【ライブレポート】里アンナ×佐々木俊之 with Nautilus ~奄美の歌姫とドラム奏者による異色デュオの新作リリースツアーファイナル

五辺 宏明

五辺 宏明

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2022年8月21日、里アンナ×佐々木俊之が3枚目のフルアルバム『Beauty & The Beats』をCDと配信でリリース。

大河ドラマ『西郷どん』のメインテーマやミュージカル『レ・ミゼラブル』などの活躍で知られる里アンナと、Nautilus(ノーチラス)やAfro Begue(アフロベゲ)のドラマーとして活動する佐々木俊之による異色のデュオユニットが発表した最新作は、ジャンルを超えた音楽ファンから注目を集めている。

2023年2月12日には同作のアナログレコードが発売され、3月11日の奄美公演を皮切りに全国7会場でリリースツアーが行われた。

当記事では、佐々木率いるNautilusをゲストに迎えて開催されたツアーファイナルの模様を、バイオグラフィとともにお届けする。

BIOGRAPHY

世界を舞台に活躍する“奄美の歌姫”
【里アンナ】

鹿児島県奄美大島で生まれた里(さと)アンナは、祖父の手ほどきにより3歳から島唄をはじめる。

数多くの島唄大会で賞を獲得したのちに上京。山本寛斎がプロデュースした『愛・地球博』のオープニングイベントに出演した2005年に、7曲入りCD『恋し恋しや』でメジャーデビューを果たす。

2010年に『シルク・ドゥ・ソレイユ』のオーディションに合格。日本人初の公認ヴォーカリストとなる。

2013年にはミュージカル『レ・ミゼラブル』にファンテーヌ役として舞台に立つ(2015年に再演)。

同年9月にはジャズバンドの黒船に、ヴォーカリストとして加入。日本の伝統音楽とジャズを融合させた同バンドで、当時ドラムを叩いていたのは佐々木俊之。

2016年、ニューヨークで初の島唄ソロライブを行う。

2018年のNHK大河ドラマ『西郷どん』でメインテーマを歌い、女優として里千代金(さとちよかね)役を演じる。

2022年9月9日に発売されたNintendo Switch用アクションシューティングゲーム『スプラトゥーン3』では、声優としてフウカ役を担当した。

アメリカ、カナダ、フランス、スペイン、スウェーデン、中国など海外公演も多く、“奄美の歌姫”として世界中の音楽ファンから高い支持を得ている。

『山原』
里アンナ
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『西郷どん オープニング LIVE Ver』
里アンナ
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才気あふれるドラマー率いる21世紀版レアグルーヴ・バンド
【佐々木俊之 / Nautilus】

佐々木俊之がリーダーを務めるNautilusは、現代版レアグルーヴを体現するジャズファンク・バンド。

2014年結成。メンバーは佐々木(ドラム)、Speaker Sgt.の梅沢茂樹(ベース)、TRI4THの竹内大輔(キーボード)。

2015年、Cradle Orchestraの瀬戸智樹をプロデューサーに迎えた1stアルバム『Nautiloid Matter』をリリース。翌年発表された2ndアルバム『deeper and deeper』には、里アンナをフィーチャーしたシンガーズ・アンリミテッドのカバー「Stone Ground Seven」が収録された。

バンド名の由来となったボブ・ジェームス「Nautilus」を筆頭に秀逸なカバーが多く、それらを収録した7インチシングル(レコード)はいずれも人気が高い。

2020年、竹内大輔が脱退。新メンバーとして中林万里子が加入。

国内外のレーベルから数多くの作品をリリースするNautilusは海外からの評価も高く、世界で最も影響力のある DJといわれるジャイルス・ピーターソンにもプレイされている。

2023年1月25日に7枚目のフルアルバム『Revival』をリリース。

なお、セネガル人のオマール・ゲンデファル率いるAfro Begueのドラムも、佐々木が担当。RIZEのKenKenも参加する日本屈指のアフロビート・バンドのドラマーとして佐々木の活躍を知る音楽ファンも多いことだろう。

『Stone Ground Seven』
Nautilus feat. Anna Sato
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『Boula niit tognié』@元住吉Powers2 (2021.12.2)
Afro Begue
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伝統の継承と新たな創造をめざす異色ユニット
【里アンナ×佐々木俊之】

黒船に在籍していた里アンナと佐々木俊之が、奄美島唄と西洋ドラムで新しい音楽を作るために結成したデュオユニット。

初ライブは、2016年にコルシカ島で開催された歌のフェスティバル。翌年、パリで単独公演を行う。

2018年に1stアルバム『Message』をリリース。アルバムタイトルには「口伝えで唄い継がれてきた奄美の島言葉を、メッセージとして世に語り継ぐ」という意味が込められている。

2020年6月、2ndアルバム『Message II – Reincarnation』を発表。同年9月に故RYUHEI THE MAN氏主宰レーベルのAT HOME SOUNDからリリースされたリード曲「渡しゃ」の7インチが、DJやレコードマニアの間で話題を呼んだ。

2022年8月21日に最新作『Beauty & The Beats』を発表。同アルバム収録曲の「千鳥浜(ちじゅりゃはま)」と「うらとみ(八月踊り唄)」のミュージックビデオも公開された。

同年9月には、Nautilusと里アンナ×佐々木俊之の楽曲を5曲ずつ収めたコンピレーション・アルバム『Nautiloid Experience / Introducing』をヨーロッパ限定でリリース。

photo by Miharu Kominato

photo by Miharu Kominato

『千鳥浜』
里アンナ×佐々木俊之
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『渡しゃ』
里アンナ×佐々木俊之
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LIVE REPORT

“Beauty & The Beats” Release Tour 2023 ~FINAL~

桜が散り、若葉が芽吹きはじめた4月半ばの土曜。首都圏はあいにくの雨に見舞われたが、初めて観る2組のライブへの期待から、晴れやかな気分で元住吉へ。名うてのミュージシャンが出演することで知られるPowers2を訪れるのも、この日が初めてだった。

オープン直後に入店。DJブースのターンテーブルを操るBotchy-Botchyが選曲したオリエンタルなサウンドに耳を傾けながら場内を見渡すと、早くもテーブル席が埋まりつつあった。グラスを傾けながら談笑している人々のアットホームな雰囲気と、冷えたビールをすすりながら聴く音楽が心地よく、早くもこの店に好印象を抱いていた。

再構築されたレアグルーヴ・クラシックの数々と、違和感なく並ぶオリジナル曲
【Nautilus】

開場から1時間ほど経ったころ、Nautilusの3人がステージに登場。リーダーの佐々木俊之がくり出すタイトなドラムブレイクに、太いベースと浮遊感のある鍵盤が重なる。この日の1曲目に選ばれたのは、ニューアルバム『Revival』にも収録されたMANZELのレアグルーヴ・クラシック「Space Funk」のカバー。うねる梅沢茂樹のベースが鳴り響く。

曲間を開けずに「Looking Back」。ボストンの名門バークリー音大出身の中林万里子による華麗なソロに目を奪われる。

まるでDJがミックスしたかのように切れ目なく続いた「Another World」を終えると、里アンナを呼び込んで「Stone Ground Seven」。2016年に里を迎えて制作されたシンガーズ・アンリミテッドのカバーが、初めてライブで演奏された。

スタイリスティックス「People Make The World Go Round」のカバーに続き、ゲストシンガーの多和田えみが登場。『Revival』にも収録されたテリー・ウォーカーの人気曲「Caught Up」を熱唱した。

ラストはエウミール・デオダートの名曲「Skyscrapers」。カバーに定評があるNautilusの持ち味を凝縮したような充実のセットリストで、里アンナのファンとおぼしき人々をも魅了していた。

【Setlist】
1. Space Funk
2. Looking Back
3. Another World
4. Stone Ground Seven feat. Anna Sato
5. People Make The World Go Round
6. Caught Up feat. Emi Tawata
7. Skyscrapers

気高く美しい島唄と切れ味鋭いビートで再現された『Beauty & The Beats』
【里アンナ×佐々木俊之】

転換中もDJも務めていたBotchy-Botchyが「Beauty & The Beats」を投入すると、場内が暗転。消滅の危機にある奄美の島言葉を歌い続けることを宣言した里アンナのポエトリーリーディングをフィーチャーしたニューアルバムのタイトル曲に乗って、主役のふたりがステージに現れた。

曲が止み、直後に里がロングトーンを放つ。会場の空気を切り裂くような鋭さに息をのみ、身動きがとれなくなる。奄美の島唄「山原(やんばる)」をアカペラで歌う里から目を離すことができない。曲の途中から佐々木俊之のドラムが加わるが、場内は緊張感が漂い続けていた。神々しく壮大な歌に圧倒され、まるでコンサートホールにいるかのような感覚に陥る。

里が歌い終わると同時に、佐々木が4つ打ちを刻む。やわらかな口調で里が来場者に感謝の意を伝える間もビートはキープされ、ニューアルバムから「うらとみ(八月踊り唄)」と「ちょうきく女」を続けて。『Beauty & The Beats』のアナログ盤を入手してから何度も聴いている楽曲なのに、まったく新しい音楽に出会ったような気がした。

MCを挟んで「ヨイスラ」、そして「稲すり」。佐々木のテクニカルかつパワフルなドラムソロに、客席から歓声が上がる。

国内ツアーの合間に渡米して『全米桜祭り』のオープニングセレモニーに出演した際のエピソードを披露したあと、ニューアルバムのラストを飾る「うんにゃだる〜誇らしゃ」。そしてAT HOME SOUNDから7インチでシングルカットされた「渡しゃ」と「豊年節」。いずれもフロア映えしそうな楽曲で、セットリストの構成にDJ的なセンスを感じる(Nautilusも同様)。

トライバルな人力テクノと化した「うんにゃだる〜誇らしゃ」で使用された島太鼓チヂンとバチは、里が祖父から譲り受けたものだ(三線も祖父から受け継いだもの)。

人気曲3連発に続いた「ぐぃくまぎり」と「千鳥浜(ちじゅりゃはま)」は、Nautilusの梅沢茂樹と中林万里子とのセッション。奄美島唄とジャズファンク、クラブミュージックの要素が融合した稀有なサウンドが響き渡り、会場が熱を帯びる。

本編最後の曲は「ワイド節」。キレのあるドラムと島唄の相性が抜群でラストにふさわしいと思いながらも、演奏を終えたふたりにアンコールを促す拍手を送っていた。もちろん、そのように感じていたのは私だけではなく、客席から手拍子がわき起こる。

アンコールに応じた里と佐々木は、梅沢、中林、多和田えみを呼び込んで、唄・踊り・三線・チヂン・掛け声・ハト(指笛)の六つがそろって成立するという「六調」を演奏。会場にいる誰もが踊って大団円を迎えた。

終演後、物販には長蛇の列が。サブスクで『Beauty & The Beats』を聴いていた人々も、レコードやCDを手元に置いておきたくなったのだろう。

サインや記念撮影に応じる里アンナと佐々木俊之の充実した表情が、ツアーの成功を物語っていた。

【Setlist】
1. 山原
2. うらとみ(八月踊り唄)
3. ちょうきく女
4. ヨイスラ
5. 稲すり
6. うんにゃだる〜誇らしゃ
7. 渡しゃ
8. 豊年節
9. ぐぃくまぎり feat. Nautilus
10. 千鳥浜 feat. Nautilus
11. ワイド節

[encore]
1. 六調 feat. Nautilus, Emi Tawata

里アンナ×佐々木俊之
“Beauty & The Beats” Release Tour 2023 ~FINAL~
2023年4月15日 @元住吉Powers2

里アンナ×佐々木俊之
里アンナ(島唄、三線、竪琴、チヂン)、佐々木俊之(drums)

Nautilus
佐々木俊之(drums)、梅沢茂樹(bass)、中林万里子(keyboards)

guest
多和田えみ(vocal)

DJ
Botchy-Botchy

(取材/文・五辺宏明)
(ライブ撮影・どらごん)


MESSAGE

里アンナ×佐々木俊之 “Beauty & The Beats” Release Tour 2023、先日の元住吉Powers2でのファイナルをもって、全7ヶ所を無事に完走することが出来ました。

各所たくさんの方にお越し頂き、大変感謝しております。

奄美島唄とドラム、という一見想像も付かない音楽ですが、新しい音楽を作りたいという一心で約7年間続けてきた成果が徐々に出てきたのではないかと実感しております。

ファイナルではジャズファンク・バンドNautilus(佐々木俊之のリーダーバンド)とのコラボもあり、さらに奄美島唄の新しい可能性を提示出来たのではないかと思います。

今後も試行錯誤しながら作品を作り続けていきますので、是非チェックしてみて下さい。そしてやはり生で体感して頂きたいので、是非ライブにも足をお運び下さい!

里アンナ
佐々木俊之

INFORMATION

RELEASE
『Beauty & The Beats』
里アンナ×佐々木俊之

[CD]
発売:2022年8月21日
定価:3,000円(税込)
品番:ANNA-004
レーベル:Primitive Voice
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[LP]
発売:2023年2月12日
定価:3,500(税込)
品番:ANNA-005
レーベル:Primitive Voice
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『Revival』
Nautilus

[CD]
発売:2023年1月25日
定価:2,640円(税込)
品番:URDC-053
レーベル:Urban Discos
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[LP]
発売:2023年1月25日
定価:3,520円(税込)
品番:URDC-068
レーベル:Urban Discos
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『Nautiloid Experience / Introducing』
Nautilus / Anna Sato × Toshiyuki Sasaki

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