今の時代、音楽そのものだけではなく、アーティストの人生や価値観、その人自身の魅力が評価されることが増えているのではないだろうか。とくに、着飾らずにありのままの姿を見せてくれるアーティストは、共感や人気を得やすい。
そこで今回は、まさに素のまま、ありのままの表現を追求する、トラックメイカー兼ラッパーのハラサンゼンを紹介したい。
やりたいことを素直にやった。結果として生まれたのが、ハラサンゼン
ハラサンゼンは、トラックメイカー兼ラッパーとして、青森県八戸市をメインに活動している。
中学生の頃からバンドサウンドが好きで、とくに影響を受けているのはDragon Ash、山嵐、RIZEなど、いわゆるミクスチャーロックだ。ハラサンゼンというアーティスト名も、RIZEのJESSEが「SORA3000」というアーティストを名乗っていたことに影響を受けている。
元々バンドサウンドが好きだったため、学生時代にはOnibilliというオリジナルバンドで活動。現在ではラッパーとして活動しているが、ギターやベースの演奏経験もあり、曲を作るなかで、ギターを録音するといった手法も行っている。
Onibilliの活動休止からソロ活動に至った経緯については「一人でDTMしてラップした曲をインターネット上にアップしてたら意外と好評で、調子に乗って今も続けている」とのことだ。
また、バンドとソロ活動の違いについては、次のように語っていた。
「僕は曲を作るのが好きで、その日の気分でポンポン違う曲を作りたいと思ってます。バンドでもかなり曲は作っていたけど、やっぱり一人のスピード感は比になりませんでした。ソロの方が楽だし、面白いことがいっぱいできるのではないかと思い、ソロで活動を続けています」
これらの言葉からわかるように、ハラサンゼンは、「自由に音楽をやる」アーティストなのだ。
ストレートな歌詞にあの頃を思い出す楽曲「みんなへ」
『みんなへ』
ハラサンゼン
「みんなへ」は、青春時代を描いた楽曲だ。しかし、多くの人が共感するような、いわゆる「あるある」の青春を描いたものではない。ハラサンゼンのリアルな青春を描いており、歌詞のなかには、学生時代のバンド・Onibilliも出てくる。
SNSなどで黒歴史を言いづらくなった昨今の世の中だが、「みんなへ」には、彼の黒歴史のような学生時代のエピソードも盛り込まれている。なかには、同じような学生時代を送った人もいるのではないだろうか。
そして、何よりもグッと来るのが〈おれらまだ最中〉〈おれはまだ最中〉〈青春の最中〉という歌詞だ。
思い出を懐かしむのではなく、今も青春の続きをしている。そんなメッセージは、多くの人の心に刺さるのではないだろうか。
なんかイラつく……そんな時に聴きたい楽曲「サンゼン」
『サンゼン』
ハラサンゼン
ハラサンゼンの曲は、決して優しいだけではない。激しさを感じられる攻撃的な曲も魅力的だ。なかでもとくに激しさを感じられるのが「サンゼン」である。
「サンゼン」では、シャウトに近いラップを披露している。また、曲の後半、2分あたりにも注目してほしい。独り言のように〈あーだるい〉〈マジでだるい〉〈あーうざっ〉と呟く部分からは、言葉にできないモヤモヤを感じる。
同じように、言葉にはできないけれど、なんだかだるい、なんだかうざいとモヤモヤを抱えている人はいるのではないだろうか。筆者もこの曲を聴きながら、口癖のように「だるい」「うざい」を繰り返していた20代を思い出した。
ちなみに、歌詞の中には〈聞いてたRANCID〉といったような、パンクの影響を感じられる部分もあり、パンク好きの筆者としては嬉しいポイントだった。
自由に作る。ただそれだけ
これまでに紹介したように、ハラサンゼンの楽曲は自由でオリジナリティに溢れている。ジャンルを統一することもなく、様々な歌詞や曲調があるのが魅力だ。
アルバム『nude.』に収録されているタイトルだけでも、ハラサンゼンのオリジナリティは感じられるのではないだろうか。とくに筆者の心を掴んだタイトルは「星野源になりたい」や「進化するハラサンゼン」などである。
このような楽曲について、どのように作っているのかを本人に尋ねたところ、「全部自由に作ってます。かっこよくなきゃいけないとか綺麗じゃなきゃいけないとか、ジャンルとかも全部取っ払って作りたいものをただ作っています。そのせいで変な曲ばかりできます」と語ってくれた。
ハラサンゼンの今後の活動
ハラサンゼンの活動については、謎に包まれている部分が多い。SNSでは、いわゆる告知ばかりといったようなアーティストっぽさがない上に、インターネット上にも情報は少ない。
しかし今後は、アーティストとしての情報を積極的に発信していくそうだ。また、現在は青森を中心に活動しているが、活動地域も広げていくとのことなので、青森近辺在住でない人でも、ハラサンゼンのステージを見る機会が増えるのではないだろうか。
ただ、活動について彼は「お客さんというより友達がいっぱい増えればいいなと思っています」と語っている。「ファンが増えればいい」ではなく「友達が増えればいい」という言葉からも、ハラサンゼンのありのまま、純粋な姿が垣間見える。
ぜひ皆さんにもハラサンゼンの「ファン」ではなく「仲間」となって応援してもらいたい。
(文・名城政也)
PROFILE
ハラサンゼン
トラックメイカー兼ラッパー。青森県八戸市をメインに活動。2023年で24歳。2020年にシングル『目玉焼き』、アルバム『NOISE』、2021年にアルバム『nude.』をリリース。
活動開始
2019年
主な活動拠点
青森県八戸市
HP / SNS
MESSAGE
2023年は曲をいっぱい作って、リリースも沢山したいと思います。もっといろんな人に聞いてもらいたいので、音源制作・ライブの質向上、頑張ります!
ハラサンゼン
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