【yodomi】ライブハウスで解き放つ、轟音と感情のヴァンダリズム

三橋 温子

三橋 温子

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一度体感すれば、鼓膜と肌がその衝撃を記憶してしまうような轟音。2019年に高校の軽音楽部で結成されたyodomi(よどみ)は、グランジ系のどでかい音を放つスリーピースバンドである。

ライブバンドでありながら、3月10日(金)の自主企画ライブ『Snuff』をもって「第一次制作期間」に入ることを先日発表。成熟というネクストステージへ上がるために、1年ほどライブを控えめにして楽曲・音源制作に専念するという。

成熟ステージへと歩み出す直前のVo./Gt.よしはらこーがに、yodomiというバンドについて話を聞いた。1年後、新生yodomiはどんな姿でライブハウスに戻ってきてくれるだろうか。


感情がごちゃ混ぜになった極限状態で生まれる音楽

2019年、埼玉の高校の軽音楽部でyodomiの前身バンドは産声をあげた。当時のドラマーが脱退し、Vo./Gt.よしはらこーが、Ba.遥大、Dr.中村達也という現体制になったところで、バンド名も一新。

「僕の曲、明るさが全然ないんです(笑)。だから明るさからはほど遠いバンド名にしたくて、たまたま読んでいた本に“淀み”というキーワードが出てきて一発でインスピレーションを受けました。なんだか言葉にすると安直ですが、気に入っているバンド名です」

作詞作曲はよしはらが担当し、3人でスタジオで音を合わせて楽曲を完成させていくスタイル。よしはらが勝手に決めたというコンセプト”Riff, Noise, Vandalism”のとおり、彼の歪みきったギターリフとそれに呼応するような歪みボイス、3人それぞれの個性がぶつかり合って生まれるノイジーなのに調和したグルーヴ、それがyodomiサウンドだ。

リフが主役の楽曲作りは、よしはらが敬愛するアメリカのスラッシュメタルバンド・Megadethの影響によるものだという。

「攻撃的なリフや緊張感のあるグルーヴ……下手にメッセージ性をつけず、とにかく自分がカッコいいと思う曲を作ることにこだわっています。でも、たまにあえて“嫌いな”曲を作ることも。好きな曲だけのセットリストでライブをしていると“楽しい”とか“カッコいい”以外の感情を置き去りにしてしまう気がして。いろんな感情がごちゃ混ぜになった極限の状態になって初めて、yodomiの音楽は生まれると思っています」

よしはらがスラッシュメタルに傾倒する一方で、Ba.遥大はL’Arc〜en〜Ciel、Dr.中村達也は(自らの名を裏切ることなく)Blankey Jet Cityに影響を受けてきた。Z世代が挙げるバンドにしてはどれも通な印象だが、yodomiの音楽に新しさとノスタルジーを同時に感じるのはそのせいなのかもしれない。

「こんなにバラバラなのにバンドとして成り立っているのが自分でも謎(笑)。でも、2人とは高校時代から仲がいいこともあって、信頼関係はできていると感じます。僕がライブで機材トラブルを起こしたとき、2人に『なんか適当にやっといて!』ってパワハラじみた無茶振りをよくするんですが、そういうときも即興で繋いでくれるのでリズム隊として心強いですね」

あらゆる要素が激ヤバ音量で鳴らされる1st / 2nd EP

2022年にリリースされた1st EP『Loopy』、2nd EP『Messy』は、よしはらが高校時代に作った楽曲を中心に収録。ぜひともCDやサブスクで聴いてほしいのだが、「こんなミックス聴いたことない」と驚愕するほどの音がパッケージングされている。

「コンプレックスを抱きながら生きる荒削りな10代特有の焦燥感、妄想、いびつさのようなものを表現したいと思っていました。ただ、メンバーや制作チームにはあえてその話をせず、自由にやってもらったんですが、結果的にあらゆる要素が激ヤバ音量で鳴らされるEPができあがりました(笑)。
ミックスは、軽音楽部時代から仲のいい、トップシークレットマンというバンドのしのだっていう奴にお願いしたんですけど、そしたらアホみたいに歪んだ音源が送られてきて衝撃を受けて……。なんて思われるかと心配しながらメンバーに聴かせたら、2人とも気に入ってくれたので、そのまま採用しちゃいました」

もしかしたら、第一次制作期間を終えた新生yodomiでは、もうこんな大胆な音源は聴けなくなるのかもしれない。成熟前の彼らが残した貴重な2枚といえる。

yodomiを初めて聴くリスナーにおすすめしたい楽曲を尋ねると、まさに”Riff, Noise, Vandalism”を体現した楽曲として「USUNORO DRAMATIC」と「ひゅーどろ」を挙げてくれた。いずれもEPに収録されている。

「USUNORO DRAMATIC」
1st EP『Loopy』収録

「ひゅーどろ」
2nd EP『Messy』収録

生活のなかにある、ささやかな愉しみとして

この春からは、音楽活動と仕事を両立させながら新たな人生を歩み始める彼ら。第一次制作期間の具体的な計画は未定と思われるが、MVやアルバムの制作は視野に入れているという。

「売れたいっていう気持ちは正直そんなに強くないです。yodomiをいろんな人に聴いてもらって、バンドで稼いだお金で月イチで焼肉に行けるようになるのが当面の目標。それを達成できたら、次はもっと高い焼肉屋に行けるようにしたい。自分たちにとっても、まわりの人たちやリスナーの方々にとっても、“生活のなかにあるささやかな愉しみのひとつ”としてyodomiが存在し続けてくれたらいいなと思っています」

よしはらの口から「生活」「ささやかな愉しみ」というワードが出たのは意外だった。もっと、超越的で、人の心を根底から揺さぶるような存在をめざしているのかと勝手に思っていた。

だが、以前「音楽であなたを救うことはできないかもしれない」とステージ上で言った彼を思い返して、ふと考える。自らの音楽で誰かを救うことは容易くないが、自らの音楽を誰かの生活の一部にすることは、もしかするとそれ以上に難しく意義のあることなのではないか。

1年後、成熟した3人と彼らの音楽に再び出会える日を、期待して待ちたいと思う。

(文・三橋温子)


PROFILE

yodomi(よどみ)

埼玉の高校の軽音楽部にて結成。”Riff, Noise, Vandalism”を掲げ、非常識な音量から生み出されるグルーヴ、鋭いリフ、歪んだ声、それらを矢継ぎ早に繰り出すライブパフォーマンスを武器に活動中。2022年1月に1st EP『Loopy』、11月に2nd EP『Messy』をリリース。

メンバー

よしはらこーが(Vocal / Guitar)
遥大(Bass)
中村達也(Drums)

活動開始

2019年

主な活動拠点

埼玉県、東京都

HP / SNS

Twitter @yodomiofficial
Instagram @official.yodomi

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