愛媛県松山市のライブハウス店長がレコメンド! ブレイク必至の若手バンド7選

曽我美 なつめ

曽我美 なつめ

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日本列島の南西に位置する島国、四国。そこに住む人々以外のどれだけの国民が、この四国を構成する4県の正しい名称と位置を述べることができるのだろうか。

そんな自虐はさておき、ここ四国の主要都市である愛媛県松山市にも、地方都市ながら都会に負けず劣らずの熱い音楽シーンが存在している。古き良きバンドカルチャー全盛期には青春ロックの金字塔・ジャパハリネット、現代の一部女子にカルト的人気を誇る超歌手・大森靖子、アニソン界の新星・オーイシマサヨシ、今年めでたくメジャーデビューを果たしたLONGMAN、15歳にして超大物ユニットへの曲提供が話題となったトラックメイカー・SASUKEなど、実は多種多様なアーティストを輩出している土地なのである。

ちなみにSEX MACHINEGUNSの大名曲『みかんのうた』は、我々みかん県民にとって至極大真面目な生活の歌だ。空港の蛇口からはポンジュースがちゃんと出るし、そろそろ炬燵にみかんが至高の時期になってきましたね。

本日は、そんな愛媛県松山市在住の筆者がこの地を代表するライブハウス店長に、全国のバンドサウンドを愛するリスナー諸君に今まさに聴いていただきたい若手バンドをピックアップしてもらった。

たかが一地方の音楽シーンと侮るなかれ、もしかしたら数年後には今のバンドシーンを揺るがす存在となるとんでもない才能が眠っているかもしれない。店長たちの愛のこもった熱いコメントと共に、彼らのサウンドをぜひ一度聴いていただければと思っている。


松山サロンキティ店長 武花正太がプッシュする若手バンドはこれだ!

松山サロンキティ 公式サイト

音楽が好きである。

その上でぼくは特定のジャンルだけを愛したり追っかけたりしないし、特定のアーティストだけを推したりそのことをアイデンティティにしたりしない。縁があって目の前にある音楽を「ああ、そうなのか」と受け入れるだけなんである。

だからぼくが店長を務める松山サロンキティも、今のところそういうスタンスで営業している。サロンキティは開業から25年、代替わりしながら地元愛媛県松山市を代表するライブハウスとして堂々営業を続けている。自慢じゃないけど音は一級品、キャパシティ350名を誇る。20周年時の大掛かりな改装を経て雰囲気も上々のゴキゲンなハコだ。歴代スタッフの想いが詰まったホールやステージは音楽を愛する者に魔法をかけてくれる。自分も20年前からこのハコにバンドマンとして育てて貰ったので肌で解る。サロンキティは伊達じゃない。

バンドマンの雰囲気も昔とだいぶ変わった、今の彼らは群れることを嫌い、互いに自立している。自立しているが想像力を働かせ互いに影響は受けあっているように見える。だがその関係は希薄である。

表層の薄皮を一枚めくってみれば少し広めのスペースを空けて寄りかかることなくそれぞれが直立している。寂しいようにも見えるし、頼もしくも見える。そういう時代なんだろう。彼らの今後の活躍に期待している。

PUTAINS(ピュタンズ)

さて、「若手バンド」と言われてもどういう条件が揃えば若手なのか、ということはぼくにとって謎である。PUTAINSのMSYK(Gt./vo)は29歳、ぼくから見ればとても若手だけど世間的には若手…?と首を傾げられるかもしれない。

だけど旧態依然とした00年代から繋がるライブハウス界隈とは一線を画す音楽が彼らの手の中にはある。それが若手つまりオルタナティヴな魅力に満ちている、と田舎のおじさんは言っているんである。

『Happy&Luckey』のMVを見てみて欲しい。夏はボランティアサークルで地域との交流を深め、冬はスキーサークルに潜り込みゲレンデでパラレルターンをキメる、そんな器用な大学生のパーティに迷い込んだような気持ちになる。彼らは大きなテーマを声高に叫ぶのではなく、パーソナルな出来事や想いを軽やかに綴っている。攻撃的なサウンドは一切無く、クリーンでキュートなアレンジは僕らの暮らしにスッと寄り添ってくれるかのようだ。

mimosa(ミモザ)

最近よく耳にする、「ガールズバンド」というやつである。シンプルな3ピース編成、ナチュラルに歪んだいつも見てる風景みたいな物言わぬエレキギターが楽曲を先導する、おんなのこの抱える焦燥感というか軽い怨念みたいな(多分)事を誰に言うでもなく呟くツイッターのTLみたいな曲だ。

これにおじさんであるぼくが感情移入できるかどうかは置いといて、興味深いのは拗ねてない所だ。日本語詩がよく聞こえるアレンジって実は苦手だったりする。おひとり様で入った居酒屋で隣になったOL達の恋バナをじっくり聴かされるような、なんか背中がムズムズする感覚が苦手だ。だけどこの子達は拗ねていない。それどころか自分はこれからこうしよう、という決意まで顕にしているのは少し心地良いまである。

最近の若いやつは〜なんて言わずに、彼ら同士の何気ないやりとりに耳をすませてみると意外と僕たち中年より立派な心構えで生きていたりするんである。見習わなければ。

松山Double-u studio店長 ヤマダイがプッシュする若手バンドはこれだ!

松山Double-u studio 公式サイト

愛媛県松山市は市内中心部に位置する松山Double-u studioは、キャパ100の柵もなくバンドマンの汗も唾も普通に飛んでくる、そして出演者の入場は常にプロレス入場のプロレス退場、そんな熱いライブハウスです。そんなライブハウスだからこそ、熱意のある県内外のバンド達に支えられています。是非とも一度来場して、ステージ近っ!と言っていただけると嬉しいです。

DRILL(ドリル)

Gt./Vo.ダイチ☆、Ba./Cho.エツロウアンダーソン、Dr./Cho.はいさいによる3ピースバンド。その見た目のインパクトに目が行きがちになるが、変態的に作り込まれた曲、ライブの寸劇?は中毒性バツグン! 何だこりゃと思いながら、もう一回聴きたくなる。もし悲しいことや辛いことがあればライブに来てほしい、いつのまにか笑顔になっているはず。

Memo Light Write Code(メモライトライトコード)

Vo./Gt.伊藤拓海、Gt./Cho.佐伯高彰、Ba.安藤泰将、Dr.井上拓也による4人組ロックバンド。優しい歌を唄い、激しさとは無縁そうな彼等だと思われているが、実際ライブに行ってみるとどうだろう。音源で聴くイメージ以上に音圧もあり、露骨に骨太さを見せてはこないが、MC等で垣間見える言葉の端々にも実は色んなものに負けまいという反骨精神がチラチラ見え隠れする。そんなギャップを持ち合わせたこのバンドを、是非ともライブに足を運んで見てほしい。

PRAY FOR ME(プレイフォーミー)

Vo./Ba.タクマ、Gt./Cho.ユウタロウ、Dr./Cho.リョウタによる3ピースメロディックバンド。今一番、松山で全国に向けて精力的にライブをしているバンドは彼等しかいないと思うし、自他共に認めるところだろう。彼等のライブにはオーディエンスを巻き込む力があり、単純に激しいだけの曲でなく自然と曲を口ずさみ拳を上げてしまうグッドメロディーを持っている。同じように新しいシーンを作っていこうとしている全国にいる仲間達と、そろそろ大きな波を起こしてくれるんじゃないかと本気で期待している。

Bar Caesar店長 Noriがプッシュする若手バンドはこれだ!

Bar Caesar 公式サイト

松山市三番町の繁華街に、2007年にDJバーとしてオープン。その後形を変え、バンドライブ(150人キャパ)もできる形になった2012年辺りから、ライブ企画やツアーバンドの会場・遊び場として根付きました。特にロックやヒップポップの会場として定評があり、新しい世代の勢いあるアーティストがこの場所に集います。

ライブハウスとは少し雰囲気が感じられるのではないでしょうか? 遊びに来るお客さんのお酒の量がハンパないですから。一度シーザーの雰囲気を体感しに来てください!

throma(スローマ)

カトウタクロウ、カトウトモロウ、ベースサポートの世代が違う3人組のバンド。酔っ払って演奏をまともにできない海外のパブでライブをやってるのか?と思わせる初期の雰囲気から、今ではハッと入り込めるメロディ展開にドキドキさせられる。音源より確実に生のライブを感じてほしいバンド。

The Youthwave’(ザ ユースウェイブ)

今年に入り知った20代前半の4人組の彼ら彼女、ライブ本数がまだ1桁とは思えない曲の構成に最初からビックリさせられた。曲作りのために時間をかけ完成した『遠雷, Night Fright / 2019』は、これまでの松山に確実にない都会的な音でニヤニヤしてしまう。何かキッカケがあれば遠い土地まで行ってライブするんだろうな、という景色を個人的には思い浮かべている。


いかがだっただろうか。海外進出をも視野に入れたポップで洗練されたミュージックから、泥臭くも情緒的な煌めきを放つサウンドまで、非常に多彩な才能がこの一地方都市に息づいていることがお分かりいただけたのではないかと思う。

音楽で一躍スターダムにのし上がり一攫千金、という華々しいバンドカルチャーの時代は、今終焉を迎えつつあるのが現実だ。しかしそれは裏を返せば、バンドの生き方はそれだけではなくなったということだろう。

そんなこのご時世でも音楽活動をする中で一番難しいのは、都会で売れることでもライブハウスを満員にすることでもない。何よりも難しいのは己が執念を燃やし続ける理由だけを片手に、音楽を続けていくことだ。大都会に死屍累々と積みあがってゆく夢の亡骸だけが、それを証明し続けている。

そういった意味では、都会に進出することなく地方都市で各々の理想を掲げバンドを続けている彼らの存在こそ、バンドカルチャーの行く末を暗示する微かな希望であると同時に、現在の音楽シーンの在り方を揺るがす存在足りうるのではないかと思う。

都会ではなく、山手線もなければドン・キホーテもろくにない地方都市だからこそ鳴り始める音楽がある。そんな存在がきっとここ愛媛県松山市だけでなく、日本中の多くの街でも今まさに息をし続けているのだろう。

(文・曽我美なつめ)