を束ね、プライベートでは週1回以上のペースでライブに足を運ぶ。人材コンサルタントの青木裕一(あおきゆういち)さんもまた、音楽に陶酔するMUSIC DRUNKSのひとりだ。

パンクロックの中でもメロコアをこよなく愛する彼が音楽に目覚めたのは中学1年の頃。そこから現在までどのような音楽歴をたどり、現在のビジネスパーソンとしての彼にどのような影響を与えているのだろうか。


メロコア、スカコアに目覚めた中高時代
——青木さんとはかれこれ14年来の付き合い。一緒に行ったライブの数はおそらく夫に次ぐ多さです(笑)。パンクロックだけでなくいろんな音楽に詳しい青木さんですが、音楽を好きになったきっかけは?

「姉の部屋」だね。

——姉の部屋! 兄姉の部屋はまさに音楽との出会いの宝庫だよね。

中学1年のとき、姉が持っていたGREEN DAYやThe Mighty Mighty Bosstonesを聴いて、カッコいいなと思ったのがきっかけ。そこからGREEN DAYに似た音楽を探して買ったCDが、これは今聴いても名盤なんだけどFAT WRECK CHORDS(アメリカのパンクレーベル)のオムニバスの『Physical Fatness』。Hi-STANDARDっていう日本人バンドがいると知ったのもこのオムニバスを聴いてからで、すぐに『GROWING UP』を買いました。

当時はネットですぐに調べられるような時代じゃなかったから、CDの裏に書いてあるスペシャルサンクスを見て片っ端からいろんなバンドを聴いていた。COKEHEAD HIPSTERS、SUPER STUPID、BACK DROP BOMBとか。

——そこからスカコアにも目覚めるわけですね。

うん。ホーン隊のカッコよさを知って、SCAFULL KINGやRUDEBONES、POTSHOT、KEMURIなども聴くようになりました。中学・高校時代はだいたいそんな感じだね。

——ちなみに初ライブは?

高校2年のとき、地元の仙台で開催されたTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTのWORLD CASANOVA SNAKE TOUR。ロック好きな友達とメロコア好きな俺で、お互いの好きなジャンルのライブに行き合うというのをやっていて。

フェスでいうと高校3年のときのARABAKIかな。同じ年に、CAPTAIN HEDGE HOGとBACK DROP BOMBとHUSKING BEEが合同で企画したDELTA SOUNDS TOURにも行ったんだけど、今年2月に19年ぶりにこの3バンドのスリーマンを観られて感慨深かった。

パンクロックは「精神性」
——大学進学で上京してからの音楽歴も聞かせてください。

さっきも出てきたキャプヘジやハスキンのような、いわゆる横浜系をずっと聴いていたんだけど、メロコアブームが下火になってきたあたりから俺もパンクロックに少し疲れちゃって。Fatboy Slim、Space Cowboy、DEXPISTOLS、The Chemical Brothersなどクラブミュージックにハマり始めました。

——パンクに戻ってきたきっかけは?

社会人4年目のときに拠点立ち上げで名古屋に転勤して、DIAMOND HALLの近くに住んでいたんだよね。クラブにもよく行っていたけど、ぶっ飛ばしたい気分のときはDIAMOND HALLとかライブハウスに行くようになって。そこでBRAHMANやASPARAGUSを改めて観て、やっぱりメロコアっていいな〜と。

——青木さんにとってパンクの魅力ってなんですか?

そもそもパンクロックって、海外だとRAMONESやSEX PISTOLS、日本だと主にTHE BLUE HEARTSから市民権を得た音楽だけど、Ken Yokoyamaも言っているようにパンクロックは「精神性」だと思う。反戦・反レイシズム・反政府のような反骨性を歌うものもあれば、ハッピーな感情や日常をシンプルに歌うスカパンクもあるし、WANIMAやマキシマム ザ ホルモンのようにメジャーなバンドもベースにはパンク精神がある。

そういうのをふまえて聴いていると、自然と感情移入しちゃうんだよね。怒りを感じたり涙が出てきたり、優しい気分になったり、全部理解したいから知らないことが出てきたらすぐに調べたり。

3.11のときにTOSHI-LOW(BRAHMAN)が茨城の104さん(MOBSTYLES・田原104洋)のご家族のところに駆けつけたエピソードなんて、今思い返しても情景や感情を察して泣いてしまうし、最近でいえば東北ライブハウス大作戦がやっているSAVE THE LIVEHOUSE作戦なんかもパンクのいいところが表れている。

ただ曲がいいだけじゃなく、その根底や背景にある精神性に触れられることが、俺がパンクを好きないちばんの理由です。

——では、最近聴いている音楽で、精神性に心を揺さぶられるアーティストは?

BURL、ATATA、LEARNERS、Keishi Tanakaとかかな。「売れよう」「ウケよう」と思わずに純粋に好きな音楽や伝えたい音楽をやっている感じが、曲やライブに表れていると思う。

精神性を感じるという観点では、リリックは日本語より英語のほうが好き。言葉の意味に想像の余地があるから、「もしかしてあのことを言っているのかな」「あのときはこう思っていたのかな」と考えながら聴いています。

いちリスナーとして音楽と生きていく
——これまで人材業界やゲーム業界で主に営業職に携わってきた青木さん。20代半ばで拠点立ち上げを任されるなどバリバリ活躍していた印象ですが、こんなに音楽が好きなのに音楽関係の仕事に就かなかったのはどうして?

実は、子どもの頃からずっと音楽の仕事をしたいと思っていたんです。本当は地元の音楽の専門学校に行きたかったけど、進学校だったから建前で東京の大学を受けて、身の丈以上だと思っていた大学に受かったからそのまま上京した。

そのうち考え方が変わってきて、いちリスナーとして音楽に最大限携わることが自分にとってベストだと思うようになったんだよね。音楽に先入観を持ちたくなかったし、嫌いになりたくなかった。俺、バンド界の家系図みたいなの書けるくらい本当に好きだから(笑)。

——(笑)。じゃあ、今の人材コンサルタントの仕事も含めて、これまでどんな軸で仕事を選んできましたか?

重視している軸はいくつかあるかな。まずは、人よりもバリューを発揮できる自信が持てて、かつ人に求められる仕事であること。ただ売って終わりみたいな一過性のものじゃなくて、長期的にクライアントに影響を及ぼせる仕事が好きです。

職場環境でいえば、ワイワイ仲良いだけで物事が進まないのは好きじゃない。適切な議論とクリエイティビティのある職場が理想。あとはやっぱり、自分にとってチャレンジングであるかどうかだよね。常に新しい発見があって、成長し続けられる仕事や環境を選んできたつもり。

——チャレンジングな仕事はやりがいが大きい分、苦労やプレッシャーも絶えないと思うけど、そういうときに音楽が支えになることも?

「この曲・アルバムが終わるまでがんばろう」「あのライブまであと何日がんばろう」と自分を奮い立たせることはよくあります。音楽が仕事のリズムをつくってくれる感じ。

——気合を入れたいときに聴く曲があればぜひ教えてほしいです。

locofrankの『START』と、DEXPISTOLSの『FIRE feat. Zeebra』。アルバムだと、OVER ARM THROWの全アルバムシャッフル。メロディがよすぎてテンションが上がるし、なぜか勝気になれます。紗羅マリーちゃんの声が落ち着くLEARNERSや、本気で集中したいときにはパンクとは正反対だけどチルな雰囲気のThe Chainsmokersもすごくいい。

——ありがとうございます。音楽に目覚めて20年以上、仕事ではなくリスナーとして音楽と生きていくことを決めてから10年以上が経った今、青木さんにとって音楽はどんな存在ですか?

モチベーションを上げたいときは一緒に全力で走ってくれて、落ち込んだときは隣で励ましてくれる、大親友だと思ってます。

(取材/文/撮影・三橋温子)


5 PRECIOUS SONGS

久々にCDを聴いて泣いた曲。歌詞、メロディ、MV、ゲリラ販売、すべてが完璧。(2016年)

細美武士がゲストボーカルで参加した曲。いっちゃんベース弾いてるし、なんだか復活感を感じた。(2017年)

ライブで聴くと無条件にテンションが上がる。(2000年)

これもライブが最高にカッコいい。(2002年)


『This Is A Song For You』 NOB

この曲をはじめ、全曲イントロを聴くだけでワクワクする。Vo./Ba.の鎌田真輔が生きていたらまだまだ見たかったバンド。(2004年)


PROFILE

青木 裕一(Yuichi Aoki)

仙台市出身、法政大学経済学部卒。エン・ジャパン、リクルートキャリアなどを経て、グローバル人材紹介会社のエンワールド・ジャパンにてAssociate Directorを務める。中学時代からメロコアを中心に音楽に傾倒、現在は全国のライブ・フェスに年間60本ほど参戦。

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