ロックンロール時代の再来に期待! 日本のロックンロール・ガレージロック系若手インディーズバンド

三橋 温子

三橋 温子

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平均年齢21歳のロックンロールバンド、暴動クラブがメジャーデビューした。令和のメジャー音楽シーンに風穴を開けるようなニュースに、巷のロックファンは思わず期待したのでは? 「もしかして、ロックンロールの時代がまた到来する…!?」と。

思春期にロックンロールに魅了されたことのある人はきっと、世代に応じて各々のロックヒーローが存在していて、その系譜を継ぎながらも新鮮な音を鳴らす若きバンドを潜在的に探し求めている。わたしにとってはTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTであり、誰かにとってはRCサクセションやTHE ROOSTERS、THE BAWDIESやa flood of circleであるかもしれない。

最初の一音でからだ中の血が騒ぐような、それでいてまだ聴いたことのないような新しいロックンロール。そんな境地を切り拓いていってくれそうな若手インディーズバンドを、できるだけたくさんピックアップ。


The Muddies
(ザ マディーズ)

2022年リリースのめちゃくちゃクールな代表曲「Parallel World」が最近TikTokでバズっている、ロックンロールバンド・The Muddies。

メンバーは幼馴染であるFUTA(Vo./Gt.)とKOMEI(Ba.)、FUTAの実兄のISSEI(Gt./活動休止中)。何度かのメンバーチェンジがあり、現在はドラマーとキーボーディストを鋭意募集している。

甘めのビジュアルのフロントマン・FUTAからぶっ放される野太い英詞シャウト、リーゼントヘアのKOMEIが繰り出す猛々しいベースライン、無骨なのにキャッチーな楽曲、揃いのストライプスーツ。ライブも“魅せる”ことを念頭に置いており、グルーヴを生むことに長けている。ぜひ一度観てほしい。

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the Tiger
(ザ タイガー)

ストレートなロックンロールサウンドですでにライブシーンを席巻しているthe Tiger。

メンバーが高校時代の2014年に名古屋で結成され、上京後の2021年から、りん(Vo./Gt.)、たいが(Gt.)、ゆうすけ(Ba.)、あつし(Dr.)の現体制で活動。バンドキャリアこそ10年を超えるが、まだ20代だ。そんな彼らから放たれるオーセンティックなロックやブルージーなロックに、世代を問わず多くのロックファンが痺れている。

9月に草加市で開催された無料音楽フェス『草加バーボンストリート2025』での路上ライブの様子がTikTokに上がっているが、りんのパワフルなボーカルとメンバー間のグルーヴは鳥肌モノ。

YAPOOL
(ヤプール)

2021年結成、2025年2月に1stアルバム『Nouvelle Vague』をリリースしたYAPOOL。20代前半の4人、石川蓮(Vo.)、水野公翔(Gt.)、久留島風太(B.)、オオサカユウヤ(Dr.)からなる。

以前まではジャンルを跨いだ楽曲作りもしていた印象だが、1stアルバムでは直球のロックンロールチューンをパッケージング。リード曲「ヌーヴェル・ヴァーグ」はサビの歌詞がすべて〈Yeah, Yeah, Yeah, Yeah〉で、THE BLUE HEARTSの〈リンダ リンダ〉や〈トゥー・トゥー・トゥー…〉、ミッシェルの〈バンバンバン バババンバン〉に匹敵する大胆さとイヤーワーム感を携えている。

全員が大ロックスター然としたライブパフォーマンスも魅力。これからの躍進に期待。

THE RAPTOLS
(ザ ラプトルズ)

“激情型ロックンロールバンド”を自ら謳う2023年結成のTHE RAPTOLS。2023年に解散したSNEAKIN’NUTSの竹村駿(Vo./Gt.)を中心に、KOTARO(Gt.)、ヤマモトコウキ(Ba.)、サポートドラマーで活動する。

2025年8月に配信開始したライブ定番曲「CIRCUS」は、ハードロックやパンク、メタルなどさまざまな音楽ルーツを感じさせるド派手なサウンドに、チバユウスケを思わずにはいられない竹村のボーカルが乗る。イントロから存在感を放つギターリフと、間奏のメロディックな速弾きギターはとくに必聴。

「プラットホーム・オーバード」「Dear old friend」など聴かせる系のロック曲もおすすめ。

Betty Duckling’s
(ベティー ダックリングス)

コロナ禍真っ只中の2020年結成、コウヅハルト(Vo./Gt.)、ニップ(Ba.)、山中大樹(Dr.)からなる群馬発“スリーピース・スモーキン・ロックンロールバンド”のBetty Duckling’s。高崎のライブハウス『the Groove TAKASAKI』の店長・澤村達祥氏から教えていただき、瞬殺された。

MVはないようなので、1stアルバム『脱獄』に収録されている「ダックスファイトバック」のライブ映像を。楽曲はもちろん、メンバーの出で立ちにもステージングにも“硬派であること”へのこだわりが感じられる。20代でこの渋み、なかなか出せないのでは。

Instagramに一部アップされていた、踊らずにはいられない新曲「バニーボイラー」もカッコいい。最近は群馬でのライブ活動が中心のようだが、東京のサーキットなどでもぜひ観てみたい。

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(The)SEGARE KIDS
(セガレキッズ)

「チワワを蹴る女」「エロ本買ってくおっさんL.Z」「ヤバそう」などぶっ飛んだタイトルが目を引くが、サウンドもぶっ飛びクレイジーな(The)SEGARE KIDS。

2021年結成、R&G(ロックアンド概念)を提唱する東京発バンド。二宮ダイスケ(Vo./Gt.)、井上大輔(Gt.)、山本マキ(Ba.)、絢太(SupDr.)で活動する。

まず音源を聴いてみてほしいが、一瞬耳を疑うほどのノイジーな轟音。こんなミックスは近年なかなか聴く機会がない。歌詞も耳を疑うフレーズが多出するが、“必要以上なハイテンションと必要以上なスライドギター”と自称しているように、これでもか!と畳みかけてくる演奏テクニックには否応なしに惹きつけられてしまう。

蟹光船
(カニコウセン)

本記事唯一の漢字バンド、蟹光船。2023年にコウイチロウ(Vo./Gt.)、アキホ(Gt.)、カマノ(Ba.)の3人によって神戸で結成された。ユニークなバンド名は、結成時にコウイチロウがちょうど読んでいた小林多喜二の『蟹工船』が由来のひとつだという。渋い。

コウイチロウの別バンド・THE MAD GENTLES(活動休止中)は青春パンクバンドだったが、蟹光船では楽曲も演奏も歌もテイストが一新。パンク色はありながらも、ロックやブルースやフォークなどさまざまな音楽性が絡み合う。

2025年8月リリースの1stデジタルEP『Midnight Penomenon』に収録されている「ムーンライトセレナーデ」はTHE MAD GENTLES時代の楽曲だが、ロックンロール色の強い蟹光船バージョンにアレンジされている。とくに、イントロからまるで間奏のように惜しみなく盛り込まれたアキホのギタープレイには、ロック魂を感じずにいられない。

Killer Beach
(キラービーチ)

ミッシェル好きが一度耳にしたら二度と忘れないであろう、ミッシェルの楽曲タイトルをバンド名に冠したKiller Beach。ガレージやUKロックにルーツをもち、詩的かつ思索的な詞を英語で歌う。

結成は2021年。メンバーチェンジを経て、現在はNaoki Yamashita(Vo.)、Toshinobu Suzuki(Gt.)、Ryota Nomura(Ba.)、Ryusei Enei(Dr.)の4人体制で仙台を拠点に活動している。定禅寺ストリートジャズフェスティバル2025では、U25のアーティストが出演するステージで大トリを務めた。

2025年9月リリースの「Arizona」は、イントロから静かに高揚していくUKテイスト満載の1曲。演奏しながら商店街を闊歩するMVとのギャップもユニーク。途中で曲調がサイケデリックなムードに変わるところでは、時空が歪んで異世界に迷い込んだ気分になる。

Us
(アス / from フィンランド)

最後に番外編として、日本発ではないしインディーズでもないが、Dr. Feelgoodを彷彿とさせるようなカッコいい若手ガレージロックバンドをピックアップ。

フィンランド発のUsは、前身バンドを経て2021年に結成された平均年齢20代の5ピースバンド。ロックダウン後にイギリスへ渡り、2023年に出演したGlastonbury Festivalで脚光を浴びる。2024・2025年にはFUJI ROCK FESTIVALにも出演して話題を呼んだ。2024年メジャーデビュー。

2025年の来日公演(Shangri-La / SHIBUYA CLUB QUATTRO / 新代田Fever)の開場SEでミッシェルの「スモーキン・ビリー」が流れたという話を耳にし、ミッシェルとの対バンという夢のようなステージを妄想してしまった。ちなみに来日公演のサポートアクトは天国注射とHOME。絶対カッコいいやつじゃん。観たかった。

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