昔でこそロック一辺倒に傾倒していたが、最近は基本的に昔の自分も驚くぐらいに幅広くいろんな音楽を聴く。ロックにポップス、アニメソング、最近はヒップホップにも興味が出てきた。どんなジャンルであれ良い音楽は良いと言える人間になったのだ、これはきっと成長と言っていい。
という訳で今回は驚くぐらいジャンルレスに、ここ最近私がグッときた音楽について3曲ご紹介したいと思う。某芸人のツッコミよろしく、高低差で耳がキーンとなる方もいるかもしれないがどうぞご了承願いたい。
「今日も続いてゆく」
eastern youth
3年ぶりの待望のアルバム『2020』が8月19日に発売されたeastern youth。発売に先駆けて解禁されたのが、オープニングトラック「今日も続いてゆく」のMV。何が最高かと問われればもう出だしのギターの一発目の音から最高である。久々の彼らの新曲、MV公開の一報を受け、いそいそとイヤフォンをスマホに挿して動画を再生。冒頭のギターの音を聴いた瞬間、「きたー!やっぱりこれだー!」と思わず心の中でガッツポーズを掲げてしまったのはきっと私だけではないはずだ。
世界情勢が大きく変わってしまおうとも、eastern youthの歌は何一つ変わらない。TOWER RECORDSの意見広告ポスターにも掲げられている通り、彼らの音楽はどこまでも自分という存在を独りの存在へと返してくれる。音楽は誰かと繋がる手段ではない。彼らにとって、そして私にとっても、音楽の原点とは己自身と対話する手段であるべきなのだ。
まだまだ予断を許さない状況が続く社会で、これまで以上により1人ひとりが自分の行動を、意志を持って選び取ることが大切な世の中となった。あの頃は大変だったね、と数年後に笑える未来を創る。この大変な状況の中で、己と向き合い常に自問自答し続け、己との対話に手を抜かなかった者にしか、きっとそんな未来は訪れないのではないかと思う。
「yearning」
Nanakamba
元パスピエのドラマー、八尾拓也による新バンド・Nanakamba(ナナカンバ)。元々同じドラマーの端くれとして、自分には到底出来そうもない彼の自由奔放なプレイがとても好きだった。脱退の一報を当時とても残念に思ったが、こうして新バンドで活動を始めてくれたのが非常に嬉しく、存在を知ってすぐに聴いた楽曲がこちら。イントロを聴いた瞬間、私は思わずおもちゃの猿の人形よろしく手を叩いてめちゃくちゃに喜んでしまったのだ。
この喜びの理由は主に2つある。1つ目は、彼が以前在籍していたバンドとのギャップの大きさ。もちろんパスピエのようなシンセポップも好きだ。しかし元来バンド生まれバンド育ち、ヘッドホン首からかけてる奴は大体友達、みたいな私にとっては、このシンプルな3ピースのバンドサウンドが恐ろしい程しっくりくる。幅広いテクニックを持つドラマーである彼が、こんなストレートなバンドを始めたことが、単純にとても嬉しかったのだ。
もう1つの理由はその楽曲の曲調。音楽好きが一聴すれば10人中7、8人は、00年代に活躍し一度解散したものの復活を遂げた、とある伝説のバンドの影が脳内にちらつくのではないだろうか。彼らと比べるわけではない。けれどハッピーな音楽が大衆に蔓延するこの令和の時代に、どこか退廃的で翳りを落とすような無機質な心地良さを孕むバンドサウンドが新たに産声を上げたことを、私はとても嬉しく思う。
「Femme Fatale」
ヒプノシスマイク 中王区 言の葉党
正直、上記2つの音楽と並べるのは如何なもんかと思った。が、それでもこの機会に紹介させて欲しい。いくら二次元コンテンツとは言え、腰を抜かすほど音楽として格好いいからだ。アニメ絵だからと言って軽視したり、舐めていればかなり痛い目を見る。
少し前から二次元界隈だけでなく、音楽業界でも注目度はうなぎのぼりのヒプノシスマイク。その秘密は、元々原作となるストーリーがなくキャラクターの楽曲から始まった異色のこの二次元コンテンツが、どこまでも楽曲への“ガチ”な姿勢を崩さない点にある。
R-指定にDiggy-Mo’、nobodyknows+、サイプレス上野、DOTAMA、韻シスト、果てはレジェンドZeebraまで、作詞作曲陣にずらりと並ぶHIPHOP界の錚々たる面々。それだけに飽き足らず、ゴールデンボンバー・鬼龍院翔やノーナ・リーヴス・西寺郷太など、時にはポップス界の名クリエイターまで招集する。そんなヒプマイが今回白羽の矢を立てたのは、ネット発の期待のシンガー・Reol。共同作曲者に以前のパートナーだったGigaまで起用する手の掛けっぷりだ(あくまで特典音源用の楽曲であり、リリース予定も今の所ないというのに!)。
シリーズ初の女性キャラ達による今作は、洗練されたクールで重厚なR&Bサウンドに乗せ、強い女を象徴する攻撃的なリリックを刻む。これはユニークなキャラクターソングではない。生身の人間が魂を乗せて放つ、れっきとしたHIPHOPミュージックだ。
(文・曽我美なつめ)
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