シューゲイザー/ドリームポップの系譜を辿るバンド5選! 国内ロックシーンに名を刻む気鋭の実力派

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いま、国内のシューゲイザー/ドリームポップが熱い。

Official髭男dismやKing Gnuなど、ロックバンドの概念すらも刷新する勢いのビッグネームが前線に立つ、近年のバンドシーン。そんな中、シューゲイザー/ドリームポップの遺伝子を継ぐ気鋭バンドが、とりわけ特異な存在感を放っている。

シューゲイザーはMy Bloody Valentine(通称:マイブラ)を代表格とし、90年代初頭にUKで巻き起こった一大ムーヴメント。80年代生まれのドリームポップから派生した音楽ジャンルの1つ、といった捉え方をされることもある。フィードバック・ノイズを駆使した轟音ギター、微かに聞こえるウィスパー・ヴォイスこそがシューゲイザー最大の特徴だ。絶え間なく押し寄せる音の洪水に溺れてしまうかのような、稀代な聴覚刺激を引き起こす。

新世代の国内シューゲイザーシーンに位置付くバンドの中でもとりわけ高い認知度を誇るのが、3ピースバンドの羊文学(ひつじぶんがく)。オルタナティヴロックとシューゲイザーの潮流を感じさせる、メランコリックかつソリッドなギターサウンド、塩塚モエカ(Vo./Gt.)の唯一無二のヴォーカルを武器に大躍進の一途を辿っている。

というわけで羊文学を一例に挙げてみたが、本稿ではシューゲイザー/ドリームポップの系譜を辿る必聴バンドを、5組ピックアップして紹介したい。


鮮やかなポップセンスと轟音ギターの融合

クレナズム

2018年に福岡で結成されたニュー・カマーバンド、クレナズム。メンバーは萌映(Vo./Gt.)、けんじろ(Gt.)、まこ(Ba.)、しゅうた(Dr.)の4名。J-POP特有の可憐なポップネスを鮮やかに描きながらも歪んだ轟音ギターを大胆に掲げる、まさにJ-POPとシューゲイザーの邂逅とも呼べるサウンドが魅力。

男性ラッパーのクボタカイとのコラボ楽曲「解けない駆け引き」は、サブスクリプションで200万再生を記録している。2020年8月に配信リリースした「ひとり残らず睨みつけて」は、フジテレビ系音楽番組「Love music」同年9月度のOPテーマとして使用され、瞬く間にクレナズムを代表する1曲となった。

『花弁』(はなびら)
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再生コンマ0秒に鳴る強烈な4発のキックが、My Bloody Valentineが誇る名盤『loveless』の収録曲「only my shadow」を彷彿とさせる。冒頭から轟音のフィードバック・ノイズが幾重にも連なりシューゲイザーの記名性を提示しつつも、大枠のメロディーはJ-POP要素に振り切っていて耳馴染みが良い、といった点がクレナズムらしさ。

リバーブの効いた轟音ギターとその裏で豊かに響くハミング風のコーラスの重なりが、ドリーミーで物憂げなサウンドスケープを描いている。「ひとり残らず睨みつけて」と肩を並べるほどの認知度を誇る、クレナズムの代名詞と呼ぶに相応しい1曲。

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轟音とともに揺らめくウィスパー・ヴォイス

揺らぎ

揺らぎは、2015年に滋賀で結成された3ピースロックバンド。“ベッドサイドミュージック”をバンドのコンセプトに掲げ活動している。シューゲイザーやドリームポップ、ノイズミュージックから影響を受けたサウンドに融け合う、みらこ(Vo./Gt.)の研ぎ澄まされたウィスパー・ヴォイスが魅力。とはいえ単なるシューゲイザーの模倣的な曲づくりは避け、シューゲイザーの完成された様式美を越境しようと多数の音楽ジャンルを横断する好奇心こそが、彼らのアイデンティティだ。

そんな揺らぎは、今年1月に1stフルアルバム『For you,Adroit it but soft』のリミックスver.を配信リリース。同アルバムのマスタリングはASIAN KUNG-FU GENERATIONのゴッチこと後藤正文が担当するなど、さまざまな視点から楽しめる1枚に仕上がっている。

『Horizon』
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「Horizon」は、2018年8月にインディーズレーベルFLAKE SOUNDSよりリリースした、初の全国流通EP『Still Dreaming, Still Deafending』の収録曲。1分以上続く壮大なイントロから曲はスタートし、イントロの末端から切れ目なくみらこのウィスパー・ヴォイスが静かに加わる。

地平線から朝の陽光が顔を覗かせる時、その一瞬の光景は両瞼の裏に深く刻まれ、一生忘れられない記憶として残り続ける。そうした体験には大自然への感謝、あるいは祈りに似た感情もろとも呼び起こすほどの力がある。本楽曲で提示されたドラマティックで美麗なサウンドは、雄大な自然が持つ神秘性そのものを描き出しているかのように思えてならない。

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華やかな音像を象る夢心地なサウンド

For Tracy Hyde

2012年秋に、夏botのソロプロジェクトとして活動を開始した5人組ロックバンドFor Tracy Hyde(フォー・トレイシー・ハイド)。シンセポップ的な耳馴染みの良い音像、UKロック直流の美しく流麗なメロディーが魅力的。ドリームポップ由来の夢心地なサウンドは、日々の鬱屈すらも容易く消し去ってしまう。2014年から2015年までの1年間は、現在は人気シンガーソングライターとして活躍するラブリーサマーちゃんが在籍。それ故に、バンド界隈の音楽に精通していなくとも、彼らの存在を知っている感度の高いリスナーはきっと多いはずだ。

現在ヴォーカルを務めるのは、2015年にラブリーサマーちゃんが脱退した後に就任したeureka。少女のようなあどけなさ、透明感を兼ね備えた歌声は、For Tracy Hydeの華やかなバンド像を物語っている。

『アフターダーク』

「アフターダーク」は、シティポップ的なグルーヴ、メロディアスなベースラインが象徴的な楽曲。2017年リリースの都会をテーマにした2ndアルバム『he(r)art』の収録曲である。空間系エフェクターを駆使したドリームポップ要素を内包するサウンドに、eurekaの少女のようなヴォーカルが絡み、唯一無二のグルーヴを生み出している。

《ようよう深くなりゆく night time/街を彩り弾ける high time》といった都会的な歌詞が印象的なラップパートを挟むなど、曲全体を通して都会的に洗練されたグルーヴが新鮮。サウンドがゆっくりとうねりながら耳に絡み付いてくる感じ、何度再生しても飽きない。

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シューゲイザー×オルタナの新たな様式美

Hammer Head Shark

Hammer Head Shark(ハンマー・ヘッド・シャーク)は、2018年に千葉市の稲毛で結成された3ピースロックバンド。彼らの奏でるサウンドは、無期限活動休止中のきのこ帝国や2000’sのオルタナに影響を受けている。現在はギタリスト不在の体制で活動しており、生ライブで轟音ギターを大胆に効かせるスタイルは封印中。

バンドの作詞作曲を担当するのは、女性ヴォーカリストのながいひゆ(Vo.)。彼女の物憂げかつ凛とした歌声は、人の孤独や弱さに寄り添うような包容力を兼ね備えている。シンガーソングライターの曲やフォークロックを好む彼女は、弾き語りライブイベントへ定期的に出演。バンドのみならず、ソロ活動の方にもぜひ注目してみてほしい。

『りんごの駅』

ギターのストロークとながいの歌声のみで始まる「りんごの駅」。彼女の歌声は気だるさを感じさせつつも伸びやかで、凛としている。そうした唯一無二の歌声は、本楽曲において象徴的な美しいメロディーとの相性が良い。《うるせぇ/うるせぇな》と毒を吐く歌詞も、彼女の歌声にかかれば美しい言葉であるかのように聴こえてしまう。どことなく感じる浮遊感の主たる根源は空間系エフェクターを駆使したサウンドメイクであるが、ながいの歌声による影響も十分にあるだろう。

凛としたヴォーカルが醸し出す心地よさ、ヒリヒリと染み渡る歪んだ轟音ギターの瞬発力、根底にあるメロディアスなオルタナ・サウンド。これら3要素がちょうど良いバランスで共存し、Hammer Head Shark特有のシューゲイザー・サウンドを構築している。

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ながいひゆ ライブレポート

歪んだ轟音の果てに終着する祈り

polly

polly(ポーリー)は、2012年に栃木県宇都宮市で結成された4ピースロックバンド。シューゲイザー/ドリームポップのみならずポストロック、ゴスペルなどさまざまな音楽ジャンルを吸収しながら、独自のサウンドを練り上げている。J-POP由来のメロディーを軸としており、大胆にリバーブやディレイを効かせたサウンドが構築する音世界は、ひらひらと揺らめくようで幻想的。イメージカラーを与えるならば、“真っ白”というチョイスが最適だと思う。

2020年9月には自主レーベル14HOUSE.を立ち上げ、自らプロモーション活動やCD制作を行っている。今年2月には、通算3枚目となるアルバム『Pray Pray Pray』をリリース。アルバムには、昨年1月にデジタルリリースした「Laugher」のコラボ版「Laugher (feat.志水美日)」が1曲目に収録されている。

Laugher
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まず一聴で、凄まじい音の塊が押し寄せるイントロに耳が驚くことだろう。数発のキックを合図に、耳を劈くばかりの轟音ギターが暴れ回る。その衝撃的なサウンドはまるで、大地を一瞬で更地に変えてしまうほどの大洪水。間奏に入ると、より一層その水量は増し、容赦なく耳に雪崩れ込んでくる。ギターサウンドとウィスパー・ヴォイスが絡み壮大なサウンドスケープを描く、pollyの真骨頂とも呼べる楽曲が「Laugher」だ。

あまりにもダイナミックな音像が表すのは、曲名が意味する“笑い(=Laugher)”、はたまた笑いから派生する“歓喜”であろうか。《最低な日々の続きで/心から笑っていられるように》という歌詞には、全人類共通の祈りのような何かが込められているようにも思える。

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(文・潮見そら)