注目アーティスト・秋山黄色 薄暗い部屋からスポットライトの当たる場所へ

望月 柚花

望月 柚花

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独特のギターフレーズと深く芯のある声、熱のあるライブパフォーマンス、ゆれる金髪。秋山黄色(あきやまきいろ)は1996年生まれの若きアーティストだ。

ライブハウスを主戦場として活動し、コンテストで実力を発揮。そしてドラマ主題歌への抜擢、メジャーデビュー。近年の若手アーティストの中では珍しく古風な正攻法で短期間での飛躍を果たしている。

2018年にYouTubeの広告で初めて『やさぐれカイドー』を聴いた。違うアーティストの動画を見ようとしていたのだが、思わずその手が止まり聴き入ってしまった。(現在この曲のイントロがTBS『水曜日のダウンタウン』の予告TVCMに使用されている/2020年6月更新)

個性的で耳に残る鮮烈なギターリフと明晰な歌声、閉鎖的な環境に置かれた人間だから書ける歌詞。こういう感じの音楽を奏でる人を見たことがないなと思った。誰かをコピーしたわけでもオマージュしたわけでもない、それまでにない音楽だった。

秋山黄色の音楽にはどの土壌の色もうかがえず、「○○っぽい音楽」とたとえることが難しい。だが、それでいて共感できる歌詞を書くのでとっつきにくいという印象を与えない。新鮮さと親しみやすさを兼ね備えた音楽を生み出す彼は、一体どのような人物なのか。


アーティストプロフィール

1996年3月11日、秋山黄色は栃木県に生まれる。ゲーム・アニメ・漫画が好きで、中学生の時にアニメ「けいおん!」に影響され音楽を始める。

専門学校を中退し、2017年より「フリーターアーティスト」として宇都宮・渋谷をベースに音楽活動を開始。2018年、「出れんの!?サマソニ!?2018」の最終選考まで勝ち進み、同年開催のSUMMER SONIC 2018に出演。

翌年2019年にはファーストミニアルバム『Hello my shoes』をリリース。同年9月に初のワンマンライブを開催。12月にはrockin’on presents COUNTDOWN JAPAN 19/20への初出演も果たす。

2020年、テレビドラマ『10の秘密』の主題歌を手がけ、同年3月には初のフルアルバム『From DROPOUT』でメジャーデビューを予定している。

秋山黄色の語る「秋山黄色」

2019年にYouTubeの音楽チャンネル、環七フィーバーズNEOで秋山黄色が初めて自分のことを語った。その様子は「THE STORY:秋山黄色」として、全4回にわたって公開されている。


自己紹介から始まるエピソード1では、秋山黄色がぽつりと「自分はふつうに就職してお金を稼げないと思う」と語っている。その言葉に「ふつう」に対する彼の劣等感のようなものが垣間見えた気がしたが、その言葉の直後に出る「曲だけはちょっと作れる」という一言がより印象的で、秋山黄色自身の音楽に対する誇りや信頼を感じた。


レコーディングにドラムとして参加したZAZEN BOYSの松下敦は「どれだけドラムを叩いても受け止められる声量」と秋山黄色の声量を高く評価する。また「自宅でひとりで作っているわりにはフィジカルなものをデモ音源の時点で感じていた」「そういったものをロックでやっている人は珍しいと思う」とも語った。


動画の中で、2018年のライブ「出れんの!?サマソニ!?」での楽しさを語る場面があった。薄暗い中で撮影されているので表情が見えたわけではないが、やや笑いを含んだ声音で楽しそうにライブについて語る秋山黄色を見て、この人はライブが好きなのだということがはっきりと伝わってきた。


最後のエピソードでは、ファーストミニアルバム『Hello my shoes』の制作の話や、アートワークの話、このアルバムに込める想いが語られている。そして動画は「自分にとっての音楽は日記」という秋山黄色の一言で締め括られる。生活、もしくはより大きくとらえると彼の人生の中には自然と音楽が組み込まれているのだと感じた。

あたたかな場所で

秋山黄色の書く歌詞は多くのリスナーからの共感をよび、彼の音楽は確実にその中の誰かの居場所になっている。鈍い痛みと絶望を味わった人間にしか作ることのできない音楽だからこそ切実で説得力がある。

閉鎖的な環境の中での劣等感や焦燥感。居場所のない息苦しさ。不安。新しい朝がくることを喜べないこと。カーテンをひいた暗い部屋で、たったひとりだったこと。

秋山黄色は自身を「疎外される側の人間」と形容していたが、音楽を作り、歌い、誰かに聴いてもらうことによって、彼自身も日の当たる場所を見つけたのかもしれない。

(文・望月柚花)


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