【Ishikura Toya】“優しさ”“柔らかさ”を内包する新たな時代のHIPHOP。22歳ラッパー/プロデューサーが発揮するクリエイティブの根源とは

曽我美 なつめ

曽我美 なつめ

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兵庫県を中心に活動を行い、今、関西のHIPHOPシーンを盛り上げている若手ラッパーの一人であるIshikura Toya。

今年2026年より自身の楽曲「loved you」を元にしたリミックスプロジェクト「loved you REMIX」を始動し、わずか数ヶ月という期間で現在までに6バージョンのリリースを行うなど、精力的な活動・発信を行っている。

一ラッパー/シンガーとしてのみならず、現在は他アーティストのプロデュースほか自作品でのプロジェクト稼働など、多方面における活躍を見せる彼。

そんなアーティスト・Ishikura Toyaとしてのルーツや足跡はどのようなものなのか。またバイタリティ溢れる活動・クリエイティブの根源は一体何なのか。

今回、彼に文面を通じてのインタビューを実施。これまであまり語られて来なかった素顔にも迫る、貴重な取材稿をお届けしたいと思う。

Ishikura Toya
〈ヂラフのFIND OUT! #60〉

キーマンとの出会いを経て音楽、ラップバトルの道へ

活動を始めたのは高校生の頃です。当時Instagramで偶然「J-flag」というラッパーの存在を知ったことが、僕が音楽の世界に入る最初のきっかけでした。

その頃は楽曲制作よりもラップバトルに夢中で、何も分からないまま「ラップがしたい」とすぐにInstagramのDMを送りました。すると快く受け入れてくれて、神戸・長田のサイファーに連れて行ってくれたり、さまざまな賞レースやバトルのことを教えてくれたりしました。今振り返っても、彼がいなければ僕はアーティストにすらなっていなかったと思うので、本当に感謝しています。

17歳頃まではラップバトルへの出場を中心に活動していましたが、そこからは周囲との関わりを一度遮断する形で、ひたすら自分自身の音楽と向き合う時間を数年間過ごしました。その期間があったからこそ、今の自分の音楽やアーティストとしての考え方が確立されたと思っています。

まず改めてこれまでの活動遍歴を尋ねると、彼からはこんな返答が返ってきた。

自身にとってのキーマンや広い世界との出会い、そして孤独な自省の期間。両極端とも言える期間を経て、今のIshikura Toyaが選んだのは、「loved you REMIX」というオープンマインドな道だった。

話を聞いてみると、そんな彼の音楽ルーツにはやはりHIPHOPの素養が大きいようにも見受けられる。しかし彼曰く、決してそういうわけでもないらしい。

自分のサウンドルーツは、J-POP、HIPHOP、ROCKを掛け合わせた音楽です。もともとジャンルを問わずさまざまな音楽にハマってきましたが、自分の中ではそれぞれのジャンルに違った役割があると思っていて。

環境の複雑なしがらみや、そこから生まれる不満や感情をありのまま表現するには、HIPHOPが一番自分に合っていると感じます。一方で、人の心を震わせるような大きなエネルギーを音楽に込めたいときはROCK。そしてJ-POPは、自分が好きなメロディを分かりやすく、自由に表現できるものだと思っています。

それぞれの音楽だからこそ救える人や届く人が違うと思うので、一ジャンルに限定することはあまり考えていません。なにより僕自身も自分の曲を聴くことが好きなので、「自分自身も聴きたいと思える曲」を作ることを大切にしています。

自己主張を経て選んだ“寄り添う”マインドのHIPHOP

重ねて、アーティスト・Ishikura Toyaの音楽制作におけるマインドについても尋ねてみた。

以前は誰かに認められたいという気持ちが強く、「俺を見ろ」と自分の力を誇示したり、「自分はこんなことをしてきたんだ」と過去を見せつけるような歌詞が多かったです。

ただ最近は、自分がこれまで経験した嬉しかったことも辛かったことも、そのすべてがいつか誰かの背中を押せる過去になるんじゃないかと思うようになりました。それ以来、己を大きく見せるためではなく、聴いてくれる人のことを思いやった歌詞を書くようになり、それが今の作品に共通する一つのコンセプトになっています。

また、自分の音楽はあくまでHIPHOPを軸にしています。自分自身、壮絶だと感じるような過去も経験してきましたが、それでも「悪いことはしない」のが自分の中にある一つの主義です。だからこそ、悪さや不良的な生き方を格好良く見せる音楽にはならないよう、自分の経験や感情を言葉にする際も、意識して歌詞を組み立てています。

歌詞を書くときは、言葉を聞いた瞬間に「あ、この言い回し素敵だな」と感じてもらえるような表現を大切にしています。

例えば、「嬉しそうに笑っている」とそのまま書くよりも、「鼻を鳴らす」と表現した方が、その人の表情や仕草、その場の空気まで想像できる気がしていて。感情を直接説明するのではなく、ちょっとした仕草や言葉から情景が浮かんでくるような表現には特にこだわっています。

また、僕の楽曲は基本的に、1曲を聴き終えたときに一つのストーリーが浮かび上がるような構成を意識しています。「この歌詞を聴いた人はどんな景色を想像するだろう」「この主人公をどんな人物だと感じるだろう」と、聴き手の頭の中に生まれる映像まで考えながら歌詞を書いています。

そんな彼の“優しさ”、あるいは“柔和さ”とも呼べる一面は、上記のような形で楽曲のリリックにも落とし込まれている。

彼と近しい価値観を持つ同世代のリスナー、ないしはクリエイターたちにも、そういった一側面がIshikura Toyaの音楽の魅力として受け入れられているのではないだろうか。

「loved you REMIX」プロジェクトで得た世界の広がり

そんな彼のアーティストとしてのエピソードとあわせて、現在注力している「loved you REMIX」プロジェクトについても話を聞いてみた。

この企画を始める以前は、自分の楽曲に積極的に他のアーティストを呼ぶことはほとんどありませんでした。ですが、プロデューサーとしての仕事も増えていく中で、「自分ならもっと面白いプロジェクトを作れるんじゃないか」という感覚も少しずつ生まれてきたんです。

そこで考えたのが、一人のアーティストだけではなく、さまざまな人の人生や価値観を一つの楽曲を通して表現していくことでした。その場合、多くの人が一度は経験する普遍的なテーマがいいと思ったため、失恋をテーマにした「loved you」を主軸に据えたんです。

同じ「失恋」でも、経験した出来事や感じ方、その後どう生きてきたかは人によってまったく違う。だからこそ、一つの楽曲を複数のアーティストに、それぞれの人生の角度から歌ってもらったら面白いんじゃないか。そう思ったことが、このREMIXプロジェクトの始まりでした。

「失恋」という、ある種柔らかでネガティブな題材をチョイスした点からも、ラッパー・Ishikura Toyaの持つ性質が透けて見えるようにも感じられる。

現在このプロジェクトでは、6組のアーティストによる6バージョンの「loved you」楽曲を展開中。つい直近も10月20日に、関西で活躍する若手ラッパー・Lil KING、そして本プロジェクト初の海外勢となる韓国出身・yumewanaiiの両名とコラボレーションした作品がリリースされたばかりである。

企画始動からわずか数ヶ月で、怒涛のリリースを続けてきた彼。その現在地点を尋ねると、こんな言葉が返ってきた。

いい意味で一番予想外だったのは、自分自身がもともと好きだったアーティストの方々から「これいいね」「曲最高だね」と言っていただき、実際にプロジェクトに乗ってもらえたことです。正直、最初は門前払いされても仕方がないくらいの気持ちで動き始めていましたから。

また楽曲への参加自体は難しくても、「個人的に君の動きが気になるから、今度話そうよ」と声をかけてくださる方がいたり、音楽に限らず多方面の業界の方が僕の活動を応援してくださったりと、このプロジェクトを始めたからこそ生まれた出会いもたくさんありました。そこは本当に嬉しい誤算でしたね。

一方で今一番苦労しているのは、この企画をどこまで大きな動きにできるか、という部分です。一つの「プロジェクト」と呼べるところまでは来たと思っていますが、僕が目指しているのはHIPHOPというジャンルに留まらず、シーンを横断して一つのトレンドになるような規模です。そこまではまだまだ距離があると感じています。

そのため、海外アーティストの方と組ませていただいたり、アイドルやVTuberの方にもお声がけをしたりと、少しずつHIPHOPの外側にも広げる動きを行っています。今後、本当にさまざまなジャンルを横断するプロジェクトにできるかもしれないと思うと、苦労以上に楽しみな気持ちもあります。

このプロジェクトには、大きなレーベル・事務所がついているわけではありません。発案から企画、提案、交渉、そして実行まで、現状はすべて自分一人で動かしています。規模が大きくなればなるほど、その部分が一番の大変さになるのかな、と思っています。

一アーティスト・ラッパーとしてだけでなく、プロデューサーとしての才も発揮しながら、音楽シーンを今まさに渡り歩くIshikura Toya。そんな彼が今後、見据えている景色とは。

今後の目標は、とにかくどのジャンルにおいても一つ飛び抜けた存在になることです。

「僕にしかできない」とまで言うつもりはありませんが、22歳の今、大きな事務所などの後ろ盾がない中で、自身の考えと行動だけで音楽を起点にいろんな業界へ活動を広げ、ここまで形にできたことは、自分の一つの才能なのかな、と感じています。

だからこそ、今後ももっといろいろな場所に飛び込んで、実際に業界で活躍するプロの方々と一緒に仕事をし、同じ土俵で挑戦したい。その中で、自分のアイデアや行動力がどこまで通用するのかを確かめたい。

そしていつか、自分自身が「通用する」と思うのではなく、周りのプロフェッショナルな方々からも「ちゃんとこの世界で通用しているね」と認めてもらうことが、一つの大きな目標です。

(取材/文・曽我美なつめ)

MESSAGE

いつも僕の音楽を聴いてくださっている方、そしてこれから聴いてくださる方には、本当に感謝しています。僕自身、聴いてくれる人がいるということに何度も救われています。

僕は、どんなに辛かった過去も、時間が経ったときに自分の人格を素敵なものに形成してくれる一つの要素になるのが人生だと思っています。だから、今まさに辛いことがある人には、どうか「ここが自分の人生のピークなんだ」と思わないでほしいです。

無理に前を向かなくてもいいし、無理に何かを頑張らなくてもいい。そんなときは自分の好きな曲を聴いて、何も考えずに雨が止むのを待っていてもいいと思います。「もう少し生きてみようかな」と思える日が来るまで、生きていてほしいです。

そして僕自身も、いつか誰かから目の前で「あなたの音楽に救われました」と言ってもらえるようなアーティストになれるよう、これからも音楽を作り続けていきます。

Ishikura Toya

INFORMATION

PROFILE

Ishikura Toya

2003年11月15日、兵庫県神戸市生まれ。アーティスト/プロデューサーとして活動する。J-POP、HIPHOP、ROCKをルーツに、ジャンルの枠にとらわれない音楽を制作している。楽曲配信を本格的に開始してから約3年。自身の経験や感情を、一つの物語として情景が浮かぶような歌詞に落とし込むことを大切にしている。

現在はアーティスト活動に加え、プロデューサーとしても活動の幅を広げており、国内外・ジャンルを横断してさまざまなアーティストが参加する「loved you REMIXプロジェクト」を展開している。

活動開始

2023年(楽曲配信開始)

主な活動拠点

兵庫県、関西エリア

HP / SNS

TuneCore
Instagram @ishikura_toya
TikTok @ishikura.toya.staff

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