全国的な緊急事態宣言は終息したものの、各地で未だ第2波の種火が燻りつつある新型コロナウイルス。その影響で、今や全国のクリエイターたちが危機に瀕していることは、この記事を読んでいただいている皆さんにとっても周知の事実だろう。
そんな中でも、エンターテイメントを止めたくない、クリエイター達に支援の場を提供したい。そんな理念の元、クラウドファンディングにて「ノベルボch」というプロジェクトが現在発足している(募集〆切:2020年7月12日)。
発起人は、ライター・電子書籍編集・作家という複数の肩書を持つ浜田みかさん。これまでも様々なWeb媒体で記事を執筆したりコラムを寄稿している。そんな彼女にこのプロジェクトを立ち上げた経緯や、エンターテイメント業界への思いをリモートでインタビューした。
新型コロナウイルスに負けない! 数多のクリエイターにもっと光を
——本日はお時間いただきありがとうございます! まず、この「ノベルボch」というプロジェクトの概要について詳しく教えてください。
一言で言えば、新型コロナウイルスの影響で停滞してしまっているエンタメ業界を新たな手法で支援しよう、というプロジェクトです。ご存知の通り、新型コロナウイルスによってエンタメ業界に身を置く様々な職業の方の仕事が激減し、表現活動の場が奪われてしまっている、という現状があります。
このままでは、エンタメ業界全体が衰退してしまうでしょう。そこで、アーティストの方々に新たな活動の場を提供し、彼らの活躍を支援したい。エンターテイメント活動を止めたくない。そのような思いで発足したのが、今回のプロジェクトとなっています。
——そもそも浜田さんの「エンタメ業界を支援したい」という思いのきっかけは、一体どのようなものなのでしょうか?
はい、元々音楽だけというよりは、私自身がアニメや映画も好きで、いつか自分でも映画を作れたらいいな、という夢なんかもあって。私がこのエンタメ業界に大きな希望や夢を持っている、というところがまず根っこにはありますね。
——エンタメ業界という広い括りでプロジェクトを立てたのにも、理由があるんですよね。
音楽や映像という1つのジャンルに絞らなかったのも、そもそも何か作品を作って発表することって、見る人がいて、見せる場所があって、初めて成り立つものというか。エンタメって、様々なジャンルが掛け合わさった先に成り立っているんですよね。なので何か1つでも欠けてしまうと成り立たなくなる、と思ったんです。
エンタメを守る為には、各ジャンルのクリエイターやアーティストを守ることをまずしないと、その先にあるエンタメを守れない、維持できないと思って。
——そうですよね。現状、音楽や映画などジャンルごとの問題として話題になることが多いですが、大きな視点で見るとエンタメ業界全体の危機的状況ですもんね。
ええ。そんなエンタメ業界のクリエイターが作った音楽や映像、いろんな作品が、現状日の目を見ない状況となっています。これが続くと、クリエイターの金銭的な収入がなくなることにも繋がりますよね。インディーズやアマチュアで活動する人は、なおのことその影響が大きいと思います。
そうなると、中には生きていく為に表現活動から身を引かざるを得ない人たちも出てくると思うんです。そうやってクリエイターが希望を持てなくなると、今度は次の世代も育ちにくくなって、エンタメ全体が縮小したり夢を持てなくなってしまう。
今は対面やリアルな場でそういった創作活動ができない分、じゃあ新たにオンラインでそういった活動ができる場を作ろう。そうすることで、新たなエンタメの形を残していけるんじゃないか。そう思って、今回このプロジェクトを始動させた次第です。
——なるほど。そんな経緯で発足された「ノベルボch」ですが、プロジェクトメンバーはどのように集まったんですか?
メンバーは元々私がSNSで繋がっていた方々や、「yenta」っていうビジネスマッチングアプリで出会った方々で構成されています。私がこういうプロジェクトをやりたい、っていうお話をして、それに賛同してくださった方々が集まっている状態ですね。
特にボイスメディア「Voicy」のメディアプロデューサー、眞嶋(まじま)伸明さんとの出会いは大きくて。元々このプロジェクトの種は1年くらい前から私の中にあったんですが…。眞嶋さんとお話させて頂いた中で、収益化の部分やこの案件を慈善事業ではなく「仕事」にするためのイメージが固まった、という感じでした。
クラウドファンディング実施中! 第1弾企画「ボイスドラマ」について
——ありがとうございます。それではここからは、具体的な「ノベルボch」の内容についてお聞きしたいと思います。まずは第1弾企画のボイスドラマ。現在、この企画の実現の為にクラウドファンディングを行っていますよね。
はい。今回「ノベルボch」の第1弾企画として、脚本家によるオリジナルの小説やストーリーをバンド音楽と声優の音声で楽しむ「ボイスドラマ」っていう手法を取らせていただいています。
実は最初からこの手法にこだわっていたわけではないんです。ただ今回新型コロナウイルスが発生して、会えない、集まれない状況の中で何ができるかなって考えて。その中でボイスドラマであれば、リモートやオンラインで制作・発表ができると思ったので、この形になったという訳ですね。
——そんな第1弾企画のボイスドラマ、完成・公開は8月頃を予定しているとのことなのですが…。ぜひここをチェックしてもらいたい、というポイントはありますか?
そうですね、もちろん企画そのものやストーリーもそうなんですが…。今回で行くと、メインで登場いただいている声優の北村直也さんが、実は全く目が見えない全盲の声優さんなんです。しかも現状は1人でほぼ全ての役の声を担当してくださっていて。そこにもぜひ注目していただきたいですね。
また、今回この企画に曲を提供いただいたバンド・kasumiさんの楽曲も素晴らしくて。今回「Voicy」でのボイスドラマ配信時にはイントロしか流れないのですが、発売する音源CDにはフルバージョンで収録予定なので。そちらの歌詞もぜひチェックしていただけると、ボイスドラマをより楽しんでいただけるかと思います。
ボイスドラマの世界をより鮮やかに彩るkasumiの音楽とは?
——今回起用したバンド・kasumiについては、今回のボイスドラマシナリオの軸となったアーティストとして発表されているかと思うのですが。
はい、そうですね。元々プロジェクトメンバーからの推薦で彼らの存在を知りまして。今回のストーリーのプロットに合わせて、いくつかのアーティストをピックアップしていたんです。その中でも特にkasumiさんの楽曲がイメージにぴったりだ、とメンバー一同非常に盛り上がりまして(笑)。すんなり彼らの起用が決定した、という感じです。
——どういった点がイメージにぴったりだったんでしょうか?
今回のボイスドラマのストーリーではライブハウスでの出会いを描いていて、その部分のロックっぽさというのもあるんですが。それに加えて、楽曲の歌詞の内容がストーリーとすごくマッチしていましたね。
お話の主人公が一度夢に挫折している男の子で、あらすじとしてはその子が人生の中にもう一度夢や希望を見つけていくっていう内容なんですが。そこにkasumiさんの『Re:NEW』っていう楽曲が、もうタイトルからしてとてもマッチしてる!って思いまして(笑)。歌詞の内容を見ても主人公のイメージにとても合致していたので、そこで採用を決めました。
——まさにボイスドラマのテーマソングとなるような楽曲だった訳ですね。
ちなみに、エンディングにもkasumiさんの『ナミダと、涙』という曲を使わせていただいているのですが…。これも「夢を追うことは綺麗事だけじゃない」という、ストーリーとリンクするような素晴らしい内容の楽曲となっているので、そちらもチェックしていただきたいですね。
今回のボイスドラマのターゲットが、そもそも20代後半から30代の「かつて夢を追っていたけれど、今は生活にいっぱいいっぱいで夢をどこかに置き忘れてきてしまった」みたいな方を想定していまして。そんな方々に、このボイスドラマやkasumiさんの楽曲を通して、昔の懐かしい自分を思い出してもらえるといいな、とも思っています。
——魅力的なボイスドラマのストーリーが、kasumiの楽曲によってより色鮮やかになっている、というか。
まさにそうですね。私自身、音楽に対してそこまで造詣が深いわけではないんですが…。なんというか、気持ちが塞がったり沈んだりした時に、心のビタミン剤として聴く音楽なんかもあったりして。きっと誰にでも1つは、そんな風に心の中に強く残っている音楽ってあると思うんです。
音楽ってその人の人生に根付いているものだったり、感情や考え方を形成するものだったり…。そう考えると、音楽をなくすことはしちゃいけないな、って思いますよね。落ち込んだ気持ちを励ましてくれたり、寄り添ってくれたり、様々な音楽があると思うんですけど、そんな音楽自体の存在をちゃんと残していかないといけないな、って。
そういった意味でも、今回のボイスドラマをkasumiさんの楽曲が彩ってくれたことで、音楽自体の役割の大きさを改めて実感できました。
環境やハンディに左右されない、新たなクリエイターの活躍の場として
——プロジェクトの魅力やおすすめポイントをたくさん語っていただきありがとうございました! それでは最後に、このプロジェクトの今後の展望などを教えていただければと思います。
大前提として、このプロジェクトを短期的なもので終わらせない、というところですね。短期的な活動だと結局、限定的・一時的な支援で終わっちゃいますし、「ノベルボch」の理念の1つに、クリエイターの方々を長期的に支援する、後押しするというものもあるので。
第2弾、第3弾の企画や、クラウドファンディングについてはすでに計画しています。このボイスドラマのプロジェクトを続けながら、新型コロナウイルスの状況を鑑みて、また並行して新しい作品も制作しようと思っています。YouTubeでミニドラマやアニメーションを配信したり、さらに同時進行でクリエイターの方々のプロモーション支援なども行えるようなイベントも開催したいですね。せっかくのプロジェクトなので、参画いただいたクリエイターの皆さんが参加しただけで終わらないようにしたいな、と。
——「ノベルボch」発の新たなクリエイターの方々が、今後世の中に出て行ったりすると嬉しいですね。
そうですね。また、このオンラインで活動できるという強みを生かして、より様々なクリエイターさんにも活躍してもらって。先ほどの全盲の声優さんもですし、ボイスドラマの脚本を書いてくださった方もお子さんを育てながら参加してくださっているんです。リモートだからこそ、ハンディや働く環境に左右されずそれぞれのスタイルで活躍してもらうことができる。選択肢が増えるのかな、と。
そしてこの形を私たちが率先して行うことで、他の方にも追随してぜひこのような取り組みを行っていただきたいですね。これがエンタメの新しい方法や文化の1つとなって、その分今まで日の目を見なかったクリエイターの皆さんが表に出ることができるようになって。それがエンタメ業界全体の盛り上がりにも繋がると思うので、どんどん真似をしてもらえればな、と思います。
(取材/文・曽我美なつめ)
PROFILE
浜田 みか(Mika Hamada)
新型コロナウイルスによって活動がSTOPしたアーティスト&クリエイターの表現活動を後押しするプロジェクトグループ『ノベルボch』の発起人。結成は2020年4月。表現活動の場づくりと、次世代の表現者のための活動の場づくり、アーティストやクリエイターの活動支援プロモーションを行うことを目的に活動開始。同年5月からアーティスト・クリエイター・ファンとともにつくる『音楽×声×ストーリーの参加型ボイスドラマ』制作のためのクラウドファンディングをスタート。並行して、ボイスメディアVoicyにて制作秘話などを紹介するプレ配信『ノベルボラジオ』を配信中(メインMC:ノベルボch音楽ディレクター・倉田航仁郎)。ボイスドラマ本編は2020年8月上旬配信予定。
ノベルボch 公式Twitter @NovelVo_ch
クラウドファンディングページ NovelVo_ch