
楽曲紹介系インフルエンサー・選曲日和の初主催のライブイベント『響遊録-キョウユウロク-』が5月4日に東京・Veats Shibuyaにて開催されます。
選曲日和はTikTokやInstagramなどのSNSを中心に活動する楽曲紹介系インフルエンサーであり、その総フォロワー数は約29万人にのぼります。ショート動画で黒い服着た帽子のお兄さんが音楽紹介しているの、見たことありませんか?
出演者はケプラ、クジラ夜の街、リュックと添い寝ごはん、オープニングアクトとしてミーマイナーと邦ロック好きにたまらない4組。初見でも十分楽しめます。さらに同イベントは全編スマホ撮影が可能で、全身で感じたその感動をSNS上で共有(キョウユウ)することができます。
今回、そのイベントの主催者である選曲日和さんにインタビューを行いました。イベントのことはもちろん、音楽発信のこととか、同じ音楽紹介アカウントとして聞きたかったことを突っ込んで聞いてみました。
選曲日和を始めたきっかけ

まずは簡単に自己紹介お願いします。

選曲日和という名前でSNSで音楽紹介活動しながら、この3月に大学院を卒業します。

今いらっしゃるのは福岡なんですよね?

大学から福岡でしたが、4月からは就職で東京に引っ越します。

この活動を始められたのは、いつからなんですか?


え、まだ1年ちょいなんですか? 大学院時代の間に、めちゃめちゃ急速にフォロワーが増えたんですね…。
音楽を好きになり始めたのは、いつくらいからなんですか?

高校の頃から邦ロック系の音楽を聴き始めて、今もずっと好きという感じですね。

原点と言えるバンドはなんでしょうか?

邦ロックの入りはgo!go!vanillasを高校の友達に教えてもらった時ですね。『エマ』を聴いてという感じです。

そこから活動開始するまでは時間が空くわけですけど、何がきっかけで始めましたか?

音楽がずっと好きで、聴いていて何かで関わりたい気持ちがあったんですけど、楽器もできないし、歌も下手だし、関わり方が分からなかったんですよね。

そういう人は多いでしょうね(僕もそう)。

そんな時に既に音楽紹介されているアカウントがいくつかあって、「これならできるんじゃないか」というところから始まりました。

僕も25歳から遊津場をやってますが、既に社会人でもあったので、音楽に関わろうと思うとSNSになっちゃいますよね。
ただ、既にSNSのショート動画で音楽紹介するアカウントは沢山あった中で始めたと思うんですけど、「自分ならこうするな」みたいなのは元々持っていたんですか?

そうですね。当時は顔出しで曲紹介する人がほとんどいなかったはずなんですね。なので顔出しは計画してましたね。

僕も始めた当時はTwitterくらいしかSNSがなかったんですけど、MVを切り取った紹介くらいしかなかったので、文章を付けたら差別化できるかなとは考えました。
音楽紹介の中の人って20歳前後の人も多いですし、ある程度フィールドが成熟した中で音楽紹介を始めたオールドルーキーというのは…少し近しいところがありますね。

精神性は似ている気がしますね(笑)。その上で、既に伸びていたNagi君やぴぴみゅーじっく君を参考にしていきましたね。

始めて1年でここまでフォロワーが増えるとは思っていました?

いやぁ…全然想像していなかったですね。

アーティストは何をきっかけに見つけたりしますか?

もちろん能動的にディグることもあるんですけど、やはりコメント欄で視聴者同士が「この曲いいよ」と交流しているのを見て、それで聴いてみると予想していない良い驚きと出会えることがありますね。
なので今は双方向に教えあっている環境ができている感じですね。

最近それで気になったアーティストとかいます?

luvはずっと存在は知っていたんですけど、最近出たミニアルバム『Already』で改めて聴いてみてから、今は一番聴いてますね。
紹介アカウントがライブイベントをする意図

高校で邦ロックにハマってから、ライブには行くようになったのですか?

これがですね、ほとんど行ったことがなくて。高校時代からずっと聴いているだけで、大学の時に1度行ったことがあるくらいなんです。その状態から、このアカウントを始めました。

まぁコロナもありましたしね。僕も地元はコンビニもないようなところで行きようがなかったですし、大学も部活を一生懸命していて、そんなには行ってない“聴き専”でしたね。本格的に行き始めたのはこの活動を始めてからです。

もっと10代から行きまくっている方かと思って意外でした(笑)。僕もこの活動を始めてから、ライブに行く機会が増えました。

そんな基本は聴き専の選曲日和さんの思う“リアルライブの良さ”って、なんだと思いますか?

サブスクやストリーミングとかイヤホンで音楽を楽しむ時って、音楽そのものを楽しんでいる感じだと思うんですよね。
でもライブハウスで聴くと、音楽そのものを楽しむことに思い出がプラスされるのがいいなぁと思いますね。音楽を聴くことを目的に、しっかりお金や時間をかけて、思い出になるのがいいなぁと思います。
最近、シンガーズハイのライブを見た時は驚きました。イヤホンで聴いていても過激さや熱量は感じてましたが、実際のライブの化け方はすごいなと思いました。

そして自分でもイベントをやることになるわけですが、なぜやろうと思いましたか?

1年くらい音楽紹介してきて、“紹介”ってゼロイチだなと思って。“知らない”を“知る”に変えるというところなんで。
で、1→100はやっていないなと思って。好きにさせるというのをやってこなかったんですけど、音楽はライブ行くとか、アーティストを深ぼっていくとか「知ってからが楽しい」という楽しさもあると思っていて、そういうところをライブを通して提供できればと考えています。

やはり紹介を続けていく中で、その先もやっていいんじゃないかと。…そうなりますよね。
※既に遊津場は10回以上イベント企画しました
その中で今回ブッキングはどういった面を意識しましたか?

まずミーマイナーは、結成2ヶ月くらいの時に自分が楽曲紹介をした際、フォロワーの反応も良くて、ご本人達からも反応があって、このアカウントが少し後押しできたのかなと思えたバンドでした。もちろんここから先、どんどん大きくなるんじゃないかと思って、オープニングアクトをお願いしました。
クジラ夜の街、リュックと添い寝ごはん、ケプラは、「この雰囲気が好きなら、このバンドも好き」みたいな親和性を大事にする紹介を自分はすることがあるので、今回もその親和性を大事にしました。
そして出演するバンドがSNS世代であることも1個軸かなと思ってまして、そういうのも大切にしているんじゃないかなというバンドをブッキングさせていただきました。

その世代を象徴するロックバンドだと思ったと。

もちろん大好きというのは前提です!

出演者のオススメの曲とかありますか?

ケプラの『ずっと前から君に恋してる』、リュックと添い寝ごはんの『満漢全席』という最近のリリース曲が好きです!
クジラ夜の街は『あばよ大泥棒』が好きで、あのライブでの手降りの統一感とかすごく良いですよね。
ミーマイナーは『ワンルームナイト』が先ほどの紹介のきっかけになった曲でもありますし、普通に好きな曲でもありますね。

そして今回のライブは全編撮影可となっていますが、なぜそうしようと思いましたか?

音楽以外もそうなんですけど、最近の体験の“出会い”は、やはりSNSに集約されているという思いがあります。加えて今回は公開に関しても緩く設定しようと思っていて、みんなが楽しい体験をシェアして、ライブシーンの盛り上がりがもっと認知されるといいなという思いが強いですね。
音楽紹介アカウントクロストーク

話は少し変わりますが、私自身新しいバンドを探していると「SNSに寄りすぎ!」と思うバンドも非常に多くなっている印象があります。当然、全組がイントロの1秒からアウトロの1秒まで命懸けているはずではあるんですけど、でもやっぱり意識的には薄くなっているような気もします。
その辺も加味して、あえてお聞きするんですけど、SNSのメリットとデメリットってなんだと思います?

メリットはやはり伝播の速さですよね。ひとたび大きなバズが起きれば人生が変わったりしますから。その人生が変わる速度が速くなったのは1つありますよね。
デメリットはその分、消費スピードも速くなって、流行り廃りも激しくなって、それが音楽性の変化をもたらすこともありますよね。そのデメリットの面は自分も助長しているのではないかと悩むこともあるんですけど…

それはリアルですね。

そのデメリットと自分が紹介することを天秤にかけて、アーティストやリスナーにとってプラスが多いんじゃないかと信じて、自分なりに表現方法にも気をつけて投稿しています。

まずは音楽が広まる。音楽を知る人が増える。これは良いことで人生を豊かにすると信じているのは僕も同じですが、そこにはどういう思いがありますか?

僕もそう思います。ただ変な話かもしれませんが、自分自身が「音楽に救われた・感銘を受けたからやってます」というのは、しっくり来てなくて。
どちらかと言うと「音楽ってもっと良いものなんだろうな」「この音楽を僕よりも感受できる人が世界にはいる」と思っていて。むしろ自分が知っちゃってるのが申し訳ないくらいの気持ちもあって、知るべき人に知らせたくて。自分が楽しむというより、もっと楽しめる人に繋ぐのが自分の役割だと思って活動しているという感じですね。

「知るべき人がいるはずだ」が1つ活動の強い軸になっているんですね。それは本当にライブハウスに行けない人も含めてだと思いますし、その方法は時代によって変わっていっているんだろうなと感じます。
それでも今回リアルライブを企画するのは、それだけライブというものにも魅力があるということなんですね。

遊津場さんも「自分が好き」だけではやりきれないところはありませんか?

ありますね。そう思うと、社会人というか分別のつく年齢で始めて良かったなと思うことはよくあります。好きがゆえに盲目になって、逆に迷惑かけることもあるので。
選曲日和さんは、どこまでいってもリスナー感覚を持ち続けてくれる方だなというのは強く感じます。

まぁ正直、コアな音楽好きの方からは、良くない見られ方もされているかもしれませんが、僕の役割は「知らない人を連れてくること」かなと思うので、一般の方と音楽業界やマニアの間くらいの立ち位置で繋ぎ役ができたらと思いますね。

僕がこの活動を始めた時にも、Twitter(現X)で音楽紹介している人はそれなりにいたんですけど、その比にならないくらい音楽紹介アカウントが増えた気がしています。そういうのはどう思ってますか?

たまに「僕は音楽紹介アカウントを始めました」みたいなDMも来ます。個人的にはそれはプラスでしかないと思っていて、またその人きっかけに広まるアーティストがいるんだろうなと思います。今は簡単に動画編集もできますし、どんどん活性化していくといいなと思っています。

僕も音楽に触れていく人が1人でも増えてほしいなと思います。個人的には、こんな時代だからこそ文章で届ける人も増えてほしいですね。タイパが悪いからこそ込められる熱量ってあると思いますし、そういうのが合っている若い人も絶対いるんだろうなと思うので。
では最後にこの読者へメッセージをお願いします。

ずっとSNSで音楽を紹介してきましたが、自分もライブハウスに行って気が付いたことがあります。音楽の良さってそれだけじゃなくて、生で会うからこそ分かる「もう1つ奥の”好き”」がある、ということ。
皆さんにとっての「もう1つ奥の”好き”」を引き出せるイベントになればと思っています。ぜひお越しください!
(取材/文・遊津場)
INFORMATION

タイトル:『響遊録-キョウユウロク-』
日程: 2025年5月4日(月・祝)
場所: Veats Shibuya
時間: OPEN 15:00 / START 16:00
チケット料金: 4,950円(税込)
出演アーティスト: ミーマイナー(OA) / クジラ夜の街 / ケプラ / リュックと添い寝ごはん
主催・企画制作: ビクターエンタテインメント株式会社
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