「楽器のみで世界観が表現できる」
インストバンドの魅力はまさにこれだと私は思っている。ロックやポップスとの大きな違いは歌詞があるかどうかだ。歌詞がないからこそ表現できる世界もあるのだと、インストを聴くと思い知らされる。
今回はそんなインストバンドの中からQOOPIE(クーピー)というバンドを紹介する。
一度聴けば虜になるインストバンド、QOOPIE
インストはインストゥルメンタルという言葉の略称で、楽器のみで演奏される楽曲だ。普段、ロックやポップスを聴き慣れている人にとっては、歌詞がないから面白みにかけると思っている人もいるのではないだろうか。
しかし、インストの魅力は、なんといっても楽器のみでリスナーに世界観を届けるところにあると思う。
インストバンドが表現している世界観の解釈は、リスナーに委ねられる。同じ楽曲でも感じ方は「十人十色」なのである。ここにインストの面白さがある。要するに、あなたが曲を聴いて感じた世界観がそのまま正解となるのである。リスナーの感性が色濃く表れるのがインストなのだ。だから、歌詞がないという理由だけで、敬遠していてはもったいないと私は思う。
QOOPIEは2017年結成のインストバンド。愛知県名古屋市栄の路上を中心にライブ活動を重ねている。2018年にリリースした2nd Demo『Street』は初回生産分が完売し、彼らの奏でる音楽は高く評価を受けた。そして、2019年には日本テレビ系「24時間テレビ」のイベントに出演し、2021年6月に1st Mini Album『SUNS』を満を持してリリースした。
メンバーは、Gt. Kazuki Kato、Gt. Seisuke Watanabe、Ba. Masafumi Tsuji、Dr. Kino Tomidaの4人。今回は彼らが2021年にリリースした『SUNS』から数曲紹介しようと思う。
これまでにインストを耳にしたことがない人は、ぜひ彼らの楽曲を聴いてインストの虜になってほしい。彼らの音楽にはそれだけの魅力がある。
小気味の良いカッティングと、ほんのり甘いメロディーライクなフレーズに心を掴まれる
「Cycle」
QOOPIE
お恥ずかしい話で申し訳ないが、私はこの曲を初めて聴いた時に心を奪われてしまった。Gt.のKazuki Katoが奏でるカッティングがあまりにも心地良く、聴き入ってしまったのだ。それ以来、何度も何度も飽きることなく聴いてしまっている。
ギターの軽快なカッティングから始まるこの曲は、彼らの多彩な表現力の塊だと感じている。歯切れのよいカッティングはもちろん、不意を突くベースのスラップ、甘いメロディーライクなサウンド、楽器隊にも負けない表現力のドラム。メンバーそれぞれの楽器の技術や表現力の高さが詰め込まれている。
また、楽曲の展開にも注目してほしい。私は「次はこのような感じだろう」と展開を予想しながら聴いているのだが、彼らはその予想を良い意味で裏切ってくるのだ。はじめて聴いた人は「そうなるの?」と驚かずにはいられない、曲の展開を見せてくれるであろう。
あなたはどんなSUNSETを思い浮かべるだろうか?
「SUNSET」
QOOPIE
sunsetとはご存知の通り、日没や日の入り、夕焼けなどの意味だが、あなたはどのような場面を想像しただろうか。どのような日没だろう。時間や場所はどうだろう。そんなことを考えながら聴いてほしい曲だ。
私はこの曲を聴いて、海沿いをドライブしながら見る夕日が脳裏に浮かんだ。ちょうど水平線に太陽が半分消えていったくらいの時間帯で、私は水面に反射する太陽光を見ながらドライブしている、そんな光景だ。
「SUNSET」は先に紹介した「Cycle」とは異なり、アップテンポで明るい曲調が特徴だ。だから私はこの曲を、どこかへ足を運びたくなってくるような曲だと思った。何も考えずに車を走らせたい、そんな気分にさせられる。
夏が終わり、涼しくなり始めたこの時期だからこそ、この曲を流しながら、窓を全開にして海沿いをドライブしてみてはいかがだろうか。きっと日々のストレスや鬱憤から開放されるに違いない。
不安や寂しさを感じる夜に聴いてほしい
「Squall」
QOOPIE
『SUNS』の中でも「Squall」は一味違った楽曲なのではないかと思う。他の楽曲とは異なり、CHILLの要素が強く出ているからだ。一人の夜に聴きたい曲を探している人にはぴったりな曲だと思う。一人の夜も、恋人と過ごす夜も、あなたにとっては意味のある夜だ。そんな夜のお供に聴いてほしい。
この楽曲からどこか物憂げさを感じるのは私だけだろうか。眠りたくても眠れず、不安や寂しさなどの感情と向き合わざるを得ない夜のあのひとときを想起してしまうのである。気を紛らわすために開くSNSも閑散としており、外からは誰の声も聞こえてこない。聞こえてくるのは将来への不安を感じる心の声だけ。
苦しさと悲しみと向き合う夜を何度も乗り越えた人間にだけ、成長は感じられるのかもしれない。そんなことを思わされる。
インストが教えてくれる音楽の奥深さ、音楽表現の多様さ
楽器だけで世界を表現するという奥深さ。
それを感じられるものの1つがインストだと思う。これまでインストを聴いてこなかった人も、ぜひ一度インストに触れてみてほしい。きっと新しい世界が広がるに違いない。音楽の奥深さ、そして音楽表現の多様さに気づくだろう。
今回はインストというジャンルからQOOPIEというインディーズバンドを紹介した。不定期に名古屋市の栄でストリートライブを行っているので、機会があればぜひ足を運んでみてほしい。ライブハウスやコンサートホールでは体感できない、ストリートならではの雰囲気を味わえることだろう。
そして、本記事を読んだ読者の皆様にぜひトライしていただきたいことがある。それはインストの楽曲を聴いてどのように感じたかを表現してみてほしいということだ。
表現の方法は問わない。友人に語ってもいいし、Twitterやnoteなどに書き記してもいい。自分がどのように感じたのかをぜひ発信してみてほしいのだ。発信することは、感性の違いに気づくきっかけになるからだ。
当たり前だが、聴いた曲が同じでも、人によって捉え方は異なる。そのような違いを知ると自分の感性に深みが出ると思う。自分の捉え方しか知らないと、独りよがりな発想しかできなくなってしまうからだ。だから、どのように感じたのかを積極的に発信してほしいと思っている。解釈に正解はない。あなたが思ったことが正しいのだから、恐れずに発信してほしい。
(文・竹内将真)
PROFILE
QOOPIE(クーピー)
愛知県名古屋栄にてストリートライブを中心に活動するストリートインストジャムバンド。
メンバー
Kazuki Kato(Guitar)
Seisuke Watanabe(Guitar)
Masafumi Tsuji(Bass)
Kino Tomida(Drums)
活動開始
2017年
主な活動拠点
愛知県名古屋市
HP / SNS
Official Website
Twitter @_QOOPIE_
YouTube
RELEASE