先月(2020年7月)25日に放送されたNHKの『SONGS』という音楽番組に、岡村靖幸が出演。番組終了直後からツイッターに彼の名前と愛称の「岡村ちゃん」の文字が飛び交い、トレンド入りするほどの反響を呼んだ。
かつてDAOKOやRHYMESTERと一緒にテレビ朝日系列の『ミュージックステーション』に出演した際にもトレンド入りしている。
若い世代の『ヂラフマガジン』読者の中には「岡村靖幸って何者?」と気になっているも方も多いのではないだろうか。そんな方にオススメしたい岡村靖幸の作品を紹介させていただきたいと思う(本音を言えば、全てのアルバムを推薦したいところではあるが)。
なお、ここからは彼の愛称として定着している「岡村ちゃん」と呼ばせていただくことにする(呼び捨ては気が引けるので)。
RHYMESTERやDAOKOとのコラボチューンを収録したニューアルバム『操』
昨年、「岡村靖幸さらにライムスター」名義で発表された岡村ちゃんとRHYMESTERの共演曲「マクガフィン」の12インチシングル(アナログレコード)が、今年の1月22日に発売された。
アナログ盤のリリースが発表されたのは、発売日の1週間前で、同時に各レコード店での予約受付がスタート。数時間後には多くの店舗のウェブサイトに「SOLD OUT」の文字が並んだ。
店頭に並んだ枚数は極少量だったと思われ、予約なしで入手できた方は、強運の持ち主に違いない(リリース翌日、SNSのタイムラインに「マクガフィン」のアナログ盤が一部のレコード店に再入荷したという情報が流れたが、大量に出回ったとは考えにくい)。
その「マクガフィン」を収録した岡村ちゃんのニューアルバム『操』(みさお)が4月1日にリリースされた。前作『幸福』に続く、約4年ぶりのフルアルバムとなる。同アルバムに収録されたDAOKOとのコラボシングル「ステップアップLOVE」は、若い世代のリスナーからも注目を集めた(オリコン週間シングルランキング8位)。
『Mステ』や『SONGS』といったテレビ番組、あるいはKICK THE CAN CREWとの共演曲「住所」で岡村ちゃんを知った方は、まずこの新作から聴いてほしい。『王様のブランチ』のテーマ曲として2018年10月から半年間オンエアされた「少年サタデー」をはじめ、岡村ちゃんの魅力が凝縮された傑作をぜひ爆音で。
『OH! ベスト』(2001年)
デビュー曲の「Out of Blue」、岡村ちゃんの存在を世に知らしめたアニメ『シティハンター2』のエンディングテーマ「Super Girl」、大ヒット曲の「だいすき」、名盤『家庭教師』の収録曲でライブでもお馴染みの「あの娘ぼくがロングシュート決めたらどんな顔するんだろう」等、EPIC/Sony Records在籍時代に発表したシングルのA面曲を収めた2枚組のベストアルバム。
残念ながらCDは廃盤になっているらしい。EPIC/Sony Records時代のアルバムはBlu-spec CDで再発されているので、フィジカル派の方はそちらを。
数ある名曲の中から個人的に推薦したいのは、1988年発表の2ndアルバム『DATE』から先行カットされた5枚目のシングル「イケナイコトカイ」。
「好きなアーティストはPrinceと松田聖子」と公言していた岡村ちゃんが、Princeの影響を色濃く反映させた至極のスローナンバー。Princeの「How Come U Don’t Call Me Anymore?」や、やはりPrinceからの影響を公言しているD’Angeloの「Untitled (How Does It Feel)」と続けて聴きたい。
『エチケット』(2011年)
そして、こちらも必聴。2枚のアルバム(ピンクジャケットとパープルジャケット)に分けて発表されたセルフカバー作。岡村ちゃん自身の手によって再構築された人気曲の数々を、オリジナルバージョンと聴き比べていただきたい。
なお、ディスクユニオンのみで販売された限定セットには、「東京ベイベ」、「北海道ベイベ」と題した即興のライブ音源を収録した7インチ(アナログレコード)が付属された。現在では非常に入手困難なコレクターズアイテム。
『幸福』(2016年)
『操』の前作にあたる7枚目のフルアルバム。オリジナルアルバムとしては11年半ぶりの作品ということで、発売前から大いに話題を呼び、オリコン週間アルバムランキング3位を記録。25年10ヶ月ぶりのトップ3入りを果たした。
Base Ball Bearの小出祐介とコラボした「愛はおしゃれじゃない」や、アニメ『スペース☆ダンディ』の主題歌に起用された「ビバナミダ」、園子温監督作の映画『みんな!エスパーだよ!』の主題歌「ラブメッセージ」といったシングル曲が収録されたことで、幅広い層から支持を受けた今作は、『操』と共に聴き逃すことのできない重要作。
(文・五辺宏明)