【日菜インタビュー】17歳シンガーソングライター、等身大の葛藤を大人びた声色にのせて

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17歳。人生でもっとも多感なころだ。好きになれない自分、思いどおりにいかない恋、手探りの未来。なんでもできそうで、なにもできない、瑞々しいほどの歯がゆさを誰もが少なからず経験する時期である。

そんな複雑な心情を歌へと昇華するシンガーソングライター、日菜(ひな)。はじめて彼女の歌を聴いたのは、渋谷のライブハウスでのことだった。愛らしい顔立ちから想像していた勝手な歌手像は見事に裏切られ、わずかに掠れた大人びた声とギター1本で潔く歌う姿が脳裏に焼きついた。ああそうだ、我々大人が思っている以上に、17歳はとっくに子どもではないのだった。

今回、同年代の注目女優・八汐舞を主演に迎えた代表曲『かなわない』のMVを公開し、1月12日にはサブスク配信もスタートしたばかりの彼女に、初インタビューを実施。その等身大の言葉たちを、未公開の素顔を想像しながらぜひ味わってほしい。


14歳でギターを始め、作曲をスタート
——大阪の無料野外フェス、MIKROCK ‘19の学生ステージで優勝した経験をもつ日菜さん。ライブはそれがほぼはじめてだったそうですね。

はい。高校2年の秋でした。軽音楽部だったので人前で演奏したことはありましたが、一般のお客さんの前で本格的なステージに立ったのははじめてです。

——どうしてMIKROCKのオーディションに出場しようと?

そのころ、オリジナル曲をけっこう作るようになっていて、ライブにも出てみたいと漠然と思っていたんです。SNSであいみょんの弾き語りをアップしている女の子がいて、よく見ていたんですけど、その子が2018年のMIKROCKに出場していて。あるときTwitterで「今年もオーディションやるらしい」とツイートしていたのを見て、私も挑戦してみようと。

——それでいきなり優勝。すごいですね。音楽はいつごろから始めたのですか?

4歳からピアノを習っていて、14歳のときにギターに切り替えました。当時、あいみょんやSaucy Dog、back number、クリープハイプなどにハマって、ギターを持っているアーティストってカッコいいなと思ったんです。歌うことも昔から好きでした。保育園のころ、母と一緒によく青山テルマを歌っていたり、合唱団に入ったり。

あと、作曲にも興味をもちました。私は声が低いので、自分の音域に合った曲を作ってみたいなって。ギターを始めたのは、ピアノで作曲するのが難しかったからという理由もあります。

——ギターは独学?

はい。YouTubeで弾き方やコードを覚えて、最初はカバー曲で練習していました。阿部真央の『じゃあ、何故』とか。カバーはMixChannel(現:ミクチャ)で配信していました。

——最初に作ったのはどんな曲だったのでしょうか。

高校受験に悩んでいるときに作った曲でした。自信のなさや学校への不満を歌に込めた、誰かに怒りをぶつけるような暗い曲です(笑)。でもすごく楽しかった。いま思うと全然ダメですが、当時は「意外と簡単に作れるな」なんて思っていました。

ただ、それ以降は納得のいく曲が作れなくて。自分の気持ちばかり歌っている気がしたし、ギターの知識もなかったので思いどおりの仕上がりにならないんです。いまも試行錯誤しながら作っています。

誰かのせいにしたくなる苛立ちを曲にした『かなわない』
——では、MIKROCKでの優勝はひとつの転機だったのですね。

そうですね。今回MV制作とサブスク配信をした『かなわない』という曲も、MIKROCK後の冬にできた曲です。そのころ働いていたアルバイト先でなかなか輪に入れずに孤独感を感じていたことや、ほかの悩みも重なって、殻を破れない自分にイライラしていたんです。

そういうときって、つい誰かのせいにしたくなるじゃないですか。そこから〈ああ神様〉という歌詞が出てきました。神様は私たちのことを全部知っている。それなら、つらい思いをしている人全員に幸せを分け与えてくれていれば、悩む人が減るのにって。

——なるほど。ひとりの女の子の悩みを歌っているようで、実は壮大な世界観の曲だなと感じていましたが、そういう思いがあったのですね。タイトルはどんな意図でつけたのでしょうか。

最初は漢字にしようと思っていたのですが、曲を作っているうちに、願いが「叶わない」という意味と、神様に「敵わない」という意味の両方があるな!と思い、どっちの意味でも伝わるひらがなにしました。

——ギターと歌のみというシンプルな構成ながら、アルペジオから突然カッティングに変わるなどストーリー性があって引き込まれます。作曲でこだわった部分はありますか?

それが、どうやって作ったか覚えていないんです(笑)。歌詞の原形をメモしていて、それに合うコードを探して歌いながら作ったと思うんですけど。

——ゾーンに入っていたんですね。女優・八汐舞さんが出演するMVも雰囲気がぴったりです。

舞ちゃんなしでは今回のMVは制作できなかったです。『かなわない』はすごく大切な曲で、その顔となるMVの主演を務めていただける方を最初に探したのですが、そのときにプロデューサーのささかわゆうごさんが教えてくれた女優さんが舞ちゃんでした。そのあとすぐに出演のオファーをお願いして、出演が決まったときの喜びは一生忘れません。このご縁にとても感謝しています。

舞ちゃんは撮影現場の雰囲気をすごく明るくしてくれる方で、生の演技を見たときは鳥肌が立ちました。今日までの苦しさを置いて明日へ飛び立てるような、発散できるようなMVに仕上がっていると思います。今回舞ちゃんが演じてくれて、自分の曲ながら違う曲に感じました。前向きになれる要素もあるんだなって。

——好きなシーンはありますか?

全部好きですが、なかでもお気に入りはラストの海に向かっていくシーン。嫌な気持ちや苛立ちを自分の代わりに叫んでくれている気がして、曲のイメージが劇的に変わったシーンです。

女の子の日常を描きたかったので、九嶋和之監督には「舞ちゃんのカメラ目線はなしで」とだけお願いしました。全体的に青みがかっているところが、物悲しさのある私の曲に合っていて、とても素敵なMVに仕上げていただいたと思います。九嶋監督のおかげで『かなわない』の新しい顔が見え、世界観がより深まりました。このような形でみなさんに楽曲をお届けできることに深く感謝しています。

——どんな人に観てほしいですか?

この曲を作ったときの私のように、悩みを抱えている10代の人たちにとくに観てほしいです。自分に苛立っていたり、不平等な世の中に疑問を抱いていたり。共感して、発散して、新しい気持ちに変わってもらえたら嬉しいです。

『かなわない』Official Music Video
日菜
youtube動画

デジタル配信はこちらから

何気ない日常で聴いてもらえる音楽を
——MIKROCK出演後、ライブの機会は増えましたか?

InstagramのDMからオファーをいただいたり、出演したいと思ったライブイベントに自分から連絡したりして、何度か経験しました。プロデューサーのささかわさんが主催する『Melody Line 〜はじまりのうた〜』というイベントにも出演させていただいています。

ただ、コロナ禍の影響で2020年はオンラインライブがほとんどでした。2021年は世の中がどうなるかまだわかりませんが、楽曲制作とグッズ制作に力を入れたいと思っています。

——作曲を始めて数年、最初のころと比べて成長したと感じることはありますか?

私が曲を作りたくなるときはだいたいネガティブなとき。自分の気持ちを吐露する曲が多く、以前はなんとなく感覚で作っていたけれど、最近やっと音楽と向き合えるようになってきました。

聴き手を飽きさせない構成や雰囲気を考えたり、自分の気持ちを歌うにしても、ただ「私がつらい」だけじゃなく「ほかの人だったらこう思うかな」と考えたり。有名アーティストや身近なシンガーソングライターなど、まわりが作っている音楽を参考にさせていただくことも多いです。

まだまだ足りていないのですが、始めたときよりももっと曲を聴いてくださる人のことを考えるようになりました。あと、自分の曲なのに「歌いにくい」「楽しくない」と違和感を覚えることも出てきたので、自分自身ももっと感情移入できる曲を作れるようにがんばっています。

——シンガーソングライターとしてレベルアップしている証ですね。そもそも、日菜さんが「音楽で生きていきたい」と思うようになった原体験のようなものはあるのでしょうか。

小学5年のとき、はじめて合唱曲の伴奏を担当したんです。『翼が今』というピアノの間奏が入る曲なんですけど、それを先生や友達に褒めてもらったのがすごく嬉しくて、「音楽では誰にも負けたくない」と強く思いました。そのためには表現力を磨いて、音楽で表現できる人にならなければと思ったことが、いま振り返ってみれば私のベースにあると思います。

——自分の心情や体験のほかに、曲作りのインスピレーションはどこから得ていますか?

最近は小説ですね。表現力や語彙力がまだまだ足りないと思って読むようになりました。カツセマサヒコさんの『明け方の若者たち』は、エモーショナルですごくおもしろかったです。

——音楽以外に好きなことはありますか?

猫。もともと犬派だったんですが、家で保護猫を3匹飼うようになってから完全に虜になりました(笑)。私のいちばんの癒しです。見ていて全然飽きない。

——グッズにも猫がいますね!

はい、「日菜ネコ」といいます。Instagramを始めた当初に、絵が上手な同い年の女の子がフォローしてくれて、色づかいが素敵だなと思ってフォローを返したんです。そのあと、曲をレコーディングさせてもらう機会をいただいたときに、YouTubeに載せる用にイラストを描いてほしいとお願いしました。現在はグッズ制作にも協力していただいています。天才です!!

——これからのグッズ展開も楽しみです。最後に、今後の目標を教えていただけますか?

夢は大きくということで、横浜アリーナでライブをすることです! 大好きな会場なんです。赤坂BLITZも好きでしたが閉館してしまったので…。

私が目指す音楽は、同世代のみなさんにプレイリストに入れてもらえるような、何気ない日常で聴いてもらえる音楽です。元気をあげられるような曲はまだ作れないけれど、いつかみなさんの背中を押して励ませるような曲を作りたいです。

(取材/文・三橋温子)

九嶋和之監督からのメッセージ

MV『かなわない』の制作にあたり、主人公の心情と柔らかい光でギャップのある映像になるよう意識しました。また、日菜さんの手書きのタイトルと歌詞も見どころのひとつです。

日菜さんの撮影時の生演奏は真に迫るものがあり、撮影を忘れ聴き入ってしまうほどでした。いつか日菜さん自身の魅力も伝えられるようなMVを撮りたいと思っています。出演いただいた八汐舞さんは、急なアドリブにも期待以上のパフォーマンスで応えていただきました。これからのご活躍がとても楽しみな女優さんです。

九嶋 和之(Kazuyuki Kushima)
MV Director / 2D Animator
独学で映像を学び、東北を中心に100本以上の作品を手掛ける。


PROFILE

日菜(Hina)

17歳、シンガーソングライター。生まれ変わったら猫になって愛猫と親友になりたい。

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楽曲『かなわない』

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