令和元年もあと少しで終わる。忘年会、大掃除、帰省…と慌ただしい時期だが、音楽ファンに欠かせない年末イベントがもうひとつ。COUNTDOWN JAPAN(カウントダウンジャパン)である。邦楽シーンを賑わせたアーティストたちが4日間にわたり幕張メッセに集う豪華なフェスで、わたしも毎年ここでライブ納めをしてきた。
今年2日目の12月29日は、マキシマムザ亮君の体調不良により出演キャンセルとなってしまったマキシマム ザ ホルモンに代わり、東京スカパラダイスオーケストラの出演が決定。ライブに定評のあるフェス常連バンドを中心に、若手やアイドルも加わった注目のラインナップだ。今回はその中から10組をピックアップし、予習しておくとより楽しめる定番曲やライブの雰囲気をご紹介する。
- ASIAN KUNG-FU GENERATION
- ACIDMAN
- amazarashi
- ジェニーハイ
- SIX LOUNGE
- ストレイテナー
- sumika
- dustbox
- 東京スカパラダイスオーケストラ
- THE BACK HORN
ASIAN KUNG-FU GENERATION(アジアンカンフージェネレーション)
1996年結成の4ピースバンド。通称アジカン。『遥か彼方』(NARUTO -ナルト-)、『リライト』(鋼の錬金術師)、『ソラニン』(ソラニン)、『Dororo』(どろろ)など、アニメや映画の主題歌に多数起用されており、実力派でありながらロック好き以外にも広く知られるバンドだ。11月には、昨年リリースされたアルバム『ホームタウン』ツアーの締めくくりとしてロンドン・パリ公演を成功させた。
- 『クロックワーク』
- 『ボーイズ&ガールズ』
最新アルバム『ホームタウン』の最初と最後を飾る曲。最近のフェスやイベントでも演奏頻度が高いので要チェック。
- 『荒野を歩け』
24thシングル、『ホームタウン』収録曲。森見登美彦原作のアニメ映画『夜は短し歩けよ乙女』の主題歌。
- 『君という花』
イントロの4つ打ちドラムが始まった瞬間、オーディエンスのテンションが跳ね上がる2ndシングル。15年以上前の曲なのにまったく色褪せない。
- 『リライト』
5thシングルであり、もっとも有名な曲のひとつ。コピーコントロールCDへの皮肉を描いた疾走感のあるナンバー。
未来を見据えて今を歌う人、アジカン・後藤正文のこれまでとこれから
ACIDMAN(アシッドマン)
1997年結成の3ピースバンド。Vo./Gt.大木伸夫の死生観が美しく表現された詞と、激しいロックナンバーから聴かせるバラードまで揃う多彩なサウンドが魅力だ。結成20周年の2017年には、同世代バンドを集結させての豪華フェス『SAITAMA ROCK FESTIVAL “SAI”』を開催。最近では、メジャーデビューアルバム『創』のアナログ盤リリース&再現ツアーが話題に。
- 『最後の国(introduction)』
SEで使われる、8thアルバム『ALMA』収録のインスト曲。中盤から曲の刻むリズムに合わせて手拍子をするのが定番。最後の手拍子のあとの一瞬の静寂と、直後に鳴り響く3人の爆音で一気に心を掴まれる。
- 『波、白く』
最近のフェスやイベントでよく演奏される、2ndアルバム『Loop』収録曲。静と動のコントラストがACIDMANらしい、ライブで必ず盛り上がる1曲。
- 『新世界』
未来を力強く見据えたアップテンポの22ndシングル。サビのシンガロングで生まれる一体感は格別。
- 『世界が終わる夜』
25thシングル。生と死、そして輪廻を美しい情景描写にのせて歌い上げるバラード。
- 『ある証明』
8thシングル。分解寸前だったバンドをリセットして「もう一度3人でやっていこう」と思えた、ターニングポイントとなった曲だと大木は語っている(billboard JAPANインタビュー)。序盤の「♪一つの証明」と歌う部分では、3人の絆を証明するようにオーディエンスが人差し指を高く掲げる。
amazarashi(アマザラシ)
2007年結成の、Vo./Gt.秋田ひろむとKey.豊川真奈美を中心としたバンド。顔出しを一切せず、ライブでは紗幕に映像を映し出してその後ろで演奏を行なう。言葉の威力を痛いほど突きつけられる詞と秋田の唯一無二の歌声は、一度生で体感してしまうと忘れることは難しい。ワンマンライブでのオーディエンスは激しいナンバーであっても直立不動だが(圧倒されて動けないとも形容できる)、フェスでは手拍子をしたり腕を振り上げる人もいるので、思い思いの楽しみ方で世界観を堪能してほしい。
- 『季節は次々死んでいく』
1stシングルで、アニメ『東京喰種トーキョーグール√A』のエンディングテーマ。この曲でamazarashiを知ったかたも多いのでは。
- 『命にふさわしい』
- 『空に歌えば』
3rd・4thシングルで、4thフルアルバム『地方都市のメメント・モリ』収録曲。『空に歌えば』はアニメ『僕のヒーローアカデミア』のオープニングテーマとして書き下ろされた。
- 『空っぽの空に潰される』
1stフルアルバム『千年幸福論』収録曲。サカナクション『アルクアラウンド』PVなどを手がけた映像ディレクター・関和亮がPV監督を担当。人間が抱える虚無感をえぐり、真実の幸福を問う歌詞が秀逸。
- 『僕が死のうと思ったのは』
中島美嘉への提供曲のセルフカバー。死を追い求める「僕」の繊細な心情と、最後に少しだけ差し込む光に涙せずにはいられない名曲。
ジェニーハイ
2017年にBSスカパー!のバラエティ番組『BAZOOKA!!!』内で結成された5ピースバンド。Gt./プロデュースに川谷絵音(indigo la End / ゲスの極み乙女。/ ichikoro)を迎え、Dr.小籔千豊、Ba.くっきー!、Vo.中嶋イッキュウ(tricot)、Key.新垣隆というバラエティ豊かなメンバーで構成される。鍵盤が美しく流れるキャッチーな楽曲と、キャラの濃いメンバーたちの真剣かつ情熱的な演奏にぜひ注目したい。
- 『ジェニーハイのテーマ』
アンニュイなミュージックにのせて5人それぞれが自己紹介ラップを披露。手で“g”を形づくるダンスもポイント。
- 『ジェニーハイラプソディー』
2nd配信シングルで、こちらも自己紹介ソング。「ゴーストバスター!」のように「ゴーストライター!」と叫ぶパートがあるので思いきり叫ぼう。
- 『片目で異常に恋してる』
1st配信シングル。おしゃれなのにどこか歌謡テイストなメロディがやみつきに。
- 『シャミナミ』
3rd配信シングル。失恋を切なくも軽快に歌い上げる1曲。
- 『不便な可愛げ feat アイナ・ジ・エンド(BiSH)』
1stフルアルバム『ジェニーハイストーリー』収録曲。アイナのハスキーボイスとイッキュウの澄んだ歌声が心地よい調和を生む。
SIX LOUNGE(シックスラウンジ)
2012年結成の3ピースバンド。高校時代に地元大分県のバンドコンテスト『ロックンロール・ハイスクール』で二連覇を果たし、インディーズでの活動を経て2018年にメジャーデビュー。飾らないストレートなロックサウンドは、なんだかTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTやBLANKEY JET CITYと出会った頃の気持ちを思い出させてくれる。わたしがいまもっとも注目している若手バンドのひとつ。
- 『天使のスーツケース』
- 『DO DO IN THE BOOM BOOM』
古き良きロックンロールを感じさせる爽快なメロディと詞がSIX LOUNGEらしい、2ndシングル収録曲。
- 『くだらない』
2ndミニアルバム『夢うつつ』収録曲。Vo./Gt.ヤマグチユウモリの伸びやかな歌声から始まるミドルテンポのナンバー。
- 『ピアシング』
3rdミニアルバム『ヴィーナス』収録曲。1分弱の短い曲ながらインパクト大のロックナンバー。
- 『メリールー』
フェスではラストを飾ることも多い1stシングル。無垢な中に切なさが滲むラブソング。
公式YouTube
ストレイテナー
1998年結成の4ピースバンド。通称テナー。2018年の結成20周年イヤー前後には、同世代から若手まで名だたるバンドが参加したトリビュートアルバムや、ファン投票により収録曲が決められたベストアルバムのリリースが話題となった。ストレートなロックナンバーから、ムーディなステージライトが似合うダンサブルなナンバー、Vo./Gt.ホリエアツシの柔らかな歌声とピアノが光るバラードなど、曲ごとに違った魅力を感じさせてくれる。
- 『Melodic Storm』
軽快な曲調が耳なじみのいい5thシングル。ラストの「♪Oh Melodic Storm」ではぜひシンガロングを。
- 『From Noon Till Dawn』
テレビドラマ『勇者ヨシヒコと悪霊の鍵』の主題歌にもなった15thシングル。特徴的なイントロと攻撃的なサウンドが高揚感を掻き立てる。原曲にはSax.田中邦和、Tp.タブゾンビ(SOIL & “PIMP” SESSIONS)のホーン隊が参加している。
- 『DAY TO DAY』
ヘヴィなイントロから始まり軽やかなサビへと展開していく20thシングル。
- 『シーグラス』
夏の終わりをエモーショナルに歌い上げる21stシングル。落ちサビではドラム音に合わせて手拍子が起こる。
- 『スパイラル』
2019年リリースの5th配信シングル。作詞作曲を担当するホリエの、なかば夢の中で生まれたという曲をベースに、「ファンのひとりの人生のため」に書き上げられた1曲(billboard JAPANインタビュー)。
sumika(スミカ)
2013年結成の4ピースバンド。テレビアニメ『ヲタクに恋は難しい』、劇場アニメ『君の膵臓をたべたい』、テレビドラマ『おっさんずラブ-in the sky-』などのテーマ曲にもなっており、いまもっとも勢いに乗るバンドのひとつ。ライブは毎回さまざまなゲストメンバーを迎えて行なわれる。自然と手拍子を送りたくなるポップな曲調が魅力で、オーディエンスが合いの手を入れるパートも多い。
- 『Lovers』
結婚式ソングとしても人気の3rdシングル。「ねえ」「お願いこっち向いて」などの合いの手を覚えておくとより楽しめる。
- 『ファンファーレ』
劇場アニメ『君の膵臓をたべたい』のオープニングテーマに起用された7thシングル。
- 『イコール』
テレビアニメ『MIX』のオープニングテーマに起用された8thシングル。
- 『MAGIC』
1stフルアルバム『Familia』収録曲。サビの「ダンスダンスダンスダンス」を歌ったり、クラップをしたりと、オーディエンスの出番も多数。
- 『ふっかつのじゅもん』
2ndミニアルバム『I co Y』収録曲。サビの「ヘイヘイ」を歌う会場の一体感はライブならでは。
dustbox(ダストボックス)
1996年結成の3ピースバンド。英語詞のメロコアサウンドが人気。2003年のメジャーデビューの翌年にインディーズに戻り、地元越谷市のフェス『KOSHI ROCK FESTIVAL』や自主企画ツアー『Searching for Freedom』の主催、メルカリでのCD販売など、精力的な活動で注目を集めている。CDJではダイブが禁止されているためワンマンほどではないが、ステージ前方はたいてい激しく盛り上がる。
- 『Try My Luck』
3rdアルバム『13 Brilliant Leaves』収録曲。サビのハモリが心地よいアッパーチューン。
- 『Jupiter』
5thアルバム『Blooming Harvest』収録曲。間奏のメロディアスなギターソロと感情を揺さぶるCメロがたまらない。
- 『Hurdle Race』
同じく5thアルバム『Blooming Harvest』の1曲目を飾る、疾走感あふれるナンバー。
- 『Riot』
7thアルバム『Care Package』収録曲。イントロの「Go!!!」で会場のボルテージが急上昇する。
- 『Just One Minutes』
インディーズレーベル・STEP UP RECORDSのオムニバスシリーズで、全バンドが1分以内の曲をつくって持ち寄った『…OUT OF THIS WORLD 4』の収録曲。わずか1分に収められた完璧な構成はさすが。
東京スカパラダイスオーケストラ
1985年結成、現在9人組のスカバンド。通称スカパラ。スカの迫力を存分に堪能できるインスト曲をはじめ、Dr.茂木欣一/B.Sax.谷中敦/Per.大森はじめ/Key.沖祐市がボーカルを務める歌モノ、奥田民生/チバユウスケ/Ken Yokoyama/桜井和寿などそうそうたる顔ぶれとのコラボ曲まで、さまざまなカラーの楽曲が揃う。フェスではコラボアーティストがゲストとして登場することもあり、それを予想するのも楽しみのひとつ。
- 『ペドラーズ 2014』
インディーズ時代のミニアルバムに収録されたロシア民謡のカバーを、19thアルバム『SKA ME FOREVER』で新たにアレンジしたインスト曲。聴き覚えのあるメロディがスカになった、自然と体が動き出す1曲。
- 『SKA ME CRAZY』
22ndシングル『美しく燃える森』カップリング。Tp.NARGOの鍵盤ハーモニカから始まる歌モノの代表曲。
- 『DOWN BEAT STOMP』
9thアルバム『Stompin’ On DOWN BEAT ALLEY』収録曲。サビでは腕を左右交互に上下して踊る、ピースフルなナンバー。
- 『銀河と迷路』
23rdシングル。Dr.茂木欣一がボーカルを務め、テレビドラマ『美女か野獣』の主題歌にも起用された。
- 『Paradise Has No Border』
20thアルバム『Paradise Has NO BORDER』収録曲。キリン『氷結』CMではさかなクンがバスサックスで参加し話題に。JAPAN JAM 2019をはじめ、ときおりステージでもコラボを披露する。
ジャンルも世代も国境も越えた、東京スカパラダイスオーケストラの魅力に迫る
THE BACK HORN(ザバックホーン)
1998年結成の4ピースバンド。通称バクホン。「KYO-MEI」をテーマに、聴く人の心を震わせる音楽を届けている。4人全員で曲づくりを行ない、雄々しいロックナンバーから胸を打つバラード、ストリングスや電子音を使った曲まで幅広く発表。アニメ『機動戦士ガンダム00』主題歌の『罠』、宇多田ヒカルとの共作『あなたが待ってる』、作家・住野よるとのコラボプロジェクトから生まれた『ハナレバナレ』などでバンドファン以外からの注目も集める。
- 『コバルトブルー』
特攻隊の潔く散る様を描いた9thシングル。ライブ向けにアレンジされたジャム風のイントロが会場の熱をじわじわと高め、特徴的なギターリフでそのボルテージが爆発する。
- 『シンフォニア』
9thアルバム『リヴスコール』収録曲。アルバム曲でありながら圧倒的な存在感を放つ、キレのあるナンバー。
- 『心臓が止まるまでは』
最新アルバム『カルペ・ディエム』収録曲。生きることへの情熱を奇異な世界観で歌い上げる。リズムに合わせて手拍子をする箇所がいくつかある。
- 『太陽の花』
同じく『カルペ・ディエム』収録曲。美しい情景が浮かび上がる詞とメロディに酔いしれて。
- 『刃』
フェスでは最後に演奏されることが多い、1stベストアルバム収録曲。無骨で勢いのあるサウンドがバクホンらしい。ラストの「♪Oh oh〜」と叫ぶ部分は原曲では1回だが、ライブでは2回繰り返される。
誰よりも音楽で人の心に寄り添う、THE BACK HORN・菅波栄純が描く世界
生きるための音楽を。THE BACK HORN『カルぺ・ディエム〜今を掴め〜』 2019.11.18 渋谷WWW Xライブレポート
ちなみに、ライブとともに楽しみたいのがフェス飯。がっつり飯からデザートまで豊富なラインナップだが、個人的なおすすめは、北海道中標津の大判しいたけを香ばしく焼き上げる『想いの茸』、台湾屋台の味が楽しめる『長城菜館』の台湾まぜそば、神田カレーグランプリで二連覇を果たした『100時間カレー』などなど。お目当てのステージの合間にぜひ味わってみてはいかがだろうか。
(文・三橋温子)