【EMIRI】美しく皮肉なこの世界を、日本語詞×シューゲイザーサウンドで描く新世代バンド

三橋 温子

三橋 温子

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二度と戻れないあの日への憧憬。大切なものを手放してしまった自分への失望。遠い異国の惨状を知りつつなにもできない無力感。抱えきれない感情は、生きていれば自ずと増えていく。それをいなして、音という不思議なものに昇華してくれるのが、音楽であるとわたしは思っている。

EMIRI(エミリ)は2019年結成のオルタナティヴ・ロックバンド。8月31日に8か月ぶりの新曲『Voyager』を配信リリースした。

現メンバーの4人は全員20代前半。おそらく、さまざまな事象や心情を細やかに感じとって生きてきたのだろう。彼らの楽曲からは、等身大でありながら全世代のリスナーが共感し得る人生の機微みたいなものをひしひしと感じる。


優しく、切実に、叶わぬ願いを歌いあげる最新曲
『Voyager』
EMIRI
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元来の音楽性であるシューゲイジングなサウンドをベースに、優しくノスタルジックな世界観に仕上げた新曲『Voyager』。穏やかな三連符のドラム、オルゴールのように流れるギターリフ、浮遊するシンセサイザー。そしてそこに加わるボーカルは、儚げな声色とは裏腹に〈恥はかくまいと/嘘をついた朝の〉というやけに現実味のある詞で歌い始めるものだから、不意にドキッとさせられる。

この曲の真骨頂はラスト1分で発揮される。歪んだギターにつられるように、〈ねぇボイジャー私を連れて/今夜どこかへ飛んで〉と1オクターブ上のキーで張りあげる切実な歌声と、低音で淡々と歌われるコーラス。現実を捨ててどこかへ消えてしまいたい自分と、そんなことをしても無駄だと知っているもうひとりの冷めた自分が、複雑に共存する心のなかを見ているようだ。

『Voyager』リリースにあたり、「元来のオルタナティヴ・ロックにノスタルジーなテイストを織り交ぜた楽曲。過去作よりさらに多くのかたに共感いただける作品になったと思います」とコメントを寄せてくれた。

Z世代が放つ、シューゲイザーを基調としたジャンルレスな音楽

メンバーは、Vo./Gt.でライターのおおなか、Gt./Vo.でトラックメイカーのカイトヤマシタ、Ba.で古着屋店長の佐久間聖之亮、Syn./Cho.で大学生の米林里紗。

全員1999〜2000年生まれ。イギリスでシューゲイザーがムーブメントを巻き起こした1980年代後半〜1990年代初頭にはまだ生まれていない世代である。

My Bloody Valentineの系譜も、日本のOeilのようなエモーショナルな雰囲気も持ちつつ、Vo./Gt.おおなかがリスペクトする踊ってばかりの国やROTH BART BARONのDNAも感じさせる、さまざまなジャンルが絡み合ったEMIRIの楽曲たち。今後いかに独自の音楽性を磨きあげていくのか、彼らの繊細なフィルターを通してこの世界はどう描かれていくのか、注目したい。

『夜光』
EMIRI
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(文・三橋温子)


PROFILE

EMIRI(エミリ)

2019年結成、関西を中心に活動するオルタナティヴ・ロックバンド。シューゲイザー、ポップロック、ギターロックなどさまざまな音楽から影響を受けている。

メンバー

L→R
おおなか(Vocal / Guitar)
佐久間聖之亮(Bass)
カイトヤマシタ(Guitar / Vocal)
米林里紗(Synthesizer / Chorus)

活動開始

2019年

主な活動拠点

兵庫県、大阪府

HP / SNS

Twitter @EMIRI_bandJPN
Instagram @emiri_band
YouTube
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