新型コロナウイルス感染拡大を受けて、5月に予定されていた「日比谷音楽祭2020」の開催中止が正式に発表された。これを受けて実行委員会は、日比谷音楽祭の本番に稼働することを予定していた約300名のスタッフを救済するためのクラウドファンディングを開始した。
現在、第一目標金額の400万円を達成し、ネクストゴールの800万円に向けて支援を募集しているので、詳しく紹介していく。
無料の大規模野外フェス「日比谷音楽祭」とは
2020年5月30日と31日の2daysで開催予定だった日比谷音楽祭2020。今年で2年目を迎えるこのフェスは、日本を代表するベーシスト兼音楽プロデューサーの亀田誠治さんを実行委員長に、また、今年から公式YouTubeチャンネルもスタートさせ、プロデューサーにはグッドモーニングアメリカのベーシストたなしんさんを迎えた布陣で運営している。
DREAMS COME TRUE、KREVA、MIYAVIなどそうそうたるアーティストが出演予定となっていたにもかかわらず、入場料は無料である。このフェスの概要はヂラフマガジン内でも紹介しているので、詳しくはこちらから。
開催中止で仕事を失ったスタッフ救済のためのクラウドファンディングが始動
今回のクラウドファンディングからは、実行委員長である亀田誠治さんをはじめとする日比谷音楽祭の運営サイドの、スタッフに対するリスペクト精神が見て取れる。「出演者だけで成り立っているわけではない」ということを理解し、一緒に作っているのだという思いとともにスタッフをリスペクトしているからこそできることではないだろうか。
亀田さん自身もフェスが中止になったことで、出演者としても実行委員としても痛手を被っているにもかかわらず、このようにスタッフを守るための動きを取ることは簡単なことではないと思う。
募集期間は6月22日(月)23:00まで、支援可能額は1,000円から。集まった資金は、業務内容によって差をつけずに人数で割った金額を均等に分配し、ひとりあたり1万円以上を目標に補償金として支給することになっている。目標額を超えた場合は、ひとりあたりの補償額が増額される仕組みだ。
リターン品については、プロジェクトの趣旨に賛同した企業から提供されたバラエティ豊かな品々や、オンライン感謝イベントの招待権、亀田さんと話せる権利、亀田さんから私物のCDプレゼントなど、多彩なものが用意されているので、ぜひチェックしてみてほしい。
リターン例
開催に向けて数多くのスタッフが動いているという事実に光をあてる
大ホールでもアリーナでもライブハウスでも小劇場でも、上演されるライブや演劇などの公演は、出演者だけで成り立っているものではない。これは出演者のプロアマを問わず、である。
開演までのプロモーションからその他諸々の調整・準備、機材搬入、会場設営、電源確保、開演中の音響・映像・録音、物販やブース運営、警備、お弁当手配など、数多くのスタッフの総動員で作り上げられているのだ。
裏方と呼ばれるこうした人々の働きがあるからこそ、出演者は安心して精一杯のパフォーマンスが発揮でき、観客に大きな感動を与えることができる。普段当たり前のように観ている音楽をはじめとするエンターテイメント業界には、それを支える数多くのスタッフがいるということを忘れてはならない。
スタッフの損失はエンターテインメント業界全体の損失
新型コロナウイルスの影響で中止・延期になったライブや舞台などの公演は、3月時点で約1,550件を超え、それぞれにかかわっていたスタッフは数えきれない人数となる。今回の日比谷音楽祭2020は、出演者を含めると約600名を超えるスタッフがかかわっていたとのこと。
このすべてに先ほどご紹介した裏方スタッフがかかわっており、予定されていた公演がなくなったことでそのスタッフは仕事がなくなってしまった。プロのスタッフとはいえ、その所属はフリーランスだったり小さな会社の社員だったりすることが多いため、1本1本の仕事がすべて収入に直結しており、全国的に自粛が始まった頃から1ヶ月以上仕事がない人も少なくない。
この状況が続けば、廃業に追い込まれる人たちが続出することは火を見るより明らかであり、実際に廃業してしまった人もいるだろう。廃業によって優秀なスタッフを失うことは、音楽だけに限らずエンターテインメント業界全体の損失になる。
今回のクラウドファンディングでは、「裏方スタッフの存在なくしてイベントを作ることはできない」という事実を広く周知したいというメッセージも添えられている。音楽ファンだけに限らず、舞台や演劇を含むすべてのエンターテインメントファンが、今こそひとつになってただ耐えるだけでなく支援していくときではないだろうか。
今回のクラウドファンディングをキッカケとして、すべてのエンターテインメントを支える裏方への支援にも目を向けてみてほしいと思う。ひとつずつの支援は小さくとも、ここで起こった支援の波は必ずエンターテインメント業界全体を救う大きな波となって広まっていくことを信じて、このクラウドファンディングを応援していきたい。
(文・倉田航仁郎)