【ライブレポート】ポンツクピーヤとOKOJOの新たな友情ツーマン!「俺の中の戦争ツアー」ツアーファイナルレポート

遊津場

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11月10日(日)、下北沢DaisyBarにて、ポンツクピーヤの初の東名阪ツアー「俺の中の戦争ツアー」のファイナル公演が開催された。

6月にはワンマンライブも成功させ、大型サーキットイベントにも多数出演のポンツクピーヤ。今回メンバーが大好きだという先輩・OKOJOを迎えたツアーファイナルも見事にSOLD OUT。関西の2組が下北沢で迎えたツアーファイナルの様子をレポートする。


OKOJO

ゆっくりしっかりポンツクファンにも届いた、OKOJOというバンドの魅力

SEに連れられクラップするフロアの中、登場したOKOJO(オコジョ)。まつした(Vo./Ba.)はOKOJOのタオルをフロアに見えるようにマイクスタンドにゆっくりかけて、「大阪から来ました。OKOJOです。よろしくお願いします」と挨拶。失恋バラード『ええんやけど』からスタートした。

その曲の持つ切なさを引き立てる青の照明は、サビになると徐々に胸を熱くするかのように暖色に変わる。そのまま温度が上がっていくかと思いきや、えぬ(Support Gt.)のギターソロにはさらに深い悲しみへ誘う沈没感があった。そこから気持ちを切り替えるようにラスサビでは再び暖色系の照明に変わり、優しい空気が広がる。

フロアに満ちる余韻の中、ヤマト(Dr./Cho.)の明るいテンションのドラムが鳴り始める。まつしたは「せっかくお集まりいただいたので、こんな下北沢のライブハウスは盛り上がってなんぼじゃないでしょうか!」「皆さんのお声を借りてもいいですか?」と聞く。少しずつその曲のリズムの正体に気付いたフロアから〈イーアルサンスー〉の声が上がり、『サイチェン・マイフォーチュン』へ。明るい曲調にサビでは多くの手が上がり、えぬもアグレッシブなギターで盛り上げた。ヤマトが拳を上げて合図を送ると、フロアが一斉に呼応して熱が急上昇するシーンも。

その後、さらにもう一押しと言わんばかりにヤマトがドラムを強く鳴らし、疾走感のあるロックチューン『なりゆきまかせ』へ。力強いベースラインと、頭を振りながら演奏するえぬの躍動感。それを見て起こるクラップの輪は、OKOJOリスナーからポンツクピーヤのリスナーへと着実に広がっていく。その反応に「ありがとう!」と伝えて、そのまま演奏を止めずに4曲目『猫舌』。優しい歌詞に柔らかいサウンド、ピンクの照明も相まって、フロアは肩の力を抜いて聴いていた。

MCではポンツクピーヤへの感謝を繰り返し、「ポンツクピーヤ、めっちゃ良い子ら」と媚を売るノリを始める3人。ただ、それは単なる軽口ではないようだ。

昨年夏に共演したサーキットライブでポンツクピーヤのステージを見た時に、まつしたは本心から「めっちゃ良いバンド」と思い、2月には神戸でもツーマンライブを開催したことを話す。ヤマト曰く、まつしたが他のバンドを褒めることは珍しいらしく、最近褒めたのは「ポンツクとミスチル。あと最近若手で頑張ってるMrs.GREEN APPLE」の3組だけらしい。そんなまつしたは、今日ここに来る途中でサービスエリアに財布を放置。財布は運よく無事だったが、「ポンツクのせい」とチクリと刺すことも忘れなかった。

ポンツクファンとの距離も縮めたMC明け、後半戦の1曲目は『もううんざりだ!』。彼らのキャラクターが伝わったのもあってか、クラップの位置はより高くなっていたように思う。後方のお客さんの表情も一段と柔らかくなり、リズムを取りながら聴いていた。

そこから『最低のラブソング』へ。さすがの知名度を感じるフロアの反応に加え、飛び跳ねて演奏するまつした、味わい深いギターを弾くえぬ、パワフルなリズムを刻むヤマト。全員の体と心が最高潮に弾み出す。

最後のMCで改めて感謝を述べたまつしたは、こんな思いを語った。

「ミスチルやミセス、もちろんポンツクピーヤもそう思ってるんですが、そんな尊敬する方々が100点に近いところにいるとしたら、僕は、OKOJOは20点くらいだと思う。比べるとどうしてもそう思ってしまうんですけど、でも比べなければ、自分の中の100点を出せれば、それは100点だと思うんです。
最近はルッキズムみたいな言葉もあって、見た目で判断されたり、どの分野でも比較されやすい世の中だと思うんですけど、若い子には自分の中の100点を目指してほしいと思います。自分らも自分らの一番良いところを出せればいいなと思ってOKOJOをやってます。そんなことを思いながら書いた曲を最後に歌って帰ります。今日は本当にありがとうございました」

そして最後に披露されたのは『一生のお願い』。静かに鳴らされる演奏と共に、〈平凡でいい 特別も何も要らないよ〉というサビが先ほどのMCと合わさって、心に染みる。個々の胸の中にある“大切”をポッと温めて、ライブは終了した。

曲にもMCにもゆるっとしたユーモアを感じるバンドだが、それと同時に、大切なことを余すことなく伝えてくれるバンドだと再認識したステージだった。先日、2024年内での活動休止を発表したが、いつかライブハウスに戻ってくる日をゆっくりと待ちたい。

【Setlist】
1. ええんやけど
2. サイチェン・マイフォーチュン
3. なりゆきまかせ
4. 猫舌
5. もううんざりだ!
6. 最低なラブソング
7. 一生のお願い

LIVE
OKOJOワンマンツアー2024
「どのツラさげとんねん」

12月6日(金) 下北沢MOSAiC
12月13日(金) 名古屋RAD SEVEN
12月24日(火) 阿倍野ロックタウン

☞ 詳細はOKOJO公式サイト


ポンツクピーヤ

結局生き続けていく僕らのテーマソングたち

お馴染み、味噌汁’s『にっぽんぽん』のSEで1人1人登場。そのSEが鳴り止むと、大石哲平(Vo./Gt.)が大きな声を上げ、『喫茶店に蔓延る』を始める。高速ロックチューン×初っ端から感情剥き出しで歌う大石に、フロアも勢いよく拳を上げて会場を熱気に包む。

こんなどうしようもない世界にいる僕らに対し〈生きていかなくちゃ〉と叫び終えると、そのまま『こんにちはスーパーマン』へ。“正義”について歌われたこの曲だが、前曲からの流れで聴くと、「この世界やべぇぞ」というリアルをこれでもかと突きつけてくる。

吉元裕貴(Ba./Cho.)のベースが鳴り響く中、大石は「ポンツクピーヤです。よろしくお願いします」と挨拶。徐々に中江亮太(Dr./Cho.)のドラムの音、大石のゆったりとしたギターの音色と重なり合い、一度激しいノイジーな音を立ててから『こんばんは暗闇』を始める。軽快なリズムの中に刺激の強い歌詞が入る、これぞ“ポンツク節”だが、今日の3人、特に大石は本当に曲の中にのめり込んでいて、曲の持つ個性を強めていた。

畳み掛けるように『FAMILY』へ。最後に優しい家族愛を感じる曲だが、この曲も引き続きアップテンポなナンバー。スタートからアップテンポ4連発。ツアーファイナルへの強い気合を感じずにはいられない。

リズム隊の2人が祭囃子のような演奏を奏でる中、大石は「多くの人に集まってもらって、めちゃくちゃ楽しいです!」と感謝。OKOJOのライブに対しては「前に見たライブが楽しかったら、僕らも楽しくできるんですよ。だから今日は必ず楽しい日になります。最後までよろしくお願いします!」と話して、『悪いようにはせえへんから』に繋げる。先ほどから一転、夕暮れの地方の商店街を歩いているような雰囲気に、フロアもリラックスした様子で首を左右に振ってリズムを取る。続く『僕らの世界は回り続けて』では、吉元のベースの音が、歌詞に出てくるコンビニ袋や世界が“ぐるぐる回転してる感”を非常に醸し出しており、情景がパッと浮かぶようだった。

そんなミディアムナンバー2曲の後、大石が「このツアー、普段やってない曲を2曲くらい入れてます。今からその普段やってない2曲をやります」と話し、『忘れんぼ』と『朝が苦手なだけなのに』のバラード2曲を披露。『忘れんぼ』では、今までの曲とはまた違うキラキラとした無垢な気持ちが爆発。『朝が苦手なだけなのに』では、翌日の月曜日から仕事や学校が始まるという人に間違いなく深く刺さりながらも、併せ持つ温かみは名作童謡に匹敵する。静かにじっくりと共感を生んだ時間となった。

「OKOJOとは、さっきも言っていた昨年の夏のサーキットライブで一緒になって、最初は普通に『OKOJOおるやん』と思っていた。そしたら向こうから話しかけてくれて、しかも褒めてくれた。それ以降、特に自分から話しかけられない性格の吉元と亮太はOKOJOのことが大好きになってました(笑)。
その後に神戸でライブをやったりもしたんですけど、僕らはよく『友達のバンドマンいますか?』って聞かれるんですね。その時、吉元は『OKOJOって友達って言っていいのかな…? 結構喋ったし…』と迷ってたんですね。でも先輩だし、でも今日ツーマンもできたし…友達と言ってもいいでしょうか?」

大石がOKOJOにそう訊ねると、バックステージからすぐさま「友達やろ!」とまつしたの声! かなり綻んだ笑顔の3人に向けて、フロアから温かい拍手が起こった。

そして「そんな友達の皆さんに」と始めたのは『19歳』。先ほどの嬉しさをエネルギーに変えた演奏でさらに盛り上がる。歌詞もオリジナルのままのはずなのだが、〈こんなやつだって生きていける〉が「こんなやつだってOKOJOと友達になれる!」と聴こえるほどだった。

続く『愛してるって言って』を情感たっぷりに高らかに演奏した後、最後の曲の前に大石は今回のアルバムへの思いを話し始める。

「今回のツアータイトルが『俺の中の戦争ツアー』って言うんですけど、『俺の中の戦争なんて誰も興味ない』というアルバムを出してのツアーでした。
人生いろんなことが起こるじゃないですか。そして楽しいことよりも、悲しいことのほうが大きく残るじゃないですか。例えばエゴサしてても、1件心ないコメントがあったら、それに心が動かされてしまうんですよ。それが自分的には悔しい。嬉しい言葉の方をパワーにしなければならないのに、クソみたいな言葉の方に心を動かされてることが。

でもそういう悲しいことばかり目立つ中で生きて、最後に『楽しかったね』で終わるか『悲しかったね』で終わるか分からないんですけど、結局生き続けるんですよ。
悲しい中で生き続けて、『俺、今日も生き延びたぜ』と友達と冗談半分で言えたらいいなと思って、この曲を書きました。今日は本当にありがとうございました。ポンツクピーヤでした」

そんなラストナンバーは、アルバムでも最後に収録されている『リビング・スーサイダル』。〈MY FAMILY MY FRIENDS 俺今日も生き延びたよ〉と静かに歌い出して会場を引き込み、中江の「ワン、ツー!」から、ラララの大合唱。より説得力を持って繰り出されるアッパーチューンにフロアも力強く拳を振り上げる。また一緒に笑うための約束のように。アウトロまで丁寧に奏でて、ライブは終了した。

すぐさま起こったアンコール。大石は「今日は東京でやったライブの中で一番楽しかった」と告げ、11月20日にリリースされた新曲『ロンリー』を「完成された状態で初めて届けます」と添えて披露した。ユニークかつ骨太なビートとポンツクらしい不器用さが愛おしい歌詞。全員で歌えるパートもあって、楽しい雰囲気のまま、アンコールは終了した。

6月のワンマンライブのレポートも書かせてもらったが、その時よりも彼らはさらに進化している。喜怒哀楽がしっかり伝わってくるようになったことでより共感性が上がり、“みんなのうた”を歌えているように思えた。

もし今、君が心にモヤモヤを抱えているなら。「ポンツクピーヤは東京に限らずいろんなところでライブしたいし、ここからめっちゃ頑張っていくんで、皆さんついてきてくれたらなと思います!」。最後にそう力強く宣言した彼らに会いに、ライブハウスに来てほしい。簡単に正義を決めつけないし、朝を迎える怖さを知りながら生きているポンツクピーヤが、きっと最適解をくれます。

【Setlist】
1. 喫茶店に蔓延る
2. こんにちはスーパーマン
3. こんばんは暗闇
4. FAMILY
5. 悪いようにはせえへんから
6. 僕らの世界は回り続けて
7. 忘れんぼ
8. 朝が苦手なだけなのに
9. 19歳
10. 愛してるって言って
11. リビング・スーサイダル
En. ロンリー

RELEASE
2024.11.20 Release
DIGITAL SINGLE『ロンリー』

配信・ダウンロード

僕たちみたいな自意識過剰な生き物は、きっと一生孤独なまま、大した功績も上げられず、ただ世間に愚痴を吐きながら枯れていく!
ポンツクピーヤ史上、最もポップでネガティブなナンバー! 必聴!
(大石)
ライブでやってる曲を音源化しました!
この曲を歌うときの哲平はいつも怒ってます。
いっぱい聴いてね。
(吉元)
冒頭、野球部に対しての感情が謳われていますが、僕は小中学校野球部でした。
試合では一回も勝ったことなかったです。
サビはみんなで一緒に歌おう!
(中江)



(取材/文・遊津場)
(撮影・郡元菜摘