【envy】世界を駆けめぐる男達

五辺 宏明

五辺 宏明

「【envy】世界を駆けめぐる男達」のアイキャッチ画像

先日、あるニュースサイトの「海外で最もライブをしている日本人アーティスト1位は○○、2位は○○に」という記事がSNSで話題になった。その特殊な集計方法から選出されたランキングの是非はさておき、記事を見て真っ先に浮かんできたのはenvyだった。

90年代から世界を股にかけて活動するenvyは、ランキング表に記載されていた1位の回数よりも遥かに多く海外でライブを行っている。

cover photo by Osami Yabuta


世界のフェスやレーベルも認める実力

photo by Yoshiharu Ota

6月にフランスで開催予定の「HELLFEST 2020」には5組の国内アーティストが招聘されている。マキシマムザホルモン、BABYMETAL、Crystal Lake、MONO、そしてVALLEYステージのトリを務めるenvy。

2006年にスタートしたヨーロッパ最大のメタルフェス「HELLFEST」に、envyは過去3回出演(2008、2015、2019年)。2005年に出演した前身フェスの「FURYFEST」を含めると今年で5度目になるが、新型コロナウイルスの影響により公演中止になる可能性も。5月に大阪と東京で開催される「HELLFEST WARM UP TOUR」にも出演することが決まっているのだが…。

全米、ヨーロッパはもちろん、香港、台湾、中国、韓国、シンガポール、マーレシア等、アジアツアーも精力的に行い、ワールドワイドな活躍を見せるenvy。その人気はライブパフォーマンスのみならず、作品の評価も高く、その多くが欧米のレーベルからもリリースされている。

昨年12月にドイツのPelagic Recordsから発売された『Definition of Impossibility』の10インチアナログ盤は、予約開始直後にレーベル販売分の300枚がソールドアウト。残りの300枚もEUツアー会場のみで販売された入手困難な1枚。

envy 『Definition of Impossibility』
深川哲也氏(vo,sequencer)、中川学氏(b)、河合信賢氏(g)、yOshi氏(g)、滝善充氏(g)、渡部宏生氏(ds)のサイン入り10インチ

極めつけは2013年にアメリカのTemporary Residence Limitedからリリースされた『INVARIABLE WILL, RECURRING EBBS AND FLOWS』。

結成20周年記念に制作されたボックスセットで、アルバム、シングル、コンピレーション提供曲など、それまでにenvy名義で発表された全ての音源が収録された14枚組LP。さらに未発表ライブと全95曲のMP3データが記録された2枚のDVDと100ページのブックレットも付属。この究極のコレクターズアイテムも、現在では入手することが難しい。

envy 『INVARIABLE WILL, RECURRING EBBS AND FLOWS』

BLIND JUSTICEから世界のenvyに

ニューヨーク・スタイルのハードコアバンドとして活動していたBLIND JUSTICEが、ドラマーの脱退を機にenvyに改名したのが1995年。バンドを離れていたギタリストの飛田雅弘氏が戻り、関大陸氏がドラマーに就任した90年代後半から、徐々にハードコアの枠を超えた楽曲を発表。静と動が交差する激しく美しいenvy独自のサウンドは国内外から支持を集めるようになる。

私がBLIND JUSTICEのメンバーと知り合ったのは1994年。当時はライブハウスに閑古鳥が鳴いていた時代で、一部の人気バンド以外は客を集めることができなかった。スカスカのフロアでステージダイブやモッシュしている奴等はみんな知り合いで、後方で腕組みしてステージを眺めているのは出演者や関係者がほとんど。いつ、どこに行っても同じような顔ぶれだったので、毎週のように会うバンドマン達とも親しくなった。

2001年から10年ほどライブハウスから離れ、再び足を運ぶようになった頃、久々にenvyを観に行った。リキッドルームで開催された彼等の結成20周年記念ライブは驚くほどの集客で、会場中が人で溢れていた。envyの快進撃を人づてに聞いてはいたが、まさかこれほどとは。

フロアで暴れている客が2、3人しかいなかったBLIND JUSTICEは、世界中を駆けめぐり、大きな存在になっていた。

リキッドルームを余裕でソールドアウトさせ、海外からのオファーも引く手あまた。正に無敵状態だったenvyから、2016年にヴォーカリストの深川哲也氏が脱退。4人になったenvyは、ゲストヴォーカリストを迎えながら活動を続けた。しかし、2018年2月に飛田雅弘氏と関大陸氏が脱退。河合信賢氏と中川学氏の2人だけに。

存続の危機を迎えたように見えたenvyだったが、彼等は止まらなかった。2018年4月の自主企画「LAST WISH」から深川氏が電撃復帰。heaven in her armsの渡部宏生氏、killieのyOshi氏、9mm Parabellum Bulletの滝善充氏を加えた現在の6人編成に。

同年、2曲入りのシングル『alnair in august』を発表。そして今年(2020年)の2月に現メンバーによる初のフルアルバム『THE FALLEN CRIMSON』がリリースされた。2月11日にはリキッドルームでニューアルバムのリリース記念ワンマンライブを開催。立錐の余地のない超満員のリキッドルームで観た壮絶な彼等のパフォーマンスに震えた。

photo by Yoshiharu Ota

LAST WISH “THE FALLEN CRIMSON” release oneman show
2020年2月11日@Liquidroom

0. ゼロ(SE)
1. 自由声明 *
2. 揺れた葉と始まりの合図 *
3. 仄見える新世界 *
4. 彼方の足音
5. 疎外された糸 *
6. 風景
7. 指紋の跡 *
8. 左手
9. 擦り切れた踵と繋いだ手
10. 狂い記せ
11. ヒカリ *
12. 朝焼けと視線 *
13. 感覚と一歩 *

[encore]
1. リズム feat. Achiko *
2. 暖かい部屋
3. さよなら言葉

(*マークは『THE FALLEN CRIMSON』収録曲)

『THE FALLEN CRIMSON』のCDは日本盤、US盤、EU盤でリリースされた。2枚組のアナログレコードはUSとEUから。限定のカラー盤も出ている。

Apple Musicで聴くこともできるので是非。世界中のファンから愛されるenvyサウンドを爆音で体感していただきたい。

envy 『THE FALLEN CRIMSON』
深川哲也氏、中川学氏、河合信賢氏のサイン入りLP(TRR341LP)

[CD]
TOWER RECORDSで購入する
Sonzai Records (JPN) : SZ-008
Temporary Residence Limited (US) : TRR341CD
Pelagic Records (EU) : PEL 135

[LP]
Temporary Residence Limited (US) : TRR341LP
Pelagic Records (EU) : PEL 135-V

youtube動画

(文・五辺宏明)