BRAHMANとTHA BLUE HERBのILL-BOSSTINOによる共演作『CLUSTER BLASTER / BACK TO LIFE』が9月30日にリリースされる。新型コロナウイルスの世界的な蔓延により、先行きの見えない不安な日々が続く中、彼等の新作が発表される意義は大きい。
2020年下半期の最重要作と言っても過言ではない注目の1枚が発売される前に、筆者がBRAHMANとTHA BLUE HERBを知るきっかけとなったエピソードと、3年前の初共演曲について綴らせていただこうと思う。
「The SAME」
BRAHMAN
ヴォーカリストのTOSHI-LOWと出会ったのは1996年。都内のスポーツセンターで開催されていた格闘技の練習会に、私が通い始めた数週後から参加するようになった若者がTOSHI-LOWだった。5曲入りの1stミニアルバム『grope our way』のCDがリリースされた直後だった気がする。
翌年（1997年）2月。WRENCHのワンマンライブを観に新宿ロフトへ。会場の前でTOSHI-LOWに遭遇。オープニングアクトとして急遽出演することになったという。
それまで、どこかで聴いたことがあるような似たり寄ったりの音を鳴らす若い世代のバンドに魅力を感じたことがなかった為、軽い気持ちで観たBRAHMANのライブは、予想に反するものだった。粗削りではあるものの、既存のカテゴリーに当てはまらない新しさを感じ、その日以降、彼等のライブに足を運んでいる。
ちょうどその頃、『grope our way』のアナログレコード（10インチ）が発売されたので購入。ラストの「The SAME」を気に入り、頻繁に聴いていた。最初に好きになったBRAHMANの曲ということになる。
現在でもライブで披露される「Beyond The Mountain」等を収録した『grope our way』は、残念ながら廃盤。同作の楽曲は、3枚の初期音源を再録した『ETERNAL RECURRENCE』（2009年）で聴くことができる。
「アンダーグラウンドVSアマチュア ～TBHR ANTHEM～」
THA BLUE HERB
THA BLUE HERBの存在を初めて認識したのは、『ele-king』1999年10月号に掲載された記事。
世界初のテクノ専門誌として創刊された『ele-king』に、札幌を拠点とするヒップホップグループが取り上げられたことを意外に思いながら読み進んだBOSS THE MC（ILL-BOSSTINO）のインタビューは、興味深い内容だった。一極集中型の国内ヒップホップシーンに対する痛烈な批判と、自信に満ちた発言に惹かれ、直後にリリースされた3枚目のシングル『アンダーグラウンドVSアマチュア / 未来世紀日本』の12インチ（アナログレコード）を購入。
帰宅するなりレコードをターンテーブルに乗せ、A面の「アンダーグラウンドVSアマチュア」に針を落とすと、スピーカーから強烈な言葉と音が飛び出してきた。あまりのショックにレコードを裏返すことができず、歌詞を見ながら何度も聴いたことを覚えている。
それまでにリリースされていたTHA BLUE HERBの作品やBOSS THE MCが客演したレコードを揃え、翌年にはライブも体験した。
BOSS THE MCことILL-BOSSTINOは、私にとって不動のNo.1ラッパー。初めて「アンダーグラウンドVSアマチュア」を聴いたあの日からずっと。
「ラストダンス featuring ILL-BOSSTINO」
BRAHMAN
2017年に発表された3曲入りシングル『不倶戴天 -fugutaiten-』に収録された「ラストダンス」は、BRAHMANとILL-BOSSTINOの初共演曲。
それまでに何度も対バンを重ねた両者の共作が遂に実現したということで大いに話題を呼び、CDと同時に発売された7インチのアナログ盤は瞬く間に完売している（7インチの収録曲は、A面が「ラストダンス」、B面は札幌ハードコアシーンを牽引するSLANGのKOをゲストに迎えた「守破離」）。
ミクスチャーロックまがいの巷にあふれるラッパーとロックバンドのコラボとは一線を画す仕上がりであることは、言うまでもないだろう。彼等が凡庸な楽曲をリリースするはずがない。
できることならCDのブックレットに記載された歌詞を見ながら聴いてほしい。3年経った今でも、いや、今だからこそ彼等の言葉が響く。
（文・五辺宏明）
☞ お宝MUSIC発掘 一覧を見る
『CLUSTER BLASTER / BACK TO LIFE』
［CD+DVD］＜通常盤＞TOWER RECORDS 公式サイトへ
