【MUSIC DRUNKS #5】バンド・PUTAINS / ポップでハピネスなバンドサウンドのルーツミュージックに迫る

曽我美 なつめ

曽我美 なつめ

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音楽好きな人に音楽愛をひたすら語っていただく連載「MUSIC DRUNKS」。第5弾は、愛媛県松山市を中心に活動するバンド、PUTAINS(ピュタンズ)が登場。

2020年3月25日に初の全国流通盤となる1st Full Album『FEEL』をリリースした彼ら。完成したばかりの新作についての制作秘話や、バンドサウンドのルーツとなる音楽の話などについてたっぷりと話を聞いた。


バンドルーツは60年代UKロック、そして日本のポップスから

左から doy(Ba.)、MSYK(Vo./Gt.)、kajuhiro(Dr.)

——この度は新作『FEEL』のリリース、おめでとうございます! まずは皆さんにPUTAINSというバンドを知っていただくために、ぜひバンドのルーツとなる音楽についてお聞きしたいと思います。

MSYK(Vo./Gt.): 一番強いのは僕のルーツですね。昔から聴いてたThe BeatlesやOasisとか…。ただ、今作の『FEEL』から日本語詞にも挑戦しました。これまでは英語の曲が全てだと思ってたけど、前作『YOLO』を撮り終えた後ぐらいに星野源やaiko、ユーミン(松任谷由実)を聴いて「日本語もアリやな」と思って。

やっぱ英語で全てを表現するのは難しいんですよ、ネイティブじゃないから。そう思って試しに日本語で曲を作ってみたら、想像以上にいいものが出来て。伝えたいことがちゃんと伝えられるというか…。なので今作はそんな日本のポップスの影響も色濃く出てますね。

——なるほど。ちなみに一番根っこにある、The BeatlesやOasisとの出会いはいつ頃なんですか?

MSYK: 中学校の時ですね。それまではスピッツとかMr.Childrenを聴いてたんですけど、ある日彼らのレコードを聴いて一瞬でやられて(笑)。びっくりしました、目の前が開けた感じがして。

そこから60年代の音楽を漁って…The KinksとかThe Who、The Rolling Stonesとか。それを聴いて「こんな音楽がしたい!」と思って、当時から英語で曲を作ってました。

——その時の出会いと衝撃が10年、20年近く経って大人になった今でも、自分の音楽に大きく影響してるんですね。

MSYK: そうですね。あともう1つ大きな柱があるとしたら…The Strokesかな。好きな人が僕らの音楽を聴いたら一瞬で分かると思うんですが(笑)。ストロークスは、何も特別なことをしてないはずなのにすごく特別な感じがするというか。バンドなのに最先端な音楽だなって。そこは結構大きな柱というか、PUTAINSに一番繋がってるかな~と思いますね。

——そしたらその2つの柱があって…さっきお話ししてた日本語の良さがさらにあって。

MSYK: 最近だとLUCKY TAPESとかnever young beach、あとYogee New Wavesとかも好きですけど…星野源かな、やっぱり。みんな好きだと思うんですけど、本当に天才だなと思います。きっかけは『SUN』とかに飛びついただけなんですが、むしろ今はソロデビューしたばかりの頃の方が好きで。星野源になりたいくらい好きですね(笑)

——星野源の何が魅力ですか?

MSYK: う~ん、全て。全てやけど…メロディと歌詞かな。日本語でもこれだけ人を動かせるっていう。それと自分がやろうとしてることが似てるというか。シンプルでわかりやすい音楽だけど、実はルーツにブラックミュージックがあるところとか、僕も日本語やのにストロークスが隠れてるとか、そういうところですね。

これほんとおこがましい話なんですけど、星野源をものすごい意識してしまいます。彼が新曲出して良かったら、「なんで俺が思い付かんかったんやろう」って嫉妬したり(笑)。そう思いながら、やっぱり彼の音楽に惹かれてしまいますね。

doy(Ba.)

——巨大なライバルというところですね、ふふふ(笑)。ありがとうございます。そしたら次はdoyくんにお話を聞きたいと思うのですが。元々doyくんの音楽の始まりは?

doy(Ba.): 音楽のきっかけは中学の吹奏楽部ですね。その部活の推薦で高校に入ったんですが、高校の吹奏楽部はあんまり面白くなくて。けど推薦入学だったから辞めるわけにもいかず(笑)、そんな中で別の楽器にも興味が出てきたんです。

そしたら親が趣味で弾いてたベースが家にあって…それに手を伸ばしたのが最初のきっかけですね。最初に好きで聴いてた音楽も親の影響で聖飢魔Ⅱでした。それこそ親が運転する車の中でずっとカセットで聴いてたりして。

MSYK: 聖飢魔Ⅱ!? いいエピソードあるね~(笑)

——今のPUTAINSの音楽からは想像できないハードな方向性ですね!

doy: そうなんです。けどある日、雑誌でハマ・オカモトさんの記事を読んで…。ご本人も嫌がってはいるんですけど、ダウンタウンの浜田さんの息子っていうのが僕も興味を持ったきっかけで。で、OKAMOTO’S聴いたら「なんじゃこりゃ! ベースってこんなにかっこいいんや!」ってなって。のめりこみましたね。

それが高2の頃かな、その時はバンドでなく家で1人ベースコピーしてたんですけど。聖飢魔ⅡからOKAMOTO’S、その繋がりで星野源やはっぴいえんどを好んで聴いてましたね。

——そこから学生を卒業して、働き始めてからはどうだったんです?

doy: そこからも主軸はOKAMOTO’Sとか星野源で。彼らがラジオとかで勧める音楽を聴いてきたって感じですね。

kajuhiro(Dr.)※右

——ありがとうございます。そしたら最後はkajuhiroくんにルーツを聞こうかな。

kajuhiro(Dr.): はい。僕は元々はゲームが好きで、音楽には全く関心がなくて…むしろバンドとか悪い人のものというか、いいイメージが全くなかったんです。でも高校の時、学校行事の吹奏楽部の演奏で、小柄な女の子がドラムを叩いてるのを見て、そのビジュアルがかっこいいなと思って。それでドラムをやろうと思ったんですよね。

で、大学からドラム始めて、もっと上手くなりたいと思って。どうしたらいいかなって考えた時にメタルかなって(笑)。それでTSUTAYAに探しに行って、最初マキシマム ザ ホルモンの『ぶっ生き返す』のジャケを見て、「これがメタルか!」と思ってそれを借りたり。

MSYK: はははははは(笑)

kajuhiro: でも友達から「それはメタルじゃない」って言われて(笑)、勧められたAvenged Sevenfoldを聴き始めたりしてました。

それから、元々大学で最初に東京事変をコピーして、そこから椎名林檎に行ったり、別の友達に椎名林檎を聴くならRedioheadを聴けって言われたり。他にもヴィジュアル系のコピーバンドに誘われてそれを聴いたり…そんな感じでいろいろ聴いてましたね。

——なかなか面白いルーツですね(笑)。でも話を聞いてると、人から勧められたものをすごく素直にいろいろ聴こうとしてたんですね。

kajuhiro: むしろ人から勧められた音楽しか聴いてないですね。だからそれこそ、PUTAINSとして活動し始めてからMSYKさんのルーツになるストロークスとか、その辺りの音楽を聴くようになりましたね。

——吸収力がすごいなと思って(笑)。でもそれってすごくいいことだと思います、たくさんの音楽を偏見なく聴けることって。
最近のバンド内ブームはジブリ!? 幅広い彼らのプッシュサウンドとは
——そんなルーツがあるお三方ですが、最近いいなと思ったアーティストはいますか?

MSYK: そうだな~、カネコアヤノとか。僕とkajuhiroくんが最近だいぶハマってますね。

doy: 僕も聴いてますよ(笑)

MSYK:(笑)。日本語の参考にさらになったというか。あと立ち振る舞いとか…表情。ミステリアスなのに歌詞はメッセージ性強めなところとか、いいですよね。

doy: 僕はベタですが…くるりの『アンテナ』とか。ちょっと前からくるり好きだったんですけど、『アンテナ』を勧められて聴いてめっちゃいいやん、って。あと、久石譲の…久石譲わかります?

MSYK: それはわかるよ(笑)

doy:(笑)。何かの時に『Summer』を聴いて、あ~久石譲いいな、久しぶりに聴こう、ってなって。で、元々ジブリは『もののけ姫』が好きで…『アシタカせっ記』かっこいいなって改めて感じましたね。

——また変化球聴いてますね(笑)。kajuhiroくんはどうでしょう?

kajuhiro: 実は僕もジブリの…ジブリメタルとかも元々聴いてたんですけど、ジブリジャズが最近めちゃくちゃ好きで。元々ジャズのドラムをやろう思って、誰かと一緒にやったりコピーで喜ばれるのはジブリなら間違いないと思ったんです。特に『風の谷のナウシカ』と『ねこバス』のジャズアレンジが好きですね。

あとは…学生の頃からなんとなく知ってたんですけど、改めてふくろうずを聴いてめちゃくちゃいいやん、ってなってます。

苦難を乗り超えて…全国のリスナーに『FEEL』を届けていきたい
——いろいろな面白いお話をありがとうございました。PUTAINSというバンドの空気感が少しでも皆さんに伝わっていればと思います。さて、最後に新作『FEEL』についてのエピソードなど少しうかがえれば。

MSYK: 元々この作品は去年の夏頃に出す予定だったんですが、その前にキーボードが脱退して。「あ、もうあかんな」って本当はちょっと諦めちゃってたんです、僕。

けどメンバー2人や周囲の人たちに背中を押されて…その脱退したメンバーも別のバンドで頑張ってたから、負けられないなと思って。もう一度やろうと思って、この作品が出来た感じですね。結果とても納得のいくものが出来て、本当によかったなと思います。

——どん底の時期があっての『FEEL』という作品なんですね。

kajuhiro: それから…1曲目の『New Day』。8曲の段階でまだ少し曲を足したいなと思ってたんですが、候補の曲にしっくり来てなくて。その中で3人でスタジオに入ったんですけど、そこで一瞬で出来たのがこの曲だったんです。

MSYK: デモなしの状態で0から3人で作った曲もこれが初めてで。そういう意味でも思い出深いですね。

kajuhiro: あと、その『New Day』の打ち込みやこれまでキーボードでやってたサウンドを、今回は僕の中学校からの友達であるTacckiにお願いしました。彼のサウンドメイクも合わさって、ますます『FEEL』の完成度が上がりましたね。昔からの友人と共作できたのも、僕としても嬉しかったです。

——そんな『FEEL』を完成させたPUTAINSの、これからの抱負はいかがでしょうか?

MSYK: 今はこの状況ですけど、もちろんライブもしたいし…今回この全国流通盤を出したことで、遠い土地の方にも反応をもらえて。その人たちにも会いに行きたいですよね。

あとは、今のPUTAINSのいい所は今回でもう出し切ったので…次の作品を早く出したいですね。もう計画は進めてるんですが。今年中リリースくらいの気持ちでやっていきたいです。

youtube動画

(取材/文/撮影・曽我美なつめ)


5 PRECIOUS SONGS

曲は奇抜だけどどこか懐かしさを感じる。単純にメロディと歌詞が素晴らしい。 (MSYK/2017年)

前作『YOLO』のルーツ。PUTAINSが一番大事にしたいメッセージの元になった曲。(MSYK/2006年)

ポップで明るい曲調なのに実はお墓参りの歌。そのギャップ、コントラストがいい。(doy/2011年)

聴いた瞬間からグッと心を掴まれた。冒頭のベースとドラムのフレーズが最高にかっこいい。(doy/2016年)

ふくろうずはバンドの多面性や闇が魅力。この曲が表題曲のアルバムもいい作品。(kajuhiro/2013年)


PROFILE

PUTAINS(ピュタンズ)

2016年結成。メロディはキャッチーに。聴いている間はすべてを忘れてハッピーに。それがPUTAINSの音楽に欠かせない要素。60’sロック、ブリットポップ、シティポップ、ブラックミュージックなど、ジャンルは問わずメンバーが好きな音楽を独自に解釈し、それらをPUTAINS風に組み合わせることで生み出された音楽である。曲によって日本語詞や英語詞、両方を織り交ぜたものがあり、バラエティーに富んでいる。You Only Live Once(人生一度きり)をモットーに、今その瞬間しかできない新しい音楽への挑戦を続けている。2020年にはバンド初となる全国流通1st full album『FEEL』がリリースされた。公式Twitter @putains2016


1st full album『FEEL』

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